の提案とその応用

九州工業大学学術機関リポジトリ
Title
Author(s)
Issue Date
URL
「Rain Flow Method」の提案とその応用
遠藤, 達雄; 松石, 正典; 光永, 公一; 小林, 角市; 高橋, 清文
1974-03-01T00:00:00Z
http://hdl.handle.net/10228/3927
Rights
Kyushu Institute of Technology Academic Repository
九州工業大学研究報告(工学)No・281974年3月 33
「Rain Flow Method」の提案とその応用
(昭和48年10月20日 原稿受理)
機械工学教室 遠 藤 達 雄
安川電機製作所松石正典
第二部機械工学科光永公一
第二部機械工学科小林角市
大学院学生(機械工学科)高橋清文
Rain Flow Method, the proposal and the apPlications・
by Tatsuo ENDO
Masanori〕MATSUISHI
Koichi MITSUNAGA
Kakuichi KOBAYASHI
Kiyohumi TAKAHASHI
Acycle counting method for the evaluatioll of fatigue damage in metals is
P・・P・se己whi・h d・termin・・th・number・f reversa1・, the amplitud・and th・m・苧n・f
strain, out of the order sequence of the peaks and valleys of a complex stralnγぷ.
time history.
The method, which is called“Rain Flow Method”, corresponds to the work
hardening properties of metals under complex change of strain. Namely, it is
compatible with 1)the abrupt change of tangent modulus which is conditionally
observed under the process of reloading, and with 2) the existence of the complex
stress−strain curve which does not make closed loops.
The related experimental results are shown, and several problems on making
application of the method are discussed.
本論文で著者らは1)不規則に変動するひずみ
1・序 言 または重畳波形や重複波形をもつひずみなどの波
機械や構造物が使用時にうけるひずみの時間的 形の情報から,疲れきれつの発生に寄与するひず
変化は通常極めて複雑である。したがってこのよ みの振幅(およびその平均値)とその繰返し数を
うなひずみのもとで,どれ位の時間使用に耐える 定める方法(狭義のRain Flow Method,最大
かということ,すなわち寿命の予測は,設計なら 最小法)を提案する。ついで2)これをきれつ発
びに保守上重要である。 生ならびに破断などいわゆる寿命の推定に結びつ
実物やモデルについてのシミュレートされた荷 ける方法を述べる。
重のもとで疲れ試験を行なうことによって寿命の ひずみの変動に関する情報から,破壊に関係あ
予測はできるが,これでは経済性からも,また時 るひずみ振幅を選定する方法すなわちサイクルカ
間的にも問題があるので,比較的単純な疲れ試験 ウント法は,これまで多く提案された。しかしな
をもとに推定したい。すなわち,1)ひずみの波 がらこれらは,応カーひずみのヒステリシスルー
形を分解し,2)この結果に疲れ破壊の法則を組 プと対応させて見るとき,材料の加工硬化の特性
み合わせることで寿命の予測をしたい。 と矛盾なしとしない。すなわち,図1は金属材料
34
F
F く H B
Y I
YADI AD 警DYI』Lひずみ
(・) (b) (,)
図1 加工硬化曲線の連続性
が繰返しひずみを受けて塑性変形を起す場合の応 従来のサンクルカウント法との比較,および
カーひずみ一時間の関係で,a)は応カー時間の Rain Flow Methodの特色,7Rain Flow
関係,b)はひずみ一時間の関係, c)は応カー Methodによる疲れ被害の具体的計算法,8.
ひずみのヒステリシスループを示す。この図は, Rain Flow Methodによる寿命の推定値と実験
ある点Aで圧縮行程から引張り行程に変わったの 結果との比較,9.結論10.ApPendix。
ち,さらに引張られてBに達し,Bで除荷, Cを
経てDより再負荷され,Bと同じ応力_ひずみの 2・サイクルカウント法の分類と比較
点Eに達した状況を示している。ここで注意すぺ 本節ではこれまでに提案されたサ,fクルカウン
きことはこのあとの負荷に対応するヒステリシス ト法1)のうち主なものを対象にして,これらを分
ループ上の線EFはDEの延長上になく, AB 類し,図1に示した加工硬化曲線の接線係数の連
の延長上にあることである。これまでのカウソト 続性とどのように対応しているか,またそれらが
法はこの事情を完全には考慮していない。本論文 いかなる矛盾を含んでいるかを検討する。このた
のRain Flow Methodはこのことと後にのべ めまず,ひずみ波形の番号付けを行ない被害につ
る図16の半サイクルを考慮する点に特色がある。 き定義する。いま,縦軸をひずみ,横軸を時間と
本論文で提案する方法は比較的直観的な「狭義 してひずみの時間的変化を示す曲線を考える。こ
のRain Flow Method」と,操作を重視する最 れまでの研究によれば,第一近似として疲れ被害
大・最小法」(以下MMMということがある) にはひずみ波形の極大・極小値と,その出現の順
とからなり,両者は同一波形について同一のカウ 序が主として問題になるから,これら極大・極小
ントの結果を与える(第4節)から,これらを総 におけるひずみの大きさをひずみの尖頭値と称
合して著者らは「広義のRain Flow
Method」または単に「Rain Flow Me・ 弍
th・d」(以下RFMということがある)とζ
称㌫篇成は次の通りである.すなわ↑
Bg
B1
Bl1
B
ち本節 1・につづき・2・サイクルカウント Bo
法の分類と比較,3.Rain Flow Method
の内容である狭義のRain Flow Method
と最大最小法の説明,4.狭義のRaill F1・
B5
B3
時間
B7
Blo
B2
B6
B8
ow Method,最大最小法と加工硬化曲線
t1
t7 t8 tg
t2 t3
t6
t4 t5
との対応,5.Rain Flow Methodのプ
ログラミング,6・Rain Flow Methodと 図2ひずみの時間的変化
t10
tl1
35
しぷの言己号で表わすことにする・すξ ξ
なわち途中に極大または極小を含まない 6 白
尖頭値β、とβゴ+1の間の時間間隔,な 時間
時間
らびにひずみ速度は,無視して論ずるこ
とにする。図2にひずみの尖頭値の順序
の系列と,尖頭値の出現する順序に従っ (a) (b)
て滑らかに結んだ曲線を示す。上に述べ 図3変動波形
たことより尖頭値間は直線で結んで考え (ピークカウント法,レベルクロシングカウント
ても差支えないことになる・ ㍍モ;㌶ングピークカウント法で差がな
本論文において,被害Dとは肉眼ま
たは光学的醐器具を恥て発見できる 246 、2 12246
一定のき裂に着目して,」番目の添字で R
驚㌫罐㌫9㌶↑・3581・13時1113、3㌦)
て,それまでに同じひずみを受けた数1v a)
を割つた値玲畷の強々のひず 2467911Z911 a46
み振幅に関する総和D一ΣDゴとして R 8 8
定義しておく。すなわち一定のひずみを 迫
鷲㌶⊇《㍑違↑i)9時間9・(b)’
生に着目すればD−1が炭素鋼でよく成 357 3,5,7
り立つと言われている2)。 図4 変動波形
さて,既存のカウソト法は次のように (ピークカウント法ではa)b)を区別しない)
分類される。
A)尖頭値の出現する頻度のみに着目するも このほかミーンクロシングピークカウント法で
の。 は図5の(a)・(b)・(c)の区別をせず・ばね炉
たとえば尖頭値の平均値よりも大きい領域での サージソグを起しているときの応力波形のような
最大・最小値の頻度分布や小さい領域での最大・
最小値の頻度分布がわかっていれば確定するよう ξ
なカウント法がこの範疇に属する。この場合尖頭 (。)治 時間
値の出現の順序は全く影響をもたないものとして
両者の差を無視する。すなわち,図3において尖
頭値の大きさとその出現数でみる限り差がない ぺ
(・)と(b)とは,ピーのウント法レベルク ζ 時間
ロシングカウント法では区別しない。しかし図4 (b)
の(a),(b)両ひずみ波形はピークカウント法に
よれば差別がないのに,図3におけると同様に各
波形に対応するヒステリシスループに着目すると ζ
時間
きは(a)’,(b)’のように著しい差がある。これ (・)
は図1に示したヒステリシスループの加工硬化特
性との対応に着目するとき,尖頭値の頻度のみに
着目する方法が適当でないことを示す。 図5 変動波形
36
重複波形では小波の影響を無視しす ぷ
ぎるきらいがある。また図6におい +
て本法の矛盾が明らかである。
B)尖頭値間のひずみの大きさの (a)
差に着目する方法。 時問
本法のうち相隣る尖頭値間の差の
みに着目するものがレンジカウソト
法であり,相隣る尖頭値間に限らず 噌
これを幾つかの尖頭値間の差にまで ζ
拡張しヒステリシスループとの対応 (b)
もかなり考えたことになっているも
のがレンジペアカウント法である。 時間
オーバラルレソジカウント法3)では
尖頭値の最大・最小値の差のうち被
害にきくものを全体の中からとりあ
げて評価する。さらにペアを作らな 図6 ミーンクロシングカウント法によれば
いひずみの繰返し(repetition)と a)b)の差が大きいことになる
ペアを作る繰返し(サイクル)の頻度数を明確か ひずみ一一一→
詳隠撚本論文で提案する 多璽圭萱「
なおミー〃・シングピークカウント法はひず ・T、.▽・ )4T…5
みの平均値のレベルを一種の尖頭値とみてカウン 闇
トの操作を行なうものとみることもでき,この意
味でB)に属する。図5のa)b)c)間および,
6
↓ 8
7
3礁㌍夢鞠1
図6のa)b)間における各カウントの結果の比
較を行なえば同法の欠陥は明らかである。 12
図7 狭義のRain Flow Methodによる
3.Rain Flow Met血od 有効区間の決定
筆者らの提案する「蟻のR・inF1・wMe 癬‡賢聴狸1霊腰
thod」は「狭義のRain Flow Method」と「最 5−6・6−7,7−−8,8一ユ1,9−10,10−9ノ,
大最小法」とからなり,両方法が同一波形に対し 11−12である。)またひずみは塑性ひずみ。
て同一のカウントを与えることはすでに(1)で 雨だれのように下の屋根の上に落ちてさらに流れ
述べた。以下両方法の内容を説明する。 るものとする。ただし次の2条件のいずれかを満
A)狭義のRain Flow Method 足するとき流れを停止し,流れ開始点から停止点
縦軸を下向きに時間軸とし,横軸をひずみ(塑 までの流れの横座標(ひずみまたは応力の幅)を
性ひずみ)の尖頭値にとり,尖頭値を順次結ぶ直 もって,ひずみ(または応力)の「有効区間」と
線をあたかも多重になった屋根と見なす(図7)。 する。その2条件とは(図7)
また一点鎖線で示すように,スタートの点にも極 1)後に続く水源の位置によってきまる条件。
値をもつとみなす。今雨滴をすべての屋根のつけ 左流れ(例えば水源1から左向きの流れ1→2
根(ひずみの尖頭値)から,その尖頭値番号の順 →4)において,もし今考えている左流れの水源
に,番号の少いものを優先して流れが止まるまで (今の例では1)よりもその後に続く左流れの水
流すことを想像する。軒先に雨滴が流れつくと・ 源(例では3→4,5→6等の水源3や5)が,
37
より左側にある(例えば3)か等しいならば,そ が,次々に新らしい尖頭値の情報が与えられる毎
の屋根(例えば3→4)上に1からの雨だれは落 に確定できることになる。なお樋の添字のつけ
下のあとさらにこれに沿って流れ得るが,今考え 方は次のようにしてある。すなわち,樋の記号
ている流れ(例えば1→2→4)の水源(例では ”τz‘一∫の右下の添字ゴとノとは,その樋によっ
1)よりも右にある水源(例では5)が現われる て確定するひずみの区間を示し・左上の添字
と,始めの流れ(例では1→2→4)はそれ以上 秋た〉のは上記第1の条件に関する番号・すなわ
進めず停止し,このことを示す樋・r、.4をおくも ち後続のん番目の尖頭値の位置とゴとが比較さ
のとして水源より樋までの横座標成分に相当する れ,樋がおかれたことを示す。また1(1<」)は既
ひずみ(または応力)の振幅(例では1→4の 存の流れの水源の番号を示すもので,上記の第2
間)を「有効区間」とする(樋の記号為T」句のつ の条件が適用されたことを示す。
け方はあとで示す)。この条件に対応し図中に↓ b)最大・最小法
が用いられている。 この方法は図9のように尖頭値の全順序系列が
n)尖頭値番号の若い水源からの既存の流れと 与えられる時・応カーひずみの加工硬化特性(図
混合しない条件 1)に対応する結果が得られるように,その全部
ある水源∫からの流れを考える場合,匡より小 の区間を最大・最小の現われ方に応じて次々に分
さな1番目の水源から水が既にその屋根の一部に 割し,分割区間の中で,疲れ被害にきく区間を選
流れている(例えば屋根3,4上の左半分2’→ び出す方法である・
4)か,あるいはちょうど軒先をすでにぬ
らしていればここに新たに樋匁、’がおか ひずみ一→
墓㌶驚欝講↓8:鷲‖
U・T、−5T・一・
7
9 )8T6_7
続し,いまの例では1→2→2’→4とす
1/2サイクル
る。この場合∫番目からの流れの停止(樋)
の標識として図中では一)または(一が
用いられている。こうしてすべてのひずみ
の尖頭値を水源として,左流れおよび右流
れにつき以上の操作を尖頭値番号の若い方
1サイクル
1/2サイクル
1サイクル
1サイクル
1/2サイクル
から順次行なえば,これらの操作で決まる
区間は,応カーひずみ関係にみられる除荷
R迫
5
7 73
9
再負荷に関する加工硬化曲線の特性に正し
く対応する有効区間である。
図8では上記の方法による区間と,加工
0
ひずみ
硬化曲線との対応を示している。ここに,
ある時点,例えば図8で尖頭値9番が与え
られた時点での有効区間は,樋で水の流れ
が確定した分の区間と,図中の下方への矢
印の位置までの各水源からの区間とからな 44
4
6
るものとする。このようにして有効区間が 8 6 4
8
定まり,有効区間の両端(したがってその 図8狭義のRain Flow Me也odによる有効区間
全振幅のみならず平均も含む)とその頻度 とヒステリシスループとの対応
38
MAX
、
34
24’
ぺ十Q
e1会XI 「玉一一一一一一
142。12163.32
2 8
38
36
@ 10 4
6
0
37
22
11
40
40 時間
31
→
16
1
@ 18 29
39
15 23 33
FMINI 7
13 17 21 27
35
25 一
MIN 19
△△
△ △
△
F
△ △
△
M
R
図9 最大最小法による有効区間の決定(標準分割法による分割)
本法を説明する前に尖頭値の順序系列を二つに ξ11 ’
分類する・すなわち・A)尖頭値の大きさが全部こ ↑・
となる場合(グループA)。たとえばデジタル計算 一;
にる
機でランダム数を発生させ,その数を尖頭値とす ::
る場合は,そのプログラムに固有な周期が現われ 一1°
るまで,尖頭値は全部ことなる.また実際のひず 図1°ひずみの順序系列(Bグループ)
みの大きさを取り扱かう場合にも,工学的にひず 整数を図10のように割当て,1番目と1+1番
みの大きさとして意味をもつのは10−6mm/mm 目のレベル間にある尖頭値はすべて同じひずみの
(マイク・ストレー)蝉位とする量であるか尖頭値:(1+去)をもつことにすれを緬一のひ
ら凋一の大きさのひずみであっても・マイク・ずみの大きさをもつ尖頭値は多く現われる.この
ストレPンの単位の小数醐下噛当な数(例え ような尖頭値の集合をグループBということにす
ば漸増する数またはランダムな数)を割り当てれ る。
ば工学的に剛大きさのひずみが・木目ことなる Aほ両グ・レープは上述のよう1こ互いに他のグ
頴鴎麗駕駕鶯讃;橿膓茎㌶嶽嶽二㌶㌶㌶ξ冴
大きさに同一のものが存在する場合(グループ 以下最大・最小法の説明に当ってAグループに
旦Σ。 ついて説明する。
一定振幅のひずみの繰返しを含む場合,たとえ 標準分割法
ば升多重ひずみ波形や調瀬比が整数である 搬ば図9に示す尖頭値のJl醇系列が与えられ
場合の重畳ひずみ波形では同一ひずみが多数回出 たとする.このような系列には必ず駄最小が
現する・またランダムひずみ灘すなわち尖頭値存在するから,これをMAX, M・Nとする。
の大きさがランダムに変化し相異な錫合セこおい MAX, MINによって全区間・∼4・は先端部
ても・ひずみの全振幅∠を2⇒分(例えばη一 (F部分)と中央部(M部分)と後部(R部分)
1°)し時号゜を平均のレベルにおき・・までの とに分割できる.端区間(F音β分とR部分)では
39
片方の端は0で,他端はその区間内の尖頭値の最
大または最小である.図9のF部分では。とMIN 4狭義のRain F1°w Met血・dと最大・最小
法と加工硬化曲線との対応
ではさまれている。この場合,両端を除く最大を
とってFMAX 1とする。尖頭値番号12は 狭義のRFMと最大・最小法とが一・致する結
FMAX 1の値をもつ。次に0とFMAX 1間 果を与えることは,上に述べた両方法を比べれば
で最小FMIN 1をとる。同例で尖頭値番号7は 明らかである。すなわち狭義のRFMにおける第
FMIN 1の値をもつ。同様の操作を系列の」頂序 一の条件,すなわち雨水が下段の屋根に落下する
と逆に可能な回数くり返す。同様の取り扱いがR ことを中止する条件は,図11の分割におけるF
部分に対してもその系列の順序に従って実行でき 部分に示す末広がりの波形に適用され,最大・最
る。以上の手続きを標準分割法と名づける。 小法の半サ・イクルに対応する。同様にR部分の半
この標準分割を全区間に一回適用したとき,一 サ・イクルを考えることにも対応し,結局漸増(漸
般には各分割区間に多くの尖頭値を含む。さて, 減)のクリスマスツリー形の尖頭値のならびは各
全区間に標準分割を最初の一回適用して決定され 閉ループを作らないというヒステリシスループの
る区間を半サイクル区間と称し,分割された各区 特性に対応する。たとえば図12下段と同じ図11
間は全部半サ・fクルとしてカウントする。半サイ において01’,1’2’,・…・・6’7’は,両方共半サ・f
クルのカウソトする区間に△の記号をつけること クルである。
にする。次に一回目の分割によって区切られる各 また狭義のRFMにおける第二の条件すなわ
部分区間に対して標準分割を適用する。このとき ち後続の尖頭値よりの水の流れが既存の水の流れ
各区間は区間内の最大・最小を両端にもつがこの と混合できない条件のヒステリシス曲線での対応
両端のひずみの尖頭値を除いて分割の操作を行な は・負荷の途中にはさまれる小さい除荷と再負荷
う。二回目以後の区間については標準分割ごとに にもとついて作られる小ループを含むような大き
分割された区間内の始めから順に×,○,×, い振幅のひずみが存在することに対応するもので
○,×,…,○,×をつけ(図14参照)。○印に ある。図13のa)は尖頭値が時間的にジグザグ
対応する区間は1サイクルとしてカウントし,× に増加することを示し,b)では尖頭値の変化を
印は全くカウントしないこととする。 応力の変化に対応させても,c)のように全ひず
以上を続行して行けば完全に区間の分割がで みの変化に対応させても共に負荷の途中にあら
き,有効区間の決定ができる。結局,半サイクル われる小ループに対応することを示す。これに対
区間と1サイクル区間における尖頭値の差と平均 応して最大・最小法では,その分割の操作の末,
と頻度とが本カウント法から得られる。 尖頭値のならびが図の201→202→203→204のよ
以上はAグループを中心に述べたが,Bグルー うに「いなずま型」となれば,これは201→204
プすなわち同一の尖頭値が繰返し現わ
れるときには・M区間轍定すべき ξ
MAX(またはMIN)はおのおの順 Q
㌘㌔:㌶㌶ ↑
にそのひずみの絶対値が小さいものか
ら大きい順に並んでいるかのように取 O rう
扱って区間を分割し,かつ半サイクル, 4 −→
1サイクルを決定し,区間の尖頭値か 6 9 1σ )
時間
→
ら振幅,平均を計算すればよい。
なお区間決定は厳格には塑性ひずみ 図11最大最小法と狭義のRain Flow Met血odにおける図12
時間関係によって行なうことが望ましい。 の系列中の半サイクル分の対応
40
15 27
H3iig縣…一{3{38
F15i岩 ・〆,時間
すべての尖頭値(8i)。一
1{IM M ’{、II3引
ぺ川川 1ミ124*132『3411目
←lillパ ‖1◎1鞠→一一一一一「一一*きlllI
⊃川1目け6川24il32目1目 只
i[ilしi繊:hl=:購㌃:三 可一一萄
|
7㌦11’
13’
一次区間の尖頭値
衰
◎
l l
’
2’
4’
l l
1 1
16’
,ひずみ
14
f4
| i
|
一一
E12
8’1σ
一次区間
△ △
△ △
ム
△ △
F
M
R
’
図12 ひずみまたは応力の尖頭値の時系列
204 204 204
, 胴1 ∼ 2◎2 ’\
嘉 元 ∼ 〆 203 、
‘203、 203 !
霧みL時間応力2。1ひずみ 2・1ひずみ
応力
(a) (も) (e)
図13 いなずま形の201→202→203→204の尖頭値のならびでは,尖頭値を応力
にとってもひずみにとっても,かならずヒステリシスループを画くこと。
この場合狭義のRain Flow Me也odでは明らかに202之203のループ
と201→204の半サイクルである。
の半サイクルと202→203の1サイクルとにカウ おのおの分割した例ならびにヒステリシスカーブ
ントされることに対応する。同図を狭義のRFM との対応を示している。
でカウントすれば201→2◎2→2◎2’→204すなわち
201→204の半サイクルと202∼203の1サイク 5・Rain Flow Methodのプログラミング
ルとしてカウントを終る。 (1)尖頭値を読み取る毎に処理する方法
このように狭義のRFMと最大・最小法とは共 狭義のRFMによってプログラミングするにあ
にヒステリシス曲線の特性を忠実にあらわすよう たり,連続する4個の尖頭点の並び方によるパタ
に組立てられた区間の分割法であり,サイクル数 一ンの分類によって処理を進めていくことにす
を振幅(ならびにその平均値)の関数としてカウ る。図16にパターンの分類とそれらに対応する
ントする方法であるから,互にその分割の結果は 応カー歪曲線とを示す。まず,a)の稲妻型(減
一致する。図14と図15(b、),(b,)に両方法で 増型)は4個のうちの中央の2点でループを形成
41
44
一一一一一一一一→
34
____________」
2旦2旦一一_一一』 ______コ
22「一一一一
工
14−一一う
’
π
一一一う
↑
8___些〕
@ ∫
@→’
旦.」
@ 10
4→
\
P 〃・
@ ’
,摺 ’ 1
、3
9
/’、
!、
r→’ ’ ’
’
A1
、L_
5
@ 3
ll
lll 一
∫
A1
@1
41
15
t1 一
一一
2
一一
時間
う◆
、’
旦
A
撃
一
S7
一 一
一
35
一
Q
一
P9
@ 、
ll −45
一
11 一
、1
P1|/
撃h
ll
撃
@ 50
@ ∫ご一一〉
ll ’
@ l’
ll
一
一
一
31
ll
?A
梶@’
@ /
P’
t
2
、1
r−一一一一幸P
@ ’
@ 、! 、
@ ’1 ’
’
48
’
・ → ヨ→!
A1
1
、 −7
f↑一
@ 30_∫ π ” ’ 、
、
13
㌃
36」「 ’、3
@ f
llM
38.』L→l
→11lIII
「111
^一
Q0コ「一一 ’
@’
一
11
32
@ ! ’ ’1 ’|’
@ ’
@ Fつ @’
A 1二
Q勾1 ’ | | 1
〉
一
一
17
×
×
×
×O
<<1
×
q
o ×X
O×o ×
o
4
×
×
×O
××
O
O××O ×× o×
o X
<1
O
OX
O ×
×
× ×
o×× OX
O
×
O×
o
×
×
×O ×
4
<
q 4ぐ <
図14 最大最小法と狭義のRain Flow Methodとの対応例
2422,,34
2 −一一一一一一一一一一一一一一一4
1____三i二二::::::::二:::二::].3
1
(a)稲妻型(減増型)
4____________− 4
−一一一●一一一一一一一一一一一 2
3 3
282634 (b)増増型
17.
一一一一一一一一一一一一一一一一一一2
4 4
1 1
R 3 3
4 4
3329
(b、) 一一一㌻二二=二=コ3
2527 1 (d)減減型 1
図15
Z嬬轡をひずみの時系列とみなす 図164個の尖頭点列が作るパターンの分類
(図中番号は図14の尖頭値番号に対応する)
42
するから,この2点を有効区間とする1サイクル 順次,直線で結び,両端を有効区間とする半サイ
の被害を計算してしまえば,中央の2点は消去し クルの被害として処理すればよいことになる。
て端の2点を結んだ線でおきかえられる。次に 次に図14で示した尖頭列を再び用いて図17を
b)の増増型は,5番目の尖頭点がどの様なもの 参考にしながら処理手続きを示すことにしよう。
であれ,1→2及び2→3の部分は半サイクルし まず最初の0→1→2→3はパターン分類のc)
かならない。すなわち,ループを形成したり,他 (増減型)であるから0→1の部分が半サイクル
の大きな有効区間の一部となったりはしない。c) の有効レンジである。次に1→2→3→4はd)
の増減型のものは,1→2の部分のみが半サイク 型(減減型)だから,次の尖頭点を調べる。2→
ルとなり,2→3の部分は,5番目以下の尖頭点 3→4→5はa)型(稲妻型)となるから,3→
の位置によって,半サイクルとなるか,あるいは 4は有効区間となり,1サ・イクルの被害で処理し
他の大きな有効区間の一部分となるかは未定であ た後,2→3→4→5を2→5でおきかえる。次
る。最後に,d)の減減型のものは,すべて5番 に1→2→5→6はc)型だから1→2は半サイ
目以下の尖頭点の位置によって区間が決定される クルの有効区間となる。2→5→6→7はa)型
ものである。 だから,5→6は1サイクルの有効区間となり・
以上の様にパターン分類と決定した有効区間で 2→7でおきかえる。2→7→8→9→10は減
被害を処理することを繰返して行なえば,最初の 減型となり,11を調べると9→10が1サイクル
尖頭値から順次に取扱えることになる。稲妻型の となる。順次調ぺて行くと,11→12,8→13等は
ものを端点を結ぶ線でおきかえた時,この2点 1サ・fクルの有効区間となることがわかるであろ
と,その2つの尖頭点とで再び稲妻型となるなら う。以下同様にして,破線で示した半サイクルの
ば(2次的に形成される稲妻型),これも新しく 有効区間となる部分と,太い実線で示した1サイ
考えた4個の尖頭点のうちの中央の2点を1区間 クルに相当する部分を示した。これらの有効区間
とする1サイクルの被害を計算し,端の2点を結 は,最大・最小法による分割の結果と,完全に一
ぶ線でおきかえればよい。 致している。なお,この方法によるプログラムを
一般に任意のランダムな尖頭点列は,すべての 後に示すが,このプログラムでは,最初の尖頭点
稲妻型のものを置きかえていけば,結局,始点か より,任意の尖頭点までの被害の総計を求められ
ら漸増して最大点(又は最小点)に達し,次に最 るようにしている。そのため,この尖頭点までの
小点(又は最大点)となり以上漸減して終点に致 減減部分はすでに各々半サイクル分としてカウ
る尖頭点列となる。こうしてできた尖頭点列は, ントして,被害を求めている。次の尖頭点によ
44
24 1
ノ 812/ ’ 42
も 、1
1141・1182・
ユ
、369’11116 ’31
珊禦禦ジ㌔日
∫8
45 49
47
17
図17 RMFによる有効区間の決定(14図と同じ)
注)破線の部のは各半サイクルの有効区間を太実線
の部分は各1サイクルの有効区間を示す。
43
り,この漸減部の一部又は全部が稲妻型となるな まえば,消去してよいので,計算機の記憶量の節
らば,漸減部分の半サイクル分は被害の総計より 約という点でもずっと有利である(例えば前記の
キャンセルし,新たに出来る1サイクル分の被害 図17の例では,全尖頭点数51個に対し,記憶し
を加える様になっている。なおフローチャートを ておかなければならないのは尖頭点番号で・17・
ApPendixに添附した。 44,47,48,49・50・51の7個だけである)。実
(n)尖頭値が全部与えられた場合 際に組んだプログラムも狭義のRFMによる方
最大・最小法の手続きに従って3節に述べた標 がずっと簡単になるし,従って,計算時間も速
準手続によって有効区間の分割がプログラムでき い。また,始めの尖頭点より任意の尖頭点までの
る。この方法によらないで,あい隣る4個の尖頭 被害の総計を求めることもできる利点がある。
値が稲妻型のパターンになっているかを尖頭値番 以上,狭義のRFMとMMMをプログラミン
号の若い方から繰返し調べてゆく方法がある。す グ上で比較して見ると・実用的な意味ではRFM
なわち,尖頭値4個1,1+1,1+2,1+3を読 による方がずっと有利である。
:㌶;惣㌶竺鐘蕊㌶6R・inF1・YM・t血・dと既存の方法との上ヒ
の二つの尖頭値ではさまれる部分を消去しBI., 較およびRaln F1°w Met血゜dの糖
一BI.、で1サイクルをカウントする。ついでこ 河本らは全波法4)と称する波形解析の方法を提
の両端に続く2ケの尖頭値BI… BI・・を読み込 案した。これはヒステリシスカーブの中に生ずる
み,BI、、←BI.3, BI.,←B、.、, BI・3←BI+・とおき 小ループが不規則荷重のもとで生ずることに着目
かえて,上述の手続を次々に行なう。このパター する点, レンジペアカウント法やRFMと共通
ンにならない時は,BI←BI.、, BI・1←BI・2・BI・2 の基盤に立つ。 しかしRFMの最大・最小法の
←BI.、とおきかえ,1個読み込んでBI・・とし上 説明でのべた半サイクル区間のとり方に相違があ
述の手続きを行なう。この操作が最終点まで来た る。レンジペアカウント法と RFMとは共通点
ら,改めて先頭から同様の手続を繰返し・稲妻パ が多いが,レンジペアカウソト法では本論文にの
タ_ンがなくなるまで実行する。このとき最後に べているように,半サイクルの取扱がRFMと異
残った区間は半サイクル区間とカウントする。 なり,かつ平均応力が考慮されないものと解釈さ
狭義のRFMとMMMのプログラミングの立 れる。すなわちレンジペアカウント法では・その
場からの比較。 名の示す通りレンジをペアとして取扱うとの基本
RFMとMMMでは,被害を算出した場合・ 的な考えがあるが, RFMにて説明したように・
結果は全く同じであるが,その取扱い方が大きく 半ループになるレンジの評価を無視することはで
異なっている。まず,MMMでは,尖頭点列の きない。この点レンジペア法と狭義のRFM・最
全体を見て,最初,最大値と最小値を求め・次に 大・最小法すなわちRFMとは異なっている。
順次小さな有効区間を求めていく。 この様にし レンジペアカウント法はRFMに比べ半サ・fク
て,すべての有効区間を決定した後各有効区間 ル分をカウントしすぎたり落したりする。しかし
での被害を求め,それを総計して全被害を求めて ながら,その間の差は実用的な見方からすると一
いる。したがって,尖頭点列の全体を常に把握し 般には少ないと考えることができる。実際両者の
ていなければならず,尖頭点の数が大きくなれ 差はペアを作らぬ半サイクルの数え方と平均応力
ば,計算機の記憶容量の問題等,多少取扱いにく の考慮の有無である。たとえば・図18において
い面もある。 レシジペアカウント法とRain Flow Methodを
これに対し,狭義のRFMでは,最初の尖頭 比較すれば両者の相異は明らかである。なお従来
点から順次,並び方のパターン分類によって処理 の解析方法(著者のRFMを除く)に関しては
して被害を求めていく。この方法によれば,すべ 田中・柴田5),Schijve1)またDowlin96)など』に
ての増増部と稲妻型のものは,被害計算をしてし 詳しい。以上の説明によりRFMの特色は明ら
44
(a)レンジベア法 一一ひずみ 一
0
↓8
3.RFMによってランダムに変化する応カー
三肇斐.3 ひずみの情報はその尖頭イ直の出現の順序と大きさ
4
」__一一一一一一
6
≡.−5, の関係を考慮に入れて分解され・応力また1まひず
」一一_一一一一●一一一一
§
g みの「振幅と平均値」を組として組数が決定され
サイクル
1サイ,,、 る。応力またはひずみの値が与えられる毎にこの
1サイクル
1サイクル
組数は確定するから,これに被害法則を組み合わ
せて被害の数値(たとえばD一Σ緩)がきまる・
(b)R、i. Fl。w M。th。d ___ひすみ このことは将来Minerの法則に代る改良された
峯・ 被害則が考案され塒にもRFMと組み合わせ
唇
0
4
芦・ )
5 ) て被害を求めうることを意味する。
↓・
7
7 4.RFMによれば図14のような尖頭値の系
時 8間
9 Ψ
91/2サイク、. Ψ 列を示す図が与えられる時,少しの熟練で極めて
@1/2サイクル
迅速に有効区間を決定できる。このほか電子計算
1サイクル
1/2サイクル
1サイクル
1サイクル
1/2サイクル
(c)ヒステリシスループ
機のプログラミングも可能である。
5. 尖頭値がきまると,応力,全ひずみ振幅,
£力 157な 塑性ひずみ振幅をきめることができる。またこれ
らを組み合わせた量,たとえば応力振幅とひずみ
振幅の積(近似的なヒステリシスループの面積)
02 @ ひずみ などをもとに被害の計算が可能になる。
6.RFMを特に否定するような実験結果はま
だない。逆にこれを支持するような論文がある7)。
在
8 6 4
7 RFMは既存のレンジペアカウント法と結
図18レンジペア法と狭義のRain Flow Met血od 果的にもその考えの基盤も類似点が多く・実用的
によるひずみの区間とヒステリシスル_プと にはその差が問題にならぬことが少なくない。特
の対応(Dowlingの図) に変動荷重に周期性があり,かつ多くの周期の繰
返しによって破壊が起る場合,両者の差は無視で
かになったが・その特色をまとめてリストアップ きる。しかしカウントの手法は互に全くことな
すれば次の通りである。 る。
1・ ヒステリシスカーブの切線係数の連続性 8. さきに7でのべたレンジペアカウント法と
(すなわち・いったん除荷したものに再負荷し の関連について更に付加すれば,RFMにおける
て・除荷開始時よりもさらに応力やひずみが大き M部分での分割に関しては,レンジペア法のレソ
く作用するとき・除荷開始点以後の変形は除荷前 ジ区間を多くとってやれぽ両法での有効区間は一
の応力ひずみ曲線の延長上にのり・再負荷曲線の 致するが,最大・最小法での半サイクルカウント
延長上に来ない。そしてこの間ヒステリシス曲線 に対応する有効区間の部分は,レンジペアカウン
はループを画くこと),およびひずみが初めの値 ト法ならびに全波法と本法では異なる結果を与え
に戻ってもヒステリシス曲線は閉じないことが る。
あることが・広義のRFM(狭義のRFM,最大 9.広義のRFMのうち狭義のRFMでは尖
・最小法)ではよく考慮されている。 頭値が与えられる毎に,前の尖頭値に対する有効
2・RFMでは有効区間の算定にあたり,変形 区間をもとに容易に有効区間が定められる。いっ
の各過程は上記1.の事情を考慮するため相隣る ぽう最大・最小法では,これまでに受けた尖頭値
尖頭値間がどの部分も必らず一回カウントされ, の情報を全部一応使って始めて有効区間がきま
一回に限ってカウントされる。 る。しかし双方とも同一の結果を与える。なお尖
45
頭値が順次与えられて形作る図形が図14の2→ 叉
3→4→5→6→7のような蹄妻剃をとる 邊
か,あるいは9→10→11→12→13→14のような
増増(あるいは減減)の形をとるかを,すなわち
パターンの分類に着目して有効区間を定めること
もできることはRam F1◎w Me施◎dによるプ
ログラミングの節でのべた通りである。 ひずみ
1α 塑性ひずみの尖頭値系列によって有効区間 ノ
をRFMで決定する場合にヒステリシスループと
の対応が完全につく。しかし応力または全ひずみ
対時聞の関係で代用して区間を決定してもよい。
その差は稀にF,R区間内に現われ,実用的には りγ
殆んどの場合無視してよいと考えられる。しかし
応力に対しマイナーの法則を用いた被害と全ひず 己 フ
みに対しマイナー則を用いて算出した被害とは,
同一材料,同一の負荷の同一繰返しにおいても一 図19b)ばねとスライダーの並列モデルにおけるヒ
般にはことなる。ToPPer・Smith・Watsonのよ ステリシスループの特性が・実際の金属の
うに応加ずみの積(近似的にヒステリシス・レー 蹴再負荷特性と対応すること
プの面積に比例する量)と破断繰返し数を有効区 ばねダッシュポットモデルを電気回路にシミュレ
間からきめて被害を計算することもできる。 一トして電気的なサイクルカウントを行うことの
U.本法はランダムひずみ波形,重複ひずみ波 可能性を示唆している。
形,いわゆる双子ひずみ波形など重畳ひずみ波形 13. ランダムに与えられたひずみの順序系列が
などいかなる波形にも例外なく適用できる。 与えられたとき,その全体を固定し,これを一つ
12.ばねスライダ並列モデル図19a)を用いれ の単位としこれをブロックと名づけ,そのプロヅ
ぱ,モデルのヒステリシスループは図19b)に例 クが繰返される場合におけるサイクルカウントの
示するように金属のそれに近似的に対応する。こ 取扱いも簡単である。すなわち図2◎に上にのべ
れよりRFMをこのモデルと組合せると,被害 たランダムなひずみの順序系列のブロックBの繰
のシミュレーションが可能になる。このことは, 返しを示す。各ブロック内には最大・最小値が存
在するから,これをMAX, MIN
U㌔CD とし図のようにさらに添字をつ
KI K2 K3
Pyl Py2 Py3
ける。B、, B2…B.はその形が互
3 に全く同じ与えられたプロックで
Py輌昌Pyi ある◎またBノ、, B㌔…B㌦.・はそ
の形がブロックBのMINではさ
のび
D’ まれるところの,互に全く同じプ
/Q E D” ロックである。図より明らかなよ
D・ うに,与えられたブロックが繰返
塀 される全区間での有効区間は,
D
(η一1)個のB’区間内の有効区
間と,図に示すF,R’区間の有
図19a)ばねスライダ系によるヒステリスル_プの 効区間の集合として評価される・
・ シミュレーションのためのモデル 刀が極めて大きいときF,R’の
46
MAX1
ぺ
MAXn
●
十・
も
ー
●
‘
曽
◎
時間
●
o
1
■
●
MINI l
MIN・
P
岨N・1
MAX k
M脳R
図20 ひずみのブロックが繰返される場合
全被害への寄与率は小さくなり,これを無視して て,ひずみ振幅半サイクル当りの被害が評価でき
もそのサイクルカウソトの結果はレンジペアカウ ることになる。実際興味あることはひずみとして
ソトとほぼ一致する。このように最大・最小間で 全ひずみをとるか,塑性ひずみをとるか,応力を
閉ループを描き,その中に小波が含まれる場合に とるかによって有効区間の尖頭値番号の組は変ら
おいてのみ,レンジペアカウント法による区間 ないが,Miner則と組み合わせた被害は同一の
は,RFMによる区間に一致する。 不規則波形に対してことなる結果を与えることで
14 塑性変形に伴なうエネルギ消費が振動減衰 ある。
の原因となる動的諸問題において,「RFMで決定 このことは,ひずみに変換をほどこし,「材料
されるひずみの区間に対応する塑性変形のエネル に固有な仮想的なひずみ対破断繰返し数の関係」
ギ」を減衰項として取り扱うことができる。たと を設定して繰返し数比の和として被害Deを定
えば,大きい不規則な外力を受ける耐震構造物, 義すれば,疲れ破壊の繰返し数の推定を行なうこ
船舶などの動的挙動の解析にあたって応用され とができることを示している。しかしながら,本
る。 論文では以下簡単のため主として全ひずみ(また
またすべり要素をもつ構造物の変動荷重下の挙 は塑性ひずみ)振幅と破断繰返し数との関係をも
動を論ずる場合にも,上述12のばねスライダモ とに寿命や被害の計算を報告する。
デルに対応させて利用できる。 b)材料の性質に関する予備調査
材料の定ひずみ疲れ試験によりMans◎n・C◎伍n
τ Rain now Methodによる疲れ被害の具 線図を定めると共に繰返し応力_ひずみ線図を
体的計算方法 求めておく。例えば漸増漸減のひずみ振幅によっ
ここではラソダムに変動するひずみの時間的変 て繰返し応力ひずみ曲線は近似的に求める著者ら
化が与えられた場合に,RFMによって被害を計 の一人の方法を用いてもよい8)。またManson・
算する方法の一例についてのべる。 C◎伍n線図は一回当りのひずみの繰返しによる
a)方針の設定 被害を数値化するに当りその尺度として利用す
RFMの尖頭値としては全ひずみ,塑性ひず る。
み,応力(弾性ひずみ)またはその組み合せによ c)ひずみの時系列の分解
って誘導される量のそれがとれる。これにMiner これまで尖頭値の系列の分解の例をいくつか示
の直線被害則または他の被害法則が組み合わされ したが,図14の形が与えられて有効区間を定め
47
る操作に要する時間は,熟練にもよるが,著者自 する諸方法の差を明らかにする諸実験をいろいろ
身でRain Flow Methodによって全尖頭値約 のひずみ波形を用いて行ない・有効区間法と真線
200個を分解するのに約7分間,一一個当り約2秒 被害則を用い(使用材料の直線被害則が成立する
で済む。もちろん計算機によるプログラムを作っ ことをあらかじめチェックして)破断時において
ておけばデータのデジタル化の時間が主要な必要 算出された被害の値を求め,これが1の附近に
時間になる。 (疲れ破壊の繰返し数のデークのバラツキ範囲
d)被害の決定 で)存在することが示されるならば・破断繰返し
通常のランダムひずみによる疲れの問題では有 数(より厳格にはき裂発生の繰返し数)がRFM
効区間が定まれば平均応力の影響は少ないとして によってよく推定されうることを示したことにな
省略し,疲れ破壊はひずみ振幅で定まると考えて る。
よい。ひずみの全振幅から b)で求めたMa一 著者らはこの考えのもとに,ランダムの波形や重
nson−Co伍nの関係ないし4ε、対N〆の関係か 畳波形をなす応力またはひずみを・巨視的き裂発
ら,そのひずみ範囲4ε,の半サイクル当りに2/ 生の確認を行ないながら炭素鋼S25 C・炭素鋼
Nプ(ただし2V,は閉ループ1サイクルの数)の被 S45C・アルムニウム合金JISA 2024−T 4など
害が加算されるとし,この被害の加算値が1とな に与える実験を実施した。以下その数例を示す。
るところを寿命の推定値とすることは最も簡単な まず(i)重畳波形のもとでの実験結果にRFM
方法である。菊川,大路,城野91らは疲労損傷は を適用して算出した寿命と実験結果がよく一致し
ひずみ振幅のα乗に比例するとし,さらにその た例を報告し・ついで(ii)ひずみを正規乱数表
線型累積を仮定して予測した破断繰返し数が実験 にもとついて制御した場合の寿命を,種々の寿命
値とよく合うことを示したが,ここでは以下工学 計算法によって求めた結果を述べる。
的き裂の発生に着目して上記の最も簡単な方法に 1) 重畳波形の実験
よって推定した寿命と実験結果の比較を行なう。 重畳波形疲れ試験におけるヒステリシスループ
なお,ひずみの振幅を∠ε/2とするとき,被害 の波形を図21∼図25に示す。図21の波形は応力
にきく振幅の限界4ε、/2を定めて,それ以上の の時間的変化がsinぴ+sin3ぽであらわされ双
大きさのひずみ振幅のみを対象とし,被害の計算 子波と名付ける。図22では大きいヒステリシス
を行なえば簡単になる。 ループのABFGA中にその塑性ひずみ振幅が1/
平均応力を考慮することについては菊川9)らや 2の2個のループABCDEAとHIJFGHとが
Dowling618)の論文が指針を与える。 附け加わったもので,ひずみに関する双子波形を
なしている。S25C丸棒のねじりモーメソトとせ
8・種々の変動ひずみ(ランダムひずみを含む)ん断ひずみの関係の実測例姻2324に示した。
のもとでの疲れ試験結果とRFMによる推
使用試験機は写真1の2号試験機で,sinωノ+C
定値との比較
sin(ω、糾α)なるひずみで振り疲れ試験を行なう
与えられたひずみの変化からRFMによって ために特に試作した11)。ただしτは時間で,ω1/
カウントさるべきひずみ(または応力)の振幅と ω,は替歯車装置をとりかえることによって1/1,
その繰返し数Nがきまると,使用材料の一定ひ 1/2,1/3,1/7,99/100などと変えることができ
ずみ(または応力)振幅のもとで得られたひずみ る。また本機によって得られたひずみ一時間関係
一破断繰返し数の関係ならびに被害法則を組み合 の例をω・/ω・−99/100のとき図26に示す。ω1は
わせて,被害が前節のように計算され実験と比較 毎秒約1サ・イクルである。替歯車を写真2に示
できる。このことは「RFM」のような「サイク す。ねじれ角測定には写真3のコンデンサー式ね
ル数をひずみの振幅,平均の関数としてカウソト じれ角測定具を用いている。図22(a)の小さい
する方法」を実験的に単独には検証できないこと 方のループの塑性ひずみの大きさがさらに大きく
を示している。しかしながらサイクルをカウント なってその1・5倍になると・図22(b)・図23と
48
写真1 重畳波形ひずみ振り疲れ試験機(2号機)
左)は正面,右)は裏面。Sは試験片, Kはクランク腕, E:偏心装置
R
逼
A E ヤ A
E
↑
B D D B
H L L せん断ひずみ
C 時間H C
G GJ
F K KF
図 21 双子波形のもとでの時間,応力関係ならびにヒステリスループ(説明図)
曇 曇
H 申
A
E E
せん断
D ひずみG D I せん断ひずみ
(a) (b)
図 22 重畳波形のヒステリスループ(説明図)
49
なる。図25はつる巻ばねのサージング応力 ×106
に類似の応力波形とそのヒステリシスループ 200
を示し,主として高サイクル領域で写真4の
1号試験・・)を用いて実験したが,ここで 100
△γt1
は低サイクル疲れを中心に,主として2号機 △γ・2
(写真2)による研究をのべる。2号機の使
用試験片は図27状試験片で使用材料はS25
Cである。図28はそのManson−CofHn線
図で,拡大鏡を用いき裂の寸法をもとに定め
た寿命をき裂発生として植点してある。また
き裂が明瞭に多数認められるばかりでなくそ 図23重畳波形のヒステリシスループ
れらが結合進展するころには同じ振れ角振幅 ×106
0900
の繰返しのもとでもモーメントが減少する。 200
したがって準定常のモーメント振幅の1/2に
そのモーメントが減少した時点の繰返し数を 100
△γt2
△γt1
併記してある。図29の実線は図28を写した
もので,図29中の実験点は次のようにして
植点してある。すなわち,たとえば図22a)
の応カーひずみ関係で実験する場合,ヒステ
リシスループが完全に一まわりかき終ること
に対応するひずみ波形の一周期をまとめにし
て1ブロックということにするとき,この繰 図24重畳波形のヒステリスループ
返しひずみの1ブロックは「AF,
AC, HFをおのおの両尖頭とする3
組で・個のヒステリシスループ」に相 曇
当するひずみの繰返しからなるが,こ
↑
れを1ブロック当りに等価な被害に換
算して取り扱うことにする。すなわち
図24の∠γ、1/2,∠γ,2/2に相当する破
壊繰返し数1罵、,ハ㌃2から1ブロック
当りに1/ハ㌧、と2/瓦2の被害がある
ことになる。すなわち1ブロック当り
(1/N’・+2/N・)の被害を受けたこと 図25聾波形のヒステリスループ(説明図)
に相当すると考えられる。したがって
実験点は∠γ、、/2のひずみ振幅を何回受けたこと 験結果を示した。炭素鋼S45Cや高力アルミニウ
に相当するかに換算して植点してある。したがっ ム合金JISA2024−T 4を用いて,平滑材と切欠材
て一定のひずみ振幅のもとで得られた4γ、、/2対 に双子波形のひずみが繰返される場合に実施した
礼の線図上(実線上)に実験点がくれば,重畳 実験も好結果を得た。すなわち炭素鋼S45Cの焼
波のもとで寿命の推定方法は一つの確i認をえたこ 入れ(850°C水中)焼戻し(600°C油中)材と高
とになる。すなわち,図29では有効区間法が重 力アルミニウムA2024−T4(図27の試験片使
畳波ひずみ下の寿命予測に適用され好結果を得た 用)を用い,き裂の発見には280倍の工具顕微鏡
ことを示している。なお図30にも双子波形の試 を用いて0.01mmのき裂発生に着目して実験し
50
I l 写真2 2号機疲れ試験機の替歯車
図26 ビート波形のひずみ
’ ぺ:ン:る㍉,べ、ンー㌶◇㌧ ニベご,.∴
・ ∴パ ∴・・,∵ 、・ ㌧ミ\〆\・∴・/ざ≒、ぐ・.べ・・ごノぶ
’ . 。ぶ1◇㌧バ㌧一。、・。 1㌔/∵∨ :1べ;バこ㌧,㍉∵1“㌧:1:1㌧:ご1.パバ㌫・ 。\1・㍉念
〆 がぷぷ㌫ぷ〉一パ…__い・∴。ざ :.1∵: ・:毛㌧∴一’1、∴ 六ン
毒 ・ ジ 六 、 紗 戸 “ ㍗ 。
”㌧餌\ズ蟹ご㍉で二∴ ・
∴1鰹幽.瓶臨 幽
墾 纂・纏 ,議
該 ㌘ N
ξ
写真3 容量変化型ねじれ角検出変換器を 写真4 変動波形ひずみねじり疲れ試験機
試験片に取付けた状況 (1号機)
た。き裂の発生をしらべるため,試験中随時実験 されたい。
を中断して観察した。平滑材および半円形長手溝 また同様の実験を高力アルミニウム合金につい
の切欠材(半径aの円断面の周囲上にその切欠半 て行なった結果を図32に示した。この図は平滑
径bの中心をもつ長手溝切欠)を用い,単純な一 材にも切欠材にも,ともに双子形のひずみを繰返
定ひずみ振幅のもとでの全せん断ひずみと,き裂 し作用させて得た場合を示している。これらの実
発生繰返し数との関係,および双子波形のひずみ 験結果は「切欠材のひずみの分布に関しては著者
の繰返しが試験片に作用するときの最大ひずみ振 らの計算法1)を用い(切欠材については外力と切
幅とき裂発生の繰返し数に関する試験結果をあわ 欠底のひずみは比例しないことに特に注意すべき
せて図31に示す。なお切欠材i疲れ試験結果のひ である),波形の分解に関してはRFMを用いれ
ずみの植点法については著者らの論文’2’を参照 ば,き裂発生の繰返し数が平滑材の疲れ試験の結
51
a) b)
写真5 a)長手ひずみエキステンソメータ b)直径ひずみエキステンソメータ
果のみを基に推測できること」を示している、
180
a)
4 N
rl8 N パ ま緒者らは図26に示すビート灘のひずみ
u20
4
76
寄 、ぷ 、4!、
令
を受ける切欠材のき裂発生寿命の実験も行なっ
雲一’
●
●
夢 た・顎・に示す2号試撒を用い左右のクラソ
夢180
4
4 N
76
,ぷ籔鷲1ヒ㌫曝㌶∴㌶‡
Q0
b)
思一 〇◎一一 ’
Φ
45 ” 850°C水焼入れ,600℃油焼戻し材で,切欠・平
45
雫芦
芦 滑材の実験を行なった鋤欠の形は半円形長舗
。)b)醐汲r湖(A2。24−T4用/ で・き裂の長さが゜・1∼°・3mmとなる繰返し数
を求めた。平滑材の実験結果をもとにビート波形
のブロック数と最大ひずみの関係を求めたものが
図33の破線で,これに対してビート波形のもと
c)
hA 。。㌍、61&2・芸欝濃《瓢竺襟
● ・クとは図26における約53m鋤こ相当するひ
ずみの繰返しを単位として数えるものとする。こ
d)
§頃瞬竃蝦i撒譲覧iill
、 ずみの繰返しによる硬化がいわゆるコーキシング
c)d)単純,双f二波用(S45C用)
効果と類似の原因によってあらわれたためと考え
A B られよう。このような効果をどのようにとり入れ
35 1 15 るべきかは今後の研究課題である。
50 30 2) ランダムひずみ疲れ寿命推定への有効区関
図27重畳波用ねじり試験片 法の適用
著者らはS25C−B, K炭素鋼 (σB−46kg/
52
一16
¶
il
§
㎡
繰り返し数一N
4γ,/2 ∠1γρ/2 7γε/2
き裂発生 ●(D● 一_1°94γ/2=1°gC−≡竺 ...
モーメント半減 ○ き裂発生 モーメント半減
・η/2−∋…/2−Nl・・諾N− ・,万万
_ 一 __一一 1
cε
0.4814 108.0
54.06
53.74
m
−0.4487
−0.4578
−0.ユ093 −0.498
図28 S25CのねじりのManson−Comn線図
(平滑,正弦波),(S25C−B)
10
§11°
翼L。
1㎡
申1 10 102、103 104
繰り返し数→N
」…/4・・2≒2/1
@き裂発こL ㌢2
4γヵ/2
4γ。/2
⑭
①
4γ,1/∠fγτ2=4/3 −一一 一 一 . 一一一 一一一
モーメント半減
き 裂 発 生 X
モーメント半減
○
○
●
●
図29 S25Cの重畳波の疲れ試験結果
((図22(a)(b)の波形での実験)
mm2 j, S 45C炭素鋼(S45C−M)(σ・−80・Okg た試験片形状を図34,図35に示した。引張圧縮
/mm2)・および超ジュラルミンJIS A2024−T+ の場合,直径変化を検出し,振りの場合には振り
Mを用いて,引張圧縮または振りのラソダム疲れ 角を検出してひずみで制御した。すなわち,北川
の実験を低サイクル疲れ領域で行なった。使用し の乱数表から極大・極小が交互にあらわれる数列
53
͡ 〔
102
≦ 102
P0
@1
言
1△ 。 o
理 _1
│1
P0
蝶 10
▲
△
2∠一
o
’白 一
一2
P0
装 10
│10
103 104 105 106 107 10
ユ 10 102
8
繰り返し数一一一→N
全ひずみ
∠γ,/2
弾性ひずみ
塑性ひずみ
∠γ,/2
4γρ/2
正 弦 波
○
△
口
双子波(応力比1:ユ)
双子波(ひずみ比1:1)
●
▲
■
○
▽
◇
図30 S25CのMa皿son−Co缶n線図(S25 C−B)ω1/ω2=1/3
i↑
!1
D
き裂発生繰返し数Nc
図31 S45C疲れ試験結果
● 平滑試験片 単純波形 図中右向き矢印は図示のNc以下で
○ 平滑試験片 双子波形 一一一一 き裂が発生したことを示す。
△ 切欠試験片 双子波形 一一一一一
を作り,これに一定の倍率をかけた値が全ひずみ サイクル数計数法による被害もともにデジクル計
の尖頭値となるように手動で制御し負荷除荷を行 算機で計算した。試験片の破断の時点でのRFM
なった。被害の計算には直線被害則,Manson・ による被害の計算値(一定ひずみ試験結果をも
Co伍n線図およびRFMの組み合わせを基礎と とに計算)とRange−Pair Count法による被
し,全ひずみを用いてRFM以外の他の代表的な 害の計算値とを並記した結果を図36∼図39に
54
§1°
㌔↑5
誉
ζ ・)鮮言式験片
§1
中α5
510 50100 500
き裂発生繰返し数Nc
( 図32高力アルミニウム合金疲れ試験結果●平滑材,○切欠木材,A2024−T4,双子波形) 」 M16
10
(
、こ▲ 、、 、
逼
s 、 、、
・・
曇
b)砂時計型試験片
●
ξ11
、
図34 引張圧縮疲れ試験片
、、● 、
■、ミ\亀
曇
害の計算値で,その円の中心は0.1,直径
§
6.5cmの円は被害が10をあらわし,その
間は対数目盛がとられている。外周の番
一
10
3 号は試験片番号 そのあとのカッコ内は
10
102 10
101 1
ブ。ックを繰返した数 北川の表によるラソダム正規乱数に乗じ
た係数の値で,この値が大きいものはひ
図33ビート波形疲れ試験 ずみの大きいランダム変形を受けたこと
示す。図において直径3.3cmの円は試験片が をあらわす。この円グラフから,被害の値はおよ
ランダム荷重を受けてき裂を発生した時点での, そ1附近にあることがわかる。すなわち三種の材
定ひずみのManson Co伍n線図から算出した被 料を用い,合計53本のランダム疲れ試験片を用
22
36
P5
15
令 cN_.
・ 一
. ・ ●
78
◎o_.
.
§≡卑
62
/
P75
22
36
15
P
§≡十
令 ◎o_・ .一
旦o_. 一
. ■
78
∫
62
175
図35 振り疲労試験片
55
10・20(×α8)
5)
(×
buckling
10(×20)
図36 S25Cの低サイクルランダム引張圧縮疲れ試験(S25CK)
実線は著者の方法によるき裂発見時の被害。
破線はRange−Pair Count法による。
図37 S45Cの低サイクルランダム引張圧縮疲試験(S45C−M)
いて引張圧縮および振りの疲れ試験を行なった結 た。この表の値は使用材料の特性たとえばMan・
果,破断時の被害は0.4と1.6の間にあり,一一方 son・Co伍n線図などや,乱数の種類(正規分布に
RFMで被害が1になるときの被害を諸種の既存 従がう乱数かその他の分布に従がう乱数かなど)
のカウント法で算出して表にすれば表1が得られ によって変化するが,ランダムに変化するひずみ
56
(×
図38 A2024−T4(2024−T4相当)の低サイクルランダム引張圧縮疲れ試験
S ・・B−1・1(×75)
25CK
104
(×5)
2B−25
(×15)
103
(×2.5)
(B−2、×7.5)
/
(×375)
/
図39 低サイクルランダムねじり試験
による被害の数値間の関係をおよそ示すものであ れそれ加工硬化の観点から欠点があるにも拘ら
る。またこの表より正規乱数によるランダム疲れ ず,ランダムひずみの場合にはその差が23%を
においては,計数方法が簡単な,Mean Crossing 越さない点,実用上興味がある。著者らはまたラ
Peak Coullt法がRFMによる被害に近い被害 ンダム疲れの研究を主目的の一つとして電気油圧
を与えていること,ならびに各種カウント法はそ サーボ式疲れ試験機ならびに抵抗線歪計式パイ型
57
表1Rain FIow Me也odと各種カウント法に テンソメータ(写真5)を用い,函数発生器と結
よる被害の比較。 合してランダム疲れ試験を実行中で上記の表の精
ζ芒ぽ麟蹴㌶離繋4 密イヒについても研究中である.ラソダムに変化す
中である。) るひずみのモデルとして図40に示す波形のひず
1.00 みを試験片に与えて疲れ試験を行なっている。な
Rain Flow Method
Range Pair Count法
Mean Crossing Peak Count法
0.91 お使用試験片形状は図41に示す。これまで得ら
Range Count法
Peak Count法
ψ一69%)焼準材に関する結果,ひずみ波形の大
Leve1 Crossing Count法
1・06 れたS15C−MSU(σ、−44,σ.−103 kg/mm2,
0.88
1.20
1.23 きさ(平均値0からの高さ)が1%附近でき裂発
生時の被害の平均が1.13(試験片6本,最小α6,
ぐ 」 最大1・66)を得ている・この研究セまこれからも
続行し補足される予定であるが,現時点までの結
も 果でも著者らのRFMが有用なことが示されて
いる。
3)米国におけるRFMの検討
Dowling6)はMorrowの指導のもとで著者ら
の提案する区間決定法Rain Flow Methodを検
a)標準試験片 討する実験研究を行なった。その研究は重畳波,
ランダム波ならびに平均応力の影響等きわめて
精細なものであるが,その結果,著者らの方法
を最善の方法として全面的に支持している。詳細
“ ノ は原蜘こゆずるカ㍉たとえばランダムひずみ波
形は図42に示すものを用い,RFMを用いて各
。 種ひずみに対して破断時の繰返し数比を頻度分布
として示したのが図43である。Dowlingは図44
に類似の小型試験片を用いているので破断時の繰
返し数比は(き裂伝播期間が短かいため)本論文
の被害の数値とほとんど差がなく,これが1のま
b)砂時計型試験片
図41電気油圧サーボ式疲れ試験片 わりセこ分布していることは著者らの方法を支持し
酬
;
ξLL
時間
図40 ランダムひずみの波形(九工大)
58
斥
警 ! 1
1‘
1lll↑
迫 S
控
△εrs
桶
⊥
’名〔
図42 ひずみまたは応力の時系列(Dowlingの図より)
14
12
10
蒲 8
鑑 6
誕 4
2
0
ゴ 頃 q∼ 1≒ α∼ σ〕 ⊂∼ 〔 『 cつ 寸 吟
o o o o o o − ←→ 〔 一 一 一
繰返し数比の和
図43 Rain Flow Met血odによって破断時の被害を算出した
もののバラツキ(2024−T4 Dowlingによる)
ていることを示す。 関する著者の一人の研究を示す。
Suidanらは耐震構造物の疲れに対しRFMを 最後にRFMを利用するときの注意をのべて
使った。このほかLandgrafによってもRFM おきたい。 RFMは被害法則と組み合わせて利用
を支持する論文が出されているが詳細は原論文7) される。したがって直線被害法則そのものの研究
にゅずる。 のみならず法則がよく成立する材料を用い条件を
以上の諸実験研究において,き裂発生時におけ 選んで応用されねばならない。本論文において,
る被害の数値が1のまわりにバラついている。し き裂の発生寿命の推定に同法を組み合わせた実験
かしながら疲れ試験においては極めて注意して 結果を報告しているのはEngilleering crackの
(たとえばロードセル,テンソメ・一タをほとんど 発生に関して直線被害則が破断寿命に比べよく成
試験片ごとに検定の上)一定のひずみ振幅で実施 立すると考えたからである。また平均応力の影響
した疲れ試験の破断繰返し数にも,材料固有のひ を考える時や破断寿命を論ずる場合は,き裂の伝
ずみ振幅に依存するバラツキがあることを考えれ 播および停止に関する複雑なき裂先端の挙動,特
ば,RFMによる被害の推測は極めてよいと言え にcrack closureの概念13>14)を入れた法則を樹
よう。図45(a)∼(c)にはデータのバラツキに 立しなければならない。複雑な荷重下の切欠材の
59
強さを論ずるときにも詩に切欠底附近シ竺峻 音一18T,・
形が繰返されるときは切欠底のひずみ振幅が荷重 1R 1
振幅と比例しないので,外荷重にRFMを機械 ・・25・D百D
的に適用することは避けねばならない。 ミD
9. 結 論
本論文において,複雑な波形をもつひずみ(ま
たは応力)をうける金属の疲れ寿命を決定するた
め,RFMと称する区間分割法を提案し,その応 a)標準試験片
用につきのべた。
RFMの主な特色は次の通りである。
1.本法は金属材料の加工硬化特性,特に除荷
再負荷時の加工硬化曲線の切線係数の連続性や, 音_18Tpi
応カーひずみ関係が閉じたヒステリシス・レープを
@L†DIR・25・D
作らない条件をよく考慮している。 旦D
8
2.変化する応力またはひずみの情報は,その
一⊥、
極値の出現の順序と大きさを考慮して処理され
る。
3.RFMによる処理結果は,振幅と平均値と 4・35
を与える。 d)砂時計型言式験片
4.RFMのデジタル計算機用のプログラミン 図44インストロンフロア型試験機用試験片
グは容易である。 (本図に限り米国にて使用したためインチ
5.既存の方法のうち,レソジペアカウント法 寸法を使用し・米国製図法によった。)
と比較的近いカウントの結果を与える。特に,応 果は一致する。
カーひずみ関係が閉ループを作り,その中に多く 6・RFMを検討するための実験結果は・同方
の除荷再負荷を含む:場合には,両者による処理結 法を支持した。
掛70
営60
騨50
嵩40
1 10 102 103 104 105 106
繰返し数 Nf
図45a)一定ひずみ振幅における破断繰返し数のバラツキ(2024−T4,遠藤Morrow)
60
戴60
誉50
響4・
繰返し数Nf
図45b)一定ひずみ振幅における破断繰返し数のバラツキ(7075−T6,遠藤Morrow)
樹70
誉6・
璽5°
繰返し数Nt
図45c)一定ひずみ振幅における破断繰返し数のバラツキ(SAE 4340,遠藤Morrow)
7 耐振構造物の塑性変形を伴なう複雑な荷重 はその修士論文にこれをまとめている15)。昭和
変動下の挙動を論ずるときは・RFMをもとにそ 45年5月イリノ・f大学Morrow教授の京都滞在
の減衰の計算を行なうことが合理的である。 中,著者の一人がその内容を紹介,Dowlingは同
教授の指導のもとで本法を実験的に検討し,その
あとがき 論文のApP。ndix中に織のR。in F1。w M。.
本論文中狭義のRain Flow Methodは42年 thodを紹介した6)。著者は両氏に深甚なる謝意
4月に完成し,最大最小法は42年8月一応完成 を表するものである。また昭和46年第1回ICM
し,この結果を昭和43年3月日本機械学会九州 (於京都)においてスタンフォード大学Fuchs
支部講演会において最大・最小法を中心として 教授と松石修士論文を前に本法につき討論した。
Rain Flow Methodを発表した16)。また松石 同氏の討論に感謝する。また小谷,鯉淵氏が日本
61
機械学会誌にRain Flow Methodを紹介した17)。 No.2, March 1972, PP.55−98.
併せて謝意を表する・ ユ3)ユ2鷲一聾㌶欝欝讃夢㍊㌫
本報告を欄筆するに当り・著者らは九州工業大 P.17(論文講演)。
学名誉教授中川元先生の御指導と御激励とに心か 14)W・Elbe「・ASTAM STP 486(1971), P.230
らなる謝意を表したい・本研究の一一姓の 麸㌃駕4㌘AdamあEngg F「actu「e Mec瓦
在職中,九州工業大学機械工学科材料力学実験室 15)Masan。ri Matsuishi, A study。f Low Cycle
で行なわれたものである11)。 Fatigue Damage(On the E∬ective Range Co’
なお・本報告中・双子波の錨についてセま池田 ㌫eth°d)・九肛業大学修士誠(FeE
馨氏の寄与が大きい。同氏に謝意を表するもので ユ6)松石,遠藤日本機械学会講演論文集,昭43_3
ある。また技術員今岡軍之祐氏ならびに卒業研究 於福岡,講演番号210.
の一部として本研究に協力された御所磁羽柴 17)(露轡:。甲‡麟⊆第76巻第652号
敏男,由利猛,首藤元喜,日高幸雄,鈴木徹中
島昌彦,児島孝雄,大林正明,西出俊男,副島偉
布,梅田猛,梶山賀功山口進吾,重光民治,坂 1α Appendix
口栄彦の諸氏に深謝する。 Raill Flow Method Programのフロー
チャートに用いた記号
文 献 KO;KO番目の尖頭値で計算を止めるた
めの定数。
1)P㌧霊v㌶1’鑑,°1,三1慧;9;t「uctu「es・ C・尖頭値をひずみ%で表わすための定
2)西谷,吉川,日本機械学会論文集34巻,263号(昭 数。
和43−7),P・ユ19ぱ G;縦弾性係数または剛性率。
3) H.0.Fuchs, D. V. Nelson, M. A. Burke,
ぷLも蕊:・蒜㍑1:霊漂・(Meet二 τ1ζSAE) τ2V}+K(与yにおいてτK一瓦
にて発表。論文番号730565 τ1V_η
4)河本,日本機械学会論文集(ユ),37巻,296号,(昭 ’
5)46
6)(
G2:㌻5㌶9第、7巻、72号一、76号⊇ 鑑}…メ/(∠ερ2)において一
k謡織,TAMR。p。,ちN。.33ちU。i。. Pぽ
1{gl;野,㍗1971・ま口』桓’“1 ::}・γ一Z/(∠ε,−2一)rてτ͡
7)R.W. Landgraf, R. M. Wetze1, Proc. Int.
C。。f.。n Mech。ni,a1 B。h。vi。,。f M。teri。1、, τβ=丑’・
V・1.II, pp.4ユ0−4ユ9 Aug.1971 at Ky・t・ 1)P:塑性ひずみ(∠ε/2)による半サイク
8)N.巳Dowlin竺, TAM Report, No・354・Univ・ ル分の被害。
of I111nois, Apr111972.
9)菊川,大路,鎌田,城野,日本機械学会誌,第70 1)「:全ひずみ(∠ε’/2)による・半サ・f
巻,第585号(昭42−10),PP.1495−1509. クル分の被害。
1°)
モ蔀捜讃}8載4鴎械欝霊きDPSσM・DPの蹴
2031. 1)∬σM:1)τの累計。
11)遠藤中川,第ユユ回材料研究連合講演会前刷,昭 κ:読み込んだ尖頭値の個数。
畿諾鷲盤鐸;8賑㌶2議露 N・漸減する尖頭値の臨
・材料力学於東京)また,遠藤,光永,中川,池 β(1):漸減する尖頭値の順序と大きさ。
田・日本機会講演論文集・No・185・(昭42−11・創 E.R:有効ひずみ区間。
、2)立
G鷺R鑑聖要:。劉繁演晶。,』 ∬・全ひずみ区間.
m・irs・f the Kyushu Inst. Techn・1・gy, Engg., ES:弾性ひずみ区間。
62
PS:塑性ひずみ区間。 2
τメσ:TSに対応する応力区間。 YES
≦2
MAIN NO
X=(B(N)−B(N−2))*(B(N−1)−B(N−2))
X>O
NO
材料定数を読む
KO,C, G, TK
N=3
TN,PA PB,TA,TB
ER=ABS(B(N)−B(N−1)) RニABS(B(N−2)−B(N−3))
TK1=2*TK
PA=1/(2*PA)
PB=1/PB
TA=1/(2*TA)
TB=1/TB
初期値設定
DPSUM=O
DTSUM=O
K=1
N=1
B(1)=0
N−2 B‡§9謡:B‡§呂田‡BT
=N十l
K=K十1
B(N−2)=B(N)
PUM=DPSUM十DP
尖頭値Aを読む TSUM=DTSUM+DT
B(N)=A 1
K>Ko YES STOP
2
Rain Flow Met血odのフロ_チャ_ト HALF
HALF
TS=ER*C
TAU=TK1*(TS/2)**TN
ES=100*TAU/G
PS=TS−ES
一
xES NO
S≦
DP=0
DP=05*(PA*PS)**PB
DT=0.5*(TA*TS)**TB
RETURN
SUBROUTINE]HALF
(求めた有効レンジについて半サイク
ル分の被害を求める)