指導書(PDF:1.24MB)

編集:名古屋市市民経済局消費流通課
〒460-8508 名古屋市中区三の丸三丁目1番1号 電話:052(972)2434 FAX:052(972)4136
監修:名古屋をフェアトレード・タウンにしよう会 代表 土井ゆきこ
協力:名古屋市立西陵高等学校 作製:㈱CBCクリエイション
平成26年12月
フェアトレードを通して、「消費がもつ影響力を理解し、社会問題や自然環境に配慮して商品
やサービスを選択し、購入することができる」能力を身に付けさせる。
◆対象
・小学校高学年 ・中学校 ・高等学校
◆キーワード
・フェアトレード ・消費者市民社会 ・ESD(持続可能な開発のための教育) ・国際理解教育
◆授業の概要
‧ 5~6人くらいのグループに分かれ、みんなで話し合い、考えながら進めていく方法により実施する。
‧ チョコレートを題材に、世界には南北の経済格差や児童労働の問題が存在することを理解させ、
また、そのような実態が自分たちの暮らしと無関係でないことを気付かせる。
‧ 児童労働問題を解決し、経済的自立を支援するための仕組みとしてフェアトレードがあることを紹
介し、フェアトレード商品を選択することが、発展途上国の人々の生活を向上させ、自然環境を保
護し、持続可能な社会の実現につながっていくことを理解させる。
‧ フェアトレード商品の選択以外にも、社会を変えるために自分ができることがないかを考えさせ、
それを行動に移すことが大切であることを気付かせる。
◆到達目標
‧ 自分たちが日々、商品やサービスを選択する消費行動が、社会を変える力になっていることを理
解させる。
‧ 自分の経済力に見合った生活の中で、社会に貢献するために自分にどんなことができるのかを考
え、それを行動に移すことの大切さを気付かせる。
◆準備物品
・A4の紙 ・B紙(模造紙)
・水性ペン(太字)
・世界地図(国名入りの白地図)
・円形シール2色(直径5~10mm程度)
◆消費者教育とは(消費者教育推進法第2条)
‧ 消費者の自立を支援するために行われる消費生活に関する教育及び啓発活動
(消費者が主体的に消費者市民社会の形成に参画することの重要性について理
解及び関心を深めるための教育を含む。)
◆消費者市民社会とは(消費者教育推進法第2条の2)
‧ 消費者が、個々の消費者の特性及び消費生活の多様性を相互に尊重しつつ、自
らの消費生活に関する行動が現在及び将来の世代にわたって内外の社会経済情
勢及び地球環境に影響を及ぼし得るものであることを自覚して、公正かつ持続可
能な社会の形成に積極的に参画する社会
◆消費者市民社会で求められる能力
○消費がもつ影響力の理解
‧ 自らの消費行動やそれに関連する生産・流通・消費・廃棄のプロセスが、環境や経
済、社会に与える影響を理解し、それに配慮して適切な商品やサービスを選択す
ることができる力
○持続可能な消費の実践
‧ 環境をはじめ広く持続可能な社会の必要性に気付き、その実現に向けて必要なラ
イフスタイルを実践するとともに、多くの人々と協力して取り組むことができる力
○消費者の参画・協働
‧ 消費者問題や社会課題の解決や、公正な社会の形成に向けて、個々の消費者が
主体的に社会参画することの重要性を理解し、周囲の人々と協働して行動するこ
とができる力
授業の流れを説明(2分)
‧ チョコレートがどのように作られているかを知り、フェアトレードについて学習することを説明。
‧ グループに分かれてみんなで話し合いながら進めていく旨を説明し、他の人の意見を非難したり、
否定したりしないよう促す。
アイスブレーキング(10分)
‧ グループ内でコミュニケーションをとりやすく、発言しやすい雰囲気をつくるため、簡単なゲームで
自己紹介をする。
(例)3つの真実と1つの嘘
各人がA4の紙に、自分自身について3つの真実と
1つの嘘を書く。それを読み上げて自己紹介した後、
「嘘はどれでしょう」と言い、他の人は一斉に嘘と思う
ものを指す。
A4の紙を4等分し、3つの真実と1つの嘘を書き、
中央には氏名(ニックネーム)を書いて○で囲む。
カカオができる過程(10分)
① 授業に興味を持ってもらうため、まず導入として「チョコレートは何からできているか?」、クイズで
スタート。
■答え■ ① カカオ、砂糖、ココアバター、粉乳など。
② 次に、カカオがチョコレートやココアの原料になるまでの過程を学習する。カカオの花が咲き、実
がなり、実を発酵・乾燥させて原料になるまでの過程の写真(スライドを印刷したもの)を各グ
ループに配り、その順番を考えさせ、並べさせる。
③ 答えをスライドにより紹介する。
〈使用教材〉スライド「チョコレートのできるまで」
南北格差の問題(12分)
① 世界地図(国名入りの白地図)を各グループに配り、「カカオの生産量の多い国」上位5カ国、
「チョコレートの消費量の多い国」上位5カ国を考えさせ、その国名を紙に書き出させる。
■答え■
●カカオの生産量の多い国 上位5カ国
①コートジボワール ②ガーナ ③インドネシア ④ナイジェリア ⑤ブラジル、エクアドル
●チョコレートの消費量(1人あたり)の多い国 上位5カ国
①ドイツ ②スイス ③オーストリア ④ノルウェー ⑤イギリス
〈出所:日本チョコレート・ココア協会ホームページ「世界主要国チョコレート菓子生産・輸出入・消費量推移」(資料:国際菓子協会/欧州製菓協会)〉
② 2色の色違いのシール5枚ずつを各グループに配り、「カカオの生産量の多い国」上位5カ国、
「チョコレートの消費量の多い国」上位5カ国について、それぞれ白地図にシールを張らせる。
〈出所:日本チョコレート・ココア協会ホームページ「世界国別カカオ豆生産量推移」(資料:国際ココア機関(ICCO)カカオ統計2013/14 第2判)〉
③ 次に、「カカオの生産量の多い国」と「チョコレートの消費量の多い国」の違いについてグループ
内で話し合いをさせて書き出させ、発表させる。
④ 最後に南北問題について説明し、南北に経済格差があることを理解させる。
貧困について考える(14分)
① 南北格差により、低賃金でカカオ農園などで働く人たちの「貧困」な暮らしについて、話し合いな
がら考えさせる。B紙(模造紙)を各グループに配り、B紙の中央に「貧困」と書かせる(貧困の文
字を○で囲む)。次に、各人にそれぞれ、貧困から連想される状況や生活について、線で結びな
がら次々にできるだけ多く書き出させる。このとき、他の人が書き出したものと関連があれば、そ
れと線で結ばせる。
【応用】 多くの考えや意見に触れるため、書き出したB紙を他のグループと交換し、
自分のグループでは出てこなかった言葉に☆印等を付けさせる。
② 各グループから、どのようなことが書き出されたかを
発表させ、貧困の中で生きていくことについて
考えさせる。
児童労働の実態(10分)
① 児童労働とは、「法律で定められた就業最低年齢を下回る年齢の児童(就業最低年齢は原則15
歳、健康・安全・道徳を損なう恐れのある労働については18歳)によって行われる労働」であるこ
とを説明する〈出所:国際労働機関ホームページ〉。教育の機会を妨げたり、精神的、肉体的、社会的成
長に害を与えたりする危険な労働をさし、家の手伝いやアルバイトとは違うことを理解させる。
② クイズにより「世界の児童労働の人口」は日本の人口よりも多く、いかに多いかを知らせる。
(例)3択「1億6800万人」「6800万人」「680万人」
■答え■ 1億6800万人
③ 児童労働の実態を読み聞かせる。
〈使用教材〉読み聞かせ資料「ものすごく大変な仕事をする小さな手」
④ 児童労働から抜け出すにはどうしたらよいかを話し合いをして書き出させ、発表させる。
【要点】低賃金での労働条件下で、教育の機会を奪われ、健康を害し、生活を向上させられない
という貧困の悪循環の中、児童労働から抜け出すことは困難であることを気付かせる。
フェアトレード(12分)
① フェアトレードの仕組み、どんな商品があるかについて説明する。
② フェアトレードにより「児童労働問題の解決」「経済的自立の支援」「自然環境の保護」につながり、
持続可能な社会を実現するという点において「私たちの暮らしと無関係でない」ことを理解させる。
また、一人の小さな力でも、多くの人が一歩を踏み出すことで大きな力になることを気付かせる。
〈使用教材〉スライド「フェアトレード紙芝居」
スライド「フェアトレードってなに?」
読み聞かせ冊子「私にできること~地球の冷やし方~」
児童労働をなくす歌による振り返り(10分)
① 伊勢市立小俣中学校の生徒が「児童労働をなくすため自分たちに何ができるか」を考え、作詞し
てできた歌「No More Cry!」のDVDを上映し、振り返りをさせる。
〈使用教材〉DVD「No More Cry!~児童労働をなくす歌~」
振り返りシートへの記入(10分)
① 各人にA4の紙を配布し、振り返り考えたことを書かせる。
② 書いたことを発表させて、「私たちの消費が社会を変える影響力を持っている」ことを理解させる
とともに、「社会を変えるために自分ができることがないか」を考えさせ、それを「行動に移すこと
が大切である」ことを気付かせる。