IT 化構想段階における MUSE Method の有効性

情報システム研究会
2007/06/29
IS-07-22
Copyright 2007 電気学会
IT 化構想段階における MUSE Method の有効性
西岡
由紀子(アクト・コンサルティング)
Effectiveness of MUSE Methodology in Grand Design Process of
IT System Construction Projects
Yukiko Nishioka (Act Consulting)
In the IT solution field, there are so many troubles in IT systems, known as “non-workable computer
problems”. In our paper
(1),
we have analyzed the success factors of the large-scale IT system construction
project. Referring to those success factors, in this paper we first discuss the importance of the grand design
process, which is executed prior to the system design process. Key issues of the grand design process are
“exposing the business intent” and “sharing of development goals” for achieving the intent. The MUSE method
is then introduced as an effective tool to resolve those issues, which we have proposed as a visualization and
communication tool for designing IT systems. We demonstrate the effectiveness of the MUSE method in grand
design process specifically for visualizing the business model and supporting consensus building through
brainstorming. Finally, the possibility of using MUSE method in service creation process is discussed.
キーワード:システム構築、要求開発、構想策定、MUSE、サービスエンジニアリング
(Keywords, System Construction, Requirement Development, Grand Design, MUSE, Service Engineering)
1.
はじめに
功要因を示し、その中で、諸問題解決の起点となる IT 化構
想段階に焦点を当て、「前さばき∗2」の重要性について論じ
昨今、IBM の提唱する「サービスサイエンス(2)」や産学
る。併せて、そこで用いた方法論(MUSE Method(5)、以下
連携で研究を進めている「サービス工学(3)」など、サービス
MUSE)を紹介し、サービスエンジニアリングの局面にお
を科学・工学の観点から捉え、問題解決に適用する取り組
ける MUSE の活用について言及する。なお、以下では「顧
みが注目を集めている。
客」を IT 利用者として「ユーザ」と表現する。
IT(情報技術)業界では、動かないコンピュータ問題(4)
2.
が指摘されて久しいが、確たる解決策が見出せないまま今
に至り、最近では、急速な市場ニーズの変化やサービスの
(2・1) 大規模システム事例の成功要因
ここ数年、筆者はユーティリティ企業の設備部門の IT 化
多様化にシステムが追従できず、新規分野への参入が遅れ
るなど、IT が経営を左右する時代になっている。
また、環境変化を先取りするのは難しく、IT 化要求を明
IT 化における前さばきの重要性
に設計事務所として参画し、構想段階から構築段階、運用
段階、横展開に至るプロセスに携わって来た。そこでは、1
確にできない顧客が増え、顧客と開発会社の間での意思疎
つの設備部門の計画から工事・運用・保全に係わる一連の
通の欠如、開発会社の力量不足、要素技術の未成熟、など
基幹業務を IT 化し、その成果を他の3つの設備部門に短期
システム開発プロジェクトを巡る問題は山積している。
間で横展開した。
そのような背景の下、IT 化∗1 のプロセスに、
「サービス」
これらの IT 化は、設備部門の活動基盤、情報基盤を提供
の視点を各段階の特性を踏まえて持ち込むことが、これら
し、業務改善・改革を推進した。併せて、資材、経理など
の諸問題解決の糸口とならないかと考えている。
の全社共通システムとの連携方式の標準化を図り、財務的
顧客は自らのサービスを実現するために IT を活用する。
システムを作ることが目的ではない。したがって、顧客が
には従来に比べ IT 化投資が半減するなど、大規模システム
の数少ない成功事例として社内外から評価を得ている(6)-(7)。
昨年、本事例を対象に「サービス工学」の視点からその
IT を活用してもたらされる効果、すなわちサービスの受け
取り手の「価値」に注目した議論が必要となる(受け取り
成功要因を分析したところ、次の 3 点に集約できた(1)-(8)。
①構想段階における前さばき
手には、顧客の最終顧客、利害関係者まで含める)
。
ユーザの業務をサービスの視点で捉えて業務モデ
本稿では、筆者が参画した大規模システム構築事例の成
∗1
システムの構想段階から、構築、運用段階を経て顧客の最終目的
を実現する意味合いまで含め、「IT 化」と表現する。
∗2
IT 化の「布石を打つ」という重要性に鑑み、本稿ではこれを特
に「前さばき」と称した。
1/4
リング(サービスモデリング)を行い、部門の将来
像や IT 化の目的を明確化したこと、併せて IT 利用
者の合意・共感を得たこと。
設計事務所とユーザが協働でこの前さばきを実施した。
(1) 現状分析
ユーザのサービスの実態を把握するため、(2)に示す業務
②構築段階におけるユーザ主導の推進体制と総力戦
モデリング(現状)と並行して、ユーザが抱えている問題
システム構築を、IT 利用者⇔IT サービス提供者⇔
点・課題を抽出した。一般的には聞き取り、アンケートな
システム構築者、というサービスの連鎖で捉え、各
どの方法を用いるが、本事例では、関係者間のコミュニケ
者が最終目的を共有し、それに向けて各々の機能を
ーション促進と参画意識の醸成を兼ね、経営層、中間管理
提供したこと。
職、現場のユーザ各階層の代表者を集め、ブレーンストー
③運用段階における IT 利用者フォロー
システム運用をサービスの視点で捉え、IT サービ
ス提供者が、IT 利用者の価値の時間変化に応じて適
切な対策を講じ、IT 活用を促進したこと。
また、横展開を短期に実施できた要因には、先行部門の
成果・経験の活用と各部門の特徴と違いを踏まえた標準化、
共通化が挙げられる。
ミングを実施し、問題点・課題の整理・体系化を行った。
(2) 業務モデリング(現状)
現状業務の把握には、業務フローを作成することが多い
が、部門サービスの全体感を掴むため、業務モデリングを
実施し、業務モデリング図(現状)を作成した。
この業務モデリング図(現状)の中をユーザと仮想的に歩
き、個々のサービス(業務)が持つ機能とその流れ、サー
ビス間の係わり、全体のサービス(事業)を確認した。
(2・2) 前さばきの実態
この作業を通じて、業務の勘どころ(質感・量感)を掴み、
IT 化は、構想段階、構築段階、運用段階の 3 段階に分か
業務の無駄、無理、ムラなどの課題や業際領域の問題(組
れる。精鋭による集中した議論がその後を方向付ける、最
織・体制、部門間・業務間の調整、ルールなど)を洗い出
重要段階にも拘らず、おざなりにされているのが構想段階
し、IT 面と併せて業務面で解決すべき課題を明らかにし、
である。本事例ではこの段階を重視し、下記の視点で取り
さらにはユーザの目指すべき方向を見出した。
組み、実践したことが後工程を円滑に進める要因となった。
(3) あるべき姿の検討
①ユーザ自身のサービスモデルを明らかにし、IT に何
次に、現状分析に参画したメンバーが中心となり、ある
を求めるのかを事前に明らかにする。すなわち「ユ
べき姿について検討した。現状分析での問題点・課題を再
ーザの“真の思い”
」を顕在化する。
確認し、業務モデリング図(現状)を鳥瞰しながら、特に
②経営者、中間管理職、現場が一体となり、IT 化の目
後工程(サービスの受け取り手)を意識し、どうすれば次
的(ぶれない軸)を明確にし、共有する。そのため
の業務が助かるか、お客様が喜ぶかなど、改めて個々の業
の合意形成の「場」を醸成する。
務の目的、あるべき姿について議論した。併せて、将来の
①のステップは、従来も行われてきたが、確立された方
法論がなく表面的かつ形式的であった。また、合意形成の
重要性に気付きながらも実態が伴わないのが常であった。
ここで、本事例における構想策定プロセスを図 1 に示す。
業務目標とその尺度(効果を測る指標)を検討した。
その上で、ユーザが置かれた環境、社会情勢、技術・市
場動向と照らし合わせ、全社方針、部門方針を踏まえた今
後の方向性を検討し、
「信頼度とコストのバランス経営に転
換する」という方針を打ち出し、それを実現するために「IT
1.現
状
分
析
2.業務モデリング(現状)
3.あるべき姿 の検 討
4.業務モデリング(将来)
を活用して業務改革を行う」という IT 化の目的を定めた。
(4) 業務モデリング(将来)
ここで、あるべき姿の検討を踏まえ、業務モデリング図
(将来)を作成した。本事例では、設備保全に軸足をおい
た部門運営とすることから、保全の結果を評価し、修繕・
取替えなどの設備対策を決め、次の計画に反映するという
「業務の PDCA が回る」しくみを図上に表現した。
5.IT 化のコンセプト策定
(5) IT 化のコンセプト策定
業務の将来像を実現するための IT 活用について検討し、
6.IT 化 構 想 まとめ
IT 化のコンセプトをキャッチフレーズ化した。本事例では、
設備データベース(DB)を中心に置き、業務実績と設備状
図1:本事例の IT 化構想策定プロセス
Fig. 1. IT Grand design process of the project
図中の1.現状分析から 4.業務モデリング(将来)までの
ステップ(内側の矢印)は、IT 化の要求定義の前段として
行われる「要求開発」のステップである。
本事例では、筆者らの提案による方法論 MUSE を用い、
態の因果が分析できるシステムを目指すという軸を据え、
「DB が腐らないシステム(データは普遍)
」、
「CA(Check,
Action)が次の PD(Plan, Do)に繋がるシステム(データ
は繋がり成長する)
」などの IT 化コンセプトを打ち出した。
(6) IT 化構想のまとめ
次に IT 化の要件定義を行った。具体的には、システムモ
2/4
デリングを行い、システムの機能概要を検討し、実施計画
知り得た情報からは見えてこない業務があっても都度調べ
(スケジュール、概算見積)に落とした。その結果を上述
ることはせず、欠落部分は想像で補い、人、モノ、情報と
の 1 から 5 までの成果物と併せ、IT 化構想としてまとめた。
業務の係わりを、時間軸を入れて押さえる。業際領域、外
各ステップの区切りでは、経営層、中間管理職、現場の
部環境も含めて、全体感を掴むことが先決である。これを
メンバーを集めて中間報告を行い、関係者間の意識統合を
後のウォークスルー(仮想的に図中を歩く)で検証する。
図るとともに経営者の意向を確認した。また、最終報告に
全体像の作成では、業務の流れに沿って、左上から右下
て、全体構想のコンセンサスを得るなど、要所要所で報告
にエージェント、データ、実在物を業務の関連性を見なが
会を行い、オーソライズの場として活用した。
ら配置する。最後に組織名を入れ、細いテープで組織の枠
3
と対象領域を囲い、タイトル、日付を付ける。
MUSE Method の概要
この全体像をユーザと鳥瞰し、ウォークスルーする。ウ
MUSE はシステム構築の方法論として開発され、業務モ
ォークスルーでは、各エージェントの機能、機能とデータ
デリングからシステムモデリング、データモデリングまで
の係わり、エージェント相互の関係を確認するが、その機
をカバーする。
「データは普遍、処理は変遷する」という原
能の受け取り手は誰か、何をもって満足するか、などを議
則から、データを起点に分析を進める。ここでは、上述の
論し、想像で補った部分の確認も含め、仮説を検証する。
前さばきに用いた業務モデリングとブレーンストーミング
手法について説明する。
将来像を考えるには、現状のモデリングで明らかになっ
た業務を個々の「機能」に因数分解し、次の 3 つ視点から
(3・1) 業務モデリング
その最適配置を検討するという方法をとっている。
業務モデリングでは、物事の全体を整理し、全体として
の課題を見出し、存在価値、進むべき方向を確認する。シ
ステムの肥大化・複雑化・ブラックボックス化が進む IT 業
界では、全体像を把握して対処することがユーザ、開発者
双方に求められており、このステップは欠かせない。
①向かうべき方向を決める(トップの意思)
。
②枠を外す(現行のやり方、しくみ、組織、体制、関
係箇所とのしがらみ、慣習等)
。
③尺度を決める(何でものを見るかのモノサシ)
。
その上で、実世界に機能をマッピングしていく。従来の
以下に、現状業務のモデリングの進め方について述べる。
制約を緩和(現実と理想のギャップを埋める)するのが、IT
(1) 業務モデリングの進め方
であり、組織・体制・運用ルールなどの環境整備である。
①業務で使う情報(画面、帳票、マニュアルなど)を
読合せし、そこからデータの固まりを抜き出す。
②①で抽出したデータを誰が使うのかという視点で、
エージェントを見つける。
(2) 特長
以下に、業務モデリング手法としての特長を掲げる。
①業務全体を可視化する
仮説を立て、現状を業務モデリング図に映し出す。
③設備、建屋、製造者、輸送業者、顧客、株主、銀行
などの業務に関係する実在物を洗い出す。
④エージェントの機能(サービス)を見つけ、アクシ
ョンとして表記する。
②業務を的確に分析できる
データ、エージェントの抽出:帰納的
モデリング図による仮説表現:演繹的
鳥瞰とウォークスルーにより、仮説の検証を行う。
⑤エージェント、データ、実在物を付箋紙(ポストイ
③短期間、少人数で業務のあるべき姿を策定できる
ット)に書き出し、MUSE 用紙(模造紙大のマス目
付き用紙)に貼り、業務の全体像を描く。
図 2 にエージェント、データの表記を示す。
(3・2) ブレーンストーミング手法
衆知を短期集中型で集め、整理・体系化するには、MUSE
:オブジェクター
:バスケット
によるブレーストーミングが有効である。本事例において
サービス要求に基づき自律し
て関係する
エージェントを制御・調整しサ
ービスを実施する役割を持つ
雑多なトランザクションが中
に入っている
も各所で実施し、意識共有、合意形成の場として活用した。
:ウォッチャー
:ライブラリ
管理の対象となる
エージェントの属性・状態に対
し、監視する役割を持つ
整理された情報がライブラリ
アンによって管理、保存され
ている
:コレクター
:ドキュメント
管理の対象となるエージェン
トの属性・状態の情報を収集
する役割を持つ
請求書、契約書等の書類
図 2 MUSE のエージェントとデータ表記
Fig. 2. Notation of Agents &Data in MUSE
この段階で重要なことは、仮説を立てながら進めること
である。業務の機能が不明、あるいはそこにあるはずだが
以下にブレーンストーミングの進め方について述べる。
(1) ブレーンストーミングの進め方
匿名性で議論を活性化し、その場で結果をまとめ、共通
認識とすることを目的として、以下の手順で進める。
①参加者は車座になって座る(7~8 名が適当)
。
②テーマに沿ってカード(ポストイット)に各自の意
見を記入する(カード一枚につき一意見とする)
。
③全員のカードを集め、他人のカードを均等に混ぜ、
各人に再配布する。
④「カード出し」を行う。座長(交代制)の仕切りに
より、各自が意見を発表し、同類のカードを MUSE
用紙上に貼り付けていく。
3/4
⑤同類のカードをカテゴリ分けし、タイトルを付ける。
「この時の共通意識が“遺伝子”として構築段階、運用段
⑥タイトルラベルを用いて、カテゴリ間の関係を連関
階に引継がれ、求心力になった」との発言にも表れており、
図に表わす。
システム開発者からも「ユーザの目的に合致するか」を判
上述手法により、議論そのものに集中でき、混沌とした
世界が整理され、その場で参加者の合意として形にできる。
他者の考え方を咀嚼し、発言することによる気付きも多い。
断基準においた構築に繋がったと聞いている。
業務モデリングによる見える化
「共感」
共感」が
人を動かす
(2) 特長
以下に、コミュニケーションツールとしての特長を示す。
①民主的
他者の意図を代弁することにより、大きい声、職
要求開発
合意形成
・思いの顕在化
・目的の共通化
位、経験などに引きずられず、実質の議論ができる。
図 3 MUSE の有効性
Fig. 3. MUSE Value
②ゲーム性
座長は「却下」、「採用」の裁量をもち、発言者は
何かと座長の説得を試み、議論を楽しく進められる。
③短期・集中型
ブレーンストーミング
MUSE は、全体としてバランスのとれたシステムにまと
めあげるところに特長があるが、10 数件の多様なプロジェ
クトに適用し、軸の通ったシステム作りに貢献した。女神
状況把握と問題領域の把握、連関図による全体像
と因果の把握により、短時間で大勢が判明する。
④ブレークスルー
立場を超えた議論により、ユーザの意識、ニーズ
“MUSE”の奏でるハーモニーに耳を傾ける価値はあろう。
5
おわりに
「顧客価値を共有するとは,そもそも矛盾を共有するこ
が顕在化し、気付きがブレークスルーに繋がる。
と(10)」との戸並氏の言葉を借りると、MUSE は混沌として
以上を総括すると、MUSE は可視化ツールであり、帰納
矛盾した現実を、平易な表現を用いてそのまま写しとり(鏡
的に情報を集め、業務を見える化し、全体の鳥瞰、ウォー
に映し)
、関係者で共有できるところに良さがある。
クスルーを通じて演繹的に全体の方向性を見出す。また、
サービスを創出するに際に求められているのは、「What
コミュニケーションツールとして短期・集中型で議論を醸
(顧客の要求)
」を見出す視点ではないだろうか。従来の工
成し、混沌を整理・体系化し、合意形成の場を提供する。
4
学では、顧客要求は確定しているものとして始まっていた。
サービスの結果、もたらされる受け取り手の価値が連鎖し、
前さばきにおける MUSE の有効性
最終の受け取り手の価値に転換され到達する、という視点
IT 業界では、ユーザ、開発者双方に問題を抱えている。
から眺め直すことが、新たな発見、変革に繋がると考えて
ユーザ側では、丸投げのアウトソーシングが進み、ユー
いる。MUSE はこの要求開発のプロセスを支援する。
ザエンジニアリング能力が低下しており、技術の多様化、
また、MUSE は、暗黙知の形式知化、あるいは暗黙知の
システムの複雑化、市場ニーズの変化、新たな IT 活用サー
共有を支援するとも言うことができる。暗黙知をあぶりだ
ビスの出現に、自前で全てを賄えない状況にある。
し、整理された形で残すばかりでなく、カードを書いた本
一方、開発者側では、度重なる仕様変更に 3K 職場と化し、
人の意図とは異なる議論に発展したとしても、その場の合
多重の下請け構造による品質の低下や責任不在の開発体制
意として全員の共通認識となる。参加者が「共感」する、
など、ソフトウェアの産業構造が歪曲化して来ている。
そのことが人々を突き動かす原動力となる。
これらの問題は、
「仕様ありき」を前提とするところに起
因する。2003
年の日経コンピュータの調査(⑨)
によれば、要
求仕様の不備は,開発プロジェクトの失敗原因の 40%を占
めるという。
本稿では、軸のぶれないシステム作りの出発点となる IT
化構想段階に焦点を当てた。この段階にサービスの視点を
持ち込み、
「ユーザの“真の思い”の顕在化」と「目的の共
有化」を行うという前さばきが、まどろっこしいようだが
結局は「急がば回れ」で、ユーザにも開発会社にも効果を
もたらすことを示した。
この前さばきを効率的に着実に実施するには、業務モデ
リングによる見える化とブレーンストーミングによる合意
形成を支援する MUSE が有効である。
(図 3 参照)
ユーザ自らの意志を明確に関係各所、開発会社に示せた
ことが、その後の大きな推進力となったことは、関係者の
今後も顧客が愛着の持てるシステム作り・サービス創出
に向け、多様な場面で MUSE を活用していきたい。
文
献
(1) 西岡他:
「IT ビジネスに関するサービス工学的考察」、日本機械学会
第 16 回設計工学・システム部門講演会論文集、NO.06-33 pp.84-87
(2006)
(2) http://researchweb.watson.ibm.com/ssme/
(3) http://www.service-eng.org/
(4) 日経コンピュータ、動かないコンピュータ・フォーラム、
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/OPINION/20060613/240769/、
(5) 西岡由紀子:
「システム構築に向けた MUSE Concept」、大阪大学 マ
ルチメディア工学特別講義(2005/11, 2006/11)
(6) 森他:「電力輸送部門 IT システムの開発」、第 50 回澁澤賞(2005)
(7) 佐野他:「電力輸送部門 IT システムの開発」、第 54 回電気科学技術
奨励賞(オーム技術賞)(2006)
(8) 西岡他:事例紹介、第 6 回サービス工学研究会(2006/03)
(9) 日経コンピュータ、2003 年 11 月 17 日号(2003/11)
(10)
戸並隆:
「世界へのマドルスルー(7)顧客価値の共有とは矛盾の共
有」、http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/Watcher/20070423/269198/
4/4