来るべき巨大津波に備えて

来るべき巨大津波に備えて
日本共産党釧路市議
石川明美
3・11の大津波では釧路市も大きな被害
最大2.1メートルの津波が押しよせた釧路市は、床上浸水の住宅 96 戸・公共施設 5
棟・その他建物 328 棟、床下浸水 232 戸、冠水車両 256 台など被害総額 32 億円という被
害が発生しました。幸い人的被害はありませんでしたが、釧路川河口沿いや水産加工場の
ある地域ではその後の後片付けが大変な状況でした。とりわけ釧路川の川底のヘドロが浸
水地域を覆い、地域の異臭は長期間続きました。
「床下に溜まったヘドロを取り除く作業に2週間でようやく目処がついた。家具類は
全部ダメになったから、百万円じゃきかない」
、
「車が塩水とヘドロをかぶって使用不能と
なり、買い物や病院に行けなくなった。近くに店がなく、足が悪いので大変」、
「水産加工
場の機材がヘドロをかぶって使いものにならない」など、釧路市民にとっては大変な被害
でした。
(表1参照)
最大波は、第1波から8時間後!
釧路市は地震多発地域でもあり、ある意味で地震に「馴れっこ」になっており、過去の
津波警報も避難率の低さが大きな問題として毎回指摘されてきました。多分に「オオカミ
少年」的状況が長く続いてきた反映といえます。
(表2参照)
今回の津波での避難状況を振り返ると、2mの第1波が到達した 15 時 34 分ではほとん
ど避難できておらず、約 30 分後の 16 時の時点で 180 人でした。地域防災計画による避難
勧告対象人口は 4,910 人ですので、避難比率は 3.7%という過去と同じ状況でした。その
後、テレビなどによる三陸地方の大津波の映像が流れてきたなかで、あわてて避難し、17
時半が最高の避難者数で 1,474 人(30%)という最近にない高い避難率になりました。
しかし、津波警報が発令中にも係わらず、その後約 1,000 人が避難所から去ってしまい
ました。多くは帰宅したなかで、第1波から8時間後の深夜の 23 時 38 分に最大波の 2.1
メートルが押し寄せ、多くの建物が被害を受けてしまいました。
(グラフ1参照)
津波警報が継続して発令しているにもかかわらず、
「もう大丈夫」という個人の判断で帰
宅した訳ですが、今後行政として大きな課題として残りました。
避難区域で逃げなかった高齢者のお話を聞くと「逃げても仕方がないと思った。私はも
ういいです」
、
「こんな大きな津波だとはわからなかった」
「500 年間隔の津波 5 メートルな
んて知らない」など、さまざまな意見がありました。こうしたことから、一人ひとりのき
め細かく具体的な避難計画が求められていることが重要な課題になりました。
これまでの市の取り組み
釧路市は、チリ沖地震など過去に大きな被害をうけており、津波、地震対策は他自治体
とともに行政上の大きな課題になってきました。そうした経緯から、釧路市独自の津波シ
ュミレーションと北海道が行った 500 年間隔の大地震による津波シュミレーションを活用
し、2007 年に津波ハザードマップを作成し全戸に配布を行いました。
また、2008 年から二ヵ年計画で、
「釧路市地域福祉計画」の重点事業として「災害時要
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援護者安否確認・避難支援事業」を推進してきました。市内を八地区のモデル地区として
選定し、構成は町内会や消防団などです。最初に手がけるのが災害時要援護者の名簿の作
成です。個人宅訪問のなかで個人情報保護法の壁や本人から断られるなどさまざまな困難
が生まれましたが、名簿を作成し実際に避難訓練を実施してきました。これが今回の大津
波で役にたったといえます。
今回の最大避難率は 30%になりましたが、残りの 7 割の方々は避難されておらず、その
対策も求められています。
詳細は釧路市のホームページに掲載されています。ぜひ参照してください。
住民の声を取り上げて
釧路市議団は、被害を受けた方々の声を聞きながら、2回にわたって市長要望を行いま
した。そのひとつは、
「災害に強いまちづくりと『原発政策』の転換について」です。項目
としては、①公営住宅を津波対策としても位置づけ建設を促進する。②自然エネルギーへ
の計画的転換と当面石炭を活用した火力発電所を重視することを国に求める。
また、建設関係者からの訴えから、①資材入手が困難となり、厳しい経営となっている
関係業界に対して、適切な融資制度を、②仕事が減ることによって打撃をこうむる建設労
働者にたいする緊急的な施策を講じること、など申し入れました。
六月議会においては、すべての会派が地震と津波問題を取り上げる中、党議員団は、本
会議の場で 17 項目にわたって質問を展開しました。その主なものは、①地域防災計画の
見直し、②災害時要援護者安否確認・避難支援モデルの問題、③市営住宅などを活用した
津波一時避難施設の確保について、④障がい者対策、療育カルテの作成を、⑤医療機関を
避難場所とする協定を、⑥緊急雇用制度を使い(仮称)津波避難啓発支援員を創設し、一
軒一軒丁寧に訪問し全員の聞き取り、そして 100%避難をめざして、⑦「行革」で廃止さ
れた災害見舞金支給条例の復活を、などです。
また、
「福祉避難所」の検証や拡大する問題、将来の地域防災に役立たせるために市役所
の若い職員を東日本大震災の地域へ、公費で派遣し勉強してもらうことなども提案してき
ました。
新たな津波シュミレーションに基づく「地域防災計画」見直しを
北海道は東日本大震災を受けて、北海道は昨年から津波想定の見直し作業をはじめてお
り、6 月以降には釧路市にも新たな津波シュミレーションが提示されることになっていま
す。一部報道では、津波の規模がかなりな大きさになるとされており、津波による浸水地
域の拡大が予想されます。
この新しいシュミレーションの基づいて「地域防災計画」の見直し作業に入ることにな
りますが、行政だけでなく市民一人ひとりが参加する大きな取り組みにすることが必要で
す。
道東地域の「500 年間隔」の大地震は、すでに 400 年を経過し、いつ起きてもおかしく
ない時代に突入しています。党市議団は、3・11の教訓を深めながら、党支部とともに
さまざまな団体とも協力し、新たな「地域防災計画」に反映させるよう奮闘する決意です。
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表1
釧路市がまとめた被害総額
総額 32 億 1405 万 6 千円
内訳
一般住宅の床上床下浸水 3 億 3191 万 6 千円
それ以外の
〃
6 億 2244 万 7 千円
土木
2688 万 5 千円
水産
6 億 6285 万 5 千円
商工関係
15 億 243 万 5 千円
その他
6751 万 8 千円
(商工関係の 15 億の内訳)
ホテル関係
5 億円
フィッシャーマンズワーフ 5 億円
緊急融資の相談のなかで明らかになったもの
1 億 1 千万
表2
釧路市の過去の津波避難率
2006 年 11 月 8.2%
2007 年 1 月 5.3%
2010 年 2 月 8.4%
今回の東日本大震災
2011 年 3 月 30.0%
グラフ
津波第1波からの避難者数(釧路市の数字から石川がグラフ化しました)
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