「パキスタン スタディーツアー JICA 研修生の勤務先視察」 帰国報告書

Pakistan Study Tour Report 2014
「パキスタン スタディーツアー
JICA 研修生の勤務先視察」
帰国報告書
MORI Keiko
1.はじめに
2013 年度 JICA 北陸管内青年研修員受入事業の中に 12 名のパキスタンからの研修生
のプログラムがありました。期間は 2013 年 12 月 3 日~12 月 20 日で、石川県での受け
入れ団体は、NPO法人石川県海外青年交流協議会(以下 海青協)でした。
海青協はプログラム作成から研修全般にわたってきめ細やかなお世話をされました。
そのプログラムの中に市民との交流の機会があり、国際交流協会からのお誘いで私も
参加させていただくことになりました。テーブルでお話が弾んできたころ、一人の研
修生が「日本家屋を見たい。
」と言いました。同じテーブルの方にお尋ねしたところ、
「どうぞ。
」と快くお引き受けくださいましたので、交流会終了後、二人の研修生があ
るお宅へお邪魔することになりました。おいしいカレーライスやコーヒーなどをいた
だき、お宅を案内していただいて、彼らはご機嫌でした。その時に集まった 4 名の女
性から「次は私たちが訪問したい。
」という希望があり、今回のスタディーツアーを計
画するに至りました。当初、夏に訪問するということで計画を立てましたが、その後、
複数の場所でのテロのニュースが流れ、治安面で不安があるということから、結果的
にはその時の 4 名の方はツアー参加を見送ることになり、1 名での参加となりました。
2.スケジュール
1 日目 小松 → 羽田 → 成田
2 日目 成田 → イスラマバード
3 日目 教育機関訪問
4 日目 研修生の代表とミーティング(訪問先の打ち合わせ等)
5 日目 パキスタン技術研修委員会 訪問
6 日目 パキスタン職業訓練局 訪問
7 日目 政府運営のショップ 訪問
イスラマバード → 帰国 (8 日目)
3.訪問記録
(1) パキスタン技術研修委員会(NAVTTC)
National Vocational & Technical Training Commission (NAVTTC) was established in
December 2005 as an apex body for Technical & Vocational Training and is attached
with the Prime Minister's Secretariat (Public).
H.P.より
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JICA研修員12名のリーダー Rehana さん と、Faisal さん は、研修当時同じ職場から派
遣されていましたが、現在は、二人とも、違う職場で働いており、彼らに、NAVTTCに案内
を し て も ら う こ と は で き ま せ ん で し た 。 そ の た め 、 彼 ら の 上 司 で あ る Abdul さ ん
(Director General) のオフィスでお話をお伺いしました。Abdul さん のほかに、もう一
人ダイレクター(女性)が呼ばれ、大学教授で、 Faisal さん の手配により、研修生の訪
問先に同行してくださった
Atiq 先生の4名でお話をすることになりました。
その中の一人である女性のダイレクターは、かつて東京でJICA研修を受けたことがあり、
企業訪問もしたという話をしてくれました。日本の印象を尋ねると、日本人は、”No.”と
いうのに時間がかかるとおっしゃっていました。「いいえ。」というために、長い話が始ま
り、よくよく聞いてみると”No.”だということがわかるとおっしゃっていました。
Abdul さん は二人について、「彼らは、現在はNAVTTCで勤務していないが、研修生とし
て日本から帰国した後、数か月はNAVTTCで勤務し、それぞれの部署で多くの有益な成果を
残してくれた。
」と評価をされました。
(にこやかなお顔が、真剣なお顔になりました。
)
現地でのミーティングの中で、研修についての効果を質問した時に、石川県内で訪問し
た企業の中で、彼らはハローワークにとても興味を覚え、研修終了後は、パキスタンでも
そのシステムを導入しようと活動しました。このアイディアは、ほかの職員に引き継がれ、
システム導入に向けて、現在、プロジェクトが動いているということでした。
(2) パキスタン職業訓練局 (NTB)
イスラマバードから参加した研修生の3人目は、Hafiz さん で、彼は、現在も同じ職
場でアシスタント・ダイレクターとして勤務しています。彼は、先生たちを指導する立場
でもあるということで、学生だけでなく、先生たちへの講義もしています。
NTBでは、研修生だった Hafiz さんの案内で Arifullar さん (Director) のオフィスを
訪問しました。こちらのダイレクターも、かつては研修生だったそうで、NTB内を見学する
前に、ご自分が研修生だった時の思い出をお話しくださいました。一番印象深かった事柄
は、研修内容より、初めから支給された経費の袋だったということでした。研修生を信用
しているからと、滞在期間全部の必要経費をはじめに手渡されたことに驚いたとおっしゃ
っていました。そして、日本は何かを落としても、それが戻ってくる、それが現金であっ
ても同じであることに、とても驚いたということを、Hafiz さんの前で、力説されていま
した。実際、 Hafiz さんは、研修中にタクシーでお財布を忘れたことがありましたが、数
時間後に手元にそのまま戻ってきたと、ダイレクターに話しました。ダイレクターは「だ
から、言っただろう。
」と得意気でした。ダイレクターも、研修の最後にプレゼンテーショ
ンを作成し、発表したそうですが、なかなか力作のビデオだったので、ぜひ日本へ持ち帰
ってほしいとおっしゃっていました。何年も前に作成したビデオだから、結果的には、自
宅で見つけることができなかったようです。
Hafiz さんの説明によればNTBではプラクティカルトレーニングが行われています。
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①
カリキュラム 20%
②
プラクティス 80%
Hafiz さんは、CNC レザーマシーン(サウスコリア製)、CNC ミリングマシーン(台湾
製)といった大型機械の使い方を学生たちに指導しています。オペレーション技術を習得
した学生たちが、卒業して、それぞれの地域へ帰って行き、そこで、核となって、大型機
械を動かしていくという簡単な流れを説明してくれました。
一時代前までのNC(Numerical Control)は、データ解析、演算、モ
ータ制御などをそれぞれ個別に回路を創り、それらを組み合わせた簡
単な制御装置だったということですが、CNC(Computerized Numerical
Control)は、演算やモータ制御用にマイクロコンピュータが使われる
ようになったもので、現在は、こちらが主流。
首都にある、大型の機械が地方にもあるのかと質問したところ、機械はあるとのことで
した。機械はあるがそれを動かす人がいないので、まず、NTBで訓練するのだということで
す。地方では、日本のODA予算で機械を購入したが、日本人が帰国したあとは、動かせる人
がいないので、放置されているという話をよく聞きます。あるいは、操作はできるが、故
障した機械を修理することができないため、放置されているという機械を見たことがあり
ます。しかし、NTBを卒業した学生がクラスターとなり、地方で活躍することによって、こ
のように放置された機械は、減っていることでしょう。
Hafiz さんは、一部屋一部屋、機械についての詳しい説明をしてくれました。
研修で学んだことを、言葉にして表すことは難しそうでしが、多くの手ごたえをつかみ、
帰国後は、職場で自分を通して、それらを生かして国のために仕事をしているという自信
が感じられました。
<< It was my great honor to meet the lovely people of Japan and I am so
impressed by their honesty and discipline in their lives. And also I learned
the dignity of work from them.
Mr. Hafiz >>
NTBでの授業風景 1
NTBでの授業風景 2
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NTB 組織図
韓国製、台湾製の機械
集積回路の作り方を学習する教室
(3) その他
訪問前の打ち合わせでは、研修生のリーダーだった Rehana さんの案内で現在の勤務先を
訪問することになっていましたが、実際に会って話をすると、セキュリティが厳しく、レ
ターがなければ施設内へ入ることはできないと言われたので彼女の現在の職場は訪問せず、
研修当時に勤務していたところのみを訪問しました。
偶然、土曜日に彼女のいとこの結婚披露宴があり、日本人が来ていると聞きつけた花嫁
さんのお父様が、私を招待してくださいました。
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この写真は数日間続く披露宴の一日です。
この会場で、話しかけてくださった方がい
らっしゃいました。日本人の女性でした。中
国人のご友人に誘われて、出席されたそうで
す。
「1週間以上も続くパキスタン人の結婚式」
というコラムを書いている人がいらっしゃい
ますので、URL をご紹介させていただきます。
http://www.okwave.com/ja/culturezine/psychological_analyses/1601/1601
4.おわりに
何度も何度も渡航しているパキスタンですが、今回は空港を降りたときに何かしら普段
とは違う空気を感じました。セキュリティが今までになくタイトで、駐車場は車や人で
ごったがいしていました。カメラを出して写真を写せるような雰囲気ではなかったので、
ストレートに、あらかじめ手配してあった空港ピックアップの車に乗り込みました。
日曜日は、政府機関がお休みであるため、
訪問先の確認など、日程の調整をしました。
12月16日、北西部ペシャワールでタリバン系
の武装勢力が、陸軍が運営する学校を襲撃し、
少なくとも141人(主にその学校の生徒)が死
亡したと報道された約10日後のパキスタン訪
問であったこともあり、先生宅訪問を含め、
教育機関訪問は中止しました。現地では、こ
の事件を受け、ガバメントスクールはすべて
冬休みを前倒ししてクローズし、大学も数校
Rehana さんの勤務先
を残して、やはりクローズしたとのことでした。
今回、教育施設を訪問できなかったことから、
ノーベル平和賞を受賞したマララさんについて、
数人の人たちにお伺いしました。パキスタンでは
彼女について良い印象を持っていない人も多い
ということがわかりました。インドの人権活動家
カイラシュ・サティアルティさんと力を合わせて、
両国を平和な国へと導いてくれることを祈って
おります。
NAVTTC ダイレクターのお部屋を訪問中
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