リジョナルジェット市場の現状と将来展望 YS-11の後継機としてわが国

(公財)航空機国際共同開発促進基金 【解説概要 15-2-1
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リジョナルジェット市場の現状と将来展望
YS-11の後継機としてわが国が開発を目指しているYS-X計画でもその可能性
を検討しているリジョナルジェット市場が、近年大きく成長している。
本資料では、リジョナルジェット機の代表的メーカーである Bombardier 社及び Embraer
社の見解も踏まえて、安価な機体価格と安価な運航費が絶対要件のリジョナルジェット機
の市場について、その現状と将来展望について述べる。
1.リジョナルジェット市場の現状
米国やヨーロッパにおけるリジョナルエアラインの運航規模は、フルサービス・エアラ
インのそれをはるかに超える勢いで成長を続けている。
米国では、1978年の航空輸送自由化後、ハブ・スポークシステムを構築してきた米
国の大手エアラインが、乗客を出発地から目的地までコントロールするために、リジョナ
ルエアラインによる小都市からハブへの乗客のフィードを必要とし、コードシェアリング
パートナーとしてこれらリジョナルエアラインを傘下に収め、ハブ・スポークシステムを
構成する一員としてオーガナイズしたことにより、リジョナルエアラインの運航規模が急
速に成長してきた。このように、リジョナルエアラインの運航は、大手エアラインへのフ
ィードを主たる目的としているため、大手エアラインの成長率より高い成長であっても、
そのビジネスサイクルは大手エアラインのそれと同期したものになっている。
但し、2002年は若干特異な年になっている。2001年9月11日の米国同時多発
テロ事件(以下「911事件」
)の影響で、大手エアラインの旅客の伸びはマイナスになっ
た。当然リジョナルエアラインもこの影響を受けて、大きな成長は期待できないはずであ
った。加えて、911事件を契機に極めて厳重になった空港での保安検査も、短距離運航
であり、自動車による移動という代替手段のあるリジョナル運航にはマイナスに影響する
はずであったが、実際は、2002年の輸送量シェア(旅客数ベース)で約15%を占め
るまでになった。
需要低迷の中で、コスト高騰がコントロールできない状態となった大手エアラインと違
い、小型機材で運航しているリジョナルエアラインは、そのコストメリットを十分に生か
して積極的な経営を行ったこと、多くの大手エアラインが労働契約の不可抗力条項を適用
し、需要の少ない不採算路線を積極的にこれらのリジョナルエアラインに移管したこと、
がこの高成長の要因と考えられる。
このことは、リジョナル市場の将来が、大手エアラインの経営方針や経営環境、さらに
は労働組合との関係によっても大きく影響されることを示唆している。
ヨーロッパでも、1990年代に入ってルフトハンザ航空が、Canadair Jet を用いてド
イツ国内を中心にリジョナル運航を始めたこともあり、リジョナルエアラインの運航は急
成長を遂げてきており、リジョナルエアラインの輸送量シェア(旅客数ベース)は200
2年で20%弱になっている。
リジョナル市場の世界的な分布を、提供座席数で見ると、米国・カナダの北米地区が5
0%以上を占めており、北米とヨーロッパで全世界の80%を占めている。
-1-
リジョナル市場の分布(19席―120席機の提供座席数比率)
Africa &
Middle
Asia/Pacific (6%)
China (1%)
Latin America &
Caribian (9%)
North America
(54%)
Europe (26%)
2.リジョナル路線のジェット化
当初、ターボプロップ機で運航されていたリジョナル路線は、1990年代初めに
Bombardier 100、続いて Embraer 145 や Bombardier 200 等の適切なサイズのリジョナルタ
ーボファン機が出現したこともあり、急速にジェット化していった。
米国では、1995年始めに76路線であったリジョナルターボファン機の運航は、2
002年末には1874路線にまで拡大した。
ヨーロッパでは、1990年代前半にルフトハンザ航空傘下の Lufthansa Cityline が、
ドイツ国内でジェット機(Canadair Jet/CRJ 100)による運航を始めたこともあり、既に
1995年には104路線でジェット運航されていたが、その後も着実に増加し、200
2年には、1070路線がジェット機で運航されている。
従来は、平均路線距離が200マイル程度で、旅客密度が低く、高い旅客イールドが期
待できないリジョナル運航では、ターボファン機の高速はメリットとならず、燃費が低く
運航コストの安いターボプロップ機の運航が最適であり、ジェット化することは極めて困
難だと言われてきた。
しかし、ターボファン機の天候に左右されない快適な乗り心地がごく当然の要素と考え
ている航空旅客にとって、短距離区間とはいえターボプロップ機の低空・悪天候中での運
航は耐えられないものとなり、乗客は、リジョナル運航であってもジェット機の運航を求
めるようになってきた。これに加え、小型ターボファンの燃費が改善され、ジェット機の
生産性が著しく改良され、運航コストがターボプロップ機と大差ない小型ターボファン機
が出現したこと等が理由で、1990年頃からリジョナル運航のジェット化が進んだ。
リジョナル運航のジェット化を示すデータとして、米国でのターボプロップ機とターボ
ファン機の運航を比較すると、2003年現在のターボファン機による提供座席数が、タ
ーボプロップ機による提供座席数を若干上回るまでになってきた。2000年では86%
がターボプロップ機によって提供されていた運航便数は、現在は63%がターボプロップ
機で、37%がターボファン機によって提供されており、提供座席数では、座席数が多い
ターボファン機の方がターボプロップ機を上回る結果(ターボファン機52%、ターボプ
-2-
ロップ機48%)になっている。
しかしリジョナル路線の多くは、依然としてターボプロップ機で運航されている。20
02年末のデータによれば、米国でリジョナル運航に使用されている機材は約2400機
あり、その46%はターボプロップ機である。ヨーロッパでのジェット化はさらに遅れて
おり、
リジョナル機材の約1700機の内、
ターボファン機は21%の356機しかない。
路線距離とターボプロップ機/ターボファン機の運航の関係を見ると、ターボプロップ
機の殆どが500マイル以下の路線で運航されており、その大半は300マイル以下の路
線に限定されている。これに対して、ターボファン機は1000マイル程度の路線まで運
航されているが、そのピークは300マイル近辺にあり、コスト的に有利であるといわれ
ている短距離の路線でもターボプロップ機が積極的に使われていることがわかる。このこ
とは、現在短距離で運航されているターボプロップ機も、将来ターボファン機にリプレー
スされる可能性が多分にあることを示唆している。
又、リジョナル市場へのターボファン機の進出は目覚しく、ターボプロップ機の独占的
路線と言われていた200マイル以下の路線にもターボファン機が使われ始めている。し
かし、このような短距離区間での運航は、運航経済性の観点から、比較的座席数が大きい、
即ち、座席あたり運航コストでターボプロップ機に十分競争できる比較的大きなターボフ
ァン機が中心となっている。このことは、小型のターボファン機が、ターボプロップ機を
駆逐して、リジョナル運航の主力になるためには、ターボプロップ機に近い経済性を持つ
ことが必要なことを示している。
一方、70~100席程度の比較的大きいリジョナル運航用ターボファン機は、大手エ
アラインの労働協約の Scope Clause に大きく左右されるため、その将来については不透明
なところが多い。
3.米国リジョナルエアラインの動向
米国のリジョナル運航は、以下にその概況を示す通り、世界の過半数を占めており、又
世界リジョナル市場の成長の先駆となっている。
3.1
概況
(1)輸送量
2002年の輸送旅客数は9840万人であり、同年の旅客数が9537万人で
あった日本の国内線輸送旅客数に匹敵する規模であった。又、2001年に比較し
て18.8%の旅客数の増加があった。
この10年間の旅客の伸びは、年平均7.2%となっており、特にこの5年間は、
2001年の911事件を契機とした落ち込みにも拘らず、年平均8.2%と高い
伸びを示しており、米国の国内航空輸送に占めるシェアも約15%となっている。
リジョナルエアラインの乗客の65%はビジネス客と言われており、ハブ空港へ
のこれらのビジネス客のフィードに大きく貢献している。
2002年の有償旅客マイルは、328億人マイルで、日本の国内線の515億
人マイルに比べて小さく、平均区間距離が、日本の国内線運航より短いことを示し
-3-
ている。又2001年に比し27.3%伸びており、過去10年間の年平均伸び率
は13.2%、過去5年間では16.5%であり、この急速な成長の結果、米国国
内航空輸送に占めるシェアも7%近くになっている。
(2)運航概況
2003年1月1日時点で、リジョナルエアラインは米国内の643の空港で運
航しており、この内466空港ではリジョナルエアラインのみが運航している。
2002年の運航便数は441万便であり、この10年間、運航便数はほぼ横ば
い状態にある。平均区間距離は、近年のリジョナルジェット機の導入に伴って急速
に増大しており、この5年間で44%長くなっている。これは、この運航区間距離
の増大と次項の機材のジェット化・大型化がリジョナルエアライン輸送量の急成長
を支えていることを示している。
(3)機材(ジェット化・大型化)
2003年1月1日現在で、米国リジョナルエアラインが乗客運航に供している
機材の総数は2385機であり、その半数近くがリジョナルジェット機である。
保有機材の内訳-2003年1月
Turboprop
(31-70 seats)
Turboprop
(20-30 seats)
Regional Jet
Turboprop
(10-19 seats)
>10 seats
各々の機材カテゴリーには、次の機材が含まれる。
a.リジョナルジェット機
:CRJ-100/-200,CRJ-440, ERJ-135,ERJ-140,
ERJ-145, Fairchild-328, AVRO-85 等
b.31-70席ターボプロップ機:SAAB340, Dash 8, ATR 42, ATR 72 等
c.20-30席ターボプロップ機:EMB 120, J 41 等
d.10-19席ターボプロップ機:Beech 1900, J 32 等
e.10席未満の機材
:Cessna 402 等
リジョナルエアラインに使われている機材数は、1990年代中頃に一時減少し
たが、リジョナルジェット機の積極的な導入が始まった1990年代後半から急増
してきた。この間の運航便数はほぼ横ばいであったので、この機数の増加(過去5
年間で13%)とジェット化による区間速度の増大が、運航区間距離の増大(過去
5年間で44%)を支えたと考えられる。
それまで微増であった平均座席数は、リジョナルジェット機の導入が本格的にな
-4-
った1990年代後半から急増している(過去5年間の伸びは34%)
。今後、小型
のターボプロップ機の退役が進み、リジョナルジェット機の導入が積極的に行われ
れば、平均座席数の増大は今後も続くこととなろう。
3.2
リジョナルエアラインの現況
(1)構成
2002年の米国のリジョナルエアラインは91社であり、近年、その数は減少
傾向にある。これは、これらのエアラインが、大手エアラインの運航システムへの
フィーダーとして系列化されて、統合・合併が進み、より効率的な経営形態を求め
てきた結果であると考えられる。(後述)
これら91社の内、トップ10社といわれているのは次の通りである。
a.American Eagle Airlines:289機(内ジェット機141機)の機材を有
する世界最大のリジョナルエアライン。アメリカン航空の100%子会社
b.ExpressJet Airlines:世界最大のリジョナルジェット機の運航エアライン
(2003年末で224機保有予定)。コンチネンタル航空が53%保有。
c.Comair:デルタ航空の100%子会社で、120機以上のCRJを運航。
d.SkyWest Airlines:122機(2002年末。内、CRJ67機)を運航。
e.Atlantic Southeast Airlines:デルタ航空の子会社。121機(内、CR
J102機)を運航。
f.Atlantic Coast Airlines:142機(内、ジェット機112機)を運航。
g.Mesaba Airlines:106機(内、AVRO Jet 36機)を運航。
h.Mesa Airlines:69機(内、ジェット機57機)を運航。
i.Horizon Airlines:アラスカ航空の子会社。60機(内、ジェット機17
機)を運航。
j.Air Wisconsin:53機のジェット機を運航。
2002年上半期のデータによれば、これらの10社で米国のリジョナル運航の
約80%を提供しており、これらのエアラインが米国リジョナルエアラインを代表
するエアラインであると考えても差し支えない。(これら10社は、旅客の74%、
有償旅客マイルの81%を輸送している。トップ20社では、有償旅客マイルの9
7%を輸送している。
)
(2)主要エアラインとの提携
現在の米国リジョナルエアラインは、主要エアライン(米国で Major/National
Airline と呼ばれているもので、アメリカン航空やユナイテッド航空のような大手
エアラインにローコストエアラインなども加えた米国の主要エアライン)との提携
運航(主要エアラインの便名を付け、スケジュールを合わせ、主要エアラインへの
フィードを目的として行う運航)で成立していると言っても過言ではない。
この提携運航は、低い人件費やオーバーヘッドで安価な運航が提供出来るが、限
定された地域での短距離運航に専念せざるを得ず、全国的なサービスネットワーク
を持たないリジョナルエアラインと、自らのコストレベルでは乗客需要密度の低い
-5-
路線の運航が経済的に不可能な主要エアラインの利害が完全に一致したビジネスモ
デルとして、米国航空輸送自由化後、成長を遂げてきた。特に近年、ハブ・スポー
クシステムの運航費高騰に悩む大手エアラインが、そのハブ空港への小都市からの
旅客フィードを目的として、この提携運航を積極的に推進している。提携関係は、
リジョナルエアラインが、主要エアラインが決定した路線に、定められた機材を、
指示されたスケジュールで運航し、その対価として定価の運航費の支払いを受け取
ると言う形態が大勢を占めるようになっている。
2003年1月現在、40社のリジョナルエアラインと主要エアラインとの間に
55のコードシェアリング・アグリーメントがあり、リジョナルエアライン搭乗客
の98%は、このコードシェアリング便を利用している。コードシェアリングを行
っているリジョナルエアライン40社の内、13社は主要エアラインの100%子
会社であり、2社についても主要エアラインがその一部を所有している。
提携の形態は、次のように分類できる。
a. 規模の大きいリジョナルエアラインを自らの子会社として設立し、それ
にリジョナル運航を行わせる。
(この場合でも、若干の特定ハブへのフィー
ドは他社に依頼する。
)
アメリカン航空、コンチネンタル航空、アラスカ航空、ミッドウエスト
航空 等
b. 一部を自らの子会社の運航とし、資本関係のないリジョナルエアライン
との連携運航も行う。
デルタ航空(子会社2社で75%の輸送を行っている。)、ノースウエス
ト航空、USエアウエイズ 等
c. 提携先のリジョナルエアラインと資本関係を持たないで提携する。
ユナイテッド航空、エアウエスト航空、エアトランエアウエイズ 等
上述の提携に加えて、主要エアライン間での提携(例:コンチネンタル航空、ノ
ースウエスト航空、デルタ航空の提携)があり、さらに、デルタ航空やノースウエ
スト航空がロスアンゼルスでアメリカン航空の100%子会社である American
Eagle のフィードを受けるなど、コードシェアリング等の提携関係は複雑なものに
なっており、資本関係を超えてより利害に忠実な提携関係へと移行している。
さらに、主要エアライン(特に大手エアライン)の中には、近年の大不況に伴う
運航機材の縮小に伴って発生した余剰パイロットのレイオフを組合に合意させる手
段として、リジョナルエアラインにリジョナルジェット機を調達、運航させ、その
運航収入を保証し、余剰パイロットをリジョナルエアラインに移管してこれらの運
航に従事させるという、人事対策がらみの提携も合意されている。例えば、Mesa Air
Group(傘下に、Mesa Airlines, Air Midwest, Freedom Airlines を持つ独立した
リジョナルエアライングループ)では、現在、アメリカウエスト航空、ユナイテッ
ド航空、フロンティア航空、USエアウエイズとの間で、収入保証付きで、合計1
49機のリジョナルジェット機を保有し、提携運航する契約を有していると伝えら
れている。
-6-
3.3 将来展望と問題点
米国リジョナルエアラインの急成長を支えてきた主な要因は、次の通りである。
(1)新しい市場への進出(新しい地方コミュニティーへの航空輸送の提供)
、
(2)主要エアライン路線網の補完
(3)主要エアライン路線の割譲
(4)既存リジョナル路線での便数増加
リジョナルエアラインでのジェット化が進み、快適性など主要エアラインのサー
ビスに近い航空輸送が提供できるようになった結果、主要エアライン路線網の一部
としての役割も定着し、旅客需要の低い主要エアライン路線の割譲運航も容易に行
われるようになっている。さらに、深刻な不況下にある主要エアラインの人事対策
の一環としてもこの路線割譲が加速されており、今後共、リジョナルエアラインの
成長が続くことは間違いない。
連邦航空局(FAA)の予測によれば、2014年には、
● 輸送旅客数
: 1億7400万人(9840万人-2002年)
● 有償旅客マイル: 750億人マイル(327億人マイル-2002年)
● 保有機材数
: 4034機(2385機-2002年)
になると予測されている。12年間の年平均成長率は、旅客数で4.9%、有償旅
客マイルで7.2%であり、主要エアラインの平均成長率5%(有償旅客マイル)
よりかなり高い成長が予測されている。
しかし、これらの成長の妨げと考えられる以下のような問題点もある。
(1)新しい航空輸送の対象となる地方コミュニティーでの滑走路のジェット機
運航への対応能力不足
(2)運航便数の増大に対応する航空管制能力の不足
(3)航空保安確保のための費用などの高い費用負担
(4)主要エアラインとパイロット組合との“スコープクローズ(*)
”条項の影
響
(*)スコープクローズは、従来大きな力を持っていた大手エアラインのパイロ
ットの権利を守るために、パイロット組合とエアラインとの労働協約の中に設けら
れた条項であり、大手エアラインが、傘下のリジョナルエアラインに移管できる運
航や機材についての制限を定めたもので、これによりパイロット組合は、賃金の安
いリジョナルエアラインのパイロットへの運航移管を制限し、大手エアラインのパ
イロットの権利を確保しようとした。最近では、大手エアラインの経営危機に対し
て収益性向上のために賃金の安いリジョナルエアラインへの路線移管を進めようと
する大手エアラインと、賃金カット等への合意と引き換えに、スコープクローズを
よりタイトにしようとする組合との間で問題化している。このため、大手エアライ
ンと組合の力関係で合意されるこのスコープクローズの将来は不透明であり、リジ
ョナルエアラインの将来を予測する上でも大きな障害となっている。
6月、ローコストエアラインの一つである JetBlue Airways が、現有のA320
に加え、ERJ190 を100機(別にオプション100機)を発注すると発表した。又、
ローコストエアラインの先駆けであるサウスウエスト航空も、B737より小さい
-7-
機材モデルの導入を検討していると伝えられている。これらのローコストエアライ
ンが、さらに経営規模を拡大し、低い運航コストを維持していくためには、大手エ
アラインとの直接対決を避け、より需要密度の低い路線での運航を広げていくこと
が必要である。このためには、フライト当りの運航コストが安い小型の機体に移行
せざるを得ない。今まで単一の機材モデルで運航コストの低減を図ってきたローコ
ストエアラインが複数の機材モデルを導入することは大きな経営方針の転換である。
今後ローコストエアラインは、需要密度の低い路線への進出を図る手段として、
JetBlue Airways のように自らが小型の機材を運航すること、AirTran Airways のよ
うにリジョナルエアラインとの提携で運航する、等が予想される。いずれにしても、
これらの動きがリジョナルジェット機の将来に影響をもたらすことに間違いない。
又、主要エアライン自らがリジョナルジェット機を保有、運航するという新しい
展開も見られ、将来リジョナルエアラインは、別のエアライングループとして存在
し、コードシェアリングなどにより主要エアラインの路線網の一部として存在する
と言う従来のビジネス形態が変化していくとも予想される。
しかし、たとえビジネス形態に変化があったとしても、米国でのリジョナルジェ
ット機(特に70-90席)の将来の必要性に変わりはなく、リジョナルジェット
機の導入は今後とも積極的に行われるものと考えられる。
4.需要動向と将来機材予測
4.1 需要動向
CRJ100/200(50席)によって急成長したリジョナルジェット機の市場で、最近
機材の大型化が進んでおり、その需要は70-90席機に大きくシフトしている。
ローコストエアラインの路線拡大に伴って、リジョナルエアラインの伝統的な路
線であった地方・小都市路線にもローコストエアラインのサービスが浸透してきた
結果、旅客イールドの低下が進み、リジョナルエアライン運航環境も、より座席当
りのコストの安い機体を求めざるを得なくなってきた。又、主要エアラインとの提
携運航がリジョナルエアラインの主要なビジネスとなり、単なるコードシェアリン
グを超えて、主要エアラインによる収入保証や運航コスト負担等がその提携条件と
なってきたため、リジョナル運航も低運賃・大量輸送にシフトせざるを得なくなっ
てきた。50席と70-90席機では、座席数の違いが40%前後あり、座席当り
コストの違いも20-30%を超える。リジョナル路線での旅客イールドの低下が
進めば、座席当りコストの低い大型機に需要が移行することは明らかである。
このリジョナルジェット機需要の大型化は今後も続くものと考えられ、当面のリ
ジョナルジェット機の需要は、70-90席機が中心となろう。又、需要密度の低
い路線への航空サービスの提供も航空輸送の将来にとって必須であり、より快適な
航空輸送を求めて、これらの需要密度の低いリジョナルマーケットでもジェット化
が強く求められることは間違いない。
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4.2 将来の機材予測
長期的には、経済性の極めて高い第2世代の小型リジョナル機の出現が強く求め
られ、この実現によって、リジョナル路線のジェット化は新しい展開を迎えること
になる、と考えられる。
現在入手出来るいくつかのリジョナル機の将来予測を比較すると、下表のように
なる。
リジョナル機納入機数予測の比較 (2003年―2022年)
機種
予測会社
ターボプロップ機
ターボファン機
60席未満
60席以上
合計
Boeing
-
-
-
4,370
Embraer *
-
3,510
2,590
6,100
Walsh Aviation **
1,000
-
-
4,540
JADC
1,440
2,929
2,685
5,614
(注)*30-90席ターボファン機の予測、 **14年間の予測を20年に延長
リジョナルターボファン機の定義については、JADCの“B717より小さい
ジェット機”という定義を用い、およそ100席以下の機材と考えたが、Embraer
社の予測では90席を切れ目としているために、100席以下と考えるとその予測
機数は若干増える可能性がある。
Walsh Aviation の予測では、2016年までの14年間しか公表されていないた
め、14年間予測の年平均を単純に20年間に延長した数値であり、機材の定義も
リジョナルエアラインに納入される125席までの機材ということになっているた
め、厳密には、Apple to Apple の比較ではない。(但し、リジョナルエアラインに
納入される機材は、殆ど100席以下と考えられるので、このことが大きな違いを
生むことはないと予測する。
)
以上のように、今後の20年間で4500ないし6000機程度のリジョナルタ
ーボファン機が必要となると予測されているが、60席未満の小型ターボファン機
については、その運航経済性がターボプロップ機のそれに匹敵できるものになるか
否かによって、実際の販売は大きく左右されるであろうし、60席以上の大型ター
ボファン機については、大手エアラインの労働契約の先行きに大きく左右される可
能性が高い、と考えられ、今後ともその動向を注視してゆく必要がある。
KEIRIN
この事業は、競輪の補助金を受けて実施したものです。
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