「後継者を育てよう」

「後継者を育てよう」
高橋 正夫
写真 佐賀マンション
近年、「キャリア教育」という「言
写真 寿マンション(南西から)
「フリーター」であった。今の子ども
ろうか。 葉」が教育界で氾濫している。
達は将来、ちゃんとした職業に就い
このような状態が続くと、これか
若者の就業に対する定着率が低下
て仕事をしたいと考えている。能力
らの構造設計界はどうなっていくの
し「七・五・三」と言われる離職年
重視を唱えて、即戦力の人材を求め
であろうと不安を感じるのは私だけ
数が取りざたされているのである。
る社会風潮こそ改めるべきではない
なのだろうか。私達には、後継者を
「根気がない」
「意欲がない」
「コミ
だろうか。我々の時には人材は会社
育成する義務があるのではないだろ
ュニケーション能力がない」など、若
が育てるという考えがあったように
うか。
者に対する社会適合性の欠如を一方
思う。
今、建築界では若手の技術者が各
的に言う人がいる。しかし、私はそ
我々の業界も、姉歯建築士による
団体の青年部を組織し、技術の勉強
うは思っていない。
耐震偽装事件の影響を受け、建築基
会を盛んに行っている。
今年の初めから文部科学省の中央
準法が改正され、確認申請作業が増
構造設計に係わる若手が少なくな
教育審議会キャリア教育特別部会が
大し、
混乱を起こした時期があった。
っている今、我々の後継者が夢と希
行われており、その中で小、中、高
写真の建物は、建築基準法の改正前
望をもって構造設計に取り組める環
校及び大学における子ども達に対す
後に苦労しながら設計をした時の建
境作りと、
「育てる」という決意こそ
るキャリア教育のあり方が協議され
物である。
早急の課題ではないかと考える。
ている。実は、私もその特別部会の
近年、世界同時不況により経済が
委員として参画し、意見を述べさせ
悪化し、建設業界が不毛の時期を迎
ていただいている。
えようとしている。
今の子ども達は将来の夢も希望も
このような中で設計業界も人員整
持っているし、コミュニケーション
理が行われ、若手設計士の解雇が多
能力も高いものがある。全国高等学
数発生したという話を聞くことが増
校PTA連合会で高校生にアンケー
えた。新卒者の内定取り消しの話も
トを取った結果、将来なりたくない
昨年マスコミを賑わせた事は皆さん
職業の上位を占めたのが「ニート」
の記憶にも残っているのではないだ
(次回は新町 了氏)
(たかはし ・ まさお)
1950年生まれ 大分県出身
73年日本大学理工学部卒
現在、日構設計代表取締役
一級建築士 構造設計一級
建築士 建築構造士 趣味
はゴルフ、テニス
2009.12
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