アフリカで広がる「エボラ出血熱」ってどんな病気なの?

身の回りの出来事から国政情勢まで、教科書には載っていない世の中の動きを紹介します。
アフリカで広がる
「エボラ出血熱」
ってどんな病気なの?
西アフリカ諸国を中心に、「エボラ出血熱」という病気が急速に広がっています。発症者
の致死率(死んでしまう確率)が最大で 9 割と言われる怖ろしい病気で、しかも、決め手
となる治療薬はまだ開発されていません。はたしてエボラ出血熱とはどんな病気で、いつ
ごろ見つかったのでしょう。また、どうやって人に感染し、ここまで広がってしまったの
でしょうか。遠い地域の問題だと甘く見てはいけないと、世界や日本でも感染を防ぐため
の対策が始まっています。
1.エボラ出血熱は怖ろしい病気
エボラ出血熱は、エボラウイルスに感染することで発症する病気です。見つかったのは
1976 年。中部アフリカのザイール(現在のコンゴ民主共和国)とスーダン(現在の南スー
ダン)で初の患者が確認され、大流行しました。エボラという名前は、発生した場所の近
くを流れるエボラ川からつけられました。 どんな生物に宿していたかは断言できません
が、コウモリの一種にウイルスを接種しても発症しなかったことから、コウモリが宿主だ
と考えられています。エボラ出血熱の潜伏期間は 2 日から 21 日ほど。発症すると突然発
熱し、強い脱力感や筋肉痛、頭痛、のどの痛みなどが始まります。その後、おう吐や下痢、
発疹のほか、肝機能や腎機能の異常を引き起こし、最後は目や鼻などから出血して死に至
ります。仮に一命を取り留めたとしても、高い確率で失明や失聴、脳障害を起こす怖ろし
い病気です。
2.なぜこんなに広がってしまったのか
これまでに何度か大流行したエボラ出血熱は、患者の血液やつば、吐いた物などに触れ
ることで感染します。今回は 2013 年 12 月にギニアの 2 歳児がエボラウイルスに感染した
コウモリに接触したことが原因だと言われ、2 歳児は死亡。その後、家族から村人、さら
に近隣の人々が感染しました。西アフリカではコウモリを食べる文化があります。また、
葬式で遺体に触れる風習があり、うつるとは知らずに遺体にさわったことで感染が広がっ
たと考えられます。世界保健機関(WHO)によれば、14 年 8 月 22 日の時点で西アフリカ
4 か国(ギニア、リベリア、シエラレオネ、ナイジェリア)でエボラ出血熱に感染の疑い
がある患者の合計は 2615 人で、死者数は 1427 人にのぼっています。また、29 日には同
じ西アフリカのセネガルでも1名が感染したと政府が発表。さらに WHO は 9 月 2 日、中
部のコンゴ民主共和国でもエボラ出血熱で 31 人が死亡したことを明らかにしました。こ
のほか、治療にあたった欧米の医師の感染や、シエラレオネから帰国したサウジアラビア
人の死亡が確認されたことから、WHO は 8 月 8 日、「国際的に懸念される公衆衛生の緊急
事態」を宣言しています。
3.たとえ感染の可能性は低くても、万全の態勢を整えることが必要
エボラ出血熱の治療法は現在決め手がなく、点滴を打つなどしかありません。そんななか、
米国では帰国した米国人医師に対して、未承認の「ZMapp(ジーマップ)」という薬が投
与されました。WHO は未承認の治療薬の投与を容認していますが、はっきりと効果があ
る薬はまだ生まれていません。ただ、エボラ出血熱は空気感染しないので、日本での危険
性は低いと見られます。しかし、国際線のある空港では発熱が確認された人を隔離し、検
査する体制を整えています。