2 岩国市の鉱床

Ⅲ 岩国市の地質・地形
2
岩 国市 の鉱 床
岩国市域 において著名 な金属鉱床 を母岩 の地質 との 関係 で整理す ると、①周防変成岩 中の硫
化物鉱床 (河 山鉱 山)、 ②玖珂層群 中のマ ンガ ン鉱床 、③玖珂層群 中の石灰岩に関連 した スカ
ル ン鉱床 (喜 和 田鉱 山・藤 ヶ谷鉱 山・ 玖珂鉱 山)に 区分できる。
(1)河 山鉱 山
河 山鉱 山は、旧美川町小壁 の周防変成岩 中に存在す る銅 を含む硫化鉄鉱床である。鉱床 の発
見は 300年 以上前に さかのぼるが 、史料 によ り異な り、 日本鉱産誌 (地 質調査所、1956)で は
1688‐ 1703年 の元禄年 間、 日本 の鉱床総覧 (日 本鉱業協会 、 1965)で は約 300年 前 (+45年 )
に高野山の清安 上人 の発見 と伝 えられ るとあ り、また岩 国市史 (岩 国市、2009)で は 1667年 (寛
文 7年 )と されてい る。 1936年 に明治鉱業 よ り日本鉱業が買収 し、そ の主力鉱 山の 1つ として
繁栄 したが、1971年 に閉山 した。1953年 度 の粗鉱生産量は 138700t(Cu l%)、 埋蔵鉱量 1800
万 t、 平均品位 Cu o.7-0,9%、 Fe 52%前 後、S26%前 後、従業員数 850名 (地 質調査所、1956)、
1961年 度 の 出鉱量は 359000t、 Cu O.58%、 Zn O.67%、 S18.33%、 Au O.2g/t、 A8173/tで あ つた
本鉱業協会、1965)。 鉱床 は、走向延長 1000m、 傾斜延長 600m、 脈幅 2∼25m、 鉱石 は
主 として磁 硫鉄鉱 か らな り、黄銅鉱 。鉄 閃亜鉛鉱・ 黄鉄鉱 を含み、少量 の硫砒鉄鉱 。キ ューバ
鉱 を ともな う。 また脈 石鉱物 として緑泥石・ 緑簾石・ア クチノ閃石・透輝石‐
灰鉄輝石・ザ ク ロ
(日
石 ・珪灰鉄鉱・ ヒシングル 石 を産出す る
日蜘
1河 山鉱 山付 近 の 地質 図
圏聯
霞
7ア ノール
圏靭
渚
本鉱業協会、1965)。
剛韓
図
囲
砂
一硼
□
FduttT4A港
(日
(地 質調 査 所 、 1956に よる)
243
Ⅲ 岩国市の地質・地形
た
摯
帯
帝
カ ル ン型 の 交代鉱床 で あ る とい う見解 も多 い
(中 村 、 1951;野 村 ・ 本 多 、 1952,Shimazaki
←蛇紋岩
‐ 黒色片岩
\
砂質片岩
片
岩
く
雛
侯
■ ●Isヽヽく ︱︱︱︱︱!11←
岩
とともに付加 体 を構 成 した もの と考 え られ て
い る。 一 方 、鉱 石 が 変成作 用 を受 けた証拠 が
な い 、 ス カ ル ン鉱 物 を多 く伴 う、硫 黄 の 同位
体 が周辺 のス カル ン鉱床 と同 じ、 な どか らス
←変輝緑岩
描
成
はそ の よ うな取扱 い が な され て い る。
鉱 床 は、 中央海嶺 付 近 で熱 水活 動 に よ つ てで
きた硫 化物 を含 む地層 が海 洋 プ レー トの移 動
← 石灰岩
`
鉱床(河 山鉱床)
衰
:
近年 の研 究 に よれ ば 、 三 波川 帯等 の 同様 の
/′
品
に調 和 的 な層 状鉱床 (層 状含銅 硫化鉄鉱床
キ ー ス ラー ガ ー )と 考 え られ 、 上記 2文 献 で
郵
黒色千枚岩
Ⅲ
棚Ⅷ棚鵬ノ緑色千枚岩
帝
層 で あ り、鉱床 は周 防変成岩 の構 造及 び地層
等チャー ト
岩
述 か ら判 断す る と、破 砕 帯 とい うの はお そ ら
く付加 体 の ユ ニ ッ ト境 界 をなす よ うな衝 上 断
一
禅
こ うした記
雪
`砂岩
←粘板岩
衣
3)。
着
序
勢
千
1・ 2・
層
!
層 準 に存在 す る (図
古 生 周
な る上 部層 か らな り、鉱床 は上部層 下部 の 千
枚 岩 の 「破砕 帯」 と調 和的 で 、 か つ 石灰 岩 の
︱ ︱▼・岳
る下部層 と黒色 千枚岩 ・ 緑 色 千枚岩 ・ 変輝 緑
岩 ・ チ ャー ト及 び石灰 岩 ∼ 石灰 質 千枚岩 か ら
蛇層分類 層周
非表 成岩帯
地 質調 査所 (1956)。 日本鉱 業協会 (1965)
に よれ ば 、鉱床付 近 の 地質 は黒色片岩 か らな
(赤 瀬鉱床
渡野鉱床)
`石
英斑岩
・石英粗面岩
TA
図 2 河 山鉱 山付 近 の柱 状 図
本鉱 業協 会 、 1965に よる)
(非 変成岩 帯 は錦層群 、 三 郡変成岩 帯
(日
は周 防変成岩 に相 当)
and Yamamoto、 1979)。
鉱床
中
‐
3∞
石灰岩
EΞ]千 積岩
m
E¬ 変揮緑岩
N結 品片岩類
Xミ ヽ
図 3 河 山鉱床 断面 図
(日
本鉱 業協会 、 1965に よる)
(2)玖 珂 層 群 中 の マ ンガ ン館 床
丹波 帯 の チ ャエ トを主体 とす る地層 (か つ て の 秩 父 古 生層 、今 日の ジ ュ ラ紀付加 体 )中
美濃 ―
には 、層 状 ∼ レンズ 状 の マ ン ガ ン鉱床 が 多数 存在 す る。 1960年 代 く らい まで 、小規模 では あ る
が各 地 で採 掘 され 、 日本 の マ ンガ ン需要 のか な りの 部分 を支 えた こ ともあ つ たが 、現在 はす べ
て 閉 山 した。 鉱 石 は、地表 に近 い 酸化 帯 では二酸 化 マ ン ガ ン鉱 、下位 で は菱 マ ン ガ ン鉱 や バ ラ
輝 石 を主体 とす る。 チ ャー トに伴 うマ ンガ ン鉱床 に つ いて 、熱 水 交代説 と同生説 が あ つ た が 、
最 近 は大洋底 で海底 熱 水活 動 に よ つ て生 成 した マ ンガ ン に富む堆 積 物 が付加 体 中 に巻 き込 まれ
た もの と考 え られ て い る。
玖珂層 群 中に もそ うした マ ンガ ン鉱床 が 存在 し、 中 で も光市 にあ つ た福 巻鉱 山は比較 的規模
の 大 き い こ とで知 られ てお り、岩 国市域 内に も小規模 な採 掘 がお こ なわれ た鉱床 が 多数存在 す
244
Ⅲ 岩国市の地質・地形
る (表 1)。 高橋 (1972)に よると、鉱床 は領家変成作用 を受 けた玖珂層群 (領 家変成岩 )中
の縞状チャー ト層 中に存在 し、炭酸 マ ンガ ン鉱 (菱 マ ンガ ン鉱 )・ チ ョコ レー ト鉱・ 珪酸 マ ン
ガ ン鉱 (バ ラ輝石やテフ ロ石)。 二酸化 マ ンガ ン鉱・ ペ ン ウィス石 。ダ ンネ モル 石 。ア ラバ ン
ド鉱・マ ンガ ン柘招石 な ど多様 な鉱物 を産す る。
表 1周 東地域のマンガン鉱山 (高 橋 ,1972)
地
鉱山名
名
地
鉱山名
名
岩 国市 (藤 河 )大 内迫
錦光
岩国市玖珂町谷津
玖北 ,香 部 ,平 田,蓮 華
岩 国市 (藤 河 )関 戸
関戸
岩 国市周東町(高 森 )下 久原
大山
岩 国市 (藤 河 )多 田
小藤
岩 国市周東町(高 森 )川 上
末広 ,第 二 末広
岩 国市 (藤 河 )阿 品
阿品
岩 国市周東町(高 森 )上 川上
高森 ,報 国
岩 国市 (北 河内 )杭 名
錦
岩国市周東町(高 森 )明 見谷
明見谷 ,第 二 蓮華
岩 国市 (北 河内)行 波
岩国
岩 国市 (北 河 内)荒 瀬谷
岩国市周東町(,II越 )魚 切
岩 国市周東町(,II越 )久 杉
岩国市 (北 河内 )三 鹿
荒瀬谷
天 の尾
二鹿
第 二周 防
構山
久杉 ,第 二 久杉 ,第 二
岩 国市 (北 河 内)相 の谷
相の谷
岩 国市周東町()〕 1越 )猥 越
姻越 ,日 神
岩 国市 (御 庄 )森 ヶ原
御庄
岩国市周東町(,II越 )毛 明
蔵 目木 (蔵 目喜 )
岩国市 (師 野木 )畑
大平1畑 ,大 師山
岩国市周東町 (,II越 )松 尾
岩 国市 (師 野木 )柱 野
師野木
岩国市周東町(,II越 )日 裏
松尾
日裏
岩国市 (師 野木 )東 郷
岩 国市 (師 野木 )古 宿
東郷
岩 国市周東町(,II越 )瀧 迫
瀧迫
古宿
岩 国市 (北 河肉 )天 の尾
岩 国市 (師 野木 )浚
,
久杉 ,水 引 ,瀧 迫
灘
三田
和木町新港
小藤 ,大 幡
岩国市 (南 河内 )近 延
和木町関ケ浜
和木
岩国市 (南 河内 )廿 木
廿木 j強 四郎
和木町瀬 田
大竹 (瀬 田 )
岩国市 (南 河肉 )伊 房
相の谷
柳井市 (余 田)黒 杭
岩 国市美和町(坂 上 )百 合谷
黒杭 ,越 名 `畑
百合谷
熊毛町(勝 間 )呼 坂
呼坂 ,福 栄
岩国市美和 町(坂 上 )大 根川
黒沢 t杉 ヶ瀬
福巻 (英 巻 )
岩 国市美川町(桑 根 )椋 野
椋野 1深 谷
下松市(久 保 )成 川
田布施町 (田 布施 )真 殿畑
岩 国市美川町(桑 根 )見 鋪
見鋪
田布施町 (麻 里布 )
桜川谷
岩 国市美川町(桑 根 )南 桑
末広
光市 (室 積 )鮎 帰
鮎帰 ,光 ,稲 荷 山
岩 国市美川町 (桑 根 )清 代
清代 ,牛 岩
大島町(小 松 )
山見
岩国市美川町(桑 根 )猪 の谷
柳ヶ宗 1三 宝 (猪 の谷 )
宮杉 ,宮 後
大島町(戸 田)津 海木
大島
真殿
(3)ス カル ン鉱床 とタ ングステ ン
岩 国地域 は、喜和 田・藤 ヶ谷・ 玖珂鉱 山 と
い う著名 なタ ングステ ン鉱 山が あ り、 日本で
1・
2を 争 うタングステ ンの産地であつた
(図
表 2玖 珂地区のタングステン鉱山
(東 元 ,1974)
位
置
鉱 山名
これ らはいずれ も玖珂層群 の 中に含 まれ
る石灰岩 体 に白亜紀後期 の花闇岩 が作用 して
できた スカル ン鉱床 であ り、ほかにも多 くの
岩 国市廿木
長 慶
岩 国市天尾字赤谷
赤 谷
鉱 山があつた (表 2)。
[ス カル ンとスカル ン鉱 床 ]:ス カル ン と
い うの は石灰分 (Ca)を 多 く含む珪酸塩鉱物
岩 国市天尾字深 山
岩 国市 二 鹿
深 山
喜和 国
岩 国市 美川町滝 山
滝 山(大 谷 )
岩 国市美 川町根笠
玖 珂
カル ン鉱物 )か らできた岩石のことで、
もともとス ウェーデ ンの鉱 山用語であ つた と
岩 国市美川町根笠
周 防
大 宝
い う。 石灰岩 の よ うな炭酸塩岩 (Caco3)に
花 闇岩 な どの珪 酸分 (Si02)に とんだ火 成岩
(マ グマ )が 作用す ると、花闘岩 の熱 によ り
岩 国市 美川町根笠
4)。
(ス
岩 国市美川町根 笠
岩 国市美 川町押ヶ谷
生 高 (日 吉 )
三 根
岩 国市周東町藤ヶ谷
藤ヶ谷
245
Ⅲ 岩国市の地質・地形
石灰 岩 と周 りの岩 石 とが化 学反応 を起 こ して
石灰 分 を含 む珪 酸塩鉱物 の集合 体 (ス カ ル ン)
に変化 す る。 この 時 、熱 せ られ た地 下水 (熱
水 )が 周 囲 か ら有用物質 を溶 か しこんで石 灰
岩 の周 りのス カ ル ン 中 に沈殿 してで き るの が
ス カ ル ン鉱床 で あ る。 珪灰 石 (CaSi03、 白色
繊維 状 )や 透輝 石 (CaMgSi206、 緑色柱状)や 柘
招 石 (Ca3A12Si3012、 赤色粒 状 )が 最 もポ ピュ ラ
ー な ス カ ル ン鉱物 で あ り、透輝 石 の M8を Fe
が置 き換 えた灰 鉄輝 石 (ヘ デ ンベ ル グ輝 石 )
も、鉱 床 近辺 に良 く産 出す る。 岩 国市科 学 セ
ン ター には 、 こ うした鉱 物 の 産状 が よ く分 か
る標 本 が展 示 され て い る (図 5)。 また上記 3
鉱 山 と も、 タ ン グ ス テ ンは 主 に灰 重 石
(CaW04)と い う鉱物 か ら採 取 され る。
図 5 縞 状 ス カ ル ンの標 本 (藤 ヶ谷鉱 山)
上 1/3は 大理石 、 中間 は珪 灰 石 、下端 は
ザ ク ロ石 と透輝 石 (岩 国市科 学 セ ン ター 所 蔵 )
E
F
G
H
I
J
К
L
圏日圏国国日団/
1鞘忌
図4
山 口県東 部 の 地質概
念 図 とタ ン グ ス テ ン鉱 山
(西 村 ほか 、 1985に 基 づ
く)
A:沖 積 層 、B:安 山岩
Ci広 島花 闘岩 類
D:流 紋岩質火 山岩類
E:領 家新期 花 開岩 類
F:領 家 古期 花 開岩 類
■ すすは
■‡
;i
G:玖 珂層 群 (美 川 層 群 )
H:玖 珂層 群
I:領 家変成岩類
J:錦 層群
K:周 防変成岩類
L:断 層
奪
1林岬
Xl:喜 和 田鉱 山
X2:藤 ヶ谷鉱 山
X3:玖 珂鉱 山
246
皿 岩国市の地質・地形
1)喜 和 田館 山
岩 国市 二鹿 にあ り、時 には 30%を 超 え る極 めて 高品位 の タ ン グ ス テ ン鉱 石 を出す こ とで有 名
で あ る。 1669年 (寛 文 9年 )に 発 見 され 、二鹿銅 山 と呼 ばれ て 吉川 候 に よ り銅 ・ 錫 が採 掘 され
て い たが 、1907(明 治 42)年 粟 村 氏 に よ り灰 重石 が含 まれ て い る こ とが 分 か り、以後 タ ン グ ス
テ ン鉱 山 と して 1982年 まで(株 )粟 村鉱 業 に よ り、1982年 以降 は(株)喜 和 田鉱 山に よ つ て 、何度
か の休 山を乗 り越 えなが ら操 業 され て きた (喜 和 田鉱 山、1990,長 原・ 島、1992)。 しか し 1993
年 に休 上 し 2005年 に 閉 山 した。 2007年 には 、坑 内 の貯鉱 を搬 出 して ロシアで 選鉱 す るため 、
一 時操 業 が 再 開 され た (長 原 、2008)が 、2008年 には鉱 石 資料館 も閉鎖 され 、2009年 3月 を も
つ て 完全 に 閉 山 した。
長軸 (m)
最大厚さ(m)
0
3
0
6
短軸 (m)
0
5
8
9
1
0
1
5
0
1
4
7
4
1
5
鉱量 (t)
(推 定規模 )
(推 定規模 )
600
(推 定規模 )
1,000
(推 定規模 )
*4.2
*350
*8.2
1,050
*8.0
7
9
5
9
410
690
5
0
1
5
13
7
︲
2
2
10
*3.7
330
*4.4
*18660
*2.8
110,000
*5,5
0
4
0
5
45
120
品位 (%W03)
3,000
80,000
3
8
5
4
1
坑歩上弘 12458。123
︲︲︲︲
本 聞釣末第第第第第第第第第
鉱体名
表 3喜 和 田鉱山の鉱体
15
*印 は長原 B島 (1992),無 印は喜和田鉱山 (1990)に よる
図 6 喜和 田鉱 山の 主要鉱体
の分布 と坑道 (喜 和田鉱
山、 1990に よる)
鳴
六号
F朱 ♪
O
SOOい
こ
‐‐
と
_____ぃ l_¨ ぃ
‐
_‥ ぃ
JL______Jに 中
‐
‐
‐
‐
‐
4
…
…
…
…
`‐
247
Ⅲ 岩国市 の地質・地形
鉱床 は、玖珂層 群 の チ ャー ト層 と互層 す る礫 質 泥岩 中 の石灰 岩 の 小岩 体 を交代 した もので 、
表 3・ 図 6に 示す よ うな鉱 体 が あ る。 最 大 の鉱 体 が 第 H鉱 体 で 、 120m X 50m。 最 大厚 さ 40m、
鉱 量 H ttt、 品位
5.5%(W03:1992年 の 出鉱 品位 は 8.36%)で あ る
(長 原 、 1978,長 原 ・ 島、
1992)。 鉱床 形成 に関係 した 花 闇岩 は下部 に伏 在 して い る が 、石灰 岩 を皮 殻状 に置 き換 えた部
分 と花 闇岩 体 か ら派生 した石 英脈 との 交差部 に 富鉱 体 が形 成 され てお り (図 7)、 割 れ 目を伝
って 上 昇 した熱水 に よ り鉱化 が進 んだ こ とが 良 く分 か る。 主要鉱 石鉱 物 は灰 重 石 の ほか 、黄銅
鉱 ・磁 硫鉄鉱 ・硫砒鉄鉱・ 閃亜鉛鉱・ 方鉛鉱・ 錫 石・マ ラヤ石 、脈石鉱 物 は透輝 石 ∼ 灰 鉄輝 石・
灰 ばん柘招 石・ 珪灰石・ ベ ス ブ石・ ホ タル 石・ 燐灰 石 な どで あ る。 ス カ ル ン 中 の 自雲母 の K― Ar
年 代 は 101.6Ma(Maは 100万 年 )で あ る (Watanabe et al.,1988)。 喜和 田鉱 山 の鉱 石 を見 るに
つ け、岩 石 中 の 平均存在度 がわ ず か に 1.5ppmの タ ン グ ス テ ン を 30%以 上 (20万 倍 )に まで濃
縮 す る よ うな地球 の 営力 には驚 嘆 させ られ る。
図 7 喜和 田鉱 山の 断面図 と
第 H鉱 体 (喜 和 田鉱 山、
1990に よる)
ム ス
四
目目 活 泰お
国コる支及
い 叶 汚
2)藤 ヶ谷鉱 山
採 鉱 場 は 旧周東 町地 内に 、事務所 と選 鉱 場 は 旧美川 町地 内にあ り、喜和 田鉱 山 の 南南西約
1
∼ 1.5kmを 隔 て るの み で あ る。 以 下 、藤 ヶ谷鉱 業所 (1978)に よる と、 1907(明 治 40)年 喜久
鉱 山 と して稼 行 され 、1948年 一 旦 閉 山 の の ち、1951年 日本鉱 業 に よ り藤 ヶ谷探鉱 所 として探鉱
を開始 、1955年 河 山鉱 山 の 支 山 と して 操 業 を開始 、1966年 鐘 打鉱 業 が鉱 業権 を得 て 操業 して き
た が 、 1986年 に閉山 した。
鉱 床 は 、玖珂層 群 の 泥岩 ∼ 礫 質 泥岩層 中 の 石灰 岩 を皮殻状 ∼ 塊状 に 交代 した も ので 、母岩 は
全 体 に接 触変成作用 を受 けて ホル ンフェル ス とな り、また鉱床 下位 に玖 珂花 闇岩 が伏在 す る こ
とが ボ ー リン グに よ つ て も確 認 され てい る (図 8)。 北 か ら郡林 ・ 三 ツ石・ 池 の 谷 ・ 向ひ・ 五
仙 峠・ 明見谷 ・ 樅 の木 の鉱床 群 が あ り、 この 中 で最 大 の 明見谷 第 1鉱 体 は 、走 向延 長 100m・
傾 斜 延 長 250m・ 厚 さ 30mの 石灰 岩 が 皮 殻状 に交代 され 、宮鉱 部 の 厚 さ最 大 10m・ 平均幅 lm、
品位 は W030,740/0で あ る。 1978年 当時 の 月産粗鉱 量 は 1650 t e w030。 73%、 人員 は 59名 であ
つ た (藤 ヶ谷鉱 業所 、1978)。 鉱 石 は 、灰 重石・ 磁硫鉄鉱 ・ 黄銅 鉱・ 黄鉄鉱 に少 量 の 硫 砒鉄 鉱 ・
閃亜鉛鉱 ・ 方鉛 鉱 ・ 輝 水鉛 鉱 ・ 錫石 な どか らな る。
248
Ⅲ 岩国市の地質 。地形
図 8 藤 ヶ谷鉱 山付近 の地質
図 。断面図 と鉱床 の分布
(藤 ヶ谷鉱業所 、 1978
に よる)
―
黒拗
ル〃
P////絡 ―卜
A一‐B断 働
ゞ
‖ 靭
IⅦ 花Hお ,妹
│
げ
3)玖 珂 鉱 山
旧美川 町根 笠 に あ り、現在 は 閉 山 して 坑道 の一 部 を利 用 して観 光施 設 の ムーバ レー とな つ て
い る。 玖 珂鉱 業所 (1976)に よれ ば 、鉱 山 の発 見 は天 正 年 間 で 、慶長 年 間 には錫 が 、嘉 永年 間
には毛利 氏 に よ り稼 行 され た。 明治 39年 か ら田中鉱 業 に よ り銅 鉱 山 と して 操 業 され 、 明治 44
年 に タ ン グ ス テ ン が発 見 され て 以来 、 タ ン グ ス テ ン を主体 に銅 ・ 硫 化鉱 ・ 亜鉛 ・ 錫 を生産 して
きた が 、 1993年 3月 に 開 山 した。
鉱床 は 、玖 珂層 群 の 泥岩 層 中 の 石灰 岩 を交代 した ス カ ル ン鉱床 で 、鉱床 の 下位 500-650mに
は花 闇岩 体 が伏 在 し、母岩 も全 体 に変成 してホル ンフ ェル ス化 してい る (図 9・ 10)。 鉱 体 の
存在 す るゾー ン と して 繁 栄 帯 ・ 梅 ノ木 ‐
大宝帯 ・ 出会 ‐
鹿 田帯 ・ 岩屋 帯 ・ 鷹 巣 帯 の 5層 あ り、宮
鉱 部 はや は り石英 脈 と石 灰 岩 との 交 点 にあ る。 大 宝 ・ 周 防 。梅 ノ木 ・ 出会 ・ 鹿 田・ 岩屋 ・ 橋 ヶ
谷 ・ 鷹 ノ巣 ・ 井 出 ノ奥 。繁 栄 ・ 人谷 な どの鉱 体 が あ り、鉱 石 は主 に灰 重石 と黄銅 鉱 で 、磁 硫鉄
鉱・ 閃亜鉛 鉱・錫石 を伴 う (以 上 東 元 、1977に よる)。 1966年 の 出鉱 量 は 19720t(W030,71%、
Cu O,78%、 S8,93%、 Zn O.82%、 Sn O.07%)、 1975年 の 出鉱 量 は 24246t(W030・ 66%、
Cu O.92%、 S9。 34%、 Zn O.99%、 Sn O.10%)で 人員 は 63名 で あ つ た (玖 珂鉱 業所 、1976)。
ス カ ル ン 中 の 白雲母 の K‐ Ar年 代 は 93.6Maで あ り (Watanabe et al,,1988)、 広 島花 闇岩 類 の年
代 にほぼ等 しい。
249
Ⅲ 岩国市の地質 。地形
韓
]
,
衛
と 圏圃□園 □ i
?
盛賄
叩m
HK) StXSI
1
Mn
=
図 9 玖珂鉱 山周辺 の地質図 と鉱床 の分布 (東 元、1977に よる)
東南東
EE]確 賀泥岩・滉岩
図
10
ー
区三]チ ヤ ト 匡≡ヨ 石灰岩
12□
館 体
!断
O
層
100m
玖珂鉱 山の地質断面図 (東 元 、 1987に よる)
引用文献
395p.東 京地学協会。
藤 ヶ谷鉱業所 (1978)鉱 業所概況。9p.
東元定雄 (1974)山 口県玖珂地区の地質 とタングステ ン鉱床。地質 ニュース、nO.243、 56‐ 61。
東元定雄 (1977)山 口県玖珂鉱 山の地質鉱床。 地調月報、26、 513‐ 518。
東元定雄 (1987)金 属鉱床。 日本 の地質 7「 中国地方」、176‐ 194。 猪木幸男・ 村上允英・ 大久保
地質調査所 (1956)日 本鉱産誌
I‐ b。
雅弘 (編 )、 共 立出版。
岩国市 (2009)岩 国市史、通史編。749p.
玖珂鉱業所 (1976)玖 珂鉱業所概況。8p.
喜和田鉱 山 (1990)鉱 山概況。 13p.
長原正治 (1978)山 口県喜和 田鉱 山の地質鉱床 と探鉱。鉱 山地質、28、
250
373‐384。
Ⅲ 岩国市の地質・地形
長原正治 (2008)喜 和田鉱山 16年 目の出鉱 (そ の 1、 その 2、 その 3)。 ペ グマ タイ ト、89、
90、 13‐ 17、
7‐ 13、
91、 12‐ 16。
長原正治 。島 倣史 (1992)山 口県岩国市喜和田タングステ ン鉱山。地質ニュース、ЪO号 、13‐ 20。
中村 威 (1951)河 山鉱山における鉱物共生関係 とその特性。地質雑、57、 325。
日本鉱業協会 (1965)日 本の鉱床総覧 (上 巻)。 581p.
西村祐二郎・ 磯崎行雄・ 濡木輝 ― (1985)山 口県東部 の三郡― 中国帯及び領家帯。 日本地質学会
第 92年 学術大会見学旅行案内書、17‐ 4銘
野村英 ―・ 本多共之 (1952)地 質構造か らみた河山鉱床1鉱 山地質、2、
帥
m瀬
J.多
17‐ 1男
渾,and YamamotoM.(1979)Sulm imtOpe ratiosば some Japanese skan deposlts,Geochem.
13,261‐268。
高橋英太 郎 (1972)周 東地域 のマ ンガ ン鉱物産地表。 山 口地 学会誌 、5号 、 11‐ 1名
WatanabeM→ Nishido渾 ,MoFiWakiDH.D Ⅲ gashimotottS.and KubottY。 (1988)KDAr ages of skam
deposits tt he hner Zone ofSouhwett」 apan.Ceochem.J.,22,231つ 36.
251