「在仏日本人従業員に関する社会保障及び税務」 カデラス・マルタン公認

フランスにおける
人事労務管理
(ビジネスフランスセミナー 2015年11月12日 東京)
講演
Cabinet DS Avocats (Reiga SHIMIZU弁護士)
Cabinet Caderas-Martin社
(パートナー Laurent DANTAN氏 および
Jean-François ROMAIN氏)
第4部
在仏日本人従業員に関する
社会保障及び税制度の特色
(ビジネスフランスセミナー 2015年11月12日 東京)
プレゼンテーション : Jean-François ROMAIN氏
(Cabinet Caderas-Martin社 パートナー)
序文
フランスは、社会保障制度と税制に由来する費用が高い国であると言われて
います(先ほど説明された通り、必ずしもそうではないのですが)…
これはあまり知られていないことですが、外国人派遣従業員に対する税制につ
いて、ヨーロッパ中でフランスは最も有利な国の一つとなっています。
Régime
fiscal
spécifique
des
また派遣従業員がフランスとの社会保障協定調印国
(日本はこれに該当)
から
impatriés,
来ている場合、
国際的組織がフランスに派遣した社員に対して、非常に有利な
社会保障制度と税制が適用されることを意味します。
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序文
在仏外国人従業員の定義 (日本人または他の国からの派遣) :
 外国の本社からフランスに派遣された人員
 グループの子会社に派遣の場合・・・またその他の場合
(免税のためのダイレクト・ソーシングなど)
 一般的に短期間の派遣 (3年から6年)
 派遣元の日本企業との組織的関係を維持していること
Régime
fiscal
spécifique
des
フランスに派遣された日本人に適用される労働関係法:
impatriés,
 2007年6月1日より適用された2005年2月25日社会保障協定
 業務上の移動費用に対する免除措置
在仏外国人従業員に適用される税法 :
 起源 = 2003年度修正税法 (第81B条)
 以来いくつかの緩和が行われています。法典化された制度は一般税
法典の第155B に移動。および従業員と代表者に関する 2009年8月7
日の税制指示(5 F-13-09)による詳細説明。
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在仏日本人従業員に対する社会保障制度と税制
目次
I
– 社会保障に関する規則と特典
II
Régime
fiscal
spécifique
impatriés,
– 税に関する規則と特典
III
– « 派遣従業員 » の給与明細書の例
des
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在仏日本人従業員に対する社会保障制度と税制
I – 社会保障に関する規則と特典
1) 日仏社会保障協定の適用 :
2007年6月1日に発効した本協定により以下の点が可能となりました:

次に該当する派遣従業員に対する日本の社会保障制度の維持:

派遣元企業との組織上の関係が維持される者 (すなわちフランスの
受入れ組織の従業員ではない者)、

日本の行政機関の承認を得ている者
(様式J/F
Régime
fiscal
spécifique
des 6による承認)、
impatriés,
派遣期間中を通じて労働災害および職業病に対する保険を備えて
いる者。


フランスにおける社会保障負担金の (正味) 5年間免除。(承認によ
り)
さらに1年間延長可能。

日本の社会保障が適用されない場合 = フランスでの業務に支払わ
れた報酬の全額 (フランスの給与+日本の給与) に対するフランス(就
労地)の社会保障の適用
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在仏日本人従業員に対する社会保障制度と税制
I – 社会保障に関する規則と特典
2) « 業務上の移動 » に係る費用に対する免除措置:
以下に示される費用は、« 業務上の移動 »への還付の名目の下、社会保障負
担金および税(以下を参照)が免除されます。
社会保障負担金免除は、 日本の社会保障の適用が維持される派遣従業員(様
式J/F 6を所持)に対して適用されますが、同様にフランスの社会保障加入義務
Régime
fiscal
spécifique
des
者である派遣従業員に対しても適用されます。
impatriés,
これらの免除措置は、在仏日本人従業員とその家族による支出の内,以下に該
当するものに適用されます:
引越し費用、子供の就学費用、フランス語学校費用、出身国への年一回の往
復費用など
この免除措置の適用には、証明書類(領収書など) の提示が求められます。
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在仏日本人従業員に対する社会保障制度と税制
I – 社会保障に関する規則と特典
3) 派遣従業員に与えられる現物支給の評価:
« 総報酬 » の中で派遣従業員に与えられた現物支給特典は、補助的報酬と
みなされ、評価の対象とされます。とりわけ次のような例が挙げられま
す:

業務用車両:業務用車両の独占的使用による特典は、定率評価され
ます (車両の価値の%で算定)。

住宅:この特典は、会社が支払う家賃に相当するとみなされますが、
Régime
fiscal
spécifique
des
特定のケースでは、
(より有利な)定率評価も可能です。
impatriés,

税金: この特典は、会社が支払う個人の税金(住居税、所得税など)
の総額に相当します。
次の理由から、これらの現物支給特典は必ず評価の対象とされます:

社会保障の算出ベースに加える必要があるため (フランスの社会保
障制度が適用される場合) 。

課税対象の報酬に加える必要があるため(税制)。
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在仏日本人従業員に対する社会保障制度と税制
II –税に関する規則と特典
初めに
在仏外国人従業員に対する特別免税制度は、税法上フランス在住とみなされる
派遣従業員にのみ(原則的にその就任日から)適用されます。
 したがって派遣従業員の税法上の居住地を定めることが不可欠となります。
1)
自然人の税法上の居住地決定:
a)
Régime
fiscal
spécifique
des
フランスの国内法および国際租税条約に則り分析
impatriés,
フランス国内法 (一般税法典第4B条)
税法上のフランス居住者 = 以下に示される3条件のうち少なくとも一つに該当す
る者
 その世帯(家族の居住地)、またはその主たる滞在地がフランス国内に
ある、
 その主たる業務がフランスで行われている、
 その経済的重心をフランスに置く
-
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在仏日本人従業員に対する社会保障制度と税制
II –税に関する規則と特典
b) 国際租税条約
税法上の居所が2カ所ある(それぞれの国内法に従って2カ国に存在する)場合の
係争を解決する目的 在仏外国人従業員にしばしば発生
例 : 納税住所が二つある場合、日仏租税条約では以下の順に各要素を検討して
処理するとされています:
 その住まいまたは最も強い人的・経済的繋がり
 あるいは、通常居住している国
Régime
fiscal
spécifique
impatriés,
 あるいは、 その国籍を有する国
des
 あるいは、 関係する両国の決定。
c) 結論
実際的には、とりわけ以下の事項を基にケースバイケースで検討されます(夫
婦に適用される税制の分離可能)。
 派遣従業員の家庭状況、家族の居住地、派遣期間など…
.
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在仏日本人従業員に対する社会保障制度と税制
II –税に関する規則と特典
2) 在仏外国人従業員に対する特別税制:
法律の目的

フランスの魅力強化

外国企業のフランス進出と上級管理職の着任促進。
a) 在仏外国人従業員に対する特別税制適用の条件
Régime
fiscal
spécifique
des
impatriés,
適用される免税措置については、特に、派遣前に作成された雇用契約、管理職
契約 または派遣に係る追加規定に記載される必要があります。
 書類上の条件
給与の年次申告書(統一社会保障自動申告Dadsu) での免税措置についての
明確な言及
税務当局に提出する年次の税申告書での免税措置についての明確な記載
当該申告書における選択の行使。
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在仏日本人従業員に対する社会保障制度と税制
II –税に関する規則と特典
 基本的条件
着任と同時に (多少の例外は認められます) 税法上の居所を(フランス国内法と
租税条約に則り)フランスに定めること
配置転換または受入れ企業 (グループ) の変更があっても、 (Macron法の改正
により)免税措置の適用が止められることはありません。
免税措置を受ける全期間を通して税法上の居所をフランス国内に置くこと (この
Régime
fiscal
spécifique
des
点が順守されない場合は該当する年度の免税措置は受けられません)
impatriés,
ポスト着任に先立つ過去5年間 (2015年度の場合、2010年から 2014年まで) 、フ
ランスに税法上の居所を定めたことがないこと
外国で直接雇用された従業員に対する税制適用が可能 (「2008年1月1日以降の
採用」に関する第155B条)。
着任した年から5年目 (または最長6年目)の12月31日を以て免税措置の終了。
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在仏日本人従業員に対する社会保障制度と税制
II –税に関する規則と特典
b) 在仏外国人従業員に適用される税制により直接得られる特典
 « 出向手当 »と称される報酬の一部免税措置
原則 : 外国で行われた業務に直接かかわる報酬の追加分の非課税措置
(したがって外国人従業員がフランスで申告する金額は、日本における同一職種に就いて
いる場合より大きくなることはありません).
 現金報酬(各種手当)または現物支給(業務用車両、住宅など…)による報
Régime
fiscal
spécifique
des
酬の追加給付もこれに該当します。
impatriés,
 海外で直接雇用された人員についてのみ30%の定率評価とする方法も
選択可能です。
限度 : 課税対象とされる残りの手取り報酬は、同じ会社で、あるいは類似の
フランス企業で同じ職種に就いた場合の報酬より少なくすることはできま
せん。
 法で定められた正確な金額はありません。しかしながら « 適正 » 金額
は、在仏外国人従業員が得る報酬の30%から50%の間となります (ただし全
体の限度については以下を参照)。
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在仏日本人従業員に対する社会保障制度と税制
II –税に関する規則と特典
 外国で就労した日数に対する報酬の免税措置
原則: 外国での業務に対する給与報酬の日数相当部分の免税措置
 業務としての出張のみ対象となります。
 専らその雇用者の直接的必要を満たすものに限られます。
 この枠組みによる、その出身国内での滞在も対象とされます。
Régime
fiscal
spécifique
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 24時間未満の滞在も対象とされます。
impatriés,
 移動時間は考慮されません。
限度 : 選択肢 (派遣従業員にとって最も有利なものを選択):
 外国滞在費に対する免税は、出向手当を引いた手取り報酬の20%まで
 免税の合計は、在仏従業員の総課税報酬の (免税措置分の控除前の)
50%まで
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在仏日本人従業員に対する社会保障制度と税制
II –税に関する規則と特典
例 : 2014年1月にフランスに入国した日本人派遣従業員の場合

2014年度の課税対象となるその手取り報酬は250,000€

出向手当として110,000€ が支給

フランスで比較対象となるような職務の給与は150,000€ であるとされま
す。

外国での業務活動に対する報酬の部分を40,000€とします。
免税扱いの累積総額は、130,000€ (非課税率52%)となります。
Régime
fiscal
spécifique
des
impatriés,

出向手当として100,000€
250,000 - 110,000 = 140,000 € (上限はフランスにおける同等業種の給与である
150,000 €とします)

外国で実施された業務に対する30,000 €の免税措置

課税対象とされる報酬の50%を上限とする選択肢 25,000€ (250,000 x 50% =
125,000 € - 100,000 € (出向手当) = 25,000 €)

もしくは出向手当の手取り報酬の20%を上限とする選択肢 30,000€ (250,000
100,000 = 150,000 € x 20% = 30,000 €)  最善の方法
–
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II –税に関する規則と特典
3) 在仏外国人従業員に対するその他の税制上の優遇:
a)ISF (富裕税) に係る特典
フランス国外に居所を置く自然人が行う投資に対するISFの免税措置
2008年8月6日以降 (直近の5年間、フランスに税法上の居所を持たなかった者
が) 税法上の居住地をフランスに移した場合のフランス国外資産に対するISFの
免税措置 (最長6年)Régime
fiscal
spécifique
des
impatriés,
b)
資産由来の特定収入の一部免税措置
以下の収入の50%免税措置 (最長6年間) :(脱税対策のための条約をフランスと締
結した国で事業を行う債務者の支払いによるものである場合 )
有価証券等の資産による収入 (配当、利息など…)、
有価証券、および役員所有の株式などの売却益および社会保障、
知的所有権および工業所有権の収益
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II –税に関する規則と特典
c)
« 業務上の移動 » に係る費用の免税措置
前述の(§ I-2) で解説された « 業務上の移動 » に係る費用で、社会保障負担
金が免除されるものについての免税措置。
d)
外国の年金積立てと保険制度に支払われた拠出金の控除資格
 外国の制度に基づいて支払われた負担金の税込給与からの控除(上限なし)
Régime
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des
(日仏社会保障協定 –impatriés,
在仏外国人従業員に対する控除は無制限)
 補助的保険制度と補助的年金制度のために支払われた拠出金の控除
(最長6年、在仏外国人従業員に対してのみ適用可能)
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在仏日本人従業員に対する社会保障制度と税制
III – « 派遣従業員 »の給与明細書の例
次に説明する給与明細書は、フランスの社会保障負担金を免除された
(J/F6を
所持する) 派遣従業員 のものです。
一般に給与明細書は、日本の人事部の計算による保証された手取り給与
(紹介
する例では 16 + 18 = 34) を基に作成されます。この保証額は、次の二つの
Régime
spécifique
des
金額に分けられ
ます: fiscal
impatriés,
 16のフランスでの支払い分 (給与明細書の下部 « 純支払い合計 ») およ
び
 18の控除対象とされる« Salary paid in Japan » に示される日本での支払
い分。
(« Gross-up »がこの2つの合計により為されるように)
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III – « 派遣従業員 »の給与明細書の例
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III – « 派遣従業員 »の給与明細書の紹介
給与明細書の解説
Base salary = フランスで支払われた給与 (フランスで支払われる手取り額のグロスアップ)
Bonus Japan / FSP Allowance Japan / Housing benefit Japan = 日本で支払われた金額に基づく
Fringe benefit - car = 業務用車両の私的利用によるフリンジベネフィット(付加給付)のフランスの労働法に基づく評価
Tax exemption Impat =課税対象となる純給与を減らすため、また海外出向者に与えられる給与の追加パッケージに関し、在仏外国人従業員
を対象とする特別制度に基づき(適用条件が満たされていれば)、毎年1回 (12月)に計算される免税分
Tax exemption days abroad =課税対象となる純給与を減らすため、また派遣期間中にフランス国外で発生した業務上の出張日に相当する報
酬について、在仏外国人従業員を対象とする特別制度に基づき(適用条件が満たされていれば)、毎年1回 (12月)に計算される免税分
Régime
fiscal
impatriés,
spécifique
Tax exemption adjust = 支払われた給与の手取り額に影響が及ばないよう免税措置の相殺
des
Education expenses = 領収書(学校が発行した受取り)提示による教育費の償還。これはフランスの法律に基づき個人収入から全額控除され
ます。
Health insurance deduction = 従業員が支払った追加の健康保険(仮定 - 義務ではありません)
Salary paid in Japan = フランスの給与明細にフランスで支払われた純額を表すことを目的とする日本支払いの給与の控除
Fringe benefit adjust =支払われた給与の手取り額に影響が及ばないようにするためフリンジベネフィットの相殺\
Net paid amount =フランスで支払われた純支払い金額 (日本の人事部が決定)
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連絡先
CADERAS MARTIN社
43, rue de Liège
75008 PARIS
www.caderas-martin.com
Laurent DANTAN
Jean-François ROMAIN
パートナー
Philippe RICHEUX
社長
[email protected]
[email protected]
[email protected]
日本の連絡先: Noriko LOUGUET – OTAGURO : [email protected]
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