周年記念企画記念企画として〈とみん経営研究所会員歴年〉の会員企業様にご登場いただいております。企画したのは結婚式場「原宿東郷記念館」、経営するのは株式会社東日である。父親の会社で、偽名でアルバイトした大学時代ＪＲ原宿駅と明治通りをつなぐ竹下通り。原宿駅から行けば、竹下通りの中ほどを左手に曲がれば東郷神社がある。東郷平八郎元帥を祀っている神社だ。そこは、若者と外国人観光客で賑 4 2015. 6 TOMIN MANAGEMENT BUSINESS 21 株式会社東日（原宿東郷記念館）代表取締役社長　日下善博氏経済評論家 30 少女漫画から抜け出してきたかのようなファッションの若者で賑わう原宿・竹下通り、そこに現れたのが人力車。乗っているのは角隠しに白無垢の花嫁と笑顔の花婿。誰彼となく「おめでとう」の声が上がる。超現代的なファッションの街と、人力車の不思議なマッチング。これを ●　30 伝統文化を継承し、「愛の精神」で結婚式を革新する西原勝洋取材・構成　探訪企業企業 30 周年記念企画探訪場だ。な環境を備えた一等地にある結婚式と思う。逆に言えば、都心ではまれている。﹁ここは本当に都心なのか﹂を囲むように約１万坪の杜が広がっ郷記念館がある。さらに横手には池社の本殿があり、その並びに原宿東ように思える静寂な空間だ。東郷神わう竹下通りの喧騒が幻だったかのれた。きっと社長室があって、大き度、東京の会社に来てみろ﹂と言わ生活を送っていた時、父親から﹁一現在の社長、日下善博氏は創業者の長男である。湯河原の実家で高校けた。原宿東郷記念館の調理部門も引き受声がかかるや仕事を引き受けていき、代が事業の拡張にひときわ熱心で、ス精神に徹することを旨とする今日や、だからこそ、どこまでもサービ感性の持ち主なのかもしれない。いす﹂と言うから、かなりユニークな継ごう、と決心したのは、その時で善博氏は、その姿を見て感じるところがあった。﹁よし、この会社を調理場で皿洗いをしていた。社の門をくぐった。すると、社長はえる父︱そんな光景を想像して会株式会社東日は、創業者である先な机と大きな椅子、そこにデンと構の原宿東郷記念館があるのだろう。善博氏は大学に入ると同時に実家を出て東京で一人暮らしを始めたが、大学に通うよりも、父の会社の調理場でのアルバイトに精を出した。ただし﹁社長の息子﹂としてアルバイトをしたのでは面白くない。何よりも特別扱いをされたくなかった。偽名を使って、社長とは無関係の学生アルバイトとして働き続けたのだ。調理場は上下関係がはっきりしている。学生アルバイトはいうならば﹁最も低い身分﹂であり﹁いじめられ役﹂だ。その日の最後になって先輩た 2015. 6 TOMIN MANAGEMENT BUSINESS 21 5 代表取締役社長日下善博氏（左）と代表取締役専務日下淳史氏春の庭園株式会社東日（原宿東郷記念館）ちが残した〝まかない飯〟にやっとありつけがあることを理解できるようになっ﹁決して遅刻・欠勤まず善博氏は、をしない﹂ことを、ほとんど唯一の行動原理にして勤務を続けた。真面目な２代目には、自然と同調者が増えを得られ、これで﹁式は親族だけ﹂は、たちまちブライダル業界の〝昔話〟になったのである。一部の高級料亭を除いて、外食産業で使う食器選びは、実は﹁壊れにくい﹂﹁洗いやすい﹂﹁収納しやすい﹂などをポイントにしている。しかし、ブライダル産業はこうであってはいけない、と感じた。﹁一生に一度、たくさんの人々から祝福される場はとても大切です。料理を盛る器も立派なものであるべきです。〝壊れにくい〟など、こちら側の視点だけで食器を選ぶのはいかがなものでしょう﹂そこで原宿東郷記念館は各地の窯元へ。今は唐津、有田、瀬戸などの名品がずらりと並んでいる。ち出し、実現していった。と止められたが、上品なブドウ色やた。思い切ってのアンチテーゼで提一昔前まで披露宴のテーブルクロスは白と決まっていた昔から﹁結婚式は親族だけ、披露宴には友人も﹂というのがブライダ濃紺が採用された。﹁白色テーブルた。善博氏は１９８７年に社長に就ル業界の〝常識中の常識〟だったが、クロスからの脱却﹂も、たちまち他が、善博社長はこれにも疑問を持っ善博社長は﹁なぜだ？﹂と思った。の結婚式場に広がった。披露宴のテーブルにある紙ナプキ案した黒は、先代に﹁それはいかん﹂友人や会社の同僚にも式を見ていた任した。そして、様々な新発想を打「東郷オリジナルギフト」のみつばちの里のお米ギフト（上）と三藤（コーヒー風味のわらび餅・左）だいてはどうか？新郎新婦にも賛同 6 2015. 6 TOMIN MANAGEMENT BUSINESS 21 る日々だった。その間に東日は調理部門だけでなく、東郷記念館の経営全般を引き受けることになった。それまでの経営主体は、大手民放の関連不動産会社だったが、つまるところ経営に失敗したのだ。のに、何ごとにも﹁会場の都合﹂をていた。か︱と善博氏は思った。しかし、そうした下からの提言など、ベテラン幹部にはまともに取り合ってはもらえない。同時にベテラン幹部の主張にも、それなりに根拠格式を守りつつ次々に放たれた革命の矢優先しているのはどういうことなの新郎新婦であるべきな婚式の主役は何よりもと﹂が見えていた。結多くの﹁改善すべきこその立場から見ると、調理場の学生アルバイト、新米の黒服︱た。は㈱東日の社員になっ善博氏は晴れて大学を卒業して、年後に 4 春の婚礼風景企業 30 周年記念企画探訪は㎞ほど。原宿東郷記念館から㎞ている。善博社長は、そうした人々他の企業からの協力があって成り立っ結婚式場は自社の社員だけでなく、美容・着付け、撮影、配膳、清掃などある。の蜂蜜が採れた。ある。始めてから２年目には２５０㎘いずれも由緒ある杜で、豊富な植物が宮の杜があり、北に新宿御苑がある。圏内と言えば、まず東郷神社と明治神たものです。私はそれが嬉しいです。です。〝カフェをつくりたい〟といに、時代の風を吹き込んでいくもの﹁﹃不易流行﹄という言葉がありますが、絶対に変えてはいけない本質たかもしれない。くつろげるタイプの喫茶店がなかっにも、原宿東郷記念館の基本哲学をその一部は料理に使うが、大部分は引き出物用だ。可憐な瓶に詰めた大事なことさえ守ってくれれば、変らない﹂これらも善博社長の哲学で説き、自社の社員と同じ接客姿勢を蜂蜜もあるし、その蜂蜜を使用して代が決めていけばいいことです﹂とう声は若いスタッフから上がってきお願いしている。化を恐れず、ブライダル業界のリー金平糖﹁平八﹂︶。㈱東日が﹁原宿東郷記念館の経営だけ﹂という殻を破って、今後どん後継者はアグレッシブ経営で活かされていなかった部分をカフェな部門に進出し、どこでブライダル善博社長。３代目社長はすでに決まっている。長男の淳史氏である。出版社勤に改装することも決まった。そうい１階のロビーは広々とした打ち合わせスペースになっているが、その務を経て、㈱東日に入り、現在は専産業の常識を変えるようなヒットを和紙に変え、名前の印刷も止めた。﹁披の印刷が入っていたが、それを高級ンは、ある時まで﹁原宿東郷記念館﹂く実を結ぶのを見ながら静かにして、若い者の意見がうまています。アドバイスを中心してから完全に譲ろうと思っルを超えた〝愛の精神〟を持って、晴よいマニュアルは平均を高める。しかし、﹁ブライダル産業は、マニュアている。すでに様々な試みに動き出し館の﹁接客哲学﹂を守りつつ、 ■ 代表取締役社長日下善博 ■ 創業昭和年月 ■ 設立昭和年月０００万円　■ 資本金２、 ■ 従業員約名 ■ 売上高約億円 ■ 事業内容結婚式場運営 ■ 本社〒１５０ー０００東京都渋谷区神宮前ーー ■ 電話０３ー３４０ー１３１ ■ http://www.togo.co.jp （東京都民銀行渋谷支店会員）みだ。︵にしはらかつひろ︶ ………………………………………… 株式会社東日飛ばすのか、これからますます楽しえば、竹下通りには、大人が静かに特殊な技術で金平糖にすることにも東郷はちみつ「睦び蜜」ダーとしての自覚を持って、次の世 3 成功した︵名付けて、東郷はちみつ 3 年ぐらい並走露宴は新郎新婦とお客様のお祝いのに引いていきたい﹂と言う。務だ。善博社長は﹁場。そこに会場のＰＲが入り込んでれの場に来た人々に尽くさなければ﹁まアッと驚くのは養蜂だ。さか都心で養蜂業﹂と思うだはいけない﹂という哲学からだ。ならない﹂﹁従業員は身だしなみや接淳史専務を中心とする若い社員たちは、原宿東郷記念客態度に関しては、先輩後輩の関係（代） 2015. 6 TOMIN MANAGEMENT BUSINESS 21 7 ろうが、ミツバチの行動半径 5 10 なく、大いに注意し合わなければな 3 1 4 4 2 3 52 52 19 50 1 披露宴会場