第3回 京都在宅医療多職種連携研修会 「末期がん患者の疼痛ケア」 矢津内科消化器科クリニック 矢津 剛 京都多職種連携会 2015.10.20 サングレートみやこ がんの終末期っていつから? 一般に余命2か月から6か月程度 最近は抗がん剤・放射線治療などを行う場合 も多い。 ステージ4(遠隔転移)の方はほとんどであ るが、甲状腺がん、前立腺がん、乳がんの場 合進行がゆっくりしているときもある。 ホスピス緩和ケアが重要です。 がんの症状や特徴 がんの種類によって、進行速度が異なる。 がんの症状はがんの種類によって異なる。 ・肺がんならば呼吸困難、胸水 ・消化器がんならば出血や閉塞 終末期に共通するのは倦怠感、食欲不振、疼痛 転移の場所によって異なる。 ・脳転移であれば麻痺や痙攣、嘔気 ・肝転移であれば黄疸や肝不全症状 ・腹膜転移ならば腹水貯留 ・骨の転移は疼痛や骨折、貧血 末期がん患者さんの特徴 急激に寝たきりとなり、死に向かう。 痛みや呼吸困難を起こしやすい。 治療が困難な倦怠感が多い。 現在、病名告知率は80% 高齢者では認知症が合併することが多い。 せん妄という意識障害が発生することが多い。 自宅でも病院のように点滴、酸素吸入、医療用麻薬 が使用できる。 ホスピス緩和ケア技術が急速に発展している。 望ましい緩和ケアのあり方 緩ホ 和ス ケピ アス 積極的治療 以前の治療経過 発病 永眠 ↓ ギアチェンジ 積極的治療 最近の治療経過 発病 ホスピス緩和ケア 在宅ケアも視野に入れる 余命6か月~1年 永眠 チームアプローチ Ns MSW D 患者さん Client 楽 PT OT MT 家族Family 薬剤師、栄養士、 ST 歯科医 歯科衛生士 区 在宅ホスピスの輪 疼痛を伴うがん末期患者の在宅ケア 痛みの治療は自宅・福祉施設でも十分に可能です。 内服薬、座薬、貼付薬などを使用し痛みを緩和します。 急に痛んだときの即効的処方をレスキュー処方といいます。 チーム全体が同じ認識で支援できるようにしましょう。 変化する患者や家族の気持ちに寄り添ってください。 家族の介護負担も軽減することを話し合いましょう。 患者が望むことや家族がしてあげたいことを優先に。 鎮痛剤の包括指示や疼痛が緩和されないときどこに連絡する か明確にしておきましょう。夜間や休日の際。 最期の場所をどこで迎えるかを本人家族に確認し主治医と話 し合っておきましょう。 痛みの性状と分類 内臓痛 腹部腫瘍の痛みなど局在があいま オピオイド(麻薬)が効き いで鈍い痛み やすい ズーンと重い 体性痛 骨転移など局在がはっきりした明確 突出痛に対するレスキュ な痛み ーの使用が重要になる ズキッとする 神経叢浸潤、脊髄浸潤など、びりび 難治性で鎮痛補助薬を 神経障害性疼痛 り電気が走るような・しびれる・じん 必要とすることが多い じんする痛み 痛みの強さを聞く Numerical Rating Scale (NRS) 症状の程度を数値化して聞く (NRS) 症状が全くないときを0、 これ以上ひどい症状が考えられないとき を10とすると、今日の(症状の)強さは どれくらいになりますか? これ以上 耐えられないほど ひどかった 全く なかった 痛み 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 痛みのパターンを聞く 痛みはパターンから、持続痛と突出痛に分けられる 一日中ずっと痛い 時々痛くなる 10 10 10 0 0 0 持続痛 持続痛+突出痛 突出痛 モルヒネに対する偏見を取り除く 痛みがある人にはモルヒネの中毒症状が出にくい。 決して廃人になることはない。 正しいモルヒネの使用法 血中濃度を一定にする。 疼痛がなくなってもやめない。 モルヒネ以外の鎮痛剤をやめない。 副作用対策を同時におこなう。 医療用麻薬の剤形と製剤 オプソ・モルヒネ(錠・散・水) 速放性製剤 オキノーム (経口腔粘膜製剤)イーフェン・アブストラル 経口 徐放性製剤 MSコンチン・カディアン・ピーガード・ パシーフ・モルペス・MSツワイスロン オキシコンチン モルヒネ注 注射剤 フェンタニル注 オキファスト注・パビナール注 非経口 坐剤 アンペック坐薬 貼付剤 デュロテップMTパッチ・フェントステープ・ ワンデュロパッチ・フェンタニル3日用テープ モルヒネの安全な導入 モルヒネ水(オプソ5mg) による導入 ・ 眠気があるので、まずは夕食後 あたりから始めて疼痛時に服用。 ・ 1日使用量がわかれば 徐放性モルヒネへの切り替えを行う。 ・ 副作用である吐き気止め、便秘薬の投与は同時に行う。 貼るモルヒネ(デュロテップ・フェントス) 痛みを和らげるケア 痛みの閾値に影響する因子 不快 不眠 疲労 不安 恐怖 怒り 悲しみ うつ状態 倦怠感 内向的心理状態 孤独感 社会的地位の喪失 これらを高める ケアを考える 症状緩和 睡眠 休憩 周囲の人々の共感 理解 人とのふれあい 気晴らしとなる行為 不安減退 気分高揚 鎮痛薬 抗不安薬 抗うつ薬 Twycross, et al 著, 武田文和 訳:末期患者の診療マニュアル, 第2版, 1991 痛みを和らげるケア 実際の例 ぐっすり眠る リラックスする うまく気晴らしする マッサージする 罨法(温罨法・冷罨法) 軽い運動を取り入れる 安静にする 痛みを和らげるケア 実際の例 環境調整 痛みが増強するような体動を避けた日常生活、寝 床の工夫など 装具や補助具の工夫 コルセット、頸椎カラー、歩行器、 杖などの使用を検討 ひとりで抱え込まない 患者も 福祉職も 医療従事者も 在宅ホスピスのタイムテーブル 1.導入期(余命6ヶ月ー1ヶ月) ・本人家族の意思を確認する。 ・退院時カンファレンスを病院に依頼する。 ・いつでも入院や通院の希望に応じることが 可能であることを説明する。 ・できれば本人が病名を知っていることが 望ましいが、知らなくても良い。 ・プライバシーに配慮 ・介護家族構成の把握 2.ターミナル開始期(余命6ヶ月から数週間) ・患者に病状を知らせたくないという家族 の思いを尊重し、患者との意思疎通をはかる。 ・苦痛の緩和を最優先におこなう。 ・介護保険の導入(介護ベッド) ・訪問看護婦、音楽療法士やヘルパーの導入 ・排泄はなるべくトイレまで行けるよう支援する。 ・輸血や輸液の適応もある。 ・できれば病状告知までおこなう。 ・緊急連絡先を知らせる。 3.ターミナル増悪期(余命数週間) ・輸液の減量、ステロイドの使用、在宅酸素の 導入。 ・家族に予期悲嘆できるよう配慮する。 ・患者さんへのスピリチュアルケア ・混乱への対応 ・DNR(蘇生をしないこと)の確認 ・レスパイト入院の検討(看護疲れに配慮) ・モルヒネの持続皮下投与 4.死前期(数日から数時間) ・家族への死への過程説明。 ・非言語的コミュニケーション ・死前喘鳴への対応(抗コリン剤、吸引) ・親戚縁者への説明 ・緊急対応再チェック ・急激な苦痛に対する対応、 5.永眠後のケア ・死後のケアを家族と共に行なう。 (家族へのねぎらい) ・速やかに介護福祉機器を引き上げる。 ・麻薬の回収廃棄 ・定期的なグリーフケア ・遺族会への招待 24 写真提供:矢津内科消化器科クリニック 矢津剛 院長「あなたの笑顔がくれたもの 在宅看取りという選択肢」
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