東海地方の冬の天候について

参
考
資
料
平成 28 年 3 月 1 日
名古屋地方気象台
東海地方の冬の天候について
(2015 年 12 月~2016 年 2 月)
東海地方のこの冬は冬型の気圧配置が長続きせず、寒気の影響を受けにくくなりました。このた
め顕著な高温となり、平均気温は 1946 年の統計開始から高い方からの 1 位となりました。また、
低気圧や前線の影響を受けやすく多雨となりました。一方で 1 月の後半には一時的に冬型の気圧配
置が強まり、太平洋側でも積雪を観測した所がありました。
※東海地方平均とは、東海地方にある気象官署及び特別地域気象観測所(14 地点)ごとの平年差(比)を平均したものです。
1.東海地方平均の冬の平均気温・降水量・日照時間の平年差・比
東海地方平均
12 月
1月
2月
12-2 月
平均気温平年差(℃)
+2.1℃
+1.0℃
+1.1℃
+1.4℃
階級
かなり高い
高い
高い
かなり高い
降水量平年比(%)
183%
116%
118%
137%
階級
多い
多い
多い
多い
日照時間平年比(%)
95%
106%
110%
103%
階級
少ない
平年並
多い
平年並
2.月別の天候の特徴
12 月
低気圧と高気圧が交互に通過し、天気は数日の周期で変わりましたが、低気圧や前線の影響を受
けて曇りや雨の日が多くなったため多雨・寡照となりました。また、低気圧の通過後は冬型の気圧
配置となりましたが長続きせず、北からの寒気の影響を受けにくかったため顕著な高温となり、月
平均気温は1946年の統計開始から高い方からの1位となりました。
月平均気温は「かなり高い」、月降水量は「多い」、月間日照時間は「少ない」となりました。
1月
冬型の気圧配置は長続きせず、低気圧と高気圧が交互に通過しましたが、前半は低気圧や前線の
影響を受けにくく、晴れた日が多くなりました。後半は本州の南岸を通過した低気圧の影響で雨と
なった日があり、月降水量は多くなりました。また、低気圧の通過後に寒気が南下し強い冬型の気
圧配置となった時期があり、太平洋側でも積雪を観測した日がありましたが、寒気の影響は一時的
で、期間を通して寒気の影響を受けにくく、気温は高くなりました。
月平均気温は「高い」、月降水量は「多い」、月間日照時間は「平年並」となりました。
2月
中旬は発達した低気圧の影響で大雨となった所もあり降水量は多くなりました。発達した低気
圧の通過時には南から暖かい気流が流れ込みやすく、低気圧の通過後は冬型の気圧配置となりま
したが長続きしませんでした。このため、気温は高くなりました。また、期間を通して高気圧の
張り出しが強く日照時間は多くなりました。
月平均気温は「高い」、月降水量は「多い」、月間日照時間は「多い」となりました。
1
3.気温・降水量・日照時間の経過
第 1 図は、東海地方を地域平均した旬別の平均気温・降水量・日照時間の平年差・比です。気温は、北
からの寒気の影響を受けにくく 12 月中旬から 1 月上旬は顕著な高温となりましたが、その後は平年並の旬が
多くなりました。降水量は、低気圧や前線の影響を受けて多雨となった旬が多くなりました。その一方で1月
上旬や2月上旬・下旬は高気圧に覆われて晴れた日が多く顕著な少雨となり、日照時間も多くなりました。
第 1 図 気温・降水量・日照時間の旬別平年差・比(東海地方の気象官署・特別地域気象観測所の平均)
4.気象官署・特別地域気象観測所の平年差・比と極値
第1表
実況(℃)
平年差(℃)
実況(℃)
1月
平年差(℃)
気温
実況(℃)
2月
平年差(℃)
実況(℃)
12-2月
平年差(℃)
実況(mm)
12月
平年比(%)
実況(mm)
1月
平年比(%)
降水量
実況(mm)
2月
平年比(%)
実況(mm)
12-2月
平年比(%)
実況(h)
12月
平年比(%)
実況(h)
1月
平年比(%)
日照時間
実況(h)
2月
平年比(%)
実況(h)
12-2月
平年比(%)
12月
※
12 月~2 月の各地の気温、降水量、日照時間とその平年差・比
高山
3.7
+2.3
-0.1
+1.3
0.5
+1.4
1.4
+1.7
128.0
146
103.5
106
107.5
108
339.0
120
85.6
96
94.8
99
128.4)
114
308.8
104
岐阜
9.2
+2.3
5.7
+1.3
6.3
+1.2
7.1
+1.7
135.0
233
67.5
101
90.5
110
293.0
144
159.6
100
172.9
108
178.8
109
511.3
105
名古屋
9.3
+2.3
5.8
+1.3
6.5
+1.3
7.2
+1.7
83.0
184
55.0
114
64.5
98
202.5
128
171.6
100
186.1
109
184.2
108
541.9
106
上野
7.5
+2.2
4.2
+1.0
4.8
+1.2
5.5
+1.5
48.0
113
57.0
122
66.5
112
171.5
117
128.7
95
146.5
119
143.4
122
418.6
111
津
9.9
+2.1
6.6
+1.3
6.6
+1.0
7.7
+1.5
64.0
166
65.5
149
48.5
82
178.0
127
171.9
99
173.4
106
167.5
107
512.8
104
伊良湖
10.5
+2.2
7.1
+1.4
7.3
+1.3
8.3
+1.6
71.0
143
65.5
110
114.5
165
251.0
141
168.2
93
179.8
100
189.4
108
537.4
100
浜松
10.7
+2.3
7.0
+1.1
7.7
+1.2
8.5
+1.6
84.5
162
64.0
112
105.5
135
254.0
138
187.8
94
206.7
105
198.9
108
593.4
102
御前崎
11.5
+2.3
7.5
+0.8
8.0
+0.9
9.0
+1.3
107.0
175
73.0
86
75.0
73
255.0
104
176.0
89
205.4
103
196.5
107
577.9
99
静岡
11.2
+2.2
7.1
+0.4
8.5
+1.2
8.9
+1.3
163.0
259
115.0
153
157.5
154
435.5
185
190.1
95
216.9
108
200.2
111
607.2
104
三島
10.3
+2.4
6.2
+0.5
7.5
+1.2
8.0
+1.4
63.0
115
93.5
126
140.0
159
296.5
138
167.6
92
198.0
110
170.3
105
535.9
102
尾鷲
10.8
+2.2
7.2
+0.9
7.8
+0.9
8.6
+1.4
323.0
303
112.0
111
211.5
178
646.5
202
167.0
94
177.7
99
182.6
108
527.3
100
石廊崎
12.3
+1.6
8.7
+0.6
9.0
+0.9
10.0
+1.0
94.0
159
46.5
62
97.0
112
237.5
109
166.9
91
198.3
111
192.3
114
557.5
105
網代
10.9
+1.3
7.5
+0.6
8.0
+1.0
8.8
+1.0
101.0
187
95.0
132
75.0
88
271.0
131
132.4
89
150.6
103
144.1
103
427.1
98
“)”のついた値は準正常値(統計資料中に欠測などを含みますが正常な値と同等とみなせる値)です。
2
四日市
8.6
+2.2
5.0
+1.0
5.7
+1.1
6.4
+1.4
98.5
212
66.5
139
48.5
74
213.5
135
156.5
100
159.6
105
169.8
116
485.9
107
第2表
月
極値更新(月・3か月の合計値・平均値に関するもの)
地点名
要素名
値
統計開始
従来の極値
12 月
岐阜
月平均気温の高い方から
9.2℃
1883 年
9.2℃(1890 年)
12 月
名古屋
月平均気温の高い方から
9.3℃
1890 年
8.6℃(2004 年)
12 月
上野
月平均気温の高い方から
7.5℃
1937 年
7.1℃(1968 年)
12 月
津
月平均気温の高い方から
9.9℃
1889 年
9.8℃(1890 年)
12 月
伊良湖
月平均気温の高い方から
10.5℃
1947 年
10.0℃(2004 年)
12 月
静岡
月平均気温の高い方から
11.2℃
1940 年
10.8℃(2004 年)
12 月
三島
月平均気温の高い方から
10.3℃
1930 年
9.9℃(2004 年)
12 月
尾鷲
月平均気温の高い方から
10.8℃
1938 年
10.4℃(1948 年)
12-2 月
高山
3か月間の平均気温(高い方から)
1.4 ℃
1899 年
1.4 ℃(2007 年)
12-2 月
岐阜
3か月間の平均気温(高い方から)
7.1 ℃
1883 年
7.0 ℃(2007 年)
12-2 月
名古屋
3か月間の平均気温(高い方から)
7.2 ℃
1890 年
7.1 ℃(2007 年)
12-2 月
上野
3か月間の平均気温(高い方から)
5.5 ℃
1937 年
5.4 ℃(2007 年)
12-2 月
伊良湖
3か月間の平均気温(高い方から)
8.3 ℃
1947 年
8.2 ℃(2007 年)
12-2 月
浜松
3か月間の平均気温(高い方から)
8.5 ℃
1882 年
8.5 ℃(2007 年)
12-2 月
三島
3か月間の平均気温(高い方から)
8.0 ℃
1930 年
7.9 ℃(2007 年)
12-2 月
尾鷲
3か月間の平均気温(高い方から)
8.6 ℃
1938 年
8.5 ℃(2007 年)
5.北半球の大気の流れ(500hPa 高度とその平年偏差の3か月平均図および月平均図)
図は3か月平均および月平均の 500hPa 等気圧面高度を 60m 間隔の実線で、平年偏差を 30m 間隔の破線で表示しています。陰影部は平
年偏差が負の領域で、地上の気温が平年より低くなる傾向があります。
3 か月平均(12~2 月)
華中から華南付近は負偏差となり、日本の東海上を中
心に日本付近は広く正偏差となりました。このことは日
本付近で偏西風が南から北に向かう流れとなったため南
の暖かく湿った空気の影響を受けやすく、高温・多雨と
なったことに対応しています。またオホーツク海付近で
負偏差となり、これは一時的に冬型の気圧配置が強まり
大雪となったことに対応しています。
第2図
12~2 月
500hPa 高度・平年差図
3
12 月
1月
2月
第 3 図 月別の 500hPa 高度・平年偏差図
12 月
日本付近は広く正偏差となりました。また、偏西風は中国付近で南に蛇行し、日本付近で北に蛇行
しました。シベリア高気圧が弱く、冬型の気圧配置は長続きしませんでした。このことは、北から
の寒気の影響を受けにくく、暖かい空気の影響で気温がかなり高くなったことに対応しています。
1月
本州付近から日本の東にかけては正偏差となりましたが、華南付近から中国東北区にかけては負偏差と
なりました。偏西風は中国付近で南に、日本付近で北へ蛇行したため、北からの寒気の影響を受けにくくな
りました。このため、月平均気温は高くなりました。また、西シベリアから中央シベリアは正偏差で気圧の尾根
となり、カムチャツカ半島付近は負偏差で気圧の谷となりました。このことは、シベリア高気圧が勢力を強め、
日本付近は強い冬型の気圧配置となって大雪となった時期があったことに対応しています。
2月
上空の偏西風は沿海州から黄海付近にかけて南に蛇行し、気圧の谷となりました。一方、日本の東では北
に蛇行し、で気圧の尾根となりました。日本付近では偏西風が蛇行したことで南から北に向かう流れとなりまし
た。このことは、南から暖かく湿った気流が流れ込み、低気圧は日本付近で発達し東海地方の沿岸部で大雨
となったことや北からの寒気の影響を受けにくく高温となったことに対応しています。
6.季節現象
a)初霜、初氷、初雪
初霜、初氷、初雪は各地で平年より遅くなりましたが、初霜は静岡で平年通りになりました。
第3表
岐阜
東海地方の主な地点の初霜、初氷、初雪
初霜
初氷
初雪
12 月 7 日
12 月 7 日
1 月 15 日
平年:
11 月 20 日
平年:
12 月 2 日
平年:
12 月 14 日
昨年:
11 月 19 日
昨年:
11 月 19 日
昨年:
12 月 6 日
12 月 9 日
名古屋
12 月 18 日
平年:
11 月 27 日
平年:
12 月 2 日
平年:
12 月 20 日
昨年:
12 月 8 日
昨年:
12 月 8 日
昨年:
12 月 6 日
12 月 20 日
津
12 月 20 日
1 月 19 日
平年:
12 月 2 日
平年:
12 月 9 日
平年:
12 月 22 日
昨年:
12 月 8 日
昨年:
12 月 8 日
昨年:
12 月 18 日
11 月 28 日
静岡
1 月 18 日
12 月 18 日
1 月 19 日
平年:
11 月 28 日
平年:
12 月 3 日
平年:
1 月 12 日
昨年:
12 月 6 日
昨年:
12 月 6 日
昨年:
12 月 17 日
4
b)冬日(日最低気温が 0℃未満を記録した日)
冬日の日数は、12 月から 2 月にかけて各地で平年を下回りました。
第4表
冬日
(日)
高山
岐阜
名古屋
津
実況
18
2
0
0
12月
平年値
24.3
4.6
3.4
1.6
東海地方の主な地点の冬日の日数
1月
実況
26
8
6
4
2月
平年値
29.1
13.7
11.8
6.5
実況
26
6
6
2
平年値
25.8
11.6
10.8
5.8
12-2月
実況
平年値
70
79.4
16
29.9
12
26.3
6
14.2
c)雪日数
雪日数は、12 月から 2 月にかけて各地で平年を下回りましたが、1 月は静岡で平年通りになりました。
第5表
雪日数
(日)
高山
岐阜
名古屋
津
静岡
実況
15
0
0
0
0
12月
平年値
3.7
2.6
2.0
0.3
東海地方の主な地点の雪日数
1月
実況
28
7
5
4
1
2月
平年値
9.4
6.4
5.7
1.0
実況
22
4
4
1
0
平年値
8.2
5.4
7.2
1.0
12-2月
実況
平年値
65
11
9
5
1
(高山の平年値は観測方法の変更により、2010 年平年値は作成されていません)
d)降雪量
降雪量は、12 月から 2 月にかけて各地で平年を下回りましたが、静岡では平年通りになりました。
第6表
降雪量
(cm)
高山
岐阜
名古屋
津
静岡
実況
5
-
-
-
-
12月
平年値
87
9
3
1
0
東海地方の主な地点の降雪量(単位は㎝)
1月
実況
59
12
10
-
0
2月
平年値
167
19
5
2
0
実況
32
-
-
-
-
平年値
147
17
8
3
0
12-2月
実況
平年値
96
407
12
46
10
15
-
6
0
0
(高山・岐阜・名古屋・津は積雪深計による観測のため 1cm 未満の降雪は「なし(-)」と同じに扱われます)
参考資料
※
平年並の範囲(東海地方)
平均気温平年差
降水量平年比
日照時間平年比
12月
-0.1~0.5℃
55~136%
97~105%
1月
-0.1~0.2℃
59~115%
97~106%
2月
-0.5~0.5℃
68~115%
95~109%
3か月
0.0~0.3℃
74~115%
98~103%
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5