リ 1 ド事情 ・イン ム タイ ル ア vol. 一難去ってまた一難 世界一エキサイティングな国、インド 国立研究開発法人 科学技術振興機構 インドはここ数年急速な経済成長を遂げており、アジア 第3位の経済規模を有している。今後も人口増加が見込 まれ、巨大な消費市場が期待できる。日本企業の進出も 活発で、進出先として、あるいは市場としての関心が高 まっている。 インドの今を、現在ニューデリー在住中の本誌元編集長 西川裕治氏が隔月連載でレポートする。 (編集部) なぜ本誌編集長がインド? インド代表 西川裕治 との連携で政府方針としての科学技術基本計画に 従って、科学技術・イノベーション、産学連携、人 材育成などを推進している。一般的に海外ではファ ンディング・エージェンシーとも呼ばれることが多い。 さて、一般の方々にはなじみが薄いかもしれな いが、14 年1月安倍総理がインドを訪問しモディ 2014 年9月末まで本誌編集長であった私が、な 首相と会談した。その際の共同声明には「両首脳 ぜか今インドの記事を書いている。私事で恐縮な は、……科学、技術及び技術革新における協力が がら、私は 40 年前に某総合商社に入社し、20 年 一層促進されることへの期待を表明した」と書か ほど産業機械プラントの海外営業に携わり、続い れている。そこで JST は早速、インドにリエゾ ての 20 年弱は広報、人事総務など職能 (管理) 部門 ンオフィサー(現地駐在員)を派遣する準備を始め を担当した。商社を退職した 2012 年4月からは日 た。そこで目を付けたのが、新興国経験が豊富で 外協にお世話になり、本誌の編集に携わった。 フットワークが良く、何事においてもつぶしがき 編集長の仕事はとても充実していたが、唯一物 き(専門性が薄いという意味もあるが) 、かつ海外 足りないことがあった。それは海外での仕事がな 生活をいとわない楽観的な商社員だった。そして いことだ。海外勤務に憧れ商社に入社し 20 年間 私が見事にインド行きの「幸運のクジ」を引き当 は思う存分海外を堪能した。しかし 1996 年に営 てたのだ……と思ったのは束の間だった。 業を離れて以降、海外出張はほとんどなくなり もんもん 悶々としていた。そこに飛び込んできたのが「海 外で働きませんかぁ~」という科学技術振興機構 (JST)からの甘い誘いの声だった。 時間は無限にある国? 早速 JST は 14 年 10 月にリエゾンオフィス開設 許可を申請した。インドビジネスを十数年経験し、 商社で 20 年間、インドを含む海外での営業を 後進国いや新興国を主に担当する商社員だった私 担当した経験と工学部出身という経歴が純理工系 は、インドでは何事につけても時間がかかること 組織である JST で評価されたのかは分からない くらいは百も承知だった。しかし JST は営利事 が、軽い気持ちで面接を受けたのに採用されてし 業が目的の民間企業とは異なり、日本政府がバッ まった(冗談ですよ) 、 いや 「採用していただいた」 。 クで営利活動はせず、インド企業との競合はゼロ、 そして、楽しくも苦悩の日々が始まったのだ。 インドに貢献することはあれ迷惑をかけることは 科学技術振興機構とは? ところで、そもそも JST とは何をする組織な のか。その主な業務は、その名が示す通り「科学 技術を振興する機構」である。JST は文部科学省 32 2016 年 3月号 考えられない。よって2~3カ月で許可は下りる と期待した。そこで(14 年の)年末にも赴任しよ うと意気込んだ。ところが……待てど暮らせど何 の音沙汰もない。 指をくわえて待っていても時間の無駄で、駐在
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