地下解体工事に既存建物を有効活用

技術紹介
地下解体工事に既存建物を有効活用
∼ファミール日本橋新築工事∼
The Underground Construction Preserving Existing Building
松添 明彦
Akihiko MATSUZOE
石橋 幸治
Kouji ISHIBASHI
吉田 誠
Makoto YOSHIDA
川田工業㈱建築事業部工事部
工事課係長
川田工業㈱建築事業部工事部
工事課
川田工業㈱建築事業部工事部
工事課
当該物件(東京都中央区日本橋3丁目)は,既存の旧
既存地下外壁を利用した地下設計
三井海上八重洲ビル(RC造,地上6階,地下1階,塔屋1
階,最高高さ31 m,建築面積562 m2,延床面積3 729 m2)
地下部分の工事を,近隣への振動・騒音等の影響を考
の解体工事後,ファミール日本橋分譲マンション(SRC
慮しつつ効率的に進めるために,解体工事着手前に既存
造,地上13階,地下1階,最高高さ39.84 m,建築面積
地下躯体位置を正確に把握し,設計へフィードバックす
502.01 m2,延床面積6 647.94 m2,共同住宅140戸,店舗1)
ることにより,既存建物の地下の一部を新築地下躯体構
を新築する工事です。
築用山留め壁および型枠として利用することができまし
た(左下図参照)。
敷地境界線に隣接してビルが建っており,当社が行う
解体および新築工事にともなう近隣への振動(船酔い現
既存地下外壁の耐力の検証については,既存建物竣工
象)や騒音等の影響を考慮し,いくつかの対策を講じま
図により柱・梁・壁・耐圧盤・地中梁の配筋及びコンク
したのでその概要を紹介します。なお,新築建物は当社
リート強度を事前に確認するとともに,コア抜きサンプ
の設計施工でしたので,特に地下部分について種々な工
リングを行いました。
夫をすることができました。
ウォールソーによる既存地中梁鉄筋の切断
既存建物の地上解体部工事に際して行った近隣対策は
下記①,②です。
既存地下外壁を山留壁として利用しかつ設計の意図す
① 近隣建物への振動を抑制する防振溝(W=1.0 m,
る空間を確保するために,効率が良く,コストダウンに
H=2.4 m,L=7.5 m)の設置
結びつく解体方法を計画する必要がありました。選定し
② 時間割作業の実施(解体重機の稼働時間と停止時間
た解体方法の一つに,振動・騒音等の近隣クレームの解
を近隣関係者と現場で相互調整し,作業時間の管理
消および工期短縮を目的として,連続地中梁の鉄筋をウ
を徹底する)等が挙げられます。
ォールソー(左図参照)にて切断し,コンクリートを塊
として除去する方法を採用しました。
既々存地下外壁
▼設計GL
既存地下外壁
道
路
境
界
既々存地下外壁
既存地下外壁
道
路
境
界
既存躯体解体撤去
▼設計GL
610
200
既存耐圧盤
切断
▼GL-5 350
地下解体断面図 98
川田技報 Vol.24 2005
995 610
3 350
▼B1SL
50(クリア)
2 000
995
電気室
受水槽室
460
45(クリア)
350
500
▼B1SL
既存躯体連続地中梁は
ウォールソーにて
250
切断後撤去
105 640
既々存
切断
150 1 450
460
2 030
250
105 640
200
3 350
新築地下外壁
切梁 H350×350
地下新築断面図
▼GL-5 350
ウォールソー使用による地中梁鉄筋の切断状況
岩盤削孔施工システム CD工法による杭の施工
(回転式ケーシングドライバー工法)
新築建物の杭は,アースドリル杭(先端深さGL-29 m)
ワイヤーソー使用による既存有筋杭の解体
(CD工法で障害として撤去された以外の既存杭の
処理方法)
ですが,杭工事前に既存地下躯体を先行解体し,地下部
地下の最大掘削深さは,立体駐車場部分のGL-10 mで
分を埋め戻した後,杭工事を行いました。既存建物の既
あり,GL-6 m(地下解体レベル)以深の約4 mの範囲で
存杭(先端深さGL-25 m)を撤去する必要があったため,
既存杭(φ1 000∼φ1 500 mm,13本の場所打ち杭)が現
全周回転掘削機(特殊カッター付ケーシングビット)に
状根切りの障害となりました。既存杭を在来工法の杭頭
よるCD工法を採用しました。松杭(既存建物以前の建
処理にて工事することは,騒音並びに工事日数もかかり
物の杭)・仮設H鋼杭(既存建物工事用)など予測外の
大変困難であります。そこで工法の改善として,ワイヤ
地中障害物が実在していましたが,CD工法採用により
ーソーにて既存杭を鉄筋共切断し(重機揚重を考慮し重
新設杭を完璧に構築することができました。
量は4∼4.5 tを基本とする)玉掛け用吊治具をセットし
50 tラフタークレーンにて移動,一部撤去搬出する作業
としました。結果として,近隣からのクレームも解消し
計画通りに地下の既存場所打ち杭合計約110 tを処理する
障害撤去
(場外搬出)
1 850 4 600 3 350
9 800
▼設計GL
再生砕石使用の人工地盤
▼GL-8 450
▼GL-25 m
全周機使用による
既存杭の撤去状況
▼GL-29 m
新設杭完了状況図
2 650
▼最大掘削
GL-9 900
1501 3001 3501 350
▼2次根伐
ライン
▼GL-5 350
100
新設杭
GL-6 000
1501 3001 3501 350
残された
既存杭部分
▼1次根伐
ライン
1501 3001 3501 350
▼3次掘削
床付レベル
(GL-9 800)
1501 3001 3501 350
CD工法にて
撤去する既存杭
▼B1SL
150 1 000 1 000 1 000 1 000
新築
地下外壁
▼構台GL+300
GL±0
9 800
埋戻地盤
19 200
19 200
地下既存躯体
解体状況図
5 100 700
5 800
5 800
19 200
▼GL-25 m
鉄板敷
境界線
先行解体する
▼設計GL 地下既存躯体
ことができました。
65tクローラー
全周機
(場内移動および
埋め戻し)
既存杭解体断面図
CD工法による杭の施工
なお,地下部分の埋め戻し後の杭工事において,杭工
事機械の走行に対する地盤の耐力,トラフィカビリティ
ーの検討,即ち65 tクローラーおよびCD機の作業地盤の
耐力が重要なポイントですが,近隣状況を考慮するとホ
コリと振動が問題になるセメント系攪拌の地盤改良が使
用できなかったため,厚み 700 mmの再生砕石を路盤と
した人工地盤を計画・実施し,耐力を確保しました。
ワイヤーソー切断要領
CD工法による既存杭の撤去状況
既存杭切断状況(ワイヤーソー使用)
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