2015年6月号 事業承継税制の拡充 PDFを開く

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2015.
6
Business Column
事業承継税制の拡充
平成25年度税制改正により、事業承継税制
(非上場株式の相続税・
贈与税の納税猶予制度)
の適用要件の緩和や手続きの簡素化など
実務上の留意点
が行われました。これらの改正事項は、原則として、平成27年1月1
日以後に相続若しくは遺贈又は贈与により取得する非上場株式等
に係る相続税又は贈与税について適用されます。
(1)
先代経営者の急死でも納税猶予の適用が可能
事前の経済産業大臣の確認制度が廃止されたことによって、先
代経営者が急死した場合でも対応が可能になりましたが、後継者
は相続開始から5か月以内に代表者に就任し、8か月以内に経済産
事業承継税制の改正概要
業大臣の認定を受ける必要があります。
(1)
事業承継税制とは
1 非上場株式等についての相続税の納税猶予及び免除の特例
後継者である相続人等が、相続等により、経済産業大臣の認定
を受ける非上場会社の株式等を先代経営者から取得し、その会社
を経営していく場合には、その後継者が納付すべき相続税のうち、
その株式等(一定の部分に限ります。)に係る課税価格の80%に対
応する相続税の納税が猶予され、後継者の死亡等により、納税が
猶予されている相続税の納付が免除されます。
非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除の特例
2
後継者である受贈者が、贈与により、経済産業大臣の認定を受
ける非上場会社の株式等を先代経営者から全部又は一定以上取
得し、その会社を経営していく場合には、その後継者が納付すべき
贈与税のうち、その株式等
(一定の部分に限ります。)
に対応する贈
与税の全額の納税が猶予され、先代経営者の死亡等により、納税
が猶予されている贈与税の納付が免除されます。
継税制の適用を受けようとする場合には、
「 乗換え届出書」
を提出
することによって、改正後の規定の適用を受けることができます。
ただし、乗換え届出書を提出しても、次の改正項目は遡って適用
されません。
1 親族外への承継に対する納税猶予の適用
相続税の納税猶予税額計算時の債務控除を他の財産から優先
2
的に控除
(3)
「資産管理会社」の要件
事業承継税制は、いわゆる資産を承継するための会社「資産管
理会社」
に該当した場合、適用対象外となります。改正により、適用
要件がさらに厳格になったため留意が必要です。
納税猶予の適用を受けるために、事前に会社そのものの適用要
主な改正点は、以下のとおりです。
概要
事前確認制度の廃止
制度利用前に受ける
「経済産業大臣の確認」
が廃止
後継者の要件
後継者は現経営者の親族に限定されていたが、親族外承継も対象に
雇用8割維持要件の
緩和
雇用の8割以上を
「5年間毎年」
維持することとされていたものが、
雇用の8割以上を
「5年間平均」
で評価することに変更
納税猶予打切りリスクの
緩和
経営承継期間
(原則5年)
経過後であれば、経営承継期間の利子税
が免除されることに
事業の再出発に配慮
民事再生、会社更生、中小企業再生支援協議会での事業再生でも納
税猶予額を再計算し一部免除されることに
役員退任要件の緩和
先代経営者が贈与時において役員を退任しなければならなかった
ものが、代表権を有していなければよいことに変更
債務控除方式の変更
旧事業承継税制適用者が、平成27年1月1日以後の改正事業承
(4)
事前の準備
(2)
主な改正内容
事項
(2)
旧事業承継税制適用者の新法への乗換え
納税猶予税額の計算において、被相続人の債務及び葬式費用を相
続税の課税価格から控除する場合、非上場株式等以外の財産の価
額から先に控除
件を満たしておく必要があります。
5か月以内の代表者就任が間に合わないことも考えられるた
め、贈与税の納税猶予の適用も検討に入れて考慮する必要があり
ます。
その他、事業承継の形態が多様化し、20年前は親族内承継が約
9割でしたが、近年は親族外承継が約4割と増加傾向であるため、
親族外承継を円滑化するため、経営承継円滑化法の一部改正が今
年の3月に閣議決定され、
「 法律施行規則の一部を改正する省令」
は、4月1日から施行されていますので、
こちらも併せてご確認くだ
さい。
※事業承継税制について、詳しくは国税庁のホームページ
(https://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/sozoku/hijojo_aramashi/pdf/all.pdf)
を参照してください。
※本記事に記載の情報は平成27年5月現在の法令・税制に基づいて作成しています。今後の改正等により取扱いが変わる場合がございます。個別の取扱い等につきましては、所轄の税務署へ必ずご相談・ご確認ください。