001 002 003 004 3-1 家族援助 3 月 4 日

第3会場
3 -1 家族 援 助 ◆ 3 月 4 日( 金) 11: 0 0 ~ 11: 5 4
001
002
当院の自宅退院に向けた家族支援プログラム
- Flow-FIM を用いて-
回復期病棟における家族指導の現状
医療法人豊田会 刈谷豊田総合病院 リハビリテーション科
輝山会記念病院 総合リハビリテーションセンター
田口 敬治、宮下 由紀、見波 香織、太田 和宏、熊谷 純久、加藤 譲司、
清水 康裕
【はじめに】家族支援プログラム(以下プログラム)とは,退院後の在
宅生活において患者の機能維持と介助者の有効な介助を目的とし,外泊
時に開始したものである.これらは Flow-FIM を使用し介助者側の問題
点を抽出し家族指導の内容を再検討するものである.今回は病棟 FIM と
Flow-FIM に生じる乖離を調査し,家族指導の指標となる項目を検討した.
【対象と方法】対象は平成 24 年度から平成 27 年度までに当院回復期リ
ハビリテーション病棟にてプログラムの同意が得られた 111 名.方法は
病棟 FIM と Flow-FIM を点数に応じて群分けをし,群が違う場合を乖離
ありとした(7・6 点:自立群,5 点:監視群,4・3 点:軽介助群,2・
1 点:介助群).乖離を認めた項目を検証した.
【結果】
( 乖離なし/あり%)
食事 73 / 27,整容 64 / 36,更衣上衣 62.2 / 37.8,更衣下衣 53.2
/ 46.8,トイレ動作 68.5 / 31.5,ベッド移乗 64.9 / 35.1,トイレ移
乗 69.4 / 30.6,移動 46.8 / 53.2,階段 50.5 / 49.5 であった.乖離
を認めた項目では,更衣上衣・下衣共に病棟 FIM 介助群・Flow-FIM 自
立群の者が最も多かった.トイレ動作,ベッド・トイレ移乗は病棟 FIM
監視群・Flow-FIM 自立群の者が最も多かった.【考察】当院ではプログ
ラムが入院期間後半で実施を促している.そのため移動の確立,転倒リ
スクの軽減,リハ目標に近づいているなどの要因から乖離がない項目が
多くなったと考える.一方で,一度の外泊で退院してしまうこともあり,
十分な家族指導が実施されていない状況もある.入院期間前半から乖離
の生じやすい項目に対し,優先的にプログラムを勧めていき,十分な時
間をかけて家族指導を実施するように各療法士へ周知していく事も必要
があると考える.
003
当院回復期リハビリテーション病棟における介護教室の取り組み
潤和会記念病院 リハビリテーション療法部
兒玉 大輔、長瀬 泰範、中村 笑美
春日井 万穂、小口 和代、寺澤 享洋、鈴木 琢也、宗像 沙千子、
小沢 将臣、太田 有人
【はじめに】家族が患者のケアや退院へ向け積極的に参加する事は非常に
重要である。当院の回復期病棟では転入 2 週以内に患者家族教室を実施
し早期から家族へその重要性を伝えている。だが実際の療法士からの指導
状況が不明瞭だった為現状把握を行った。【対象】平成 27 年 3 月 30 日
~ 6 月 27 日 転 入 者 40 名( 男 性 17 名、 女 性 23 名、 平 均 年 齢 68 歳 )。
同居家族のない者、同居家族が心身に障害等を有し協力が期待できないと
判断された者、その他回復期病棟転入後再度急性期へ転棟となった者は除
外とした。【方法】家族指導内容を項目別(身体機能説明・起居・移乗・
移動・排泄・更衣・その他介助指導、身体管理・機能訓練・立ち上がり・
歩行・階段・その他訓練指導、その他)に分類し、転入より 2 週毎に集
計し 8 週調査した。転入時 FIM の移乗・移動・排泄・更衣の 4 項目の平
均値が 4.0 未満の者を FIM1 ~ 3 群、4.0 以上 6.0 未満の者を FIM4 ~ 5 群、
6.0 以上かつ歩行での移動手段を獲得している者を FIM6 ~ 7 群とし重症
度別に分析した。【結果】転入~ 2 週の間に全体の 77%に家族指導が実
施できていた。立ち上がり・歩行は重症度に関わらず共通して多い傾向に
あり、特に FIM1 ~ 3 群で立ち上がり 59%、FIM 4~ 5 群で歩行 53%
と高値を示した。更衣は FIM1 ~ 3 群で転入~ 2 週 5%、2 ~ 4 週 11%、
4 ~ 6 週 0%、6 ~ 8 週 6%、FIM4 ~ 5 群は 8 週通し 0%であり、どの
時期においても最も少なかった。【考察】立ち上がり・歩行指導が多かっ
た背景には、目にする機会が頻回でイメージしやすく、また移動手段獲得
という点で本人・家族が目標共有しやすかったことが考えられる。更衣は
患者・家族の心理的要因、時間的制約など環境要因のほか、各療法士の指
導基準の差異、さらには病棟との指導方針の統一が図れていないことが課
題として考えられた。今後新たな試みとして ICT ツールを活用した家族
との情報共有や指導方法を検討したい。
004
回復期リハビリテーション病棟の家族支援の中で生じる
スタッフの思いと家族の思い
社会医療法人 社団さつき会 袖ケ浦さつき台病院
一般演題(口演)
抄録
【目的】
回復期リハビリテーション(以下リハ)病棟では,在宅復帰を目標に積極
的なリハを進めているが,様々な疾患に伴う後遺症で日常生活動作に介助
を要するケースも珍しくない.そこで重要となるのが,身近で生活の支え
となる家族である.当院回復期リハ病棟では,介助に対する家族の理解度
向上や退院に向けての心構えを促す目的で,平成 26 年より患者や家族に
対して介護教室を開催してきたので,その取り組みについて報告する.
【方法】
平成 26 年 5 月から平成 27 年 7 月の期間で,計 8 回実施した.内容として,
第 1・7 回は起居動作から移乗動作の介助方法,第 2・8 回は食事摂取と口
腔ケア,第 3 回は介護保険制度,第 4 回は排泄ケア,第 5 回は更衣動作とした.
教室担当者は当院回復期リハ病棟所属の理学療法士,作業療法士,看護師,
ソーシャルワーカー,歯科衛生士,管理栄養士へ依頼した.理解度について,
1.理解できた,2.やや理解できた,3.理解できなかった,という形式
で理解度のアンケート調査を行った.理解度は,参加人数と 1.理解でき
たと回答した人数で算出した.
【結果】
16.5 ± 2.6 名の参加があり,主に入院患者や家族,退院後の患者や家族
であった.最も 1.理解できたとの回答が多かった内容は,更衣動作で
87%,次いで排泄ケアで 86%,起居動作から移乗動作で 83%,食事摂取
と口腔ケアで 82%,介護保険制度で 70%であった.
【考察と課題】
アンケート調査により上記の結果が得られ,介助に対する家族の一定の理
解が得られたと考える.理解度にばらつきがある点については,患者,家
族が抱える問題点が障害像や経過などによって異なる為と考える.対策と
して,個別対応の時間を設け,各職種が対応する事が挙げられる.今後は,
参加者の内訳や患者の重症度をより詳細に把握し,実施内容を再検討する
と共に,各参加者の悩みに対して的確に対応できるよう,アンケート内容
の見直しが必要と考える.
伊藤 弥子、石黒 由美子、谷野 智子、小林 みゆき
【目的】回復期リハビリテーション病棟スタッフとして家族支援の中で生じ
る思いと回復期リハビリテーション病棟の入院を経験した家族の思いを明
らかにする。
【方法】Α経験年数 3 年目以上の看護師 5 名、理学療法士 2 名、作業療法
士 1 名、相談員 2 名、介護職 1 名を 2 グループにわけ、グループフォーカ
スインタビューを行い、退院支援について語ってもらった。
Β当病棟に脳血管疾患で入院中もしくは来院した患者の 4 人の家族に対し、
半構成面接により個別インタビューを行った。インタビュー結果はΑΒご
とに逐語録に起こして質的帰納的分析をした。スタッフ、患者家族それぞ
れの思いを抽出しコード化、それらを類似するものでまとめてサブカテゴ
リー、カテゴリーに分類した。本研究は、研究者が所属する病院の倫理委
員会の承認を得て実施した。
【結果】分析した結果、スタッフの思いとして、51 のコードと 13 のサブ
カテゴリ-、4 のカテゴリーに整理された。整理された内容は、「スタッフ
間の情報共有に対する様々な思い」「回復期病棟スタッフとしての家族への
関わりと思い」「家族支援の中で重要だと思っている事」「家族を理解して
いく中で生じる思い」であった。家族の思いとして、39 のコード、15 の
サブカテゴリーと、3 カテゴリーに整理された。整理された内容は、「入院
中の患者のそばで生じる思い」
「病棟スタッフとの関わりの中で生じる思い」
「主たる介護者として患者を支え始めてから生じる思い」であった。
【考察】結果より、家族のスタッフに対する思いと、スタッフの家族に対す
る思いにズレが生じていることが分かった。この思いのズレは、家族の思
いや気持ちがスタッフに伝わらない事で起こる。その思いを引き出すため
には、スタッフが家族の関係性をアセスメントすることが不可欠であるこ
とが示唆された。思いのズレを少なくすることで、適切な時期に家族介入
がなされ、スムーズな退院支援に繋がると考える。
- -
126
005
006
医療法人 社団 東洋会 池田病院
横浜市立脳卒中・神経脊椎センター リハビリテーション部
当院回復期リハ病棟退院後の患者の現状
~聴き取り調査からみえた今後の課題~
高齢の主介護者に対する早期からの介護指導の必要性について:
1症例の経験から
吉永 寿美、中村 梢、小玉 浩之、鬼塚 知子、今井 末美、諸田 敦子、
大石 賢、齊藤 信博、小島 進
【はじめに】今回、聴き取り調査により自宅退院後の患者の身体機能の
状況を確認する事で、現在の ADL 状況と家族が実際に行っている介護の
現状を知ることが出来た。その中で患者の残存機能を活かした在宅生活
が維持できるように、今後の退院支援を見直す事が出来たので報告する。
【対象】2014/4/1 ~ 2015/6/30 までに回復期リハビリテーション病棟
に入院した脳血管疾患患者 51 名中、FIM80 ~ 99 点の中等度群(一部
介助~見守り)で自宅退院した 12 名。尚、対象者家族には本研究の目
的を説明し同意を得た。【方法】電話による聴き取り調査(日常生活動
作と介助量について)【結果】排泄については、動作が苦になっている
ため、水分摂取も控えている。出来ていたことが出来なくなった。ズボ
ンの上げ下ろしを含め汚染することがある。ついつい手を貸してしまう
回答が 12 名中 9 名であった。更衣については、上衣は何とかできるが、
下衣に介助が必要。ほぼ手伝っている。出来るとわかっているが、手を
出しているが 12 名中 7 名であった。【考察】結果より、排泄・更衣(下衣)
に関して何らかの介助を要しているとの声が多かった。入院中の対応と
して、患者の自立度や実際の介助の仕方についての家族指導が不足して
いたという現状があった。介助する側の年齢、在宅時間、注意点など個々
の家族背景や介護力に合わせた援助指導が重要である。残存能力を最大
限に活かすことで、その人らしい生活を送ることが出来ると考える。同
時に、患者をとりまく環境を十分に踏まえ、それぞれの専門性を活かし
た医療チームアプローチが重要である。【まとめ】機能の維持・向上で
きることが理想であり、入院中から生活面での介助方法を家族・介護者
に伝達し、意欲的に関わりも持ってもらうことで患者が在宅での身体機
能維持に繋げることが出来ると考えられる。
渡辺 亜希子、遠藤 美帆、早川 裕子、中川 淳一郎、及川 百合子、
山室 創、中尾 真理
【症例夫婦紹介】症例夫婦は共に 70 代で2人暮らし。今後長男夫婦が同居
の予定。家族関係は良好で長男の嫁、長女の介護協力が可能。妻は AVM
による左皮質下出血後、コイル塞栓術、開頭血腫除去術施行。発症約2ヵ
月後に当院回リハ病棟に入院。夫は軽度の難聴はあるが健康上の問題はな
かった。【経過】転院当初、妻の運動機能は Br.stage 右上肢・手指・下肢
3、感覚は重度鈍麻、非流暢型の失語だが文章レベルの理解が可能だった。
FIM は 47 点(運動 27 /認知 20)であった。 夫は毎日車で来院。「協力
できることはしたい」と訓練も見学し、指導した上肢浮腫へのマッサージ
も病棟で実施できていた。転院約1ヵ月半後、夫に移乗介助の指導を提案
したところ「まだいい」と断られるエピソードがあった。その1ヵ月後、
自宅退院にむけた調整を開始したが、指導内容や外泊の手配に対し同じ質
問を繰り返した。また、入浴時の介助が不安であると涙を流すこともあっ
た。【アプローチ】 夫を妻の主介護者と想定していたが、役割を担うため
には夫が理解できる方法で介護指導を行うこと、夫を支援する体制の充実
が必要であると考えられた。作業療法では夫に対し、被介助者体験と重要
事項を確認できる図入りの記録の提供をした。また、他職種との情報交換
を密にし、嫁や娘への介護指導、入浴サービスの利用、妻自身の機能改善
をはかり介助量の軽減をはかった。転院後約 3 ヵ月半に外泊後、自宅退院
した。【考察】夫は高齢だが車の運転や指導されたマッサージの実践が可能
であり、我々は夫の介護能力を低くはないと判断していた。そのことが夫
への支援を不十分にさせた可能性がある。高齢の主介護者に対しては、介
護能力が高い可能性があっても、能力を見極めるためにも早期から指導を
開始し、適切な指導方法や支援を検討する必要があると考えられた。
第3会場
3 -2 家族 援 助 ◆ 3 月 4 日( 金) 13: 0 0 ~ 13: 5 4
007
008
社会医療法人 至仁会 圏央所沢病院 リハビリテーション科
医療法人博仁会 志村大宮病院 茨城北西総合リハビリテーションセンター
家族リハビリ・自主トレーニングに着目した
在宅復帰への取り組み
若年者高次脳機能障害者の社会復帰に向けて苦悩した一症例
~家族支援に対するプログラムを中心に~
桑野 麻衣、矢部 明代
今川 光、小野瀬 剛広、梅澤 健、寺門 貴、大仲 功一、鈴木 邦彦
【はじめに】高次脳機能障害の影響により、本人への直接的な介入が困難
であった症例を担当した。社会復帰にあたり、家族の高次脳機能障害に対
する理解と支援体制が課題であった。家族の障がい受容への支援について
以下に報告する。【倫理的配慮】事前に口頭及び書面にて本報告に関して
説明を行い、同意を得た。【症例紹介】 20 歳代男性、会社員。父・母・
弟の4人暮らし。交通事故により多発脳挫傷の診断。リハビリ目的で当院
回復期リハビリ病棟転院。身体機能に問題なく日常生活動作自立。高次脳
機能障害は、記憶障害・社会的行動障害・注意障害がみられた。病棟では
常に歩き回っており、落ち着きなく、他者を目で威嚇するような態度で
あった。【介入方法・経過】 早期から外泊練習を行い帰院の度に家族との
個別面談を実施。介入初期、外泊練習では家族も落ち着いて生活すること
が出来ず困惑していた。個別面談では、傾聴や高次脳機能障害に対する理
解と対応方法を中心に実施。介入中期、家族の理解も進み在宅での生活を
イメージすることが可能となった。個別面談では、課題点の整理、次回外
泊練習時の確認事項の提案。介入後期では、家族から今後の生活について
の不安が聞かれたため、退院後の支援体制の提供を実施。【結果】 介入約
3 か月が経過し、家族が症例の障がいを認識し、期待が徐々に現実的なも
のに変化し、在宅での受け入れが可能となった。しかし、職場復帰には至
らなかった。【まとめ】 在宅復帰に向けて高次脳機能障害を呈する家族に
対し、経過に合わせた面談内容を提供していくことが有効であったと考え
る。しかし、高次脳機能障害者が社会復帰する上で、病院以外の支援施設
が充分でないにも関わらず、会社の雇用も難しい現実があり、長期的な支
援が必要となる。本人の社会復帰の支援や家族の退院後の不安を軽減させ
ていくためにも、長期的に支援できる支援体制の充実が必要となることが
示唆された。
- -
127
一般演題(口演)
抄録
【目的】当院の回復期リハビリテーション(以下リハ)病棟では、自宅に退
院する患者・家族に対し、退院後に必要となる動作指導は行っていた。し
かし、病棟内で家族と行えるリハ(以下家族リハ)や自主トレーニング(以
下自主トレ)の指導は積極的に行っていない現状であった。そのため、患
者は療法士によるリハ時間以外は臥床していることが多かった。今回、家
族リハ・自主トレに取り組み、在宅復帰率向上を目指したため、実施内容、
今後の課題を報告する。【方法】対象は平成 26 年 12 月から平成 27 年 3
月に入院していた患者で、家族が面会に来ることが多い日曜日を中心に実
施した。内容は各患者に合わせ、家族の介助による関節可動域訓練、基本
動作訓練、歩行訓練を中心に行った。尚、一人で自主トレを許可した患者
もいた。【結果】病棟で家族リハ・自主トレを行っている姿を多く見かける
ようになり、取り組み前の家族リハ実施率は 20%であったのに対し、取り
組み期間は 29%と向上した。在宅復帰率も実施前後で比較すると向上がみ
られた。また、スタッフへのアンケート聴取により、「スタッフと家族のコ
ミュニケーションが増えた」等の意見が聞かれた。【考察】結果から家族リ
ハ・自主トレ実施率の増加に伴い、リハ時間以外の患者の活動量が向上した。
在宅復帰率向上についても、今回の取り組みが 1 つの要因になったのでは
ないかと考える。家族の協力が得られた理由として、各患者・家族に合わ
せた負担の少ない内容を指導出来たためと考える。また、リハスタッフも
意識的に、家族指導を行うようになった。今回は家族リハの強化を図るこ
とが出来たが、実施率としては約 3 割に留まった。今後は病棟へのポスター
掲示を検討し、リハには家族の協力が不可欠であることを呼びかけ、家族
リハ実施率をより上げたいと考える。
009
010
沼津リハビリテーション病院 2 階病棟
IMSグループ医療法人明芳会 新戸塚病院
高齢者である家族が介護技術を習得するまでの関わりの検討
―老老介護で自宅へ退院するための支援―
家族講習会を通して見えてきた患者家族の求めるもの~目指せ!
家族にとって不安な気持ちが軽減し、自信が得られる講習会~
赤崎 結哉
【目的】高齢者である主介護者が介護技術を習得するまでの看護師の対応
を振り返り、介護力の不十分な介護者に合わせた自宅への退院支援の示唆
を得ること。【方法】A 病院の回復期リハビリテーション病棟へ脳梗塞を発
症した 80 代の患者 B 氏と 70 代の主介護者である妻 C 氏の 2 名を対象に、
カルテの看護記録および看護計画実施評価部分の記録から、患者家族への
関わりに関する内容に焦点を当て抽出。研究への協力は自由意思で個人情
報の保護、匿名性の確保、秘密の保持に十分保持することを説明し、同意
書への署名にて同意を得た。研究者所属施設の倫理審査委員会による承認
を受けた。【経過】B 氏は急性期病院での入院治療を経て、リハビリを目的
に転院となった。入院時は JCS-30、経口摂取はほとんどできず日常生活動
作は全介助で、スタッフは介助量が多く自宅退院は非常に困難と考えてい
た。しかし、家族は自宅退院を強く希望していた。家族の意向を否定せず
自宅退院できるよう B 氏の生活環境を整えながら、入院中に C 氏へ介護指
導を行ったが C 氏は書面での学習は困難で実際の動きを模倣することも困
難であった。そのため、C 氏が家事動作の延長として理解し学習できる内
容へと的をしぼり反復練習を試み、C 氏が学習できず身体的負担の大きい
介護はサービスの利用を勧めた。また、介護指導を約束した日に来院でき
ず、遅れて来院することもあり、C 氏の来院したタイミングでできる介護
指導を行った。【考察】多くある家族指導はパンフレットを作成したり見学
後に実施してもらう。1 回では学習できないとスケジュール調整をして習
得してもらう。C 氏は自己効力の自分はできるという効力予期は高かった
が、介護技術を学習するための理解力と記憶力が不十分であった。そのため、
指導内容と方法は違っていても C 氏のやり方を否定せず自己効力感を保た
せ、指導を行ったことで介護へ否定的な感情を抱かず、介護技術の習得に
至ったと考えられる。
吉武 信治、秋山 克徳、太田 紫都、斉藤 摩季、大森 美佳、杉山 沙樹、
渡嘉敷 淳、石田 洋子、森野 玲子、藤原 大輔
【はじめに】 当院は 2005 年に回復期リハビリテーション病棟をオープン
した。年月を重ねる毎に患者・家族から聞かれる、自宅退院後の不安内容
が同一な事を認識した。アンケートを行った結果、不安内容は、排泄の援
助や移乗介助方法であった。少しでも不安の軽減に繋がればという思いか
ら家族講習会の活動を開始した。現在、入院している患者・家族との懇話
会を含めた講習会を実施したので、その結果を報告する。【目的】 退院さ
れた患者・家族に講習会へ参加してもらい、懇話会を通して、本音で情報
交換を行う事が可能となる。退院後の不安点を表出できる。会の中で気兼
ねせず不安に関する質疑応答が可能となる。【方法】(1)講習会の実施メ
ンバー医師、看護師、理学・作業・言語聴覚療法士・社会福祉士・管理栄
養士の多職種から構成(2)懇話会の実施。前半の講演会は、回復期リハ
ビリテーション病棟に内容について医師、看護師、リハビリ療法士が実施
(3)当院の回復期リハビリテーション病棟を退院され、自宅療養されてい
る患者とその家族に講習会参加を依頼し、現在入院されている患者と家族
との意見交換や情報交換の実施【結果】55 歳女性(脳梗塞)ゴミ出しは口
を使って行った。やっているうちに、出来ようになった。だって、やるし
かない。入院中の患者から:試験外泊したが、転ぶと思って怖かった、本
当に退院して大丈夫なのか。ご家族:慣れていくことが重要と思う。退院
の許可が出たという事は、気を付ければ、自宅生活が可能とも考えられる
のではないか。【考察】
市民公開講座では、実際の患者や家族の参加をし
てもらうことがあると言う。その成果は、市民に届いているようである、
有効な方法であると考えられる。当事者からの経験談や親身な意見は重要
であり、大規模な取り組みではなく、病院単位での取り組み、苦労や意見
を聴取し、その重要な事柄を、伝えることが重要であると考えた。
011
012
医療法人社団生和会 徳山リハビリテーション病院 リハビリテーション部
昭和大学藤が丘リハビリテーション病院
介護方法じゃないの、私たち家族の「こころ」を助けて!
~家族会の立ち上げに向けて、インタビューで明らかになった家族の想い~
橋本 章、宗貞 行浩、神田 勝彦、佐藤 啓介、小川 奉彦
一般演題(口演)
抄録
【目的】国が定めた入院期限は 150 日(運動器 90 日)であり、退院のカウ
ントダウンは入院と同時にスタートしている。インタビュー調査で「家族
の想い」を顕在化し、退院支援(家族会)を有効的なものにすることを目
的とする。
【方法】回復期病棟に入院している患者(脳血管疾患)の家族で、この調査
に賛同の得られた 7 名(男性 1 名、女性 6 名、平均年齢 56.3 歳)を対象
とした。方法は 1 名につき 30 分程度、半構造的インタビューを実施した。
質問は 1) 現在抱えている想い、2) 今までに解消されたこと、3) 今後出て
くるであろう問題、4) 家族会に望むこと、をインタビューガイドに基づい
て実施した。インタビュー内容は同意のもと IC レコーダーに録音したあと
逐語録に起こし、カテゴリー化を行った。
【結果】1) 現在の想い、で最も多かった事は「介護に対する不安」次いで「能力・
機能に対する不安」
「生活の不安」といった「不安」に関する要素が多く、
「自
信がある」と答えた人は僅かであった。2) 解消されたこと、では排泄や食
事などの「ADL 能力」、3) 今後の問題では「家族の内的な想い」「退院の重
圧」「介護疲れ」、4) 家族会に望むこと、は「交流・相談・勉強会の場として」
という声が多く聞かれた。
【考察】インタビュー調査を通して家族は「介護生活の不安」を抱えている
ことが明らかになった。その中でも身体介護に対する技術的な不安よりも、
精神的な不安を述べる人の方が多かったことが挙げられる。これは当院で
回復期セラピスト 10 カ条のチェックリスト調査を行った際、6 条の「介護
を担う家族や介護者とともにケア方法を検討しよう」の項目が課題として
挙げられ、重点課題として家族指導に取り組んできた成果であると考える。
この事からも家族会にはピアカウンセリングの要素のある、家族の精神的
フォローに重点を置く必要があると考えられ、それを踏まえた家族会を開
催していく必要があると思われる。
意思決定支援により効果を得た家族への関わり
~重度後遺症により家庭復帰が難渋と考えられた一症例~
萩原 木染、渡部 喬之、長谷川 絵里、中嶋 千聡、川野 留美子、
川手 信行、水間 正澄
【目的】回復期リハ病棟は ADL 向上による寝たきりの防止と家庭復帰を目
的としている。なかには家庭復帰できないケースも多く、その理由の 1 つ
として意思決定に向けた情報不足が挙げられる。今回、患者の病状から家
庭復帰が難渋であったケースに対し、患者・家族が満足できる形での家庭
復帰につながった症例を通し、意思決定支援の重要性について示唆を得た
ので報告する。【方法】症例報告。倫理的配慮として家族に研究の趣旨につ
いて口頭で説明し同意を得た。【経過】回復期リハ病棟入院時の本症例患者
は情動障害が強く、重度の言語障害のため表出が困難であり、昼夜を問わ
ず大声を上げることがあった。その状況から家庭復帰は困難であると予測
されたが、高次脳機能障害は長期スパンで回復すること、運動機能として
麻痺の程度は軽く将来的に介助歩行も可能であると判断できたため、担当
チームとして家庭復帰も視野に入れた方向性を考えた。入院半年後に水頭
症を併発した際、そのリスクから手術を行うかは家族の判断に一任された。
事前に手術の方法や予後について家族の疑問に答える形で説明を行ってい
たため、「説明を受けていたから迷いはなかった」と手術を選択された。そ
の後、ADL については期待通りの回復経過をたどるが、家族は「もっと良
くなるのではないか」と入院リハビリへの期待値が高く「施設へ転院した
い」と意思表示された。本症例患者にとって、家庭復帰による刺激が高次
脳機能に対して一番効果的であると評価し、各方向性を選択した場合の利
点と欠点を伝え、患者・家族の意思や望みを丁寧に確認することに努めた。
結果、家庭復帰を選択され「本当に ( 施設で ) いいのか迷っていた」「背中
を押してもらえた気がした」という言葉を聞くことができた。【結語】意思
決定を行う際に最も必要になるものは、医療者から行う「情報提供」であり、
その支援は一番近い存在となる病棟看護師が行えることが望ましい。
- -
128
第3会場
3 -3 質の評 価 ◆ 3 月 4 日( 金) 14: 0 0 ~ 14: 5 4
013
014
社会医療法人同仁会周南記念病院 リハビリテーション科
黒木記念病院 リハビリテーション部
当院回復期リハ病棟の重症患者改善に関与する因子の検討
~改善群と非改善群の比較~
当院における休日・充実加算導入によるリハビリテーション効果
の検証
木下 貴文
【目的】
回復期リハビリテーション病棟(以下,回復期リハ病棟)に質の評価が導
入されて以降,重症患者の ADL 改善は必須である。今回,当院回復期リハ
病棟の重症患者改善に関わる因子について検討した.
【対象】
平成 26 年 6 月から平成 27 年 6 月までに当院回復期リハ病棟を退院した重
症患者 43 名(年齢 78.6 歳± 10.7 歳)を対象とした.疾患の内訳は脳血
管疾患 22 名,運動器疾患 21 名.
【方法】
入院時日常生活機能評価 10 点以上を重症患者とし,退院時に 3 点以上改
善した群(改善群 30 名)と改善しなかった群(非改善群 13 名)の 2 群
間で比較した.項目は年齢,性別,入棟までの日数,在院日数,リハ単位
数(入棟前後)
,入退院時日常生活機能評価得点とした.統計処理は MannWhitney の U 検定,
Fisher の直接確率法を使用し,
有意水準を 5%未満とした.
【結果】
両群間で性別
(改善群男性 13 名,
女性 17 名)
(非改善群男性 3 名,
女性 10 名)
,
入棟までの日数(改善群 33.5 ± 12.2 非改善群 35.0 ± 13.6)
,入棟前リハ
単位数(改善群 42.0 ± 34.4 非改善群 42.0 ± 35.0)に有意差は認めず,年
齢(改善群 78.5 ± 10.9 非改善群 88.0 ± 7.7)
,在院日数(改善群 70.5 ±
41.1 非改善群 53.0 ± 25.1)
,入棟後リハ単位数(改善群 246.0 ± 193.1 非
改善群 176.0 ± 91.1)には有意差を認めた.また日常生活機能評価得点で
は入院時(改善群 11.0 ± 1.8 非改善群 12.0 ± 2.1)に有意差を認めなかっ
たが,退院時(改善群 6.0 ± 2.8 非改善群 11.0 ± 3.0)に有意差を認めた.
【考察】
両群間で入棟までの日数やリハ単位数,入院時日常生活機能評価得点に差はな
かったが,入棟後の在院日数やリハ単位数は改善群の方が多く,退院時日常生活
機能評価得点も有意に改善していた.これは回復期リハ病棟入棟後の長期的アプ
ローチ
(量的関与)
が重症患者改善に重要であることを示唆していると考えられた.
015
【はじめに】当院の回復期病棟では、平成 24 年 6 月より「休日リハビリ
テーション提供体制加算」及び「リハビリテーション充実加算」を算定し
た。 今 回、Functional Independence Measure( 以 下 FIM) を 用 い、2 つ
の加算体制導入前後の 2 年間の推移をみることで、前後でのリハビリテー
ション効果の違いを明らかにすることを目的とする。【方法】平成 23 年 6
月 1 日から平成 25 年 5 月 31 日の期間に回復期リハ病棟に入棟した患者
で、治療データの学術使用に関する同意書にて同意が得られた 847 名を対
象とした。847 名のうち、加算体制前に入棟した 415 名を非加算群、加
算体制導入後に入棟した 432 名を加算群とし、2郡間での比較検証を行
い、疾患別ごとの FIM 利得の平均、1 人 1 日当たりの平均リハビリ単位数、
MMSE などを比較した。疾患に関しては、大腿骨頸部 / 転子部骨折、脳血
管障害、廃用症候群に分類した。【結果】 回復期病棟全体の FIM 利得の平
均は、非加算群で 11.7、加算群で 14.1 であり、統計学的有意差を認めた。
また、患者 1 人 1 日当たりの平均リハビリ単位数は非加算群で 4. 7、加
算群で 6. 1へと増加した。疾患別では、廃用症候群で、非加算群は 6.7 加
算群では 10.1 であり、廃用症候群では、統計学的有意差をもって、加算
体制導入前より FIM 利得は向上した。大腿骨頸部 / 転子部骨折では、非加
算群で 16.9、加算群で 16.0 であり、統計学的有意差を認めなかった。脳
血管障害では、非加算群で 13.0、加算群で 11.9 であり統計学的有意差を
認めなかった。【考察】回復期リハ病棟全体の FIM 利得は増加し総訓練量
の増大は ADL 改善に繋がるといえる。特に廃用症候群で増加が認められ、
訓練を増加することは、効率よく能力が向上しリハ効果が得られると考え
る。一方で、脳血管障害や大腿骨頚部 / 転子部骨折では変化が少なく、卒
後 5 年以下の職員がリハ部全体の 73% を占めることや当院の特徴である
患者重症度及び認知症有病率の高さによる影響があると考えた。
016
在宅復帰に影響を与える FIM 項目の検討
-傾向スコアマッチング法を使用して-
1)
高橋 宙子、小関 友宏、字室 厚志、高戸 祐太、北口 恭平、
疋田 福丸
当院回復期リハビリテーション病棟入院患者における FIM 利得と
自宅復帰の関係
愛仁会リハビリテーション病院 リハビリテーション科、2) 愛仁会リハビリテー
ション病院 リハ技術部、3) グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン
砂田 一郎 1)、大垣 昌之 2)、八木 保 3)
江頭 雅己、岸本 泰樹、桂川 智宏、大野 敦子、安藤 弘道、
磯野 倫夫
【はじめに】回復期リハビリテーション病棟(以下、回復期病棟)入院患者
において、自宅への復帰は重要な目標である。同時に患者の病棟内訓練に
よる身体機能の向上は、退院後の生活を決める重要な因子となり得る。今回、
当院回復期病棟入院患者における病棟内 ADL の変化と退院先の関係を調査
したので報告する。
【目的】回復期病棟入院患者における ADL 能力の変化と退院先の関係を調
査すること。
【対象】平成 26 年 8 月から平成 27 年 7 月の間に当院回復期病棟を退院さ
れた患者 41 名とした。対象者の内訳は、運動器疾患 23 名、脳血管疾患 17 名、
その他1名、男性 20 名、女性 21 名、年齢 81.9 ± 8.8 歳であった。
【 方 法 】 対 象 者 の 病 棟 内 ADL 能 力 は Functional Independence Measure
(以下、FIM)を用いて調査し、入院時と退院時における FIM 総得点か
ら、患者ごとの FIM 利得(改善率)を算出した。また退院先が自宅か否
かを目的変数、FIM 利得を説明変数に用いたロジスティック回帰分析を
行ない両者の関係性を調査した。統計分析は統計ソフト(IBM 社、SPSS Statistics22)を用い、有意水準を 5%未満とした。
【結果】対象者の FIM 利得は平均で 119.0 ± 27.2%であった。ロジスティッ
ク回帰分析の結果では、FIM 利得の回帰係数 0.07、オッズ比 1.07(95%
信頼区間:0.02 - 0.15)で、有意な回帰式が得られ(p< 0.01)、FIM 得
点の向上は自宅退院を可能にする影響因子であることが確認された。
【考察】FIM 得点の向上が在宅復帰に影響を及ぼす事が再確認できた。当
院においても回復期病棟を開設して1年が経過したが、病棟全体の成長の
為にも FIM の推移と退院先の関係を明らかにした事は意義があったと思わ
れる。今後は更に項目別にも評価をすすめ病棟のシステムそのものの改善
にも役立てていきたい。
- -
129
一般演題(口演)
抄録
目的 脳卒中患者での在宅復帰群の症例では非在宅復帰群と比較して、「年
齢が若く」、「入院時の日常生活動作(ADL)が高く」、「発症から入院まで
の日数が短い」という報告が多い。そのため、在宅復帰に影響する機能的
自立度評価法(FIM)の項目による分析には上記の要因の検討が関与し、
統一の見解を得ることが困難であった。今回、傾向スコアマッチング法を
用いた対象群の均一化の下で、どの FIM 項目の利得が在宅復帰に強く影響
するかを検討した。方法 2013 年 4 月より 2015 年 3 月に入院し、2013
年 4 月より 2015 年 4 月に退院した回復期リハビリテーション病棟での診
療を受けた患者で、
「15 歳未満の小児」、
「発症から入院までの日数が 60 日
超え」の患者を除いた 276 例を対象とした。在宅復帰群とは、厚生労働省
の定義による「自宅、居住系介護施設等」に退院した患者とした。まずは、
「入
院時年齢」、「入院時 FIM 合計点」、「発症から入院までの日数」の 3 変数が
共変量となるのか、在宅復帰の有無で多重ロジスティック回帰分析を実施
した。次に、有意であった共変量を用いて傾向スコアマッチングを施行し、
FIM 利得の項目と在宅復帰の有無での多重ロジスティック回帰分析を施行
した。有意水準は p < 0.05 とし、相関係数では相関係数> 0.7 以上の FIM
項目の一方を除外した。結果 共変量候補の 3 変数では「入院時 FIM 合計」
のみが有意であった。そこで、入院時 FIM 合計のみを共変量として算出し
た傾向スコアのマッチングによって、在宅復帰群と非在宅復帰群はそれぞ
れ 59 例ずつとなった。FIM 利得の 18 項目中、特に相関の高い6項目(更
衣下、排尿管理、トイレ動作、ベッド・椅子・車椅子への移乗、理解、記憶)
は説明変数から除外した。FIM 利得の項目中、清拭(オッズ比 2.22)と表
出(オッズ比 1.88)が在宅復帰の有無に有意であった。結論 FIM の項目
のうち、清拭、表出の項目での利得が、在宅復帰に強い影響を与えた。
医療法人誠道会 各務原リハビリテーション病院
017
018
A 回復期リハビリテーション病院の褥瘡発生患者の傾向
-褥瘡発生とブレーデンスケールの項目得点との要因-
FIM 効率に着目した退院時期とリハビリ内容充実への考察
医療法人社団有信会 呉記念病院
古川 祐樹、岡本 直之
藤井会リハビリテーション病院 看護部
安田 香
【目的】褥瘡発生予測のリスクアセスメント・スケールとしてブレーデンス
ケール(以下BSと略す)を使用している。BSのスケール 6 項目の項目
得点の変化を調査し、褥瘡発生の傾向を明らかにする。【方法】対象、平成
24 年 4 月から平成 26 年 3 月まで入院し褥瘡が発生した患者 18 名。調査
方法、1 褥瘡保有の既往歴の有無、入院時の褥瘡保有の有無、褥瘡発生部位。
2 入院時と褥瘡発生時のBSの 6 項目のスケールの点数を入院記録から
集計し、褥瘡発生部位別に比較した。 集計は単純集計とした。【結果】1 褥瘡既往患者9人(50.0%)、入院時の褥瘡保有者5人(27.7%)。褥瘡発
生部位、仙骨部9人(50.0%)、踵部2人(11.1%)、背部 2 人(11.1%)、
臀部2人(11.1%)、腸骨部・尾骨部・大転子部は各1人(5.5%)ずつであっ
た。2 褥瘡発生部位別で BS のスケール 6 項目の項目得点の点数が低下し
ていたのは、仙骨部は「栄養状態」と 「摩擦とずれ」1 人、「知覚の認知」
と「摩擦とずれ」1 人、「湿潤」と「栄養状態」は各 2 人が低下。背部 2 人
は「摩擦とずれ」、腸骨部、「可動性」が低下。【考察】1 褥瘡が発生した
患者のうち、入院時に保有していた褥瘡が治癒した後に褥瘡が発生してい
た。ADL の変化に 伴うリスクアセスメントの不足と考える。仙骨部の褥
瘡発生が多く車いす座位時の除圧だけでなく、シーティ ングの見直が必
要。褥瘡が重症化にしなかったのは早期に対応ができていた。2 得点が低
下していた 6 項目のうち「摩擦とずれ」4 人(22.2%)、「栄養状態」3 人
(16.6%)が多く 2 項目 に対する看護の強化が必要である。【結論】傾向
として褥瘡発生部位は仙骨部が多く、「摩擦とずれ」と「栄養状態」の点数
が低い患者に対しては褥瘡 発生予防対策の見直しが必要である。
【背景】当院回復期病棟は開設 10 年目を迎え、私はその内 7 年間回復期病
棟を中心に理学療法士として勤務している。その中で多くの患者様と関わ
り退院を迎えていく中で、自宅復帰のタイミングと能力向上のピークのず
れを感じていた。そこで、果たして能力のピークと退院時期は合致してい
るのかを FIM 効率に着目して検証を行った。【方法】1、リハビリスタッ
フへ能力のピークと退院時期に関するアンケート調査を実施。2、平成
25 年 4 月 1 日以降に当院回復期病棟に入院し、平成 27 年 3 月 31 日まで
に自宅退院した脳血管疾患の患者様 56 名(在院日数 60 日以上の方)の
FIM 改善率を月毎に分け伸び率を調査。その後全国回復期病棟連絡協議会
の全国平均 (0.2 ± 0.4 /日 ) と比較。3、最終的な FIM 効率 (1 日当たり
の FIM 改善率 ) の良い群と悪い群特徴を比較検討。【結果】1) アンケート
調査より能力変化と退院時期にずれを感じているスタッフが多いことが分
かった。2) 在院日数 1 日当たりの FIM 効率が全国平均値 0.2 を満たした者、
また月毎の FIM 改善状況に停滞期を迎えず退院を迎えた者を合計すると
30.3%となった。3) 上記結果を満たす者の特徴として、入院時 FIM が高い
こと、早期訪問実施の有無、本人を含めた家族の意向が挙げられた。【考察】
結果 1) よりずれを感じるスタッフは多いが、今回の FIM に着目した調査
結果では優位な差を示す事にはならなかった。また結果 2)3) より、入院時
の能力が認知面を含めて高く、家族に早期退院の意向がある者はリハビリ
へ目的意識をしっかり持ち参加され、早期訪問など在宅復帰への準備など
も早期から行われる為良好な結果が出たものと考える。しかし今回の研究
では、FIM の点数のみに着目した為 ADL 面で変化があるが得点に変化が無
いものは悪い群に入ってしまっている。その為今後は自宅復帰後の情報か
ら、適切な時期に必要な能力が得られていたかを調査することでより質の
高いリハビリを提供することに繋がると考える。
第3会場
3 - 4 質の評 価 ◆ 3 月 4 日( 金) 15: 0 0 ~ 15: 5 4
019
020
医療法人桂名会木村病院 リハビリテーション部
特定医療法人清翠会 牧リハビリテーション病院
当回復期リハビリテーション病棟における脊椎圧迫骨折患者の
早期入院受け入れの有用性
入院から在宅までの同一セラピスト担当制の導入について
~アンケート調査から見えた課題と改善策~
宮嵜 友和、坪井 優作
大泉 貴志、芳本 康司、外山 さおり、山下 有希
一般演題(口演)
抄録
【はじめに】近年、回復期リハビリテーション病棟(以下、回復期病棟)は、
早期に入院受け入れし集中的なリハビリテーションを提供することで早期
在宅復帰させることが求められている。当院では脊椎圧迫骨折(以下、圧
迫骨折)患者において、診断当日または翌日の早期入院を受け入れている。
本研究の目的は、当院における圧迫骨折患者の早期入院受け入れの有用性
を検証することである。【対象】平成 26 年 4 月 1 日から平成 27 年 2 月
28 日の期間に当院に入院した保存療法の圧迫骨折患者 85 名のうち、神経
障害がある者、他の骨折を合併している者を除外した 78 名。【方法】早期
入院群(以下、早期群):診断当日または翌日に入院した者 41 名、通常入
院群(以下、通常群):急性期病院で 2 日以上入院した後に当院へ入院し
た者 37 名に分類した。各群の1.当院入院日数、2.診断から当院退院
までの日数、3.当院入院時の運動 FIM、4.当院退院時の運動 FIM、5.
FIM 利得、6.FIM 効率、7.在宅復帰率を、対応のないt検定または x2
検定を用いて比較した。有意水準は 5%とした。【結果】早期群 / 通常群の
順で記載。1.当院入院日数:22.4 ± 11.5 日 /25.4 ± 11.5 日、2.診断
から当院退院までの日数:22.7 ± 11.5 日 /39.1 ± 22.9 日(P < 0.01)、3.
当院入院時の運動 FIM:26.4 ± 13.5/31.2 ± 16.7、4.当院退院時の運動
FIM:69.4 ± 18.7 点 /63.6 ± 18.7 点、5.FIM 利得:47.7 ± 18.6/36.4
± 20.5(P < 0.01)、6.FIM 効率:2.8 ± 2.2/1.6 ± 1.1(P < 0.01)、7.
在宅復帰率:90.2%/83.8%。【考察】安静臥床により筋力は 1 日に 1 ~ 1.5%
低下するとの報告がある。急性期病院から回復期病棟へ早期に転院し、集
中的に起立・歩行訓練を行うことで、筋力低下など廃用症候群を予防する
ことが重要であると考える。回復期病棟における圧迫骨折患者の早期入院
受け入れは、早期に ADL を向上し、在宅復帰を果たすことができるという
有用性が示唆された。
【はじめに】当院では入院患者が退院後に当院訪問リハビリテーション ( 以
下,訪問リハ ) を利用する際,入院時の担当セラピストが継続して訪問リ
ハを担当するという取り組みを行っている。しかし,取り組みに関してセ
ラピストから不安の声が聞かれたため,アンケート調査を実施し考察する
ことで改善策を講じたので報告する。
【方法】対象は当院リハビリテーション部セラピスト 72 名とし,多肢選択
式及び自由記述式のアンケート調査を実施した。質問項目は,帰属 ( 性別・
経験年数・職種 ) 及び,取り組みは良いか,機会があれば行きたいか,不
安はあるか等とした。
【結果】アンケート回収率は 84.7% であった。取り組みに関して,良い
34%,どちらかと言えば良い 52%,どちらとも言えない 13%,機会があれば,
行きたい 38%,どちらかと言えば行きたい 34%,どちらとも言えない 26%
であった。行きたい理由として在宅生活や病状経過を見たい,どちらとも
言えない理由として業務の負担となるが多かった。不安が,ある 43%,な
い 57% であり,理由としてリスク管理や相談がしにくい等の回答があった。
【考察・まとめ】
「どちらとも言えない」の割合が,
「取り組みに関して」より「機
会があれば行きたいか」において増加した理由として,介護保険分野の知
識が新たに必要であることや書類の作成業務が負担になることが考えられ
る。また,不安があると約 4 割のセラピストが回答しており,理由として
急変時の対応やリハビリ内容の検討時に他セラピストがいないことが不安
に感じると考えられる。これらを踏まえ,兼務開始時に研修を実施するこ
とや兼務者の業務の簡素化,リスク管理に関するマニュアル作成,症例検
討会を行なう必要があると考えられる。その結果,セラピストが安心して
入院中から在宅までの継続したリハビリテーションを実施することに繋が
り,地域住民へより充実した訪問リハサービスを提供することが可能にな
ると考えられる。
- -
130
021
022
職業リハビリテーション実施患者の退院後聞き取り調査の報告
1)
2)
回復期リハビリテーション病棟看護師の退院支援についての質向上
社会医療法人若弘会 わかくさ竜間リハビリテーション病院 療法部、
公益財団法人 健和会 大手町リハビリテーション病院
回復期リハビリテーション部
社会医療法人若弘会 わかくさ竜間リハビリテーション病院 診療部
中林 智美 1)、牟田 博行 1)、錦見 俊雄 2)
田中 みゆき、小島 彩、輝 麻里絵、小笠原 美咲
【はじめに】当院では脳血管疾患等により高次脳機能障害を呈した患者に職
業リハビリテーション(以下、職リハ)を行っている。職リハとは、障害
者が自立した職業生活を送ることができるように、職業指導・職業訓練な
どの支援を行うことをいう。当院は基本的なリハに加えてワークサンプル
幕張版(以下、MWS)による評価や、必要に応じた職場訪問を実施している。
しかし、提供したリハが退院後の就労に役立っていたかを検証できていな
かった。そこで今回、職場復帰している患者に聞き取り調査を行った結果、
若干の知見を得た為報告する。
【調査方法】調査対象は 2013 年から 2 年間に当院で職リハを行った患者の
内、筆者が担当した 9 名。調査の内容は「勤務状況・職リハの効果・満足度(職
リハ・仕事内容・収入)」等の 10 項目を電話や面談により聴取した。
【調査結果】退院時に予測されていた範囲で業務を行っていたのは 3 名、よ
りステップアップした業務を行っていたのは 6 名であった。収入は病前と
同じが 6 名、下がったのが 3 名だったが、現状に満足しているのが 7 名だっ
た。リハ内容で現在の仕事に役立ったものとして挙げられたのは、MWS、
体力向上運動、記憶力課題であった。項目外のコメントでは、「障害につい
て理解している上司の異動や、障害を知らない同僚への対応で苦悩する。」
という意見があがった。
【考察】当院では職リハ実施時に、患者から病前の勤務状況や業務内容を聞
き取り個々の障害に合わせた課題を設定している。入院早期から実際の仕
事を模した課題を実施する事は、患者自身の現実検討能力の向上に繋がり、
復職に効果的である事が推測された。また、必要に応じて実施する職場訪
問等で会社側と話し合いをした事が、患者の働きやすい環境や就労継続の
一助となっていると考えられた。今後は復職後に生じる環境の変化に対し
て、本人が入院中から問題を解決できる職リハを行う事が新たな課題とし
て示唆された。
023
リハビリテーション科内ケースカンファレス導入による、入院後
1 か月の FIM 利得への影響
1)
医療法人社団栄宏会 土井病院 リハビリテーション科、2) 神戸大学大学院保
健学研究科
岡本 実華 1)、木下 慶一 1)、田村 篤志 1)、圓満 英人 1)、志鷹 拓弥 1)、
前重 伯壮 2)
024
回復期リハビリ病棟における看護師・ケアワーカーの基本的ケア
に関する実態調査
独立行政法人 地域医療機能推進機構 湯布院病院
大山 さちえ、日野 幸子、大嶋 典子、加藤 春子
(はじめに)回復期リハ病棟において患者は重症化の傾向にある。ADL の
向上や患者・家族の満足度の維持・向上に対し看護師(以下 NS)や介護福
祉士(以下 CW)による関わりが重要になる。このような状況の中で、回
復期リハ病棟で勤務している NS や CW が基本的ケアを十分に行えている
か検証した。(目的)基本的ケアに関する実態調査を実施し、課題を明確に
する(方法)対象:回復期リハ病棟看護・介護職員 37 名期間:H26 年 7
月~ 12 月調査内容:「回復期リハケア 10 項目のケアの質に関する調査票」
を用い、食事・洗面・排泄・入浴・更衣の 5 項目を職員の属性(年齢・職種・
回復期リハ病棟での経験年数)で分析する。(結果・考察)ケア 5 項目は評
価大項目で有意差はなかった。評価中項目で NS,CW 共に最も低いのは「デー
タの集積」の項目である。これはデータの集積は委員会等で実施している
が、情報伝達が十分にできていない為だと考える。次に「患者家族への説明・
同意」の項目で低く、日常的に行なっている行為に対しその都度説明を行
うという意識が薄いと考える。また「基準・手順」の項目が低いのは定期
的な見直しがされていなかった。CW では「多職種間のアプローチ」の項
目が低かった。受け持ち制の意識が薄く退院援助を主体的に実施している
のは NS で多職種との関わりが少ないからだと考える。年齢別に有意差が
あったのは「看護技術」の項目で 40 歳以上が 20 歳代に比べて 2 倍以上評
価が高く、経験値の差だと考える。(今後の課題 )1. データの基となる日々
の記録の充実。委員会情報の伝達 2. 患者主体であることを常に意識し看護
行為に対する説明と同意を得る 3. 手順は毎年定期的な見直しをする。4. カ
ンファレンス等情報共有の場に CW が積極的に参加できるよう業務改善を
行う。また受け持ち意識を高められるよう働きかける。5. 床現場での技術
指導(OJT)
- -
131
一般演題(口演)
抄録
【はじめに】当院では、H26 新病院の設立に伴いリハビリ専門職(以下 Th)
の大幅な異動が生じ、経験年数の低下がみられた。そこで、リハビリテーショ
ン(以下リハビリ)科内にてケースカンファレス(以下 CC)を全回復期入
院患者を対象に導入し、時期相応のリハビリ提供を目指した。今回、回復
期リハビリにおける CC 導入の成果について、FIM を指標にして報告する。
【対象・方法】対象は平均年齢 83 ± 9 歳の男女、脳血管疾患 68 名、廃用
症候群 43 名、運動器 116 名(H25.4 ~ H27.8)の計 227 名。経験年数が
低下した状況でも適切な目標設定を行い、時期相応のリハビリができるよ
う入院後 1 か月に重点を置き CC を導入。経験年数 5 年目以上の比率が高
い職員構成変化前の時期 A(H25.4 ~ H26.3)、職員構成変化後 CC を全回
復期入院患者には行っていなかった時期 B(H26.4 ~ 8)、その後 CC を全
回復期入院患者に導入した時期 C(H26.10 ~ H27.8)に分けた。初回 CC
は、入院日より 10 日までに実施。CC 実施時間は 1 ケース 20 分とした。又、
入院時・1 か月後・退院時の FIM をカルテ及びリハビリ総合実施計画書よ
り調査し、それぞれの時期で FIM 利得を算出した。【結果】全疾患の集計
を行った結果、入院 1 ヶ月後の FIM 利得では、時期 A9.44・時期 B5.88・
時期 C9.81、運動項目の FIM 利得は時期 A11.7・時期 B9.25・時期 C13.59
であり、CC 導入後の時期 C では導入前の時期 B を上回る結果となった。又、
疾患別に比較した場合では、廃用症候群患者 3.74、運動器患者 4.91 と著
明な向上が認められた。【まとめ】CC を全回復期入院患者に導入すること
で目標設定が明確となり、更に問題提起を行うことで時期相応のリハビリ
提供ができ、入院 1 か月後・運動項目の FIM 利得の向上に繋がったと考え
られる。
【目的】A病棟は、近隣にセンター病院があり全国回復期病棟の平均在院
日数(74日)より、一か月短い日数で退院となっている。しかし、A病
棟では他職種と業務の一部が重なることで回復期リハビリ病棟の看護師と
しての専門性を見失いやすい事が現状である。そこで、退院支援の現状と
看護者の抱える退院支援の課題を明確化することで退院支援の質向上にも
繋げたいと思い看護の在り方について考えた。【倫理的配慮】A病院の看
護研究倫理審査会の承諾を得ている。【方法】アンケートの実施データ分
析( χ² 検定)第 1 回目:2014年6月実施第 2 回目:2015年 7 月
実施(前回のアンケートにより問題・課題を追加しアンケート作成)1回
目のアンケート結果より1.プライマリーのカンファレンスが充実してい
ない2.退院支援に関する知識不足がある。の二点の問題点が上がった。
対策としてカテゴリーシート作成、カンファレンスの定着化、相談及び調
整機能を強化するために学習会を行った。【結果】1.退院調整に向けた
カンファレンスは月2回以上開催されチームアプローチが強化されていっ
た。しかし2回目のアンケート結果でも知識や認識・支援内容は個人差が
あることが明らかになった。【評価・考察】回復期リハビリの当事者は高
齢者等であり看護師はあくまでも支援者である。しかし良い支援者がいな
くては、良いリハビリの過程はあり得ない 1)と言われ、看護師の果たす
役割は重要である。看護師の知識や認識、支援内容の向上は今後さらに必
要とされてくる。また、チームアプローチを提供する上でも看護の力が必
要と考えられる。【おわりに】在宅復帰に向けた退院指導において、「本人
の合併症・ADLに関する指導」が重要である。患者の問題解決・情報共
有と再発予防の指導に向けた教育機能を提供するための意識向上が今後の
課題である。
第3会場
3 -5 質の評 価 ◆ 3 月 4 日( 金) 16: 0 0 ~ 16: 5 4
025
026
医療法人社団 弘人会 中田病院 リハビリテーション科
医療法人 北辰会 蒲郡厚生館病院 リハビリテーション病棟
退院後追跡調査を行って 第 1 報
~退院 1 ヶ月後の歩行や ADL は向上しているのか~
活動量向上に向けたリハビリ訓練室での看護師の介入
-- 活動量計を使用して --
奥田 紘祥、中畑 成留美
鈴木 香織
【はじめに】当院でも退院後の自立した生活を目指してリハビリテーショ
ンを提供している . しかし , 退院すると入院中ほどの活動量の維持が困難
で , 歩行や ADL が低下したり転倒したりするのではという心配がある . 今
回 , 退院後の生活を知るために追跡調査を行ったので報告する .【対象】平
成 25 年 1 月~ 12 月の間に自宅退院しアンケートを返信した 152 名 . 平
均年齢 73.3 ± 12.5 歳 . 疾患は運動器疾患 145 名 , 脳血管疾患 9 名 . 転棟
時 FIM は 103 ± 18 点 , 退院時 FIM120 ± 9.2 点 . 歩行自立率 92.8%.【方
法】アンケートにて , 歩行 ,ADL, 入浴は (1. 悪くなった ,2. 少し悪くなった ,3.
変わらない ,4. 少し良くなった ,5. とても良くなった ) , 離床は (1. 横になっ
ている時間がとても増えた ,2. 少し増えた ,3. 変わらない ,4. 少し減った ,5.
とても減った ), 転倒は (1. 毎日転ぶ ,2.1 週間に何回か転ぶ ,3. 月に何回か
転ぶ ,4. 転んでいないが誰かに支えてもらった ,5. 転んでいない ), 手すりは
(1. 役立っていない ,2. どちらでもない ,3. 少し役立っている ,4. とても役立っ
ている ,5. 付けていない ) の 5 つの選択肢から , 外出のみ4つの選択肢から
一つを選択してもらい , その結果を項目ごとにまとめた . また , 退院時 FIM
と退院1か月後の状況に相関があるのかをスピアマンの順位相関係数で検
定した (P < 0.05).【結果】各項目のパーセンテージは 1 から順に歩行 (4,
7,13,36,40),ADL(1,2,16,24,57), 入浴 (1,5,20,15,59), 離床 (1,4,12,15,68),
転 倒 (0,0,4,9,87), 手 す り (1,2,6,35,56), 外 出 (4,18,41,37). 良 い 回 答 が 多
かった . また , 退院時 FIM と退院 1 ヶ月後の状況には歩行 ,ADL, 入浴 , 離床 ,
外出 , 手すりにおいて正の相関が (P < 0.01), 転倒において正の相関がみら
れた (P < 0.05).【考察】歩行や ADL は入院中よりも向上しており , 離床
して外出を行っており , 転倒もなく手すりも活用されている傾向が示され
たように思われる . アンケートは一か月後も継続して行っているので , ま
た報告したい .
【背景】当院では、日中病棟で集団レクリエーションを実施し離床誘導
は 100%行われてきた。更に、2015 年 2 月からリハビリ訓練室で看護
師の介入による集団訓練を実施するシステムを導入した。今回、活動量
計を用いて、看護師の介入による集団訓練の効果を測定した。
【対象と方法】平成 27 年 8 月の入院患者で、歩行が FIM6 以上の患者 6
名を対象とした。患者に、オムロン 活動量計 HJA-403C カロリスキャ
ンを装着し 1 日の総消費カロリー・活動カロリー・歩数の測定を実施。
看護師による集団訓練の実施日 ( 月 - 金 ) と未実施日 ( 土曜日 )、リハビ
リ未介入日 ( 日曜日 ) 間で比較検討した。
【 結 果 】 そ れ ぞ れ の 平 均 値 は、 集 団 訓 練 実 施 日 : 総 消 費 カ ロ リ ー
683.6kca 活動カロリー 88.5kcal 歩数 1521.3 歩 介入日 : 総消費カロ
リー 585kcal 活動カロリー 193.3kcal 歩数 1088.8 歩 リハビリ未介入
日 : 総 消 費 カ ロ リ ー 533.1kcal 活 動 カ ロ リ ー 96.1kcal 歩 数 553.6 歩。
看護師による集団訓練実施日には、すべての項目について未介入日と比
較して高かった。リハビリ未介入日には、すべての項目について一番低
かった。
【考察】看護師が集団訓練を実施したことで活動量の向上につながって
いると考えられた。また、リハビリ未介入日とでは、活動量が大きく低
下していることが明確となり、病棟スタッフの介入や家族による運動な
どができていないことがわかった。今回使用した活動量計では座位での
訓練については十分に測定することができなかった可能性もある。
【結論】看護師がリハビリ訓練室で集団訓練を実施することにより活動量
の向上につながることが、活動量計を使って確認できた。今後は介護職
員も含め病棟で活動量向上に向けたアプローチの検討が必要と思われた。
027
028
医療法人 平野同仁会 総合病院 津山第一病院
社会福祉法人 農協共済 別府リハビリテーションセンター
退院後フィードバックカンファレンスの試み
~実生活に必要な支援の検討~
回復期リハビリテーション病棟における患者家族参加型のカン
ファレンスの取り組みと課題
亘 美香、植木 圭子、内海 晶絵
後藤 惠美、膳所 紘
一般演題(口演)
抄録
【はじめに】A 病院では在宅復帰に向けて退院前に看護師・作業療法士(以
下 OT)・理学療法士(以下 PT)・ソーシャルワーカー(以下 MSW)で家
屋調査を行い、手すりの設置や改修を含めた支援を実施している。家屋調
査は、障害を残した状態でも自宅で生活できるよう環境設定を行っている。
退院後の生活について追跡調査・支援について評価できておらず、在宅復
帰すれば多職種スタッフ間では「よかった」で終わっている。在宅での様
子を知ることは退院に向けてのリハ訓練や指導の在り方を検討し、今後活
かすことができると感じた。そこで、フィードバックカンファレンス(以
下カンファレンス)に対する多職種の意識調査を行い、今後支援の評価や
満足度調査を実施し、他職種と入院中の支援について検討した。【目的】カ
ンファレンスを実現するためにスタッフの意識調査を実施し、カンファレ
ンスの持ち方を検討する。【結果】カンファレンスは必要だと思いますかの
問いに対して、看護師「はい」84%、
「どちらでもない」8%、
「いいえ」8%、
OT・PT・言語聴覚士は、「はい」56%、「どちらでもない」44%の回答に
は「現状では難しい」
「出来ればいいが、担当のいない日がある」がある。
MSW は「はい」100%、訪問スタッフは、
「はい」80%、
「どちらでもない」
20%だった。【考察】職種間に差があり、カンファレンスの必要性を理解
できていない人もいる。青山は 1)在宅・維持期から回復期に情報がフィー
ドバックすることは、回復期で行ったリハの内容の検証に大切であり、患
者指導の問題点を浮き彫りにしてくれるだろうと言っていることからカン
ファレンスを行い検討する必要があると考える。【結論】支援の評価や今後
の課題について検討を重ねることで問題点を把握し、入院中に支援の方法
が提案できるためカンファレンスは有効な手段であると言える。
【はじめに】チーム医療を遂行するうえでカンファレンス(以下カンファ)
は重要な役割を担っている。今回、回復に対して家族の期待が大きく、今後、
訓練に対する考え等で問題が発生する可能性を感じる患者が入院してきた。
そこで、担当医と相談し、患者・家族参加型のカンファ(以下参加型カンファ)
を実施した。カンファに参加した患者・家族・スタッフにアンケートを実
施し、その結果と課題を報告する。
【経過と結果】 1. 参加型カンファの実施:患者・家族がカンファに参加で
きるように日程調整を行い、3 回目以降のカンファから参加することがで
きた。実施に向けては、事前の打ち合わせを行った。 2. 参加型カンファを実施後に「参加型カンファとそれまでのカンファの違
いについて良かった点・困った点」等のアンケートを実施した。患者・家
族からは、「このような機会はないので、面会時以外の様子がわかり良かっ
た。目標を立てられたのではないか」などの回答があった。 スタッ
フからは、「目標をより具体的に考えるようになった。」「家族の疑問にそれ
ぞれの立場から回答することができ、また、その場で伝えることができ良
かった。」「マイナス面を強調できない。時間がかかりすぎた。」などの回答
があった。また、「家族の思いや考えを深く知ることができ、家族に対する
印象が変わった。」などの声が聞かれた。
【まとめ】1. 参加型カンファは担当スタッフにとって患者の今後の生活を支
えていく家族の思いを知り目標を共有する貴重な機会となっていた。
2. 参加型カンファは担当スタッフにとって患者・家族の視点を取り入れた
目標を設定する、患者の背景を考えながら目標を立てることの大切さを学
べる機会となっていた。
3. 参加型カンファは、家族にとって患者の状況を具体的に把握する機会で
あり、家族の思いを伝える機会となっていた。
【課題】
1. スケジュール調整
2. 情報共有と目標管理
- -
132
029
030
患者サービス向上に向けた試み
~入浴回数の増加に対する取り組み~
回復期リハビリテーション病棟で用いられる日常生活機能評価と
退院後の転帰との関連についての検討
―看護必要度に基づく後ろ向き研究―
会田記念リハビリテーション病院 看護部
田中 佳子、中村 千鶴
社会医療法人 栄光会 栄光病院
【はじめに】患者サービス向上の為に、退院時に入院中の生活についてアン
ケートを実施している。特に初夏時期に退院される患者・家族からは「入
浴回数を増やしてほしい」という要望が多く聞かれている。患者・家族の
要望を実現し、ケアの質の向上に向けて入浴回数を週 2 回から 3 回へ変更
し取り組んで結果を得たので、ここに報告する。
【目的】アの充実と患者満足度の向上
【方法】1、入院時患者・家族に希望の入浴回数を確認する
2、失禁する患者を対象に毎朝行っていた陰部洗浄を入浴不可の患者のみ
に変更する
3、入浴介助者の人数の変更を早番看護助手1人から2人へ増、遅番看護
助手を2人から1人へ減、看護師1人から2人へと増、計4名(勤務員の
増員はしない)
4、当日部屋持ちの看護師は受け持ち患者の入浴時間を把握し、入浴準備
を行う
5、業務全体の見直し ・入院基本情報用紙の改善・入院時の面談の流れ・
一般浴から訓練浴への移行 等
【結果】全入院患者の入浴回数が週 2 回から3回へと変更し実施できている。
そのため患者ケアの充実を図ることができた。入浴回数を増やしたことか
ら、患者満足度の向上に繋がった。しかし入浴回数を増やすことで、看護
師の業務は煩雑化するため、業務を更に検討する必要があると言える。
【考察】
入浴回数を増やしたことは患者満足度の向上に繋がった。急性期病院から
の早期転院の為医療依存度の高い患者が増え、1 人にかかる入浴時間も増
加している。そのため介助スタッフの配置・業務内容の工夫で、時間的余
裕を作り出した。また、介助者以外やリハビリスタッフの協力も大きく貢
献していると言える。サービス向上のために患者・家族の要望に答えるこ
とは重要であり、提供するケアの質の向上も更に考えなければならない。
今後に向けて更に入浴回数を増やす事を検討して行きたいと考える。
中村 順子、平島 哲也、寺井 敏
【目的】回復期リハビリテーション(以下、リハ)病棟で判定される日常生
活機能評価(以下 看護評価)の入院時評価点およびその入院後の推移と、
ADL 改善度や退院後の転帰との間の関連性について検討すること。
【対象と
方法】2012 年 8 月 1 日から 2015 年 1 月 31 日の期間に当院回復期リハ
病院へ入院した 112 例を対象とした(急性期病院転院、退院時 FIM 記録不
備例は除外)。次に、これら対象例を退院先別に 4 群に分類し [ 自宅(A 群)、
施設(B 群)
:老健以外の入所施設、老健(C 群)、療養型病院(D 群)]、年齢、
入院時 NIHSS、入退院時総合 FIM および看護評価について 4 群間で比較検
討した。次に、看護評価改善度を 2 点以下(ア)、3 ~ 5 点(イ)、6 ~ 8
点(ウ)、9 点以上(エ)の 4 段階に区分し、各群における分布様式の差や
これら各 4 区分の FIM 利得、退院時総合 FIM の差についても分析を加えた。
【結果】平均年齢は A 群と D 群の間にのみ有意差を認め、NIHSS 平均点数は、
A ~ D 群の順に高く、A 群と C、D 群、B 群と D 群の間に有意差を認めた。
入退院時総合 FIM および看護評価の平均値は、いずれも、全群において退
院時には有意な改善がみられ、B、C 群間以外の各群間で入退院時ともその
各平均値に有意差を認めた。看護評価点改善度の分布様式は 4 群間で差が
みられなかった。FIM 利得と退院時総合 FIM の平均値は、それぞれ、
(ア)
:
5.7 ± 6.4、96.7 ± 38.1、(イ):16.4 ± 11.8、91.7 ± 31.2、(ウ):26.8
± 12.4、82.8 ± 28.7、(エ):37.7 ± 12.2、78.3 ± 25.4 であり、看護評
価点の改善度は FIM 利得幅との正の関連性、退院時 ADL レベルとは負の関
連性を認めた。【結論】脳卒中患者における看護評価点は退院先の選択を予
測しうるが、その改善度は自宅退院への可能性を反映するものでないこと
が示唆された。
第4会場
4 -1 ADL ◆ 3 月 4 日( 金) 11: 0 0 ~ 11: 5 4
031
032
医療法人社団 三喜会 鶴巻温泉病院 リハビリテーション部
公益社団法人 益田市医師会立 益田地域医療センター医師会病院 回復期リハ
当院回復期リハビリテーション病棟における早出リハの効果の
検討~脳卒中片麻痺患者の入院時 FIM 重症度別検討~
回復期リハビリテーション病棟におけるセルフケア項目別目標設
定前後の FIM の比較
大滝 雄介、竹内 優太、北村 記一、清水 拓人、横澤 卓史
ビリテーション病棟
杉原 徹信、河上 瑞江、渡邊 美枝、田原 登志子、中山 良太、
向 愛美
【目的】ADL 自立度向上の為、セルフケア項目別に具体的な目標・アプローチ
方法を設定したカンファレンス用紙を作成し、その用紙の導入前と導入後で
機能的自立度評価法(FIM)がどのように変化するかを調査する。
【方法】1. 調査対象 導入前(H25 年 11 月~ H26 年 5 月)
、導入後(H26 年
6 月~ 12 月)に回復期リハビリテーション病棟に入院し自宅へ軽快退院した
患者全員。入院時、障害老人の日常生活自立度ランクJ(自立)は除く。
2. 調査期間 H26 年 5 月~ 12 月
3. 調査方法 これまで使用していたカンファレンス用紙に、
新たに「移乗」
「移
動(屋内)
」
「移動(屋外)
」
「排泄(昼)
」
「排泄(夜)
」
「食事」
「整容」
「更衣」
「入
浴」の項目と、
それぞれに「長期目標」
「病棟での現状」
「一ヶ月後の目標」
「具
体的アプローチ方法」を追加した用紙を作成。
入院時と、その後毎月に一度行うカンファレンスにて目標の設定、評価修
正を行う。カンファレンス参加者は担当医師、看護介護職、セラピスト、
MSW。導入前・後の入院時と退院時の FIM の運動項目を集計。データはカル
テから収集。
4. 分析方法 x 2 検定およびt検定。有意水準は5%未満とした。
【結果】1.FIM 運動項目【移乗】の [ ベッド・椅子・車椅子 ] の FIM 平均点増
加は有意差が見られた。
2.FIM 運動項目【セルフケア】の [ 清拭 ][ 更衣・上半身 ][ トイレ ]、
【排泄】の [ 排
便コントロール ]、
【移動】の [ 歩行・車椅子 ] は、有意差こそ認められなかっ
たものの導入前よりも平均点が増加した。
3. 全対象者の FIM 運動項目の合計点数は入院時より退院時には増加した。
【考察】以前のカンファレンス用紙に比べ、項目を細分化して目標設定とアプ
ローチを行った結果、特に移乗動作が有意に増加した。これは、セルフケア
動作は移乗動作から始まることが多く、全てのセルフケア動作に目を向ける
ことで離床する機会が増え移乗動作の向上に繋がったのではないかと考える。
- -
133
一般演題(口演)
抄録
【目的】当院回復期リハビリテーション病棟に入院した脳卒中片麻痺患
者に対し、早出リハを実施することで入院中の Functional Independence
Measure(FIM)にどのような変化を与えるのかを入院時 FIM 重症度別に
確認すること。
【対象と方法】対象は当院回復期リハビリテーション病棟に入院した 65 歳
以上の初発脳卒中片麻痺患者 312 名とし、早出リハ実施群 196 名・早出リ
ハ非実施群 116 名に分類した。さらに早出リハ実施群で入院時 FIM 重症度
別に A 群(FIM18-45 点)96 名・B 群(FIM46-72 点)54 名・C 群(FIM73-99 点)
37 名・D 群(FIM100-126 点)9 名、早出リハ非実施群も同様に a 群 51
名・b 群 27 名・c 群 29 名・d 群 9 名に分類した。収集データは年齢、性別、
発症から当院入院までの日数、在院日数、患者 1 人当たり 1 日平均リハビ
リテーション実施単位数、入院時 Stroke Impairment Assessment Set(SIAS)
及び Mini-Mental State Examination(MMSE)、FIM 経時的変化(入院時・1 ヵ
月時・退院時)とした。統計処理は年齢、性別、発症から当院入院までの日数、
在院日数、患者 1 人当たり 1 日平均リハビリテーション実施単位数、入院
時 SIAS 及び MMSE について 2 群間(Aa 群間・Bb 群間・Cc 群間・Dd 群間)
比較を実施した。次に 2 群間の FIM 経時的変化の比較を実施した。
【結果】2 群間比較は、Cc 群間において入院時 SIAS(C群:49.7 ± 17.9、c 群:
60.5 ± 10.3)に有意差を認めた(Aa 群間・Bb群間・Dd群間に有意差
なし)。2 群間の FIM 経時的変化の比較は、Aa群間において 1 か月時(A 群:
40.6 ± 17.4、a 群:31.8 ± 13.7)及び退院時 FIM(A 群:59.0 ± 27.4、a 群:
42.3 ± 24.2)で有意差を認めた。
【考察】入院時 SIAS について Cc 群間で有意差を認めた以外他の全ての群間
で有意差を認める収集データはなく、FIM 経時的変化ではAa群間のみ 1
か月時 FIM 及び退院時 FIM に有意差を認めたことから、早出リハは入院時
FIM の最も低い点数群の改善に効果を示す可能性が考えられた。
033
日中の病棟生活における歩行見守りから自立への判断基準の検討
花川病院 リハビリテーション部
横地 康史、妹尾 忠久、長谷山 舞、森谷 伸樹、山本 恭央、
中田 彩乃、香川 太一、野尻 晴加
034
回復期脳卒中患者における麻痺下肢への治療的電気刺激による
運動麻痺と FIM の改善効果について
1)
藤田保健衛生大学 七栗記念病院 リハビリテーション部、2) 藤田保健衛生大
学 藤田記念七栗研究所
【目的】病棟内歩行が見守りで可能な患者に関して、見守りから自立に移行
する際の当院独自の基準を作成することを目的とした。【方法】患者の病棟
内歩行を見守りから自立に移行する際の判断基準について、文献検索と共
に、当院PTから自由記述のアンケート調査を行なった。また、当院で運
用しているデータベースより、FRT・TUG・FIM 認知項目点数について病棟
内歩行の見守りと自立のカットオフ値を算出した。得られた項目について、
当院に入院している歩行見守りの患者 16 名と歩行自立の患者 15 名各群に
ついて適合しているかを確認した。結果として歩行自立に必須と考えられ
た項目について、当院PTに対し判断基準として有用かアンケート調査を
行なった。【結果】判断基準について、先行研究から 8 項目、アンケート結
果から 10 項目、データベースから 3 項目が得られた。 これ
らの中で、「歩行安定性」「病識」
「危険予測」
「日内変動」「スタッフ間での
同意」の 5 項目について、見守り群と自立群で可否に有意差が出た。当院
PT 41 名中 40 名から、これら 5 項目を判断基準として参考にしたいとの
回答を得た。【考察】先行研究で示された判断基準は具体的にできる行為に
ついて触れているものが多いが、本研究で得られた判断基準は主に患者の
能力について触れている。また、今回検討した21項目は患者の歩行自立
に必要な能力を網羅していたが、16項目は「見守りの患者でも可能」で
あり、見守りから自立への判断基準としては適さなかった。統計処理によっ
て有意さが認められた 5 項目は当院PTからも良好なフィードバックを得
ており、判断基準として適していると考えられる。しかし基準が曖昧との
意見も出ており、さらに明確な基準の作成が望まれる。【研究としての意義】
患者の歩行自立度について明確な判断基準を提供し、適切な自立度で病棟
生活を送っていただくことで、活動性の向上や転倒リスクの軽減につなが
る。
日沖 雄一 1)、川上 健司 1)、外海 祐輔 1)、伊東 慶 1)、谷野 元一 1,2)、
園田 茂 1,2)
【 目 的 】 脳 卒 中 患 者 に 対 す る 治 療 的 電 気 刺 激(Therapeutic Electrical
Stimulation:以下、TES)は痙性の抑制や筋再教育などでその有効性が示さ
れている。当院は 2009 年より麻痺に特化した治療法を加えた Advanced FIT
program を開始し、さらなる機能・能力回復を目指している。今回、その一
部である TES の効果を対照群と比較し運動麻痺と ADL の改善を報告する。
【方法】対象は 2009 年 9 月から 2011 年 7 月までに、当院の回復期リハビ
リテーション病棟に入院した初発脳卒中患者で、TES 群は 28 名、対照群は
25 名であった。患者および家族には主治医から本研究の説明をし、同意を
得た。TES 群では麻痺側の前脛骨筋、大腿四頭筋にそれぞれ 10 分、通常訓
練の 1 単位分の介入を 4 週間毎日行った。電気刺激は周波数 50Hz とし、3
秒刺激、5 秒休止とした。刺激強度は本人の耐えうる最大強度とした。評
価は、Stroke Impairment Assessment Set の膝関節、足関節テスト(以下、
SIAS-K、SIAS-F)
、Functional Independence Measure の運動項目合計点(以
下、FIM-M)と移乗 3 項目、トイレ動作、歩行、階段の6項目合計点(以下、
FIM- 立位系)を入院初期、4 週目に評価し群内および群間の比較を行った。
統計には Mann-Whitney 検定および Wilcoxon 検定を使用した。
【結果】SIAS―K について、TES 群は中央値 2 から 3 へ、対照群は中央値 1
から 2 へ、SIAS-F では TES 群は中央値 1.5 から 2 へ、対照群は中央値 1 か
ら1へ有意に改善し、群間差はなかった。FIM-M と FIM- 立位系は両群とも
有意に改善し、群間差はなかった。FIM- 立位系の利得では TES 群が対照群
より有意に高かった。
【考察】本研究では、両群間で運動麻痺の改善に違いはみられなかったが、
FIM- 立位系の利得では TES の有効性が考えられた。FIM の中で立位に関わ
る項目で効果が得られたのは、麻痺下肢への電気刺激により神経筋促通、筋
力増強の効果が得られ、立位での支持性が向上したことが影響していると考
えられた。
035
036
関西電力病院 リハビリテーション科
一般社団法人 巨樹の会 八千代リハビリテーション病院
回復期病棟におけるパーキンソン病を合併した
大腿骨頸部骨折患者の FIM 効率
当院回復期病棟における退院時 FIM 運動項目 50 点未満の脳血管
疾患患者の在宅復帰に関与する要因の検討
児玉 夏帆、久堀 陽平、平沢 良和、谷名 英章、梅本 安則
伊藤 進一、岡村 愛、奥川 達也
一般演題(口演)
抄録
【目的】パーキンソン病(以下 PD)患者はバランス機能が低下し,大腿骨
頸部骨折の合併を認める症例が多い.大腿骨頸部骨折に対する運動療法は
ADL 改善に有用であるが,PD 合併例では錐体外路症状や合併症が阻害因子
となり,ADL の改善が乏しく在院日数が延長する.今回 PD を合併した大腿
骨頸部骨折の症例を経験し,FIM 効率の推移に特徴を認めたため報告する.
【方法】対象は右大腿骨頸部骨折(Garden の分類 Stage3)を受傷し,観
血 的 骨 接 合 術 を 施 行 さ れ た 70 歳 代 女 性 で あ る. 合 併 症 に PD が あ り
Hoehn-Yahr の重症度分類は Stage3,錘体外路症状はすくみ足が出現して
いた.MMSE は 30 点であり,受傷前は伝い歩き自立であった.術後 3 週
目で回復期病棟に入棟し,FIM は 89 点であった.その後運動療法を継続し,
術後 7 週目の FIM は 97 点となり,術後 3 週目~ 7 週目の FIM 効率は 0.25
であった.7 週目以降,運動負荷増大を目的に歩行距離の延長を実施した.
その際すくみ足の出現を考慮し,トレッドミル歩行や視覚的刺激を用いた
運動療法を追加した.
【結果】本症例は,術後 15 週目に伝い歩き自立で自宅退院となった.入院
中に服薬内容や認知機能に変化はなかった.術後 15 週目の FIM は 108 点,
術後 7 週目~ 15 週目の FIM 効率は 0.28 であった.また回復期病棟入院中
の FIM 効率は 0.26 であった.
【考察】合併症のない大腿骨頸部骨折症例の FIM 効率は術後 3 週目~ 7 週
目で 0.5,術後 7 週目~ 15 週目では 0.09 とされており,FIM 効率は在
院日数の延長とともに減少する.しかし本症例は術後 7 週目~ 15 週目の
FIM 効率で高い値を示した.大腿骨頸部骨折に対する運動療法によって下
肢機能が改善したことに加え,PD に対する運動療法の追加によりすくみ足
が改善され,中強度の運動負荷をかけることが可能となり FIM 効率の改善
が認められたと考えられる.PD 合併例には筋力強化練習や歩行練習と合わ
せて,PD に対する運動療法を付加することで FIM 効率の改善が見込める
可能性がある.
【はじめに】平成 26 年度、当院回復期病棟の在宅復帰率は 92.1% であった。
しかし、退院時の Functional Independence Measure(以下 FIM)運動項
目 50 点未満の脳血管疾患患者(以下患者)の自宅退院割合は 43.8% であっ
た。そこで、退院時 FIM 運動項目 50 点未満の患者が自宅退院可能となる
要因を探ることを目的に、患者を転帰先別に、2 群に分類し、比較検討を行っ
た。その結果を報告する。【方法】対象は H25 年 8 月~ H27 年 7 月の間に
当院回復期病棟を退院した、退院時 FIM 運動項目 50 点未満の患者 64 名。
対象を自宅群(以下 A 群)、非自宅群(以下 B 群)の 2 群に分類。そして、
性別、年齢、同居家族人数、在院日数、退院時 FIM 得点を Mann-Whitney
の U 検定、カイ二乗検定を用いて比較。有意水準は 5%未満とした。
本調査は後方視的となる為、個人情報の取り扱いに十分配慮した。
【結果】A 群(28 名)は年齢 73.0(SD12.0)歳。同居人数は 2.2(SD1.5)名。
退院時 FIM 得点は、運動項目 31.0(SD12.9)点、認知項目 17.6(SD6.4)点、
理解 4.3(SD1.6)点、問題解決 2.8(SD1.4)点。
B 群(36 名)は年齢 73.9(SD8.7)歳。同居人数は 1.3(SD1.0)名。退院
時 FIM 得点は、運動項目 28.9(SD11.7)点、認知項目 13.9(SD6.4)点、
理解 3.3(SD1.6)点、問題解決 2.0(SD1.1)点。
両群の比較では、FIM 認知項目総得点、理解・問題解決、同居人数で有意
差を認めた(p< 0.05)。【考察】退院時 FIM 運動項目 50 点未満の患者が
在宅復帰するには、FIM 認知項目の理解・問題解決が関わっていると考え
られる。また、同居人数が在宅復帰する要因の一つに成り得ることは諸家
らの知見と一致していると考える。【まとめ】退院時 FIM 運動項目 50 点未
満の患者が在宅復帰可能となる要因を探ることを目的に、比較検討を実施。
その結果、在宅復帰可能な要因となるのは、FIM 認知項目の理解・問題解決、
同居人数の可能性があると考えるに至った。
- -
134
第4会場
4 -2 ADL ◆ 3 月 4 日( 金) 13: 0 0 ~ 13: 5 4
037
038
医療法人桂名会 木村病院 リハビリテーション部
明野中央病院 リハビリテーション科
大腿骨頚部・転子部骨折術後患者の
「できる ADL」と「している ADL」間の差異を比較して
回復期リハビリテーション病棟退院後の移動・活動能力について
―追跡調査による当院の傾向―
酒井 謙司、坪井 優作、中根 優美、宮嵜 友和
【はじめに】
入院患者へリハビリテーションを提供する中で、
「できる ADL」
と
「し
ている ADL」間の差異を無くすことで自宅復帰率が向上した報告がある。当
院では、
ADL 間の差異を無くす取り組みとして、
機能的自立度評価表
(以下 :FIM)
を用い、リハビリスタッフが「できる ADL」を、病棟スタッフが「している
ADL」を評価している。その情報を基にカンファレンス時に、介助方法の見直
しを行っている。今回は、大腿骨頚部・転子部骨折術後患者に対し、
「できる
ADL」と「している ADL」間の差異にどのような傾向があるのかを調査した。
【対象】平成 26 年度入院患者(H26/4/1 ~ H27/3/31)のうち、大腿骨頚部・
転子部骨折術後患者 209 例中、
1カ月以上入院していた 156 例
(男性 32 例 :81.9
± 7.8 歳、女性 124 例 :82.9 ± 7.2 歳)を対象とした。
【方法】入院1ヶ月後のカンファレンス時に「できる ADL」と「している
ADL」を評価し、その差異を比較検討した。なお、FIM18 項目のうち、運動(階
段を除く)12 項目を、Wilcoxon の符号順位和検定にて比較した。有意水準は
5%とした。
【結果】
(項目 : できる ADL/ している ADL)
清拭 :4.9 ± 1.4/4.4 ± 1.7 更衣(上):5.9 ± 1.3/5.6 ± 1.5
更衣(下):5.2 ± 1.5/5.0 ± 1.7 トイレ動作 :5.6 ± 1.4/5.1 ± 1.6
移乗車椅子 :5.6 ± 1.1/5.4 ± 1.3 移乗トイレ :5.5 ± 1.1/5.3 ± 1.3
移乗浴槽 :4.4 ± 1.6/4.1 ± 1.5 移動 :4.6 ± 2.1/4.0 ± 2.4
P < 0.05 の項目のみ記載
【考察】8 項目において、
「できる ADL」の得点が高かった。これは自立可能で
あるが見守りをしていることや、見守りで可能であるが介助をしていたなど
が考えられる。不適切なケアやリハビリが廃用症候群や ADL の低下を引き起
こす原因であると報告がある。適切な時期に「できる ADL」へ変更できれば、
より早期の ADL 向上に繋げることが出来たと考えられる。今後、要因をより
明確にすることで ADL 間の差異を減らし、患者の能力を最大限生かせるよう
努めていきたい。
039
柳井 美穂、穴見 尚樹、重村 恵、堀 優吾、後藤 大地、近澤 侑香、
大津 佑那、佐々木 信弘
【はじめに】回復期リハビリテーション(回復期リハ)病棟では在宅生活へ
と繋げるため退院後は在宅サービスへとシフトしていく必要がある。当院
でも 2015 年 4 月より訪問リハビリテーションの開始とともに在宅医療の
提供が可能となったが、入院中獲得した機能を維持できているか把握でき
ていないのが現状。今回追跡調査により退院後の生活を知り在宅医療へと
繋げるための取り組みを報告する。
【対象・方法】2015 年 1 月~ 6 月の間に骨折により当院回復期リハ病棟
より自宅退院し追跡調査可能であった 39 名(男性:6 名、女性:33 名。
平均年齢:80.8 歳± 7.3)。退院後 1 ~ 2 か月後、電話にて生活機能アン
ケートを実施。N 式老年者用日常生活動作能力評価尺度(N-ADL)のうち
歩行・生活範囲の項目を抜粋。受傷前と退院後の点数を比較し低下群と維
持群に分け、退棟時移動手段と退院後サービス利用状況の比較、年齢と在
院日数において 2 群間で比較検討した。統計は対応のない t 検定を用いた。
(P < 0.05)
【結果】受傷前後の N-ADL 点数での維持群 20 名、低下群 19 名。FIM にお
ける移動項目の推移は 2 群とも同様であったが、維持群では退棟時により
高い移動手段を獲得していた。2 群間で年齢は有意差なし、在院日数では
有意差がみられ手術を必要とする下肢骨折、独居、複数回の骨折により入
院期間が長期化している。また退院後リハビリサービスは低下群約 74%、
維持群約 30%の患者が利用している結果となった。
【考察】退院時歩行介助量より移動手段に着目し退院後の生活が予測可能
であり、早期の在宅復帰が退院後の生活機能を高めることができる。当院
では入棟早期にカンファレンスにより病棟全体で目標設定を行う。必要に
応じ家屋訪問、多職種や家族との連携を図ることで機能低下が予測された
患者でも自宅復帰が可能となった。また訪問リハビリ導入により安全な在
宅生活が送れており、今後も在宅医療スタッフとの密な連携を図る必要が
ある。
040
退院後 ADL が低下した症例の特徴についての検討
頚椎症性脊髄症術後四肢麻痺症例に対する「ナースリハ」の
取り組み
熊本リハビリテーション病院 リハビリテーション部
小原 卓己、緒方 美湖、長野 文彦、松岡 達司、河崎 靖範、
槌田 義美、山鹿 眞紀夫
医療法人ひまわり会 中洲八木病院
石山 真子
【はじめに】重度四肢麻痺を呈した頚椎症性脊髄症術後症例を受け持つ機会
を得た。療法士のリハビリテーション(以下リハ)以外に、看護師が日々
の看護にリハを取り入れ、患者さんに合ったプログラム「ナースリハ」と
しての取り組みを行なった。その経過と効果について報告する。【症例】
87 歳女性。H27 年初旬より右手が動かなくなり頚部脊柱管狭窄を指摘。徐々
に体動困難となり当院入院するが、呼吸障害みられ脳幹部前方に腫瘤を認
めたため転院。発症5カ月で第 1、第 2 頚椎椎弓切除術施行。術後 22 日で
リハ目的にて当院再入院となった。【取り組み・経過】1. ナースコール対応 ボタンを押す動作ができないため、前腕の重みで既存のナースコールを押
せる段ボールの台を作成した。しかし、上手く押す事ができず大声で職員
を呼ぶ時もあったためカンファレンスで大型ボタンのタッチ式ナースコー
ルの購入を決定。設置位置の工夫でナースコールが確実に鳴らせるように
なった。2. 毎日の更衣 発汗多く感染・褥瘡予防のために毎日 2 回の更衣
を行なった。3. 食事介助の工夫 食事は自己摂取できず全介助行なってい
たが、上肢機能の回復に応じた自助具の使用により自己摂取可能となった。
4. リハ時間以外の四肢の自動運動の誘導 療法士にメニューを決めてもら
い、毎日ナースリハを行なった。その後、上肢機能が改善し既存のナースコー
ルに戻すことができた。両下肢の支持性も向上し見守りにて歩行器歩行も
可能となった。【考察】入院生活においてリハの時間は限られており、大部
分の時間を患者さんは病棟で過ごしている。そこで療法士が行うリハ以外
でも、看護師サイドで自動的な運動を促すような看護、介助を行うことで、
機能改善や ADL 向上の経過が図れたと思われる。回復期リハ病棟の看護師
の役割としてリハで獲得した能力を生活で生かせるよう「できる ADL」か
ら日常的に「している ADL」に繋げていくことが必要である。
- -
135
一般演題(口演)
抄録
【目的】当院は獲得した ADL が退院後も維持出来るように在宅生活を想定
したリハ、本人や家族への ADL 指導、自主訓練を指導している。また退院
後 1 ヶ月に自宅へ訪問し、ADL 変化や住宅改修の適正を評価している。退
院後も ADL を維持していることを期待するが、低下している症例も見受け
られる。目的は退院後 ADL が悪化した患者の特徴と、ADL に影響を与える
因子を明確にし、回復期リハの一助とすることである。
【方法】H24 年 8 月~ H26 年 6 月に退院後訪問した患者 106 名を対象に、
当院独自の介助量評価表を用い、退院後 ADL が維持されている 63 名(維
持群、72 ± 13 歳、男 41 名、女 22 名)と退院後 ADL が悪化した 43 名(悪
化群、68 ± 17 歳、男 23 名、女 20 名)に分け、入院時・退院時・退院後
FIM 得点(食事~排泄、移乗~階段、認知)、在院日数、退院後 ADL に影
響する因子(性別、年齢、退院時 FIM、退院後 FIM、認知症、介護度、サー
ビスと利用数、依存心、自主訓練、家族数)について調査した。統計はマ
ンホイットニー U 検定とスピアマンの相関係数を用いた。
【結果】悪化群は、有意に入院時(p < 0.01)・退院時(p < 0.05)・退院
後(p < 0.01)FIM 得点、入院時(p < 0.05)・退院時(p < 0.05)・退
院後(p < 0.01)の食事~排泄、退院後(p < 0.01)の移乗~階段が低く、
在院日数は長かった(p < 0.05)。また ADL の変化と依存心に有意な相
関を認めた(r =- 0.37、p < 0.01)。
【考察】ADL が低下した患者は、入院時、退院時、退院後の FIM が低く、
在院日数が長く、依存心が高かった。特にセルフケアや排泄コントロール
が悪い患者では、ADL が低下する恐れがあり、また依存心が高いと活動低
下を来たしやすいことが考えられた。入院中からチームで自主性を促す目
標を設定し、家族と共に実践するとともに、退院前カンファレンスで居宅
サービスに関わる方へ依存心や介助方法などの情報提供を行い、ADL 低下
を予防する必要がある。
041
042
高齢運動器疾患患者の ADL 改善に関する一考察
前期高齢者・後期高齢者の退院時の運動機能と退院 1 ヶ月後の
生活空間、転倒恐怖感との関連性
-運動器疾患患者を対象としたアンケート調査-
八王子保健生活協同組合 城山病院 リハビリテーション科
青木 賢宏、杉本 淳、西谷 拓也、岩田 千恵子
【はじめに】当院回復期リハビリテーション病棟は療養病床からの転換で開
設され,入院患者のうち高齢者が占める割合は高く平均年齢は 81.6 歳で全
国平均 75.5 歳を上回っている.今回当院回復期リハ病棟を退院した運動器
疾患患者で平均年齢を参考に対象者を抽出し,ADL 改善の要因を考察した
ので報告する.
【方法】平成 26 年 10 月から平成 27 年 8 月の間に,当院回復期リハビリテー
ション病棟より退院した運動器疾患の 80 歳以上の患者 16 名(すべて女性)
を対象とした.疾患の内訳は脊椎圧迫骨折 8 名,大腿骨頚部骨折 5 名,そ
の他(骨盤・下腿骨折など)3 名であった.対象者の FIM 運動項目合計点,
認知項目合計点,各項目点数,改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)
を入院時と退院時で比較した.統計解析には Wilcoxon の符号付順位検定
を用いて,有意水準 5% 未満とし実施した.また転帰先について後方視的
に調査を行い在宅復帰率を算出した.
【結果】FIM では運動項目合計点,トイレ動作,ベッド・椅子・車椅子移乗,
トイレ移乗,浴槽・シャワー移乗,歩行移動,車椅子移動について有意差
が認められ(p < 0.05),更衣や整容などその他の項目では有意差はみられ
なかった.一方で HDS-R は入院時 15.3 ± 8.1 点,退院時 15.8 ± 8.2 点で
有意差はみられなかった.在宅復帰率は 87.5%,転帰先は在宅 14 名,急
性増悪 1 名,医療病棟 1 名であった.
【考察】一般に高齢者は運動耐用能が高くなく,これは動作を一度に反復し
過ぎると疲労しやすいなど練習における阻害要因となる.トイレ動作や移
乗・移動動作は,日常生活において過度な負荷にならずに反復するため改
善を得る要因となったと考えられる.また今回の対象者は HDS-R が入院期
間中を通じて 20 点以下でありながら,今回有意差が認められた動作が立
位を含む全身の動作で,細かい物品の操作をあまり必要とせず,排泄とい
う原始的な欲求に関する動作であることも動作改善に影響を与えたと考え
られる.
医療法人野並会高知病院 リハビリテーション課
坂本 諒、南場 脩次
【はじめに】
当院を退院した患者における退院 1 ヶ月後の生活空間と転倒恐怖感に関わ
る要因を調査したので報告する。
【対象と方法】
平成 26 年 7 月~平成 27 年 6 月に当院回復期リハビリテーション病棟を
退院した 275 名の内、有効回答が得られた 177 名から、退院 1 ヶ月後
の屋外移動手段が独歩または T 字杖であった 67 名を、前期高齢者 34 名
(以下前期群)と後期高齢者 33 名(以下後期群)の 2 群に分け対象とし
た。調査項目は退院時における、1) 歩行能力(移動手段、耐久性、10m
最大歩行時間、TUG)、2) 等尺性膝伸展筋力体重比、3)BBS、4) 疼痛、5)
FIM、6) 趣味活動、7) 同居 or 独居とした。生活空間の評価は Life Space
Assessment( 以下 LSA)を、転倒恐怖感の評価は Falls Efficacy Scale(以下
FES)を用いた。2 群間の LSA、FES と各調査項目との関連性について、差
の検定、相関分析を用い有意水準を 5%未満として検討した。
【結果】
LSA は前期群 82.5 ± 25.8 点、後期群 66.1 ± 24.9 点であり、2 群間に有意
差を認めた。FES は前期群 31.9 ± 5.7 点、後期群 30.4 ± 4.5 点であり、2 群
間で有意差は認めなかった。各群の LSA との関連性は、前期群では男性が高
値を示し、等尺性膝伸展筋力体重比(r=0.43)において相関を認めた。後期
群では独居の者が高値を示し、BBS(r=0.45)
、FES(r=0.59)に相関を認めた。
【考察】
入院を経験した患者の LSA は、先行研究である地域在住の前期群、後期群
と比べ 2 群とも低値であった。生活空間を拡大させる要因は、前期高齢者
では下肢筋力、後期高齢者ではバランス能力や転倒恐怖感であり、2 群で
異なることが明らかとなった。また、性差や家族構成による差も見られた
ことから、運動機能だけでなく個人因子や環境因子なども考慮していく必
要があると考える。
5 -1 病 棟 運営・業 務 管 理・マネジメント ◆ 3 月 4 日( 金) 11: 0 0 ~ 11: 5 4
043
第5会場
044
病棟運営 ~転帰先の検討から病床管理を考える~
強い回復期病棟チームをいかに作るか
-医歯薬保健医療学部ラグビー部のチーム作りを参考に-
社会医療法人 陽明会 小波瀬病院
大谷 悦子、河上 紀代、白木 みず穂、高瀬 鈴香
千葉徳洲会病院 脳神経外科
一般演題(口演)
抄録
【目的】回復期リハ病棟の役割として「家庭復帰」は重要であり、施設基準
の順守は必須である。高齢化に伴って、独居生活、老老介護、認知症、経
済的等の問題により自宅退院が困難な状況の中、現状把握から適切な病棟
運営へ繋げられるために検討した。【方法】H22 年~ H27 年 7 月の退院患
者、1984 名 ( 平均年齢:77.6 歳 男性:35.8% 女性:64.2% ) の転帰
について検討。 ※うち 52%は 80 歳以上の高齢者。施設基準は、病棟入
院料 1 を算定の 60 床の病棟。
【結果】平均の在宅復帰率は、76.4%だったが、
近年、低下傾向にある。在宅以外の転帰先については、老健 (19% ) 病院
(28.5% ) 急性期転棟への転棟 (52.1% ) だった。急性期病棟への転棟理
由については、 高額薬剤の使用 (6.2% ) 輸血 (7.1% ) 急変を含む病状の
悪化 (24.7% ) 胃瘻造設 (24.7% ) 手術 (35.6% ) だった。手術の内訳は、
整形外科 (47.6% ) 脳外科 (31% ) 外科 (15.5% ) 泌尿器科 (7.1% ) だっ
た。【考察】70%の在宅復帰率をキープするために、ADL 訓練の中でも特
に、排泄の自立や経口摂取への移行に取り組み、効果的な結果を出している。
また、患者及び家族の意識付けのために早期からカンファレンスを行い積
極的に関わっている。しかし、転院と老健入所を併せた割合よりも、急性
期病棟への転棟が多い現状となっている。想定外の病状の悪化や必要な治
療は免れないが、予測可能な高額薬剤の使用や手術、胃瘻造設の時期など
は検討の余地があるのではないか。医師や急性期病棟との連携においては、
回復期病棟の運営について、理解と協力が必要であると思われる。また、
病床管理の観点からも、転倒からの骨折や合併症の予防に努めることは重
要な課題であると考える。
福田 直、森戸 知宏、田中 遼、北原 功雄
回復期リハビリテーションの理念と役割を十分に果たすためには、多職種
でのチーム医療が必須であり、各回復期病棟でそれぞれの背景を踏まえた
上でのチーム医療を日々実践していると思われる。自分は昭和大学医歯薬
保健医療学部ラグビー部において、キャプテンと監督という立場で日々試
行錯誤しながらチーム作りを経験し、幸いにも結果を残すことができた。
キャプテンの時はリーグ戦優勝を目標に、詳細な自己分析を背景に約 6 か
月の練習で想定できる最強のチーム像を想像し、そのチーム像を達成する
ために必要なチームとしてのスキルと個々人のスキルを具体的に想定した。
試合でそのスキルを発揮するには、なんとかできるスキルではなく、最低
でもできるもしくは無意識でも体が動くまでしみついたスキルにすること
が必要であり、限られた時間の中でそのスキルを獲得するには、チーム目
標と個人目標の明確化と共有と日々の振り返り、スキルの優先順位と取捨
選択による集中性と確実性、日々の練習では常に目標を意識しながら行う
ことが必須であると考えた。またラグビー部にかける思いに温度差がある
のも事実であり、その気持ちを一つの方向に持っていくためには、練習以
外のコミュニケーションが非常に重要であった。卒業後は単年ではなく長
期的なチーム力の安定を図るべく、監督という立場でOB会とともに現役
から一歩離れつつも継続的なかかわりを持つことで、以前ほど毎年のチー
ム力に差がなくなってきている。これらの経験は、回復期病棟のチーム作
りにも参考になる点が多いのではないかと考えたため、その具体的な内容
を回復期病棟チームと対比させつつ報告する。
- -
136
046
045
回復期リハビリテーション病棟専従医の役割に関する検討
―リハビリテーション科専門医と非専門医を比較して―
回復期病棟開設後3年間の取り組みと今後の展開
~地域と繋がる回復期として~
1)
社会医療法人社団さつき会 袖ケ浦さつき台病院 リハビリテーション部 身体
リハビリテーション課、2) 社会医療法人社団さつき会 総合広域リハケアセンター
阿部 紀之 1)、竹内 正人 2)
【はじめに】回復期は、リハビリテーション資源が豊富で、今後地域と繋がっ
ていく可能性は限りなく高い。千葉県は医療資源が全て全国ワースト 3 位
以内であり、当院は君津圏域(袖ケ浦市・木更津市・君津市・富津市)に
おいて唯一の回復期リハ病棟を有する病院である。さつき会は、社会医療
法人と社会福祉法人からなり、地域包括ケアの縮図の様でもある。当院は、
409 床からなり、回復期病棟 90 床の他に、一般急性期病棟、地域包括ケ
ア病棟、精神科病棟、認知症治療病棟が稼働し、「地域の中核病院」とし
て機能している。今回、回復期病棟開設3年を迎え、今までの取り組みや
今後の展開を「地域と繋がる回復期」として以下に報告する。
【開設3年の実績】2012 年に回復期病棟が開設し、現在 3 年が経過してい
る。前年度の実績では在院日数は 62.8 日(全国平均 71.9 日)、病棟稼働
率も 94.2%(全国平均 87.6%)であり、さらに FIM 効率は全体で 0.472(全
国平均 0.199)と、質的にも高いことが特徴である。
【当院での取り組み】現在に至るまで幾多の他職種との信念対立や様々な
システムの改良などがあり、質の高いチーム医療を実践していくことの難
しさを痛感している。1)タックマンモデルの「混乱期」を乗り越えるた
めの多職種連携の工夫、2)退院支援を主とする質の向上(プロセス・構造・
アウトカム)に向けた取り組み、3)地域連携における前方-水平-生活
期連携に向けた取り組みを回復期リハ病棟開設時から実践してきた。地域
とつながる回復期としての「地盤固め」ができてきたところである。
【今後の展開】今後は千葉県における地域医療構想と市の地域包括ケアシ
ステムの全体地図をどう描いて、「地域リハビリテーション」と繋げるた
めにどのような介入をするか、地域特性を考慮した入退院のルール作りな
ど、県のモデル事業を生かして、「地域と繋がる回復期」として展開して
いきたい。
047
回復期病棟の担当医が 2 人から 1 人になると医療の質はどう変化
するか?
中洲八木病院
倉田 浩充、井関 博文、日浅 匡彦
【はじめに】回復期リハビリテーション(以下リハ)病棟は開始当初は
専従医が義務づけられており、現在も定められた講習を受けた専従医に
よる体制強化加算が認められている。この専従医講習の内容をみるとリ
ハ医療全般の知識が要求されている。そのため専従医が本来リハ医療全
般の知識を有するリハ科専門医と非専門医で差が生じるかを検討した。
【対象と方法】当院で専従医をリハ科専門医が担当した平成 27 年 4 月以
降と非専門医が専従した平成 26 年 4 月から 1 年間の症例のうち大腿骨
頸部骨折、脊椎圧迫骨折、片麻痺のある脳血管障害症例を対象とした。
両者が重なる移行期の症例と入院中に原疾患と無関係の合併症で転院も
しくは死亡した症例は除外した。各症例について在院日数、入院時と退
院時の FIM 運動項目、FIM 利得、在院日数当たりの FIM 利得、退院先
をそれぞれ両群間で比較検討した。【結果】大腿骨頸部骨折と脊椎圧迫
骨折ではすべての項目で専門医と非専門医で有意な差はなかった。脳血
管障害では FIM 利得(P < 0.05)と在院日数当たりの FIM 利得(P < 0.01)
では専門医が優位に大きく、その他の項目では有意差はなかった。
【考察】
当院は急性期治療も行う整形外科が主体の病院である。そのため整形外科
疾患はリハ内容も整形外科医による管理が主で差が生じなかったと思われ
る。しかし脳血管障害では以前は専従医が内科医であり、リハ内容は療法
士にまかせるのが現状であった。現在はリハ専門医が脳血管障害症例の担
当と指示を行っており、定期的なリハカンファレンスでプログラムの修正
も行っている。まだ例数は少ないがこれらの業務内容の違いが上記の結果
と考えられた。また当協会が行った回復期リハ病棟の実態調査でもリハ科
専門医の病棟では脳血管系の症例の結果がいいと報告された。本研究では
専従医以外はスタッフや環境は同じ条件であり、より専従医の差を表して
いると考えられた。
048
在宅入院 ~回復期リハビリテーションのもう一つのあり方提言~
医療法人社団和風会 千里リハビリテーション病院
橋本 康子、池田 吉成
虎の門病院分院リハビリテーション
大賀 辰秀
【目的】
各地で個別リハの一律査定が行われている。医療費抑制手段の一つであろ
うが、これにより患者の回復の芽を摘むことはあってはならない。当院で
も一律査定されているが、9 単位のリハ提供は続けている。しかしながら、
このような状況は継続できるものでなく、我々医療者側からもアウトカム
と医療費の最適解を探る必要がある。今回、その一つとして「在宅入院」
というコンセプトのもと、脳卒中における回復期リハを病院と在宅の両方
で行うことを検討した。
【方法】
アウトカムと医療費の定量的評価を実施した。回復期リハのアウトカムに
在宅復帰率があるが、機能回復以外にも家族状況や社会資源など多くの要
素に影響されるため、ここでは FIM 改善度(利得)を設定した。改善に必
要なプロセスを 1 日あたりリハ単位数と当院における入院期間との二つの
視点から分析した。医療費については、入院期間を 3 カ月までとそれ以降
とに分け、当初 3 カ月は回復期リハ病棟での入院、4 カ月以降を回復期リ
ハ病棟とほぼ同様のサービスを在宅にて提供する「在宅入院型」として試
算した。これを従来の「全期間回復期リハ型」との医療費比較を行った。
【結果】
単位数は、9 単位に近づくほど改善し脳卒中治療ガイドラインにおいても
推奨されていた。入院期間においては、入院時 FIM が低値な患者は期間を
延ばすことにより一定の FIM にまで改善しており、当院の単位数、入院日
数などのプロセスは妥当なものと考えた。同じプロセスを前述の二つの型
で比較すると在宅入院型の方が医療費低減効果があることが試算された。
【考察】
アウトカムと医療費の最適解の一つとして「在宅入院」の可能性があると
考えた。この仮説に対して、本抄録提出後にテストケースを行い、実際の
リハ提供や看護、介護の訪問頻度、時間、人件費などを検証する予定である。
- -
137
一般演題(口演)
抄録
【背景】当院回復期病棟での脳血管リハビリテーション(以下リハ)の病
床数は約 30 床の責任ベッド数を占めているが、医師 2 人で担当していた
ものを異動により 1 人で担当することになった。この時、医療の質に変化
が生じたか、また、医業収益はどのように変化したかについて知ることは、
良質なリハ医療を提供する上で重要である。【目的】回復期病棟での担当
医が 2 名から 1 名に減数したことで生じた医療の質・安全・医業収益の変
化を知ること。【方法】当院回復期病棟における担当医が 2 人の 2013 年
4 月 1 日から 1 年間(2 人期)、および、担当医が 1 人に減った 2014 年
4 月 1 日からの 1 年間(1 人期)に、同病棟にてリハを受けた患者の人数、
入退院時 FIM、自宅退院割合、入院時の転倒数をそれぞれ 1 年間の入院期
間について、診療録から後方視的に調査し、また、医業収益については各
患者のレセプトから算出し比較した。【結果】2 人期及び、1 人期の責任ベッ
ド数は 30 及び 20 であり、担当した患者数はそれぞれ 106 人、99 人で
あった。2 人期及び 1 人期入院時平均 FIM は 82.5、78.2、また退院時平
均 FIM は 100.4、101.9、そして FIM 利得はそれぞれ 17.8 と 23.7 であっ
た。退院後自宅復帰率は同様に 84.9% と 72.7% であった。入院中の転倒
回数は 33 回と 23 回であった。一方、医業収益は保険点数で 2 人期 3469
万点、1 人期 3387 万点であり、収益だけでは約 800 万円の減収となった。
【考察】1 人期では、受け持つことのできる患者数は減少し、それに伴い
医業収益も減少した。しかしながら、FIM 利得や自宅退院割合からみれば、
2 人期に劣らない診療の質を保つことができるものと考えられた。これが
可能になった代償として、入院患者に対するサービス低下や医療スタッフ
への負担増がなかったかどうかを検討する必要があると思われた。
5 -2 病 棟 運営・業 務 管 理・マネジメント ◆ 3 月 4 日( 金) 13: 0 0 ~ 13: 5 4
第5会場
050
049
当院回復期リハ病棟における脳血管疾患患者の自宅復帰率と
FIM の関係~開設から 10 年間の追跡データを元に~
回復期病棟看護師の退院調整における質的分析
市立御前崎総合病院 回復期リハビリテーション病棟
岡村 映子
1)
【目的】回復期病棟看護師には、患者や家族が求める支援を行っていくため
に、患者・家族の生活背景とケア能力に対するアセスメント力を高め、退
院後の生活イメージ化ができることが求められている。今回、回復期病棟
に勤務する看護師に対し、退院指導を含む退院調整・支援の現状に対しイ
ンタビュー調査を実施し、問題点の明確化とスタッフへの援助方法につい
て検討を行ったので報告する。【方法】対象は、回復期病棟において退院調
整を行っている看護師 3 名。調査方法は、半構成的面接法でのインタビュー
方式にて実施。患者の退院後に対するイメージやゴール設定について答え
られている部分を抽出しカテゴリー化を行った。【倫理的配慮】対象者には、
本研究の趣旨およびプライバシーは保護され、拒否をしても不利益になら
ないことやデータは研究以外に使用しないことを口頭にて説明し同意を得
た。院内倫理委員会の承認を得た。【結果】インタビューから得られた内容
を 91 に open coding、更に 29 に focused coding 化。( 1) 退院までの経過
の明確化、( 2) 多職種や他のスタッフとの情報共有や連携 ( 3) 患者・家族
の目標設定の 3 つのカテゴリーに分類した【考察】宇都宮は、病棟看護師
が在宅ケアをイメージする力をつけ、退院支援に関わるためには、1)在宅
での療養生活について、想像力を養う 2)退院後の生活まで、長い時間軸
で捉える 3)急性期医療と在宅の違いを理解することが必要だと述べてい
る。インタビューからは、在宅訪問の経験も少なくイメージ化が弱いこと
によるアセスメント不足、患者に対し生活者と捉える視点が弱いことなど
が考えられた。本来、看護支援に重要である患者や家族にとっての目標設
定への指向が弱いため、自分達の方向性も不明瞭となったとも考えられる。
スタッフの在宅イメージを強化していくためには、振り返りを次に活かし
ていくという発展的な考え方を医療チームで共有した PDCA サイクルが重
要である。
医療法人大植会 葛城病院 リハビリテーション部理学療法課、2) 医療法人大
植会 葛城病院 リハビリテーション部作業療法課、3) 医療法人大植会 葛城病
院 看護部、4) 医療法人大植会 葛城病院 地域医療連携室、5) 医療法人大植会 葛城病院 リハビリテーション科
西川 正一郎 1)、藤井 隆文 1)、下代 真也 1)、橋本 博史 2)、奥村 喬志 2)、
鶴井 明弘 1)、高田 紀代美 3)、山本 典志 4)、小西 英樹 5)、橋本 務 5)
【はじめに】2000 年 4 月に回復期リハビリテーション病棟(以下回リハ病
棟)が創設され、15 年が経過している。当院においては 2002 年に 45 床
を開設し、2005 年に合計 90 床を開設した。また当院の周辺地域において
は近隣の回リハ病棟と作成した泉州統一データベースを用いて入退院を追
跡管理している。今回データベース集積から 10 年が経過し、当院回リハ
病棟に入院している脳血管患者の自宅復帰率と FIM において後方視的に調
査を行い関連性が見られたので、ここに報告する。【方法】対象は 2005 年
10 月~ 2015 年 3 月に当院回リハ病棟を退棟した患者 5725 名の内脳血管
疾患患者 1180 名を対象として、年度別、在棟期間、在宅復帰率を比較検
討した。比較の際に、在棟期間を 1 ~ 30 日、31 日~ 60 日、61 日~ 90 日、
91 日以上の4群に分け検討した。【結果】入棟時 FIM においては、全期間
各群の平均値は 91 日以上が最も低く 53.2(± 23.8)点であった。自宅復
帰率は年度別平均において 4 群の内 91 日以上が最も高く FIM 利得(退棟
時 FIM 点数から入棟時 FIM 点数を引いたもの)においても 91 日以上が年
度別平均は 18.4(± 4.3)点と最も高かった。【考察】当院入院の脳血管疾
患患者において、入院期間が長ければ FIM 利得は高く、自宅退院する確率
が高くなることがわかった。これは、脳血管疾患患者への訓練は時間を要
することを示しており、回リハ病棟の成果であると言えよう。しかしながら、
自宅退院できずキーパーソンや環境因子により他施設へ転院を余儀なくさ
れ、転院打診期間の調整により 90 日以内に転院する方も臨床の日常では
よく遭遇する。長期調査においては見えない社会的背景による影響が反映
されにくいが、セラピストにとってリハ時間の提供と治療成績が関係して
いることはこの上ない喜びである。今後は治療時間や実施単位数との比較
も検討したい。
051
052
総合病院津山第一病院 リハビリテーション科
特定医療法人社団順心会順心リハビリテーション病院 看護部
回復期リハビリテーション病棟で「集団活動」を継続するには何
が必要か?
細井 哲史、安部 大昭、山下 将輝
多職種連携による小集団活動の成果と活動を支援する看護師長の
役割
谷村 睦美
一般演題(口演)
抄録
【はじめに】リハビリテーションケア合同研究大会 2014 長崎において,
当院での「レクリエーション活動立ち上げの取り組み」(細井ら 2014)に
ついて報告した.今回は,「回復期病棟での集団活動」に対するアンケー
ト調査を行ったため,その経過を報告する.【対象と方法】当院リハビリ
テーション(以下リハビリ)科スタッフと回復期病棟(以下回リハ)スタッ
フ(計 86 名・回収率 80.23%).Visual Analog Scale(以下 VAS)を使用
して「集団活動の必要性」の主観的評価を実施.さらに自由回答欄の記述
から Key Word を抽出し要因分析を行うこととした.【結果】全スタッフ
の VAS 平均値は 7.55pt であった.この結果から,「集団活動」は病棟内で
の日常の活動として「必要性」が高いことが示唆された.【考察】「集団活
動の提供」は,主に機能訓練や ADL 訓練などを提供する回リハでのリハ
ビリ業務では,その中心とはなりにくいという一面がある.また,病棟内
での他の業務と同様に多面性もある.
「集団活動」を継続していくためには,
活動自体に望まれる要因を理解し,その都度職種の特性を活かしていかな
くてはならない.その上で,質的・量的・運営において検討を重ねていく
必要がある.山根は「それぞれの職種の特徴を理解し,いかにチームとし
てお互いの機能を活かした連携ができるかが課題である.」(山根 2007)
と連携することの課題を述べている.
「集団活動」を継続していくためには,
病棟内活動としていかに多くのスタッフに「活動の目的を理解」してもら
うのか,どのように活動を「位置付けていくのか」を念頭に入れ,業務の
一環として他職種間で「情報共有」していくことが重要である.
【はじめに】B 病棟では小集団活動のうち、上肢リハビリについては作業療
法士(以下 OT)もチームに所属し役割分担している。今回、上肢リハビリ
チームの活動の成果と活動を支援する看護師長の役割についての考察を報
告する【研究方法】CI 療法における課題指向型訓練を応用した病棟リハビ
リを計画。看護師・OT が役割を分担し実施。看護師長の行動として、小集
団活動の選定、目標管理シートの指導、ハード面・ソフト面の整備、各人
の活動参加状況を個人面談で把握、患者からの情報・成果をフィードバッ
クした【結果】看護師は OT から伝達講習を受けることで、訓練の目的や
継続の必要性を理解して患者に関われた。実施状況を看護師が OT にフィー
ドバックした結果、1 日 40 分の訓練を 10 週間休むことなく実施でき、患
者の QOL 向上に繋がった。看護師長は病棟がどうありたいかというビジョ
ンを伝え、小集団活動の参加はスタッフの自主性を尊重し、それぞれが選
択できた。看護師・OT それぞれリーダーを選出し連携の窓口としたことで
情報共有が容易になった。面談での要望を基に活動しやすい環境を整備し
た。また各個人の参加状況を把握し、動機づけとなるよう患者の声や成果
を伝えると共に、業務量を調整した【考察】小集団活動を通して、看護師
は病棟リハビリの重要性を認識し、患者の QOL 向上を目指すことに関与で
きた。生活時間である 21 時間をどう過ごすかが患者の退院後の生活を左
右し、それに携わるのが看護師の役割であることを伝え続けたことで活動
が継続できた。面談で動機付け要因として、患者の声を直接伝えることで、
看護師は承認を得ることができた。そして上肢リハビリを継続するには看
護師の協働が必須であることを他職種である OT に評価されたこと、患者
の回復過程・QOL 向上への関わりを実感できたこと、以上のことから上肢
リハビリチームが成果を上げ、スタッフの達成感、そして更に次の現実的
目標の設定に繋がった
- -
138
053
054
社会医療法人財団新和会 八千代病院
熱田リハビリテーション病院 地域医療連携室
地域連携パスにおける日常生活機能評価の得点差
―入院時看護記録からみた要因分析ー
回復期のための情報管理共有システムの構築~地域連携・入退院
調整における情報統括管理共有アプリケーションの製作~
松浦 千里、小野 尚美、二宮 敬、矢崎 進
野々山 尚孝、青松 元昭
【目的】2014 年度診療報酬改定により、回復期リハ病棟(以下、回リハ)
には更なる高い質が求められるようになった。その中で、地域連携パスに
よる入院時の日常生活機能評価は、急性期連携先病院の評価(以下、パス
評価)得点を採択することになっている。しかし、回リハ側からみた日常
生活機能評価(以下、回リハ評価)と度々得点に差がみられていた。そこで、
パス評価と同日の回リハ評価との得点差を明らかにし、看護記録からその
要因を分析して課題を抽出することを目的とした。【方法】対象:H26 年 7
月~ H27 年 6 月迄に回リハに入院したパス患者 64 名(脳卒中 37 名、大
腿骨頸部骨折 27 名)方法・分析:回リハ入院時のパス評価と日常生活機
能評価の得点差を記述統計的に分析し、回リハの入院時看護記録から要因
を挙げた。倫理的配慮:データは個人が特定されないよう配慮し、研究以
外の目的では使用しないこととした。【成績】病院間の日常生活機能評価の
得点は、P < 0.01(当院の中央値 8 点、他院 5.5 点)で有意差があり、回
リハが高かった。対象の 50%に認知機能低下がみられ得点差との有意差は
なかったが、ある群はない群より双方の病院で得点が高かった。得点差の
高い項目は口腔清潔、食事摂取、移乗、移動方法、診療上の指示であった。
これらの看護記録から、要因のキーワードとして「見守り」
「前院情報」
「セッ
ティング」「認知機能低下」「麻痺」が抽出された。【結論】得点差の要因と
して 1. 回リハとしての専門的視点 2. 治療態勢や療養環境の変化 3. 日常生
活機能評価に対する認識と教育の差 4. 認知機能低下患者の受け入れ姿勢、
が考えられた。重症度、医療・看護必要度における制度を背景に、病院間
の得点差ゼロには困難な一面もある。今後は連携マネジメントと日常生活
機能評価の精度向上を目指し、1. パス運用上での情報共有と病院連携 2. 院
内及び地域での評価の標準化が課題と考える。
【背景】当院は名古屋医療圏に属し、5 キロ圏内には大規模急性期病院 7
つ、回復期病院 6 つという激戦地に在る。紹介元は様々で併願も多い。年
間 1000 件以上の入院相談、1300 件以上の入退院に対応し、その 98%以
上が紹介予定入院である。現在、入退院調整は 8 名の MSW を中心に行っ
ている。この様な状況より、日々変化し続ける入退院調整における情報の
管理と共有は非常に重要である。しかし、実情はメモ代わりの複数の Excel
や手書き資料、口頭伝達を用いたアナログ的な情報管理・共有を行っている。
その為、Excel 特有の障害や重複情報入力、伝達ミスなど多くの問題が発生
し、統計作成にも多大な労力を要していた。
【目的】入退院調整における、効率的で正確な情報管理と迅速な共有の実現。
回復期のための情報統括管理共有アプリの開発。
【結果・アプリ概要・考察】入院相談受付、入退院調整、施設基準管理・統
計の多業務を網羅。各業務に即した画面をそれぞれ用意し、患者情報はデー
タバンクにて一元化する。それにより、異なる業務場面、各端末から入力
した情報を即時に皆で共有出来、常に全体を把握した入退院調整が可能と
なった。また、データの PDF 化機能により紙面伝達も容易となった。業務
効率が向上し、正確性も向上出来たことで、急性期からのスムーズな受入
れや患者様の為に使う時間確保、また、病棟運営に大きく寄与出来たと考
える。
【結語】現在、地域包括ケアシステム実現に向け高度な ICT が数多く試用さ
れている。しかし、先進的な急性期と異なり回復期や維持期では、単独の
情報管理体制も未だ十分ではない。地域における包括ケアの実現には、医
療情報を共有する電子カルテモデル ICT と共に、情報管理及び情報共有し
病床を統括管理するシステムが必要ではないかと考える。本アプリは誰で
も扱えるシンプルな操作と汎用性の高さが特徴であり、病介連携や維持期・
在宅ネットワークにおける活用にも期待している。
808
看護実践につながる院内看護研究の実施に関連する要因
尚温会伊予病院
山本 恵子
- -
139
一般演題(口演)
抄録
【目的】
研究成果がその後の看護実践に継続的に活かされていくことが困難である
という問題点に着目し、A 病院看護研究の現状と自分の行なった看護研究
がその後の看護実践につながっていると感じた看護師とつながっていない
と感じた看護師の特性を明らにし、A 病院の看護研究が看護実践に活かさ
れるためにどのような支援が必要か検討する。
【方法】
過去 A 病院における院内看護研究代表者 29 名に対し研究対象者の看護研
究の経歴を記述してもらい、研究結果がその後の院内・部署内の看護に活
かされていると感じている看護師群(以下 B 群)と活かされていないと感
じている看護師群(以下 C 群)に分け、19 項目を 5 段階評定で回答してもらっ
た。統計処理にあたり SPSS を使用し 2 群間で T 検定によって比較分析し
それぞれの特性を明らかにした。
【結果】
① A 病院の院内看護研究代表者を経験した看護師の多くは看護研究未熟の
まま研究代表者として選出されている。
② B 群 C 群間を比較し有意差を認めた項目は「自分が看護研究を行なうこ
とで問題解決を図ろうというビジョンを持っていた」「看護研究を実施する
ことで自分の看護実践の質を高めることができた」「看護研究を実施するこ
とでモチベーションが高まった」の 3 項目であった。
【考察】
看護実践につながる院内看護研究の実施に関連する要因としてビジョンを
持って看護研究に取り組むことで研究成果が上がった際には看護実践につ
ながったと実感でき、結果自分の看護実践の質が高まりモチベーションも
高まるといった自己効力感につながっていくということが明らかとなった。
また研究者は研究のテーマ抽出という初期の段階から様々な困難感や支援
の必要性を感じていることが明らかになった。更に看護実践につながる院
内看護研究を実施するためには、研究成果を実践につなげるために若い研
究者を支援する体制も必要である。
5 -3 病 棟 運営・業 務 管 理・マネジメント ◆ 3 月 4 日( 金) 14: 0 0 ~ 14: 5 4
055
056
チーム形成における1手法~セラマネとしての取り組み~
1)
3)
第5会場
オープンカウンターへの MSW 常駐による回復期リハ病棟運営の
効率化~ MSW および看護師への心理的影響について~
浜脇整形外科病院 リハビリテーション科、2) 浜脇整形外科病院 看護部、
浜脇整形外科病院 医局
医療法人榮昌会 吉田病院 MSW(社会福祉士)
松橋 淳 1)、亀島 将士 1)、兵頭 優幸 1)、近藤 有里 2)、橋元 瞳 2)、
甲斐 久美子 2)、浜脇 純一 3)
早瀬 裕子、生駒 恵里、義田 成美、二ツ石 美佐子、細川 由紀子、
植松 宏明、夏目 重厚、富永 正吾、吉田 泰久
【目的】専門職連携の発展プロセスにおける最終段階のチームワークは、
Wieland らが示すマルチディシプリナリーモデル(以下マルチモデル)
、イ
ンターディシプリナリーモデル(以下インターモデル)
、トランスディシプ
リナリーモデル(以下トランスモデル)に分類される。以前当病棟チームは
各専門職別に独立実践するマルチモデルであった。そこからトランスモデル
を最終目標にし、段階的にインターモデルへの変容を試みた。その具体的手
法を若干の考察を踏まえ報告し今後の方向性を示唆する事を目的とする。
【具体的手法】当初の患者の問題点を共有する為の連絡手段としていたカン
ファから、下記の 1 → 3 の他職種研修会後に順次カンファ内容や視点の変
更を段階的に行った。
1 研修:協働とは カンファ:共通ツールを利用し患者の現状を共有して
検討
2 研修:カンファのあり方 / リハビリナースとは カンファ:共通ツールを
利用しチーム同一視点でリハゴールを設定し行動目標を統一
3 研修:ゴール設定について / 専門性について カンファ:違うツールで各
職種ゴールとリハゴールの設定と各専門性の活かし方を検討
【結果】研修とカンファの段階的な変更によりチームをインターモデルまで
は変容できた。
【考察】まず協働を意識させた上で共通ツールを利用する事で、分散してい
た専門的役割を一度集約し「共通目標を持ったチームである事」を意識付け
た。いわゆるインターモデルである。その後同一視点でゴール設定を行う
等、カンファで専門職相互の意思決定を行い、いかに役割が重複し協働でき
るか感じながらインターモデルの成熟を図った。その中で専門性を意識させ
る為、共通ツールからあえて職種毎のツールへ変更し職種ゴールも設定する
内容にした。現在は他職種の専門性を理解する事でそれを活かした協働へ繋
がっている。今後の方向性は、トランスモデルに必要な専門性を活かした上
で意図的な役割の開放への展開である。
057
回復期リハビリテーション病院における母性健康管理の取り組み
イムス板橋リハビリテーション病院 リハビリテーション科
名越 絵理、澤田 辰徳、松野 由佳
一般演題(口演)
抄録
【はじめに】医療関係者の産前トラブルは一般職種と比較して多い.当院
においても産前トラブルにより自宅安静や入院に至るケースが続いた.
しかし,全国的に実際の取り組み内容や取り組み後の報告はない.今回,
それらの問題を解決するため回復期である当院リハビリテーション科で
こうのとりプロジェクト(以下プロジェクト)を確立した.そして,取
り組み前後での産前トラブル件数や妊婦の意識調査を行ったので報告す
る.【プロジェクトについて】プロジェクトは妊婦職員の支援のため,母
親経験者 3 名をメンバーとし(所属長は男性),業務に関する決定権が
与えられ,重要事項は所属長に相談した.プロジェクトの活動はシステ
ムの作成と実際の支援の2つになった.システムでは妊娠発覚時の連
絡,相談,業務調整を確立した.相談内容は健康状態や産科医からの情
報や妊婦としての不安,現在の業務量等についての聴取を定期的に行っ
た.業務量調整については負荷の高い業務や単位数の配慮,通勤緩和の
提案,特別配慮の実施(補食など)を実施した.【方法】トラブル件数の
把握と産前トラブルや安静期間,通勤時間を調査するとともに,トラブ
ルがあった本人からトラブル原因の自己評価について聴取し,カテゴリー
分類した.【結果】産前トラブルの発生率はプロジェクト前で 60%,後
で 73%,また平均安静期間はプロジェクト前で 11 週,後で 7.3 週間だっ
た.トラブル発生カテゴリー要因は不可避な現象(悪阻等)を除いて自
己管理不足,通勤負,体質,医師の指示が挙げられた.通勤に関しては
乗り換え回数,通勤姿勢,通勤時間でトラブルが発生する傾向が見られた.
【考察】プロジェクトにより平均安静期間は減少したが,発生割合の減少
には至っていない.今後は,妊婦職員を対象に母体変化とトラブルに関
する知識や通勤時の配慮事項を含めた母性健康管理教育の必要性が見出
された.
【目的】MSW が病棟に常駐している例は少なく、MSW のスタッフルーム
で連絡を受け、病棟に上がってくるシステムが多い。当院では必要時の
MSW 介入ではなく、病棟のオープンな受付カウンターをワーキングエリ
アとし常駐している。そのことが、病棟全体の業務の効率化と看護業務の
充実につながってきておりそのシステムと現場の感想について報告する。
【方法】当院では専従 MSW1 名あたり患者 20 名以内の担当を限度とし、
56 床の病棟に 3 名配置されている。MSW からは、心理的な影響について
感想をまとめた。病棟の看護師からは個別に聞き取り調査を行った。他院
からの見学者(主として看護師)については、感想を随時収集した。【結果】
病棟看護師は、MSW のトリアージにより各種の相談・苦情や書類などの
直接対応の必要がないので、リハビリテーション看護に専念できる。MSW
への連絡の必要性がないことが助かる。医師への文書依頼や退院調整の書
類準備、院内・院外の多職種への連絡調整などもしてくれるので助かる。
他院からの見学者(主として看護師)からは、自院では看護業務として対
応していることの多くが MSW により対応可能であることが理解できた。
また、医師への文書作成依頼や介護認定書類作成などの MSW による指導
や手配のシステムに興味があった。MSW の意見では、担当患者に毎朝、
顔合わせ声掛けができ、家族来院時に毎回会うことで意思疎通が良好であ
る。デイルームの前にいるので、高次脳機能障害や情動障害の患者さんの
状況が把握しやすい。電話使用について、閉鎖された部屋でないとプライ
バシーが守れないとの意見もあったが、病棟の看護師が行っている状況と
大差なく必要時は場所を工夫すれば問題ない。開放的環境による MSW の
心理的ストレスは皆無であった。【考察】開放的環境では MSW 業務のプ
ライバシー保護については問題なく、MSW の心理的ストレスはなかった。
看護師からは、看護に専念しやすいと好評であった。
058
回復期リハビリテーション病棟における介護福祉士と看護師の
協働による入浴介助の検討
~個浴の評価基準を言語化し、入浴介助の統一化をはかる~
横浜市立脳卒中・神経脊椎センター
藤吉 信子、岡村 一子、深谷 あゆみ
【目的】個浴(一人用浴槽での入浴形態)の評価基準(以下基準)を言語化
し、看護師と介護福祉士が協働してできる入浴介助方法の統一化をはかる。
【方法】研究デザイン:アクションリサーチ。対象:回復期リハビリテー
ション病棟看護師 22 名と介護福祉士 4 名。手順:1) 基準作りの話し合い 2)
改善点の検討と基準案作成3)基準案に沿った入浴介助実施4)対象者に
実施後のインタビューとアンケート 5) 基準完成。分析方法:手順 1)2) で
得られたデータから個浴の開始基準となる内容を抽出し、評価基準を作成。
評価基準を用いた入浴介助を実施し、どのように協働が変化したかを考察
する。【倫理的配慮】A 病院看護部看護研究倫理審査会の承認を得て実施し
た。【結果】看護師と介護福祉士による基準作りの話し合いで、機械浴から
個浴へ変更する基準として、
「膝折れしない」
「立位安定」
「従命に応じられる」
という視点があげられた。しかし、個浴に対する恐怖心により変更できな
かった事例が発生したため、高次脳機能障害などの認知面の視点を追加し、
基準案を作成した。これをもとに入浴介助を実施したところ、個浴初回の
入浴では、浴室の濡れた床での転倒の危険性が高いという意見があったた
め、個浴開始時にも浴室内の移動動作において「膝折れしない」「立位安定」
「従命に応じられる」という視点で評価を行った。対象者がほぼ 1 例以上体
験した後、インタビューとアンケートを実施。結果、対象者は常に基準の
視点で患者の ADL を観察、アセスメントする行動に変化し、認知面の配慮、
患者の満足度も考えて入浴介助するようになった。また、基準の運用として、
個浴入浴介助の目標、個浴開始のフロー系統、入浴実施の記録項目を検討・
追加し、最終的に「回リハにおける入浴介助」基準を完成した。
【考察】基
準が完成したことで、看護師と介護福祉士の視点が統一され、協働した入
浴介助につながった。
- -
140
059
ウォーキングカンファレンスの試み ~患者様の声が聞きたくて~
宇和島徳洲会病院 回復期リハビリテーション病棟
田邊 和也
060
回復期リハビリテーション病棟における早朝リハの効果について
~実施期間と疾患による検証~
1)
≪はじめに≫当病棟では全職種のスタッフで 8 時 40 分からナースステー
ションで朝のミーティングを行い、ケースカンファレンスや夜間状態変化
のある患者、転倒リスク者等を報告していた。しかし、ベッドサイドの環
境や、ADL をイメージしづらいなどの意見が多く聞かれるようになった。
また、医療者側の一方的な話し合いであり、患者が取り残されていた。そ
のため、患者の安全な環境やその日の表情から体調を確認し、ベッドサイ
ドでの患者の思いを聞き出す、患者参加型ウォーキングカンファレンス(以
下 WC と略す)を平成 27 年 9 月 1 日より開始した。それに伴いスタッフ、
患者からの意見をもとに問題点を抽出し改善した経過をここに報告する。
≪方法≫ 朝 8 時 30 分から夜勤者、日勤者を含め 15 名~ 20 名で患者全
員のベッドサイドを訪問し夜間の状況、ADL の変化、ベッド周囲の安全を
再評価しカンファレンスを行う。WC 導入後、患者からの言葉、他職種か
らの疑問や問題点が抽出された。WC の意識付けを行う目的で、病棟スタッ
フ(Ns、CW、PT、OT、MSW)に対し平成 27 年 9 月~ 12 月まで毎月 1
回同じ内容のアンケートを実施。また患者に対し転入後 1 週間以内と 1 ヶ
月後に聞き取り調査を実施した。≪結果・考察≫ 現時点での初回アンケー
トの結果、ベッドサイドで患者の声が聞ける事や安全な環境をベッドサイ
ドで確認できる事がメリットとして挙げられた。また WC の目的が理解で
きない、夜勤看護師のみ話している等のデメリットが挙げられた。このデ
メリットに対して (1) ウォーキングカンファレンスの目的を再認識、具体
的な流れをマニュアル化する。(2) 一方的な言葉がけではなく全職種、患者
がディスカッションできる時間を設ける。(3) 転入前面談時に患者、家族へ
WC についての説明を行って周知していく。等の改善策を実施した。アン
ケート調査は毎月継続し、様々な問題点を改善し、患者参加型 WC の定着
に取り組んで行きたいと考える。
公益財団法人 シルバーリハビリテーション協会 メディカルコート八戸西病
院、2) 学校法人 臨研学舎 東北メディカル学院
葛西 恭恵 1)、佐々木 清美 1)、藤嶋 聖子 2)
【目的】当院では,従命困難な意識障害や重度認知症,日常生活活動(以
下,ADL)の自立者を除く全患者に対し「できる ADL」の向上と「し
ている ADL」の早期定着を目的に早朝リハビリテーション(以下,早
朝 リ ハ ) を 行 っ て い る. 実 施 期 間 は, 担 当 作 業 療 法 士 が 1 週 間 毎 に
Functional Independence Measure(以下,FIM)を評価し,早朝リハ
の継続か,「している ADL」として病棟スタッフへ申し送るかを検討し
ている.今回は,実施期間と疾患の違いによる早朝リハの効果につい
て FIM を比較し検証したので報告する.【対象と方法】対象は H25 年
8 月~ H27 年 8 月に早朝リハを実施した 239 名.いずれも同意の下,
FIM を評価した.1 週間のみの実施を 1 群(脳血管障害(以下,CVD)
94 名,運動器疾患(以下,運動器)27 名),2 週間の実施を 2 群(CVD105
名,運動器 13 名)とした.実施期間の違いによる効果については,群
毎に早朝リハ介入前後の FIM 得点を Wilcoxon 符号付順位検定で解析
した.また,疾患毎の効果については,介入前後の FIM 得点の差を算
出し Mann-Whitney 検定を用い群間で比較した.いずれも,有意水準
は 5%未満とした.【結果及び考察】実施期間の違いによる効果につい
ては,1 群,2 群ともに有意差が認められた(p < .01).疾患毎の効果
については,CVD では有意差が認められたものの(p < .05),運動器
では認められなかった.つまり,早朝リハは 1 週間のみでも 2 週間の
実施でも効果がある.しかし,CVD では 2 週間が効果的であり,運動
器では実施期間で差がないことがわかった.これは,CVD では運動制
御や高次脳機能障害の影響により動作の定着に時間がかかる為と推察す
る.以上より,CVD では 2 週間,運動器では 1 週間の早朝リハの介入
で効率的に効果をあげることができると示唆する.
5 - 4 外泊・訪問指 導 ◆ 3 月 4 日( 金) 15: 0 0 ~ 15: 5 4
061
062
当院における訪問指導実施に伴う効果の検討
~入院時訪問指導加算に至らなかった患者の要因を検証する~
1)
2)
第5会場
当院での入院時訪問指導における課題と展望
社会医療法人大道会ボバース記念病院 リハビリテーション部
末宗 梓、佐々木 公望、岸 伸江、上田 真里、湯川 智子、
藤田 良樹
一般財団法人 仁厚医学研究所 児島中央病院 リハビリテーション科、
宝塚医療大学 保健医療学部 理学療法学科
田中 志穂 1)、山川 恭子 1)、森 彩子 2)、小幡 太志 2)
【はじめに】在宅復帰を求められる回復期リハビリテーション(以下回リハ)
病棟にとって、患者の在宅状況の情報を早期に収集し、入院中のアプロー
チに反映していくことは重要である。当院では H26 年 10 月から入院時訪
問指導に取り組んでいる。その結果得られた課題と展望について報告する。
【方法と対象】H26 年 10 月~ H27 年8月で回リハ委員会メンバーを中心
に入院時訪問指導を実施した。その患者が退院した時点で担当セラピスト
にアンケートを実施し、その結果を検討した。対象患者は近隣在住かつ入
院時訪問指導に同意を頂いた方とした。【結果】実施件数は 18 件、うち期
間内に退院された方は 10 名であった。退院先は入院時訪問指導に伺った
家または施設が9件、老健が1件であった。アンケート回収率は 100%で、
94%が入院時訪問指導の情報が有効であったと答えた。どのように有効で
あったかの問いには「廊下の長さに合わせて歩行練習が出来た」「上がり框
の高さに合わせ、早期から床上動作の練習が導入できた」等があり、入院
時訪問指導の具体的な情報がリハ内容に反映されていた可能性が示唆され
た。自由回答では、担当者が行くべきとの回答が8件、対象患者を増やす
べきが2件あった。【考察】アンケート結果から、入院時訪問指導が在宅復
帰に向けた介入の一助となる可能性が高い。しかし、経験の乏しいセラピ
ストに実施してもらうことは難しく、更に回リハ病棟入棟日から前後7日
以内の実施が算定条件であったり、回リハ病棟専従者は院外業務不可とい
う制度上の縛りから、患者全員を対象とすることは難しい。今後委員会では、
工夫が必要なシステム作りに取り組むとともに、制度上の問題についても
柔軟に対応していきたい。
- -
141
一般演題(口演)
抄録
[ 目的 ] 一般的に、新設された入院時訪問指導加算が在院日数の短縮や在宅
復帰率(6 割以上)の向上に大きく影響を及ぼすと言われている。同時に、
介入が困難なケースも数多く存在する。そこで今回、当院において訪問指
導の有無における在宅復帰との関連を調査し、若干の知見を得たので報告
する。 [ 対象 ] 平成 26 年 4 月 1 日より平成 27 年 3 月 31 日までに入院し、
退院した患者 170 名を対象に調査した。入院時訪問指導加算群 55 名 ( 以
下 I 群 ) と退院時訪問指導群 ( 以下 II 群 )23 名と介入なし群 92 名 ( 以下 III 群 )
に分類した。[ 方法 ] 在宅復帰率・在院日数・総合計単位数・FIM 利得に対
し、I 群、II 群、III 群で一元配置の分散分析及びカイ二乗検定を行った。なお、
分析には SPSS22.0 を使用した。また、後期高齢者率・発症から回復期リ
ハビリ病棟入棟までの期間に対しては単純集計による比較・分析を行った。
[ 結果 ] 在院日数(I 群 75 日・II 群 113 日)、総合計単位数(I 群 335 単位・
II 群 515 単位)FIM 利得(I 群 18 点・II 群 28 点)で有意差が出現した。
しかし、在宅復帰率(I 群 82%・II 群 78%)においては有意な差がみられ
なかった。また、後期高齢者率(I 群 67%・II 群 91%)発症から回復期リ
ハビリ病棟までの期間(14 日以下:I 群 43%・II 群 13%、15 日~ 30 日:
I 群 41%・II 群 73%)であった。[ 考察 ]II 群は在院日数や総合計単位数が
増加していた。その要因として発症から回復期リハビリ病棟入棟までの期
間が遅れた上に後期高齢者率が高いため、積極的なリハビリの介入が遅れ
たことが挙げられる。しかし、II 群の FIM の利得は I 群に比して改善が認
められ、自宅退院に向けた、退院時訪問指導へと繋がった。結果、各群に
おける在宅復帰率の有意差がなくなり全体として全国平均(71%)も上回っ
たと考えられる。一方、I 群は FIM の利得が低くても早期退院が可能であっ
た。これらの調査を活かして今年度より、新たな取り組みを開始した。引
き続き調査をしていく。
063
064
社会医療法人 明陽会 第二成田記念病院
総合リハビリ美保野病院
[ はじめに ] 平成 26 年度診療報酬改定により入院時訪問指導加算が新設さ
れた。当院では、平成 17 年開院当初から退院前訪問指導を積極的に行っ
ていたが、平成 23 年に導入した入院時訪問指導に関しては実施件数の低
下が続いた。そこで今回の改訂に伴い、入院時訪問専用部門を設立し、入
院時訪問件数を増やす試みを行った。今回その成果と課題について報告す
る。[ 方法 ] 平成 27 年 6 月 1 日入院時訪問専用部門設立(看護師 1 名・ク
ラーク 1 名)調査期間:平成 27 年 3 月 1 日~ 8 月 31 日。対象:当院入
院患者 245 名。調査内容:入院時訪問専用部門設立前後で入院時訪問実施
率を求め、未実施要因を分析した。[ 結果 ] 入院時訪問実施率:専用部門設
置前 34.3%、設置後 54.3%であった。実施に至らなかった要因では、医療
者側要因(日程調整の遅れ・入院時訪問の意識の違い・遠方など)が設置
前 40.7%、設置後 11.5%であった。[ 考察 ] 今回の結果から、入院時訪問
専用部門を設置する事によって、入院時訪問実施率の向上を図る事ができ
た。理由として、専用部門設置前は、訪問日程調整を個別担当で行ってい
たために医療者側要因が問題であった。設置後は、窓口の一元化・人員の
一定化(入院当日に多職種連携チームで入院時訪問の必要性の有無を検討、
専門部門が家族と共に訪問日を設定)をすることができたためと考える。
しかしこれらの成果の反面、病院要因を無くすには至らなかった。要因は
患者・家族側の要因に加え、専門部門の人員数・自宅が遠方である事など、
訪問時にかかる人的コストが影響していると示唆された。今後、多くの入
院時訪問を実施するためには、医療者側も入院初期から目標を明確化し、
早期退院に繋げることのできる体制を整える必要がある。また、入院時訪
問で家族の不安の緩和に努めることによって、円滑な退院支援が出来ると
考える。
<はじめに>入院早期の訪問は、当院回復期リハ病棟においても以前よ
り課題として挙げられていたものの、実施には至っていなかった。H26
年度診療報酬改定において、入院時訪問指導加算が加えられたことをきっ
かけに、当院でも H26 年8月より看護師主体で開始している。1 年間
の実施を総括し、そこから見えてきた現状と今後の課題について報告す
る。<対象と方法>1、H26 年 8 月~ H27 年 8 月の期間に入院した患
者331名の入院時訪問実施状況を調査。2、当院回復期リハ病棟スタッ
フ(セラピスト・看護師・ケアワーカー)89 名に、入院時訪問に関する
アンケートを実施。3、1・2の結果を分析し、今後の課題を検討した。
<結果>1、入院時訪問を実施できたのは95名となり、約29%にと
どまった。実施できなかった理由として、「家が遠い」「仕事を休めない」
等が挙げられた。2、入院時訪問情報用紙は「多少活用している」52名「活
用していない」14名となり、十分活用できているスタッフは少なかっ
た。3、入院時訪問は 70 名が「今後も続けていくべき」との回答だった。
<考察と今後の課題>入院前後1週間の訪問期間の設定に関しては「適
切」と回答するスタッフは多かったものの、訪問の実施は29%程度に
とどまっている。家族とのスケジュール調整が困難なことが多いとの意
見もあり、訪問件数を増やしていくためには、もう少し時間的猶予があっ
ても良いのではないかと考えられ、今後も議論していく必要がある。入
院時訪問情報用紙の活用に関しては「活用出来ている」との回答は 23 名
にとどまっている。実施後の周知やカンファレンスでの活用など、どの
ように活用していくかが明確になっていないことが原因と考えられ、整
備が急務である。入院時訪問で得た情報を効果的に活用していくことで、
今以上に在宅を見据えたリハビリテーションの提供や、患者・家族との
効果的な協働関係の構築に繋げていく必要がある。
065
066
医療法人ひまわり会 札樽病院 リハビリテーション療法部
医療法人おもと会 大浜第二病院
当院における「入院時訪問指導専用部門」設置後の成果と課題
入院時訪問指導の実施から見えてきた今後の課題
岡田 佐加絵、廣田 綾子、大井 宏泰、佐藤 勝、後藤 健一、中林 吉雄、
竹内 宣久
入院時訪問指導の効果
堀切 隆広、佐々木 幸子
入院時訪問指導に携わって
中黒 渉、坪井 英心、岡本 五十雄
當山 静佳、城間 真喜子、賀数 ルリ子
一般演題(口演)
抄録
【はじめに】第 25 回研究大会 in 愛媛にて、入院時訪問指導の効果として当
院回復期スタッフへのアンケート調査の結果から「早期から家族との関係
性を築く場となること」や「早期から具体的な自宅環境や生活状況を把握
でき退院後の生活をイメージしやすくなる」と報告したが、客観的データ
での効果検証が課題として残った。当院では、人的コストの面から入院時
訪問指導に至らないケースがある。今回、「入院時に自宅あるいは元居た居
宅系施設へ復帰希望または検討中」で「当院から自動車で片道移動時間 30
分以内」で入院時訪問指導を実施した群(以下、実施群)、「入院時に自宅
あるいは元居た居宅系施設へ復帰希望または検討中」であっても「片道移
動時間 30 分以上」は非実施群(以下、非実施群)として比較検討した。
【対象と方法】平成 26 年 7 月~平成 27 年 9 月での実施群 34 例(男性 15
例 女性 19 例 平均年齢 74.9 歳)と非実施群 38 名(男性 23 例 女性
15 例 平均年齢 72.7 歳)である。それぞれの在宅復帰率、FIM 利得、入
院日数を比較検討した。
【結果】在宅復帰率 実施群 91.4% 非実施群 92.1%(ns)
FIM 利得 実施群 15.4 ± 15.9 点 非実施群 14.1 ± 14.3 点(ns)
入院日数 実施群 79.5 ± 34.9 日 非実施群 87.3 ± 42.6 日(ns)
【考察】今回、在宅復帰率、FIM 利得、入院日数ともに統計学的な有意差は
なかった。入院時訪問指導は、「早期から家族との関係性を築く場となるこ
と」や「早期から具体的な自宅環境や生活状況を把握でき退院後の生活を
イメージしやすくなる」といった効果があり、スムースな退院につながる
一要因と考える。しかしながら、現在の入院時訪問指導に対する加算点数
は、人的コストの観点でみると必ずしも積極的に実施出来るとは言えない。
昨今、在宅復帰率や重症患者改善率の引き上げ、在院日数短縮の流れの中
にあるが、入院時訪問指導の効果に関して客観的なデータを示し、その有
用性を明確にすべきと考える。
【はじめに】A 病棟の介護福祉士は、以前からADLで困難な症例や介護
力が課題となるケースでセラピストが行う住環境評価に同行している。し
かし、通常の住環境評価は、入院期間の半ばに行う為、具体的なアプロー
チをする時間が足りないと感じることが多かった。そこで、平成 26 年度
診療報酬改定で新設された、「入院時訪問指導」を利用することで、より
早期に退院支援ができるようになった。A 病棟における入院時訪問指導の
取り組みを報告する。【目的】1. 患者の生活動線を確認し、今後のリハビ
リ計画を立案する。2. 患者・家族の日課と生活リズムを確認し、セルフケ
ア能力と介護力を判断する。3. 入院時訪問指導で得られた情報を多職種間
で共有しリハビリテーション・ケアを提供する。【方法】1. 入院時の面談
で患者・家族のリハビリに対する要望や今後の意向を確認する。2. 入院時
の状況 (ADL の自立度・早期退院希望者・独居等 ) によって、入院時訪問
指導の必要性を判断する。3. 本人家族へ説明、同意が得られたら、具体的
な訪問日を相談・決定する。4. 病棟管理者が訪問する職員を選定し勤務調
整を行う。5. 訪問する職員が事前に必要な情報を収集する。6. 介護福祉士
は生活動線や家屋内外の段差等を確認し、レイアウトを作成する。7. 担当
者へ情報を提供し、カンファレンスで退院支援の課題を明らかにし目標設
定する。【結果】1. 早期に退院後の生活に合わせた環境設定ができるよう
になった。2. 在宅退院の課題となりやすい、排泄面のアプローチが早期に
できるようになった。3. 訪問回数を重ねることで、担当セラピストから情
報収集を依頼されるようになった。【まとめ】入院時訪問指導により、患
者の退院後の生活のイメージが出来るようになった。今後の課題は、入院
時訪問指導で得た情報を多職種へ積極的に発信することである。患者の退
院後がよりよい生活になるよう取り組みを続けていきたい。
- -
142
5 -5 外泊・訪問指 導 ◆ 3 月 4 日( 金) 16: 0 0 ~ 16: 5 4
068
069
年間 300 例を超える入院時訪問指導を実施して
1)
第5会場
一般社団法人巨樹の会 下関リハビリテーション病院、2) 小倉リハビリテーショ
ン学院
中江 暁也 1)、藤井 弘通 2)
入院時訪問指導の FIM(Functional Independence Measure)に
与える影響
1)
医療法人 創和会 しげい病院 リハビリテーション部、2) 医療法人 創和会 しげい病院 看護部、3) 医療法人 創和会 しげい病院 医局
【目的】 平成 26 年度から入院時訪問指導加算が新設され約 2 年が経過し
ようとしている。当院においては平成 26 年 4 ~ 8 月までの 5 か月間を試
行期間として、対象疾患を絞って入院時訪問指導を実施してきた。平成 26
年 9 月からは全入院患者に対象を拡大し、平成 27 年 8 月までの 1 年間で
300 例を超える入院時訪問指導を実施してきた。そこで今回 300 例の入院
時訪問指導から示唆される在院日数や FIM 利得との関連性を調査したため
ここに報告する。【対象と方法】 平成 26 年 9 月 1 日~平成 27 年 8 月 31
日までに退院した 925 名を以下の 4 群に分けた。入院時訪問指導実施+退
院前訪問指導実施【A:○ / ○群】、入院時訪問指導実施+退院前訪問指導
未実施【B:○ / ×群】、入院時訪問指導未実施+退院前訪問指導実施【C:
× / ○群】、入院時訪問指導未実施+退院前訪問指導未実施【D:× / ×群】。
この 4 群を在宅復帰率、自宅復帰率、起算日~回復期入院までの日数、在
院日数、入院時 FIM 点数、退院時 FIM 点数、FIM 利得の 7 項目で比較した。
統計処理は一元配置分散分析を実施後多重比較検定を用い有意水準を5%
とした。【結果】 在院日数はA群 79.67 日、B群 59.48 日、C群 88.90 日、
D群 62.29 日であった。自宅復帰率、FIM 利得においてAD群間、CD群
間で有意差を認めた。在院日数においてBC群間、CD群間で有意差を認
めた。【考察】 A群(○ / ○)入院時のみの訪問では対応できない環境困
難ケース。B群(○ / ×)入院時のみの訪問で対応可能なケース。C群(×
/ ○)急遽自宅生活に目標変更したケース。D群(× / ×)訪問指導の必要
性がない軽症ケース or 自宅の可能性が低い重症ケース。各群の在院日数の
違いは上記の理由が考えられた。特にD群は軽症ケースと重症ケースが混
在している可能性があるため、D群内で 2 つに分けて比較検討する必要が
ある。
070
当院における大腿骨近位部骨折患者の在院日数との関連因子の検討
社会医療法人 大雄会 総合大雄会病院 リハビリテーション科
中武 仁士、田中 孝弘、小桑 隆、奥田 直加、日々野 宏映、江崎 貞治、
木村 隆文
【目的】回復期リハビリテーション病棟(以下回リハ病棟)は創設より 15 年
目を迎え、数の充足から質の向上へと課題が変遷しており、当院でも早期退
院と充実したリハ提供を図るため、
平成 26 年 4 月より入院時訪問指導を開始、
同年 7 月からリハ充実加算を算定している。今回、FIM を質の指標の一つと
して、FIM 改善に影響を及ぼした因子について後方視的に検証した。
【対象】平成 25 年 5 月から平成 27 年 4 月に当院回リハ病棟(2 病棟 97 床)
を退院した患者のうち、平成 25 年 1 月以前に入院した患者と死亡患者を除
いた 773 名。
【方法】対象を平成 25 年 5 月から平成 26 年 4 月に退院した A 群 375 名と、
平成 26 年 5 月から平成 27 年 4 月に退院した B 群 398 名に分類した。また、
B 群を入院時訪問指導実施群 71 名と非実施群 327 名に分類し、
それぞれ年齢・
提供単位数・入院日数・FIM について Mann-WhitneyU 検定を使用し中央値、
範囲を求め危険度は p < 0.05 とした。
【結果】年齢は A 群 77(20 ~ 98)
・B 群 79(18 ~ 100)
、
入院日数は A 群 65(3
~ 292)
・B 群 65(2 ~ 189)で有意差を認めなかった。提供単位数は A 群
303(14 ~ 1382)
・B 群 385(5 ~ 1270)
、FIM 利 得 は A 群 7( - 29 ~
71)
・B 群 9(- 36 ~ 73)で有意差を認めた。入院時訪問指導の有無では、
年齢は実施群 80(32 ~ 100)
・非実施群 79(18 ~ 100)
、入院日数は実施
群 63(14 ~ 153)
・非実施群 65(2 ~ 189)
、提供単位数は実施群 368(63
~ 1122)
・非実施群 388(5 ~ 1270)と有意差を認めなかった。FIM 利得
は実施群 12(- 29 ~ 66)
・非実施群 9(- 36 ~ 73)で有意差を認めた。
【考察】提供単位数の増加が FIM の改善に影響を与えたと考える一方、入院
日数や年齢に差はなく、早期退院支援については今後の課題である。次に入
院時訪問指導実施群で FIM 利得に差を認めた。入院時より自宅環境の情報を
得ることで、明確な目標をチームで共有しリハ提供が行われたためと考え、
入院時訪問指導は FIM 改善に一定の効果があることが示唆された。
071
回復期リハビリテーション病院における退院前家屋調査の効果
~ FIM の運動項目を用いた検討~
1)
小金井リハビリテーション病院、2) 昭和大学保健医療学部理学療法学科
若林 健太郎 1,2)、鬼塚 北斗 1)、篭宮 友紀 1)、松井 峰之 1)、
大野 優紀子 1)、井上 洋 1)、中村 大介 2)
【目的】回復期リハビリテーション病院では,リハビリテーションを集中的
に行うことで円滑な自宅復帰,社会復帰を目指している.現在,自宅復帰
に向けて家屋調査の重要性が提唱されつつあるも,その効果を示した報告
は少ない.今回,Functional Independence Measure( 以下,FIM) の運動項
目を用いて家屋調査前後の変化を明らかにし,その効果を検証することを
目的とした.【方法】当院において平成 27 年 2 月から 6 月までに自宅退
院した 319 例を対象に正確なデータが得られた 229 例を分析した.対象
を家屋調査実施群 ( 以下,実施群 ) と家屋調査未実施群 ( 以下,未実施群 )
に分類し入院時 FIM 得点,退院時 FIM 得点を用いて比較した.加えて実施
群 99 例 ( 年齢 78.1 ± 10.0 歳,在院日数 98.0 ± 36.6 日,脳血管疾患 37
例,運動器疾患 62 例 ) は家屋調査実施前 FIM 得点,未実施群 130 例(年
齢 71.8 ± 15.1 歳,在院日数 76.4 ± 36.1 日,脳血管疾患 50 例,運動器
疾患 71 例,廃用症候群 9 例)は退院 1 ヶ月前 FIM 得点を用いた.デー
タの使用に関しては対象者の同意を得て後方視的に行った.解析方法は
Mann-Whitney の U 検定を用い,有意水準は 5%未満とした.【結果】FIM
運動項目の総得点は,実施群で家屋調査前 66.8 ± 15.6 点から退院時 72.8
± 17.5 点,未実施群では退院 1 か月前 76.7 ± 14.0 点から退院時 79.3 ±
14.6 点,疾患別では実施群の運動器疾患で 7.5 点の上昇がみられた.また
FIM の下位項目では実施群は未実施群と比較して更衣,階段の項目に有意
な上昇がみられた.【考察】実施群では家屋調査により病棟生活で看護,介
護の取り組みやリハビリテーションの内容に変化が生じることが考えられ,
退院後の生活を想定した具体的な日常生活訓練により,FIM 得点の上昇に
つながったと考えられる.特に運動器疾患では退院後の生活イメージが得
られたことで高値になったと考えられる.また下位項目で更衣,階段に有
意な上昇がみられるなど一定の効果が得られることが確認できた.
- -
143
一般演題(口演)
抄録
【はじめに】全国の回復期における疾患別平均在位日数は整形外科系で
は約 50 日である。一方、当院における大腿骨近位部骨折の在院日数も
46.7 ± 16.2 日と同等程度である。今回、当院の大腿骨近位部骨折患者
における在院日数のさらなる短縮を目的に在院日数と関連する因子を明
らかとする。【対象】平成 26 ~ 27 年度の間に当院回復期に入棟、退院
した大腿骨近位部骨折患者 21 例 ( 大腿骨頚部骨折 12 例、大腿骨転子部
骨折 9 例 )。【方法】カルテより、年齢、性別、骨折の部位、術式、既往
歴、HDS-R、荷重制限の期間、同居家族の人数、1 日あたりの平均単位数、
入棟時 FIM、退院時 FIM、在院日数、発症から入棟までの期間、入棟か
ら初回面談までの期間、入棟から自宅訪問までの期間、自宅訪問から試
験外泊・外出までの期間、最終歩行様式、退院先を後方視的に調査した。
【結果】患者背景は男性:女性 =4:17、年齢 85.6 ± 6.8 歳、左下肢:
右 下 肢 =12:9、 術 式 PFNA 9 例 FHR 10 例 ハ ン ソ ン ピ ン 2 例、 荷 重
制限期間 3.4 ± 10.4 日、1 日あたりの平均単位数 2.7 ± 0.8 単位、同
居家族の人数 1.8 ± 0.9 人、入棟時 FIM 77.8 ± 23.5 点、退院時 FIM
91.7 ± 24.9 点、在院日数 46.7 ± 16.2 日、発症から入棟までの期間
26.4 ± 10.2 日、入棟から初回面談までの期間 8.6 ± 2.6 日、入棟か
ら自宅訪問までの期間 24.2 ± 10.7 日、自宅訪問から試験外出・外泊
までの期間 17.9 ± 9.2 日、自宅退院 20 例であった。在院日数と入棟
から自宅訪問までの期間に相関を認めた ( ρ =0.665、P=0.021)。年齢
や、HDS-R、1 日当あたりの平均単位数、入棟時 FIM と在院日数との間
に相関は認められなかった。また、入棟から自宅訪問までの期間と入棟
時 FIM との間に相関は認められなかった。【考察】当院における大腿骨
近位部骨折患者では、より早期に自宅訪問をすることで在院日数を短縮
できる可能性が示唆された。今後は適切な自宅訪問時期の検討が必要と
思われる。
坂田 昌子 1)、亀山 愛 1)、西濱 美絵 1)、松久保 稔 1)、本多 雅亮 2)、
守屋 由美 2)、清水 弘毅 3)
072
当院回復期リハビリテーション病棟における在宅復帰患者・家族
およびスタッフによる宿泊旅行
1)
飯能靖和病院回復期リハビリテーション病棟、2) 飯能靖和病院リハビリテーショ
ン科、3) 東京都リハビリテーション病院リハビリテーション科、4) 埼玉医科大学
国際医療センターリハビリテーション科
中村 智枝 1)、西尾 大祐 2)、藤木 千夏 1)、川崎 サヨ子 1)、倉田 睦子 1)、
川合 まき子 1)、大江 康子 3)、高橋 秀寿 4)、木川 浩志 1,2)
【はじめに】当病棟では毎年、在宅復帰した患者を対象として宿泊旅行を企
画し、実施している。患者が旅行する際には、移動の安全と快適性を確保
するために事前の準備が大切である。今回我々は 2014 年に実施した旅行
について、看護師の取り組みを中心に報告する。【参加者】患者 17 名、患
者家族 11 名、医師 1 名、看護師 4 名、介護士 1 名、療法士 10 名が参加した。
患者の内訳を以下に示す。性別は男性 7 名、女性 10 名、年齢は 12 ~ 87
歳(平均 66.4 ± 16.2 歳)、疾患は脳卒中 16 名、脳外傷 1 名、主障害は片
麻痺 15 名、小脳性運動失調 2 名、歩行能力は平地・階段要介助レベル 7 名、
階段のみ要介助レベル 3 名、平地・階段自立レベル 7 名であった。【経過】
2014 年 10 月 1 ‐ 2 日に群馬県太田市の温泉付きホテルに宿泊することに
なり、旅行日 1 か月前に参加者が確定した。看護師は患者の既往症、内服薬、
日常生活活動、必要とされるケアを確認し、医療器具、薬品、介護用品を
選定し、用意した。旅行 1 日目午後の温泉入浴では車輪付きシャワーチェ
アを用いて浴場内をスムーズに移動できた。しかし、浴場への移動経路に
階段があり、設置された階段昇降機が使用困難であったために、重度介助
を要するケースが多かった。旅行 2 日目未明に患者 1 名が体調不良となり、
医師・看護師によって酸素吸入、点滴が施行された。旅行中の移動では患
者に家族・医療スタッフが付き添い、患者が転倒することはなかった。
【考察】
車椅子類を用意したことは患者のスムーズな移動に役立ったものの、階段
昇降が必要な場面が生じたことなど、予期せぬ事態が生じた。したがって、
あらかじめ、施設の環境設備などを事前に詳しく調査する必要があると思
われた。また、患者の急変に対して看護師による事前の準備と医師・看護
師の同行は重要であった。
第6会場
6 -1 排泄 ◆ 3 月 4 日( 金) 11: 0 0 ~ 11: 5 4
073
074
医療法人大植会 葛城病院 看護部 7階病棟
秋田県立脳血管研究センター リハビリテーション科診療部
回復期リハビリテーション病棟における排泄ケアの充実
~排泄表の改定及び排泄カンファレンスを導入して~
当センターの回復期リハビリテーション病棟における排尿障害に
関する検討
木岡 由紀、南 麻実、多和田 寿美子
佐藤 雄一、藤巻 由実
一般演題(口演)
抄録
【目的】回復期リハビリ病棟における排泄ケアは、患者の状態や ADL 能力
に応じた排泄方法を選択し、自立に向けた援助を行わなければならない。
しかし、現状は個々に応じた援助の検討が十分出来ておらず、トイレでの
排泄の遅延や尿失禁が改善できないまま退院することがあった。今回、排
泄表の改定及び排泄カンファレンスを導入することで、排泄ケアの充実を
試みた。【対象】当病棟に平成 27 年 5 月~ 8 月に入棟し、動作能力の評価
ではトイレで排泄可能であるが、オムツ内での排泄もしくはトイレに行っ
ているが尿失禁がある 8 名。【方法】従来の排泄表を改定し「排泄習慣表」
を作成し使用。排泄カンファレンスで援助計画を立案。尿失禁・排泄の訴え・
トイレでの排泄回数の変化を調査及び FIM のトイレ動作・排尿コントロー
ル・トイレ移乗・理解・表出・問題解決の 6 項目の利得を、昨年度当病棟
入院患者の同レベルの能力患者の平均点と比較・検討した。【結果】排泄習
慣表使用後 2 日目に初回カンファレンス、その後は 1 週間毎に行い立案し
た計画を実施した。尿失禁の回数は、3 ~ 10 日程度で減少がみられ、それ
と比例してトイレでの排泄回数は増加した。排泄の訴えは、尿失禁減少時
期から 3 ~ 5 日後に上昇する傾向があった。しかし、排泄の訴えが継続し
てできない対象は、トイレでの排泄をきっかけに危険行為が出現した。昨
年度の FIM 利得の平均点と比較すると、トイレ動作は 4 名、排尿コントロー
ルは 5 名、トイレ移乗は 4 名、理解と表出は 3 名、問題解決は 4 名と約半
数の対象者に上回る結果が得られ、運動項目の 3 項目では大きな点数の上
昇があった。【まとめ】排泄表の改訂及び排泄カンファレンスの導入により、
排泄に関する詳細な情報を正確に得られ、早期に個々に応じた排泄ケアの
検討が行えた。また、情報の共有及び援助の統一を図る手段としても有効
であり、排泄ケアの充実に繋がった。
【目的】排尿障害は、回復期リハビリテーション病棟(回リハ病棟)におけ
るリハビリテーションや自宅に復帰する際に大きな問題となることが多い.
当院の回リハ病棟は原則当院の急性期病棟の患者のみの受け入れであり、
急性期における排尿管理や尿路感染症などの調査も容易である.この利点
を活かし、当院の回リハ病棟における排尿障害について検討した.
【方法】2008 年 4 月より 2015 年 3 月までに回リハ病棟を退院した女性の
初発脳出血例を対象とした.総数は 101 例で、平均年齢は 66.5 歳であった.
回リハ病棟入棟時の FIM で排尿障害項目 4 点以下を『排尿障害あり(有群)』、
5 点以上を『排尿障害なし(無群)』とし、この 2 群間で種々の因子を比較
検討した.
【成績】101 例中有群は 34 例(33.7%)、無群が 67 例(66.3%)であっ
た.平均年齢は、有群 70.5 歳、無群 64.5 歳で、有群が有意に高齢であった.
急性期病棟入院中に膀胱カテーテルが留置されたものは有群 34 例中 33 例
(97.1%)、無群 67 例中 54 例(80.6%)で、有群で有意に高率であった.また、
カテーテルの平均留置日数は、有群 19.7 日、無群 10.2 日と有群で有意に
留置日数が長かった.急性期病棟および回リハ病棟の入院期間中に尿路感
染症を合併したものは、有群 34 例中 12 例(35.3%)、無群 67 例中 7 例
(10.4%)であり、有群で有意に高率であった.有群において退院時 FIM が
5 点以上に改善したのは 24 例(70.6%)であった.転帰先をみると、有群
は無群に比し、自宅復帰率が有意に低値であった(64.7% vs 91.0%)
.
【結論】脳卒中の急性期には膀胱カテーテルが留置されることが多いが、今
回の検討から膀胱カテーテルの留置は後の排尿行為に対して悪影響を及ぼ
すことが明らかとなった.急性期における膀胱カテーテル留置の適応には
もっと慎重になる必要性が示唆された.
- -
144
075
076
当院回復期病棟における排泄委員会の取り組み
回復期リハビリテーション病棟患者に自動排泄処理機の導入を試
みて~患者への効果に対する唾液および介護の変化からの評価~
医療法人和同会 宇部西リハビリテーション病院
吉武 安香音、片山 繁、山田 鮎美、長田 貴子、柳井 洋平、柳原 博之、
梶原 浩司
【はじめに】回復期病棟では、限られた入院期間で自宅退院を目指した訓練
が必要となる。当院回復期病棟では、「生活に安全を、日常に笑顔を」をス
ローガンに退院支援している。退院先の決定には日常生活動作(以下 ADL)
の中で、介助頻度が多い排泄動作が家族にとって自宅退院を考える重要な
因子となる。当院でも退院条件に排泄自立が求められ、退院支援に難渋す
るケースがあった。そこで、排泄の問題と改善策の検討・情報共有とケア
の統一による排泄動作獲得を目的とし、平成 26 年 4 月から排泄委員会を
立ち上げた。その結果、円滑な退院に繋がった為症例を通じて取り組みと
内容を報告する。
【方法】担当者任せの排泄ケアの現状があり、取り組みとして排泄チェック
表・アセスメントシート・フローチャートの作成・記録の統一を行った。
入院時から全患者を対象に随時、排泄カンファレンスを実施し排泄状態の
確認と以後の訓練・介助方法等の方針を検討し、排泄動作が自立になった
時点で終了とした。
【代表例】80 代女性 頚髄損傷による不全麻痺
・徒手筋力テスト:上肢 3-4、下肢 2-3、体幹 2
・起居移乗全介助、ADL 食事以外全介助
・入院時排泄状態:オムツ 尿便意の訴えあるが曖昧。膀胱直腸障害無し
入院時よりチェック表による評価、二人介助でトイレ誘導開始。入院 1 週
後に排泄カンファレンスで介助方法の統一を図る。以降、計 7 回のカンファ
レンスを実施し、排泄方法の検討を行い、入院から 88 日で自立。
【考察とまとめ】今回の取り組みにより排泄動作獲得までの流れがシステム
化され、ケアの統一と情報共有により個々の意識が向上しスムーズに排泄
動作自立へ移行可能な症例を経験した。その結果、活動・参加を意識した
リハビリテーションが早い段階から行え、回復期から生活期へ繋げる事が
可能となり、円滑な退院に繋がったと考える。今後は、排泄関連の FIM の
改善率など検証し、経過を追って改善しより良いものにしていきたい。
077
1)
4)
市が尾カリヨン病院、2) 東都医療大学、3) 大和ハウス工業株式会社、
慶応義塾大学
青木 美芳 1)、佐藤 光栄 2)、甲州 優 3)、杉本 昌弘 4)、高木 久子 1)、
篠生 真喜子 1)、吉田 昌子 1)、鈴木 政代 1)
【目的】回復期病棟では、在宅復帰率 70%が求められているが、在宅とみな
されている施設入所を転帰とする患者が少なくない。その要因に夜間の排泄介
助量が影響しているのではないかと考えた。夜間帯のみ自動排泄処理機 H(以
下 H 機と略す)を使用し、患者の不快感と介護負担感について検証し、在宅
復帰支援の可能性を検討した。
【方法】K病院の倫理審査を受け承認を得て、対象者、家族へ説明し、書面に
よる同意を得て、平成 27 年 8 月 1 日~ 8 月 31 日に実施。対象者は終日オム
ツ使用中の 3 名(男性 2 名、女性 1 名)
。H 機導入前後各 5 日間、1日 3 回
唾液 I g A 濃度、唾液量測定を実施。看護師、介護士計 20 名に排泄援助に関
するアンケート調査を行った。H 機の導入後の介護状況、臀部の皮膚の状態を
観察した。
【結果】1 事例ごとに経過を観察し、唾液データは、IgA の中央値で集計しグラ
フ化した。アンケート結果は複数の研究者で何度も読み合わせ、カテゴリー化
した。H 機導入前の 5 日間を基礎データとした。H 機導入後 A 氏は、尿漏れ
なく経過。B 氏は 3 日間尿漏れが見られた。C 氏は 5 日間少量の尿漏れが見ら
れた。IgA 量の日内変動は導入前後において同様の形を呈していた。A 氏 C 氏
において 5 日目に他より低い傾向が見られた。また、
皮膚トラブルは全員なかっ
た。
H 機導入前の看護師・介護士のアンケートでは、身体的負担や、援助のため患
者を起こす不安などがあった。
【考察】H 機導入前後の IgA 量の変化、皮膚状態の変化から患者の不快感は導
入前後で差がないと考えた。これは、患者が H 機に慣れていない、期間が短い、
尿漏れがあったことが要因と考えられる。尿漏れによるシーツ交換が少なく経
過できたことは介護者の身体的負担軽減となる可能性があると考える。患者に
合わせて H 機を導入することで、
介護者負担の軽減に繋がることが示唆された。
今後は事例を増やし、介護者負担の軽減により、在宅復帰できるよう検討する。
078
片麻痺患者の間歇自己導尿手技自立に向けての指導
~障害受容と多職種連携を通して~
脳血管疾患患者が病棟で排泄動作が監視不要となるための要因
1)
熱田リハビリテーション病院 リハビリテーション科、2) 中部大学 生命健康科学部
水谷 俊介 1)、大西 勝巳 1)、木下 幸代 1)、岩瀬 幹朗 1)、宮崎 賢二 1)、
稲村 英之 1)、長谷川 龍一 2)
医療法人社団生和会 周南リハビリテーション病院
清水 朝来子、河村 春代、御書 正宏、和田 崇、藤井 真紀子
【はじめに】昨年の本大会で,脳血管疾患(以下,CVA)患者が排泄動作に
おいて監視が不要となるバランス能について報告した.しかし,排泄動作
にはバランス能だけでなく,他の身体・認知機能の影響が報告されている ( 林
ら :2013).【目的】本研究は,排泄動作の監視の有無に影響する要因を身体・
認知機能から抽出し,自立に必要な最低限の下限閾値を示すことを目的と
した.【対象】CVA 患者 64 名(男性 33 名,女性 31 名,平均年齢 75 歳±
10 歳)を対象とした.なお,本研究は当院研究倫理審査委員会の承認を受け,
対象者の同意を得た上で実施した.【方法】身体機能検査にはバランス能と
して The Standing Test for Imbalance and Disequilibrium,筋力では Chair
Stand Test(以下,CS)と握力,下肢柔軟性には Straight Legs Raising Test
を用いた.認知機能検査には改訂長谷川式簡易知能検査 ( 以下,HDS-R) を
用いた.排泄動作は機能的自立度評価法(以下,FIM)を用いて評価した.
対象をトイレ動作及びトイレ移乗の FIM 得点から,監視不要の 7・6 点群
と 5 ~ 1 点群の 2 群に分け,各項目を従属変数として,動作別に判別分析
(Stepwise 法 ) を用いて分析した.【結果】「トイレ動作」「トイレ移乗」別
に求めた判別式から,両動作ともに,CS と HDS-R が抽出された.これらの
下限閾値(的中率)は,トイレ動作で CS が 3.7 回 (89%),HDS-R が 18.1
点 (80%) であり,トイレ移乗で CS が 3.7 回 (84%),HDS-R で 17.9 点 (81%)
であった.【まとめ】排泄動作自立のためには,CS が 4 回以上,HDS-R が
19 点以上の能力が必要であった.本結果が CVA 患者の排泄動作における
監視の有無を判断する指標として役立つとみられる.
- -
145
一般演題(口演)
抄録
【目的】脳梗塞後遺症による左片麻痺患者へ間歇自己導尿を指導し、自
立へ導くことができた事例を受持看護師として経験した。自己導尿の必
要性を受入れ、自立するまでの患者の障害受容過程で学びがあった為こ
こに報告をする。【方法】1、事例紹介 60 歳代女性、配偶者と同居。入
院後間歇導尿を継続しながら、自己導尿手技を獲得し自宅へ退院となる
2、障害の受容過程(コーンの危機モデルを使用)に沿って患者を分析し、
自己導尿手技練習の実際を振返る 3、倫理的配慮:発表にあたり、事例
患者本人に症例の取り扱い、プライバシー保護について文書と口頭で説
明を行い同意を得た。また院内倫理委員会にて審査を受け承認を得た。
【結果】1、ベッド上隣合わせで体位保持・動作確認 2、担当 OT と左手
で可能な動作確認(Br stage2)、ペットボトルにカテーテルを装着する
が使用困難 3、共に鏡を見ながら尿道口を探し挿入できるよう実施の見
守り 4、手技自立後、患者自身からより相応しいカテーテルの希望があり、
カテーテルの変更 5、手技内容と退院後の環境設定について他スタッフ
へ確認し退院【考察】手技練習を今後の不安を軽減するため、2 人でベッ
ドに上がり開始した。カテーテル留置は行いたくない、家族へ迷惑をか
けたくないという患者の希望を受容したことから患者との距離は近くな
り、信頼関係は確立できたと思われる。患者から積極的に手技向上に対
する発言がみられ、手技獲得につながった。しかし結果的に手技獲得は
できたが、羞恥を伴う手技であった為練習は受持看護師のみで実施され、
他スタッフと実際の場面で改善点を模索することが出来なかった。一手
技の習得過程や工夫は受け止め方も含め 1 通りではない。今後の自分の
看護師としての役割・技術向上を目指していく為に、さらに多職種から
の患者の発言等、情報を共有し協働することで患者理解と効果的で適切
な援助方法を確立していきたいと考える。
第6会場
6 -2 院内連 携 ◆ 3 月 4 日( 金) 13: 0 0 ~ 13: 5 4
079
080
医療法人社団輝生会 船橋市立リハビリテーション病院
総合リハビリ美保野病院 医療相談室
地域連携に向けての第一歩 ~回復期病棟 CW の現状調査~
退院支援計画を用いた情報共有の検討
鈴木 映美
冨田 絵理、名久井 弘子
【目的】退院支援の過程では、介護指導場面、高次脳機能障害や BPSD への
対応、ご家族やサービス事業者に対する情報提供・共有場面がある。本研
究では当院 CW が退院支援の過程で感じている課題を把握・分析し、今後
の地域連携に解決必要な課題を明らかにする。
【対象】自宅退院に向けた実践過程で、生活期を見据えた介入場面と家族や
サービス事業者への関わりに携わる当院で働く CW10 名。
【方法】実践で課題を感じる項目を抽出するため、CW10 名へのアンケート
による質的調査を実施。
【結果】プライマリの実践で課題を感じる内容では、排泄動作関連:90%、
家族指導関連:60%、主介護者の介護力関連:50%、環境調整関連:20%
という結果であった。また、展開の中で家族とのゴール設定・ADL の共有
には 100%が課題と感じており、介護指導場面では 80%が課題であるとの
回答があった。さらに病棟内での情報発信・共有では 40%が充分に実施で
きていないとの回答が得られた。
【考察】アンケート結果から、排泄動作の問題には、排泄問題に関する単体
の介入ではなく患者・家族の多岐に渡る情報把握が必要であること、また、
家族とのゴール設定・ADL 共有の問題には、ADL の変化だけでなく障害受
容過程での変化する思いを捉えきれていない可能性があること、更に、病
棟内での情報発信・共有の問題には、担当制という意識を強くもつ余り返っ
て抱え込むことが影響している可能性が考えられた。
【結論】目の前のケア実践で留まらず日々の変化・変動を発信するまでの実
践を定着すること、24 時間の生活支援の中で生活への思いを知ろうとし発
信すること、回復期での生活支援に留まらず生活期で実践・継続可能な生
活動作や介護方法の素地作りを先導すること、これらの 3 つの課題に取り
組むことが地域連携に向けた第一歩である。
【はじめに】回復期リハビリテーション病棟(以下回復期リハ病棟)では
他職種との連携が重要である。その中で医療ソーシャルワーカー(以下
MSW)の動きがわかりにくいとの意見を受け、MSW の支援経過がわかる
よう退院支援計画(以下支援計画)の用紙を作成し、他職種へ情報提供で
きるようにした。導入して 1 年経過した現在、他職種の業務に活用されて
いるかアンケートを行い検討したので報告する。
【対象・方法】回復期リハ病棟スタッフ 109 名(Ns34 名、CW25 名、PT21 名、
OT20 名、ST7 名、栄養士 2 名、経験年数平均 9.7 年)に 9 項目のアンケー
トを実施。
【 結 果 】 回 収 率 100 %。1. 支 援 計 画 を 見 て い る か? ( は い 82 % い い え
18% )、いいえのうち 13 名が支援計画を知らなかった。2. 支援計画はわか
りやすいか? ( はい 79%いいえ 19%無回答 2% )3. どのような目的で支援
計画を見ているか?「退院の方向性を確認したい時」79 名「経過を知りた
い時」61 名。4. 支援計画で MSW の動きがわかるか? ( はい 66%いいえ
31%無回答 3% )5. 支援計画で情報の共有はできているか? ( はい 64%い
いえ 32%無回答 4% )6. どの時期に更新されたら良いか?「家族との面談後」
72 名「サービスプラン決定後」56 名 7. どの欄を一番見ているか?「問題
に対しての対応・退院の準備」56 名、「家族状況・問題点」「面談内容」が
それぞれ 39 名 8. 退院支援計画はあった方が良いか? ( はい 97%いいえ
0% 無回答 3% )9. 自由記載では更新部分や更新時期が不明、見やすくして
ほしい等の意見があった。
【考察とまとめ】支援計画があった方が良い 97%で、他職種に受け入れら
れている事がわかった。また支援計画は、退院後の方向性の確認や、退院
準備のために必要な情報を得るものとして求められていると考えられた。
更新内容を明確にする事や、支援計画の存在自体を知らなかったとの指摘
もあり、わかりやすさにも配慮した改良や、見ていないスタッフへの周知
といった働きかけが必要と考えられる。
081
082
廿日市記念病院 リハビリ技術科
社会福祉法人聖テレジア会 鎌倉リハビリテーション聖テレジア病院 リハビリ
生活混乱期における生活の変化について~回リハと訪リハの連携
を考える~
中川 敬久、末田 高浩、野村 宗史、宍戸 健一郎、河村 考真、
武田 修治、板東 裕子、野田 智子、栗栖 未起、西谷 よし美
セラピストと看護師・ケアワーカーの情報共有について~病棟歩
行練習・ベッドポジショニング・移乗動作練習に着目をして~
テーション部
星野 開、小山 理惠子
一般演題(口演)
抄録
【はじめに】当院は、回復期リハビリテーション(以下、回リハ)病棟と訪
問リハビリテーション(以下、訪リハ)を有している。これまで、入院中
の患者に訪リハスタッフが介入することはなかった。その状況下で、当院
より自宅退院し訪リハを開始した患者において、FIM の点数が低下してい
る症例が散見された。【目的】今までは介入していなかった訪リハスタッフ
が、入院中より介入をはじめた結果として、退院前後の FIM の点数の変化
を比較し、調査した。【対象】当院から自宅退院となり訪リハを 1 ヶ月以内
に開始した症例 32 名(男性 9 名、女性 23 名)で、平均年齢±標準偏差は
79 ± 9.4 歳であった。主たる疾患の内訳は、脳血管疾患 18 名、骨関節疾
患 13 名、その他疾患 1 名であった。
【方法】訪リハスタッフが介入をおこなっ
ていない対象者 24 名(以下、非介入群)と介入を行った対象者 8 名(以下、
介入群)の退院前後の FIM の合計点数の差を、Man-Whitney の U 検定を
用いて検証した。
【結果】退院前後の FIM の合計点数について、非介入群
では 17 名の低下、介入群では 1 名の低下を認めた。また、検証により非
介入群において有意に FIM の低下を認めた。【考察】伊藤によると、「退院
直後は、入院リハにより一旦獲得された機能や ADL が容易に低下しやすい」
とされており、今回の調査結果からも当院においても非介入群では FIM の
合計点が低下した対象者が多かった。また、小内は「生活混乱期には退院
後に新しい環境への適応が困難」と述べており、入院時に行った動作練習
とは異なる環境での生活となる為、介助量が増加したと考えられる。今回
の検証では、介入群では、在宅後の生活を専門とする訪リハスタッフが回
リハスタッフとの情報共有を図ることで、入院中より、より在宅を想定し
たリハビリや家族指導を行うことができたと考えられる。それにより、退
院直後に ADL 能力低下を軽減することにつながったと考えられる。
【はじめに】当院では理学療法実施以外にも,病棟歩行練習(以下歩行練
習)・ベッドポジショニング(以下ポジショニング)・移乗動作練習(以下
移乗)において看護師・ケアワーカー(以下病棟職員)による「病棟リハ
ビリ」を実施し ADL 向上を図っている.今回,上記 3 つの「病棟リハビリ」
における情報共有に関して病棟職員にアンケートを実施し,場面に応じて
求められている項目に相違があることが示唆された為以下に報告する.
【方
法】事前にアンケートの主旨を説明し同意の得られた当院 4 階病棟(43
床;回リハ病棟入院料 2)に従事する常勤病棟職員 19 名を対象とし,独
自に作成した質問紙に無記名で回答を求めた.回答は選択形式で複数回答
可とする項目も含む.回答期間は,2015 年 7 月 27 日~ 8 月 9 日の 2 週
間とした.内容は a 歩行練習,b ポジショニング,c 移乗の各々について
視覚的情報に必要な具体的な項目の回答を求め,百分率を用いて分析した.
【結果・考察】回収率 89.5%(有効回答数 17 名).視覚的情報に必要だと
思う具体的な項目について a は「介助位置」26.6%と最多で,その他「方
法」,「リスク・禁忌」,「歩行距離・頻度・回数」であった .b は「ポジショ
ニングの写真」38.8%,次いで「目的・意図」,「リスク・禁忌」,「方法」
の順であった.c は「移乗時の写真」25.0%,その他「方法」,
「介助位置」,
「リ
スク・禁忌」であった.以上から,場面に応じて求められている情報に相
違がある結果となった.b,c は「場面の写真」が最多だが,a は少数であ
る.これは,a はセラピストによる病棟での介入場面を病棟職員が日常的
に目にする機会が多い為,イメージしやすのではと考えた.上記より,情
報共有において場面に応じた情報を提供することが重要であることが示唆
された.今後は,今回の結果をリハ部全体で共有し相手の求める情報を提
供していきたい.
- -
146
083
084
回復期から在宅生活へ~当院訪問リハビリとの連携を考える~
1)
香川医療生活協同組合 高松協同病院 リハケア部、2) 香川医療生活協同組合 高松協同病院 訪問リハビリ科
薮内 涼太 1)、辻本 裕紀 2)
地域と繋がる認知症のリハとケア(1)
回復期リハ病棟における取り組み
社会医療法人社団 さつき会 総合広域リハケアセンター
竹内 正人
【はじめに】地域包括ケアシステムの確立が目指されている中、回復期リ
ハビリテーション病棟 ( 以下回復期 ) から在宅生活 ( 生活期 ) へのスムーズ
な移行・連携は大きなテーマである。今回、当院訪問リハビリ科との院内
連携についてアンケート調査を実施したので若干の考察を含め報告する。
【方法・対象】訪問リハビリ科 PT・OT・ST の計 8 名、回復期勤務の PT・
OT・ST の計 63 名にアンケート調査を実施。アンケート内容は、両部署間
での連携をどのように感じているかという質問に対し、1. 十分できている
2. まずまず連携できているが改善の余地がある ( 以下まずまず )3. 連携が不
十分である、の 3 点とした。1. の十分できていると答えた方には十分でき
ていると思う点の記述、2. まずまず 3. 連携が不十分であると答えた方には、
まずまず・不十分と思う点を記述して頂いた。【結果】訪問リハビリ科に対
するアンケートでは「まずまず」が 100%であった。対して回復期スタッ
フは「十分に連携できている」が 22%、「まずまず」が 64%、「連携が不
十分である」が 14%であった。訪問リハビリ科スタッフの意見としては、
訪問リハビリの利用目的が不明確といった意見が多く見られた。回復期ス
タッフの意見では、訪問リハビリに対する仕組みの理解不足が多く見られ
た。【考察】訪問リハビリ科スタッフの意見として多かった、「訪問リハビ
リの利用目的が不明確」という点、回復期スタッフの記述として多かった
「訪問リハビリに対する仕組みの理解不足」という点から、回復期スタッフ
の訪問リハビリに対する知識不足が問題と考えられた。また、生活期を経
験したスタッフが回復期チーム内にて介護サービスに関する発信が不十分
といった問題点も考えられた。今後は、今回明確化した課題を解決するた
めのプランを計画・実行し、対象者の生活をよりよい方向に進めることの
サポートができるように取り組んでいきたい。
【はじめに】回復期は、リハビリテーション資源が豊富で、今後地域と繋がっ
ていく可能性は限りなく高い。地域包括ケアの実現に向けて、直接的活動
だけでなく、地域での教育・啓発、組織化活動としての役割が求められて
いると考える。【目 的】地域と繋がる認知症のリハとケアを推進する。【対
象と方法】当院回復期リハ病棟(90 床)での認知症の取り組みを紹介する。
【経 過】疾患別ケアに注目し、疾患特性を踏まえた「基本的ケア」、中核
障害に対するケアに注目し、障害特性を押さえた「自立支援」、関係性への
アプローチに注目し、パーソンセンタードケアに基づいた「その人らしさ
支援」を、ICF(国際生活機能分類)を利用して関わっている。回復期リハ
病棟の全職種(看護、介護、リハ、相談員、事務)必須として『認知症ガ
イドライン』研修2回を作成し実行した。1回目は、認知症アセスメント
チャートを書いて分析することができることを目標としている。2回目は、
パーソンセンタードケアの実践と人を大切にした風土づくりを目標として
いる。また回復期リハ病棟で、本格的な『布のアート』のアクティビティ
を導入した。アクティビティコーディネーターとボランティアコーディネー
ターと地域のボランティア、回復期の介護職を中心としたスタッフで行っ
ている。【結 果】病棟ごと、職種ごとの受講数に格差を生じた。認知症ア
セスメントチャートの記載は浸透してきたが、分析と統合はまだまだ難し
い状態である。パーソンセンタードケアの実践は、回診や診察時に実際に
やってみることが効果的であった。布のアートは、患者家族に好評で、他
の回復期以外の病棟へ拡がった。リハスタッフを中心に、回復期入院中の
認知症のある方々の小グループによるデイが始まった。【考 察】回復期リ
ハ病棟における認知症のリハとケアを推進するための教育、仕組みづくり
を深めて行き、展開して行きたい。
第6会場
6 -3 院内連 携 ◆ 3 月 4 日( 金) 14: 0 0 ~ 14: 5 4
085
086
入浴介助の統一ケアに向けて
社会復帰に向け化粧動作獲得を目指した一症例を通して -介護士とリハビリスタッフとの連携 ‐
三豊市立西香川病院 看護部
前田 瞳
錦海リハビリテーション病院 リハビリテーション技術部
岡野 有希子、北山 朋宏
【はじめに】左被殻出血後、右不全片麻痺を呈した女性に対し、社会復帰に
向け化粧動作獲得を目指しアプローチを行った。介護士と療法士がそれぞ
れ役割をもって協働した結果、化粧動作獲得に至ったので以下に報告する。
【症例紹介】40 代前半。Br.Stage6 ‐ 6 ‐ 6。軽度失語、注意障害あり。婚
約者と同居。最終目標は職業復帰。職業柄、人前に出ることが多く、化粧
は念入りに行っていた。発症後、化粧は行っていなかった。【方法】介護士
主体の化粧練習プランを立案。実践練習は介護士が付き添い、苦手な動作
について療法士に連絡・相談を行った。療法士は介護士からの情報を受け
て、手関節や手指操作などの機能訓練を行った。アプローチ状況は各科担
当者間で共有し、チーム全体で正のフィードバックを行った。【結果】徐々
に化粧が上手になり婚約者との外出の際には化粧をするようになった。『人
前に出るときには化粧をする』という病前の生活習慣を再獲得した。また、
ジムでの運動などにも興味意欲が拡大。退院後は定期的にジムに通ってい
る。【考察】病院職員のなかでも、介護士は、患者と関わる時間が多く、実
際の生活場面で生じた問題に気づきやすい。今回、症例に対し、多職種が
それぞれの特性を活かした役割分担と情報共有を行ったことで目標達成に
繋がったと考える。また、それが興味意欲の拡大の一助となり、退院後の
活動性の拡大に繋がったと考える。職業復帰に向け、外来STでのリハビ
リは継続中であるが、若い世代の女性患者にとって化粧動作の獲得は社会
復帰に向けた重要なきっかけになりうるものであり、他職種による円滑な
アプローチが必要であると考える。
- -
147
一般演題(口演)
抄録
【はじめに】当院回復期リハビリテーション病棟では、在宅退院した方に対
し、電話連絡や自宅訪問を行い、退院後の様子や生活上の悩みを聴取し、
適宜必要なアドバイスを行っている。そのような中で、家族から「ひとり
で風呂に入って、立ち上がるのに困った」という話が聞かれた。そこで、
入院中の入浴についてユニットで再検討する機会を設けた。話し合いの中
で、退院後の入浴は介護保険などを利用する場合が多く、自宅での入浴を
想定した指導が不十分であることに気付いた。また、衣服の着脱介助、洗
体介助ではスタッフにより介助方法や介助量に差があるという意見もあっ
た。今回、入浴介助の方法を統一した取り組みについて報告する。
【方法】入浴介助の方法について、リハスタッフと共に検討した。個人入浴
ボードを作成し、情報共有を行った。その情報をふまえ、本人・家族に入
浴指導を行った。
【結果】介助方法をチーム内で検討し、個々の能力に応じた入浴方法および
環境設定ができた。また、内容を可視化することで、情報共有が行え、スタッ
フによる介助差を軽減できた。在宅でも入院中と同様に入浴ができるよう
に、本人・家族に指導を行い、不安の軽減が図れた。
【考察】回復期病棟では、リハスタッフによる訓練だけでなく病棟生活自体
が退院後の能力維持へとつながるリハビリであると考え、日々のケアに携
わっている。今回、入浴に焦点をあて、入院中から在宅を想定したケアが
できるよう取り組みを行った。今後も在宅生活を見据え、個々に合わせた
支援方法をチーム間で検討し、内容を可視化することで、本人・家族に的
確な情報を伝えることができ、退院後の不安を、より軽減できると考える。
入院生活が在宅復帰に繋がるよう、本人・家族を中心にチームで日常生活
動作の拡大を図っていくことが重要である。
087
088
食事動作検討チームの立ち上げ
介助方法のデモンストレーションにダブレット型端末を用いた
取り組みについて ~情報共有化に向けた一具体的手段の提案~
潤和会記念病院 リハビリテーション療法部
藤本 勇一、上野 信吾、木村 祐二
1)
【はじめに】当院は、446 床(うち回復期リハ病棟 165 床)を有する病院
である。脳卒中を中心とした患者へリハビリテーションを行う中で、更衣
やトイレ動作等の日常生活動作に比べ、食事場面での介入が後手に回って
しまう印象を受ける。例えば不適切な姿勢での食事摂取や食べこぼしの多
い患者、高次脳機能障害により先行期入力が上手く行えず、物品操作等の
動作が拙劣となる患者を見かける。この様な患者へ対し、チーム間での協
議はされるもののなかなか対応が上手くいかない場面や実際に介入する病
棟スタッフへの申し送りも不十分となる事も少なくない。今回、理学療法
士・作業療法士・言語聴覚士 ( 以下 PT・OT・ST) による食事動作検討チー
ムを立ち上げ、食事時の姿勢調整や上肢機能・物品操作評価、食事形態評
価、高次脳機障害への介入方法の検討、介入状況の確認等を実施し、各患
者の動作や介助量の変化を追った。また、各職種の食事動作介入へ対する
意識調査も同時に実施した。【目 的】1) 食事動作への介入促進 ( 姿勢調
整・上肢リーチ動作・物品操作・食形態変更 ).2) 食事介入への意識向上.
3) 病棟への介助方法の周知.【取り組み】1) 食事動作評価・対策の検討.2)
病棟への食事介助方法の申し送り.3) 食事介助量変動のデータ化 ( データ
ベース入力 ).4) 各週のミーティング.5) 各職種への意識調査 ( 食事動作
介入の際に他職種へ求める事 )【結果・考察】今回、食事場面を PT・OT・
ST が同時に観察し評価を行った事で、各患者へ適した専門的アプローチが
早期に実施でき、患者の嚥下状態を含む身体機能障害や高次脳機能障害に
適した環境設定が行えたと考える。また、アンケート調査では PT には姿勢・
耐久性の評価、OT には物品操作等の評価、ST には嚥下機能・食形態の評
価を求める結果が出た。各セラピストの食事場面への意識や疑問点等も知
る事が出来き、今後の食事動作検討チームの方向性の一つの指標とし活動
を続けて行きたい。
社会医療法人清恵会 清恵会三宝病院 リハビリテーション部、2) 神戸学院大
学 総合リハビリテーション学部
畑中 匡 1)、田中 守 1)、林 誠二 1)、寺尾 未来 1,2)、角野 勝彦 1)、
村尾 浩 2)
【目的】介助が必要な症例の個々の動作能力・介助方法を多職種で共有する
ことは、リスク管理および過介助を抑制する上で重要である。当院では、個々
の症例の介助方法デモンストレーション(以下介助デモ)を療法士が病棟
看護師及び看護補助者に対して行い、またタブレット型端末を用いて動画
撮影している。今回はタブレット型端末を用いた動画撮影での情報共有が
有効な手段と成りえるのか調査した。
【対象と方法】介助デモ対象は移乗動作の FIM 点数が4点以下、病棟で介
助方法に困っている方を病棟看護師と療法士で相談し抽出した。2015 年 8
月 18 日~ 9 月 18 日までに実施した男性 3 名、女性 4 名、平均年齢 76.1
± 13.6 歳であり、疾患の内訳は脳血管疾患等 7 名であった。移乗、トイレ
動作介助を療法士が行い病棟看護師、看護補助者に方法・注意点を伝える。
その場面を病棟看護師がタブレット型端末で動画撮影し、介助デモに参加
できなかった職員には、詰め所内で何時でも動画を閲覧できるようにした。
介助デモおよび1週間の自由閲覧期間経過後、受け持ち看護師による FIM
の再評価や病棟看護師および看護補助者にインタビューを行った。
【結果】介助デモ実施後3名が実施前に比べ車椅子移乗、トイレ移乗の項
目に FIM 点数の改善があり、その内訳はベッド上での食事から車椅子座位
での食事に移行が 1 名、オムツ内排泄から定時排泄移行が 2 名であった。
また、タブレット型端末使用の感想や意見等については病棟看護師からは
「申し送りノートによる動作の文章より分かりやすい」「参加できなくても
方法が分かる」「動作手順が分かり易くなった」との意見があった。
【考察】介助デモおよびタブレット型端末の動画を用いた情報共有化で、
ADL 動作能力を引き出すきっかけになった症例が存在した。言葉や文字に
よる従来の情報伝達手段に加えて、タブレット型端末を用いた動画での情
報共有化は試みてみる価値はあると考えられた。
089
090
医療法人 橘会 東住吉森本リハビリテーション病院
石川県済生会金沢病院 リハビリテーション部
家屋評価報告に関する情報伝達方法の見直し
~セラピストと MSW との連携強化のための取り組み~
院内クリニカルパスを使用した脳卒中患者の歩行自立度と
在院日数・転帰との関連性
松尾 俊弥、阪口 達成、本田 真也、小山 明日実、尾崎 由美子、
鬼追 靖子、西野 久司
一般演題(口演)
抄録
【はじめに】当院では PT・OT(以下セラピスト)が中心に家屋評価を実施
している。そして、その内容を書面で MSW に報告し、MSW が家族やケア
マネジャーに報告している。しかし、セラピストと MSW に適切な情報伝
達ができているかどうかをアンケートした結果、セラピストの過半数が行
えているという回答に対し、MSW は不十分と捉えており、両者の認識に
ギャップがあることがわかった。今回、セラピストから MSW への適切な
情報提供を行う目的で伝達方法を見直したので、若干の考察を加えて報告
する。
【対象・方法】MSW にセラピストが報告した家屋評価報告 56 症例(対策
前 28 例、対策後 28 例)の情報提供について評価してもらった。評価項目
は、MSW から要望があった 1)ADL 介助のポイント 2)福祉用具・住宅改
修関係(目的・重要度・選定のポイント・家屋環境に合わせた提案)3)サー
ビス利用の必要性 4)退院後のリハビリの必要性 とし、5 段階での評価と
した。
【結果】家屋評価報告でわかると評価された割合は 3 割程度で、すべての項
目で低い値を示した。その要因として、情報量の不足と曖昧さ、手順・方
法のバラツキ、PT・OT どちらかのみの報告、個人のコミュニケーション
スキルの不足などが挙げられた。そこで、家屋評価報告書の内容を変更、
報告手順・方法についての勉強会実施、事前にセラピスト同士で話し合え
る機会を増やすなどの対策を実施した。その結果、対策前と比べてすべて
の項目で向上し、情報伝達に関するギャップも縮まった。
【考察】セラピストは MSW が家族等に説明することを意識して、どのよう
な福祉用具や住宅改修がなぜ必要かを具体的に伝える必要がある。それに
は、MSW が要望している情報を評価し、わかりやすく伝える工夫や可能な
限りスタッフが集まって直接話せる機会を作ることが必要である。又、情
報を提供する側と受け取る側、両者の意見を取り入れ、システムを見直し
ていくことも大切であると思われる。
東本 知華、岸谷 都、西谷 厚、梶澤 祥子、丁子 雄希
【はじめに】
当院では、他の急性期病院より転院した脳卒中患者に対し、ゴール設定を他
職種で共有するために院内クリニカルパスを使用している。入院時の状態か
ら、リハビリ医の退院時の予後予測を元に、歩行→歩行(以下、歩歩)
、車
椅子→歩行(以下、車歩)
、車椅子→車椅子(以下、車車)のいずれかに設
定し、担当者間で ADL や介護保険申請等の進捗状況を確認し、退院までの
支援を行っている。今回、当パスを使用し退院支援を行った患者に対し、そ
の傾向を検討した。
【対象と方法】
他の急性期病院より当院回復期病棟に入棟し、平成 26 年 4 月~平成 27 年
3 月に退院した脳卒中患者 44 名を対象とした
(年齢:63.3 歳± 13.3 歳、
性別:
男性 28 名、女性 16 名)
。対象者は急性期病院に再転院となった男性 1 名を
除外し、歩歩群 12 名、車歩群 23 名、車車群 8 名である。退院時の歩行自
立度と在院日数・転帰について比較し検討した。
【結果と考察】
歩歩群・車歩群・車車群において、修正自立以上の歩行獲得者は 91.7%・
56.5%・0%であった。ただし、見守り歩行獲得者を含むとそれぞれ 100%・
87%・0%であり、これは入院時の予後予測と高い一致率を示した。特に車
歩群に関しては見守りでの歩行獲得も視野に支援していくべきだと考える。
在院日数は車車群、車歩群、歩歩群の順に有意に長い傾向があった。車車群
は歩行の獲得が困難であり、退院後の介護負担が大きくなるため、家族が今
後の生活をイメージしにくいことが理由として考えられる。
在宅復帰率は歩歩群 91.7%、車歩群 62.5%、車車群 25%であり、歩行能力
との関連が大きいと考えられる。しかし、歩歩群において施設へ転所となっ
た症例が 1 名、車車群において在宅復帰が可能であった症例が 2 名いた。こ
れらの症例は家族の協力や高次脳機能の影響が深く関連しており、歩行能力
の獲得だけでなく、環境的要因や高次脳機能の影響も在宅復帰において重要
な因子となる可能性が示唆された。
- -
148
6 - 4 摂食・嚥 下・栄養・口腔ケア◆ 3 月 4 日( 金) 15: 0 0 ~ 15: 5 4
091
急性期病院退院時の食形態・体位と回復期リハビリテーション病
院の初回嚥下造影検査の結果得られた望ましい食形態・体位との
違い
1)
熊本機能病院 神経内科・リハ科、2) 熊本機能病院 栄養部
桂 賢一 1)、徳永 誠 1)、時里 香 1)、田中 聖代美 2)、渡邊 進 1)、木原 薫 1)、
中西 亮二 1)、山永 裕明 1)
【目的】急性期病院退院時の食形態・体位(以下 X)と回復期リハ病院の初
回嚥下造影(VF)検査の結果得られた望ましい食形態・体位(以下 Y)と
の違いを明らかにすることを目的とした.【対象と方法】 平成 20 年 4 月
~ 25 年 8 月に入院,発症から入院までの日数が 8 ~ 60 日,初回 VF 検査
が転院 7 日以内という条件で脳卒中患者 369 例の患者を対象とし,1 群:
X が Y より常食・体位 90 度に近い,2 群:X と Y が同じ,3 群:Y が X よ
り常食・体位 90 度に近い,の 3 群に分けて,1.急性期病院退院時の食
形態・体位と望ましい食形態との違い,2.1 群と 3 群の比較,3.急性
期病院間の比較を行った.【結果】 VF 検査を行った時期は,転院から平均
4.2 ± 1.9 日であった. 患者数はいずれの食形態,体位でも 2 群が多く,
次いで 3,1 群の順であった.1 群と 3 群の 2 群間比較では,急性期病院
入院中の肺炎の有無,転入時 CRP 値,転入後 7 日以内の抗生剤使用の有無
のいずれも有意差を認めなかった. 病院間比較では,1・2・3 群の割合,
急性期病院入院中の肺炎の有無,転入時 CRP 値,転入後 7 日以内の抗生剤
使用の有無,のいずれも有意差を認めなかった.【考察】 急性期病院退院
時の食形態は適切である場合が多く,X と Y が異なる場合には急性期病院
で食形態を低めに設定している場合が多いことが明らかになった. 有害
事象は 1 群が 3 群よりも多いと予想したが,有意差は明らかでなかった.
また望ましい食形態よりも極端に高い食形態の患者がいなかった.このこ
とが有害事象の少なさにつながったと考えられた. 急性期病院間での有
意差はなかった.脳卒中地域連携クリティカルパスを運用しており,脳卒
中医療の均てん化を図っていることが要因と考えられた. 今後,急性期
病院退院時と回復期リハ病院での VF 検査結果との違いが大きかった場合
には,急性期病院に情報を提供し,急性期病院での判断根拠を確認したい
と考えている.
092
リハたいむゼリー ® の試験的運用について
医療法人ひまわり会 中洲八木病院
吉田 浩章、山本 晃平、井関 博文、倉田 浩充、日浅 匡彦
【目的】リハを行っている障害者や高齢者に対し分岐鎖アミノ酸含有量の
高いリハたいむゼリー(株式会社クリニコ)を摂取し、身体機能、栄養状
態の経時変化を調査する。
【方法】平成 27 年 6 月 1 日から 6 月 20 日に当
院回復期リハ病棟入棟者をリハたいむゼリー摂取対象とした。重度低栄養
(80 歳代女性、大腿骨転子部骨折)軽度低栄養(80 歳代女性、第 8 胸椎
圧迫骨折)栄養良好 50 代男性、胸腰椎圧迫骨折)を比較対象とした。研
究期間は 7 月 1 日から 8 月 31 日の 2 ヶ月間とし、身体機能及び栄養状態
の評価として、1. 膝伸展筋力 2.FIM3. 体重 4.BMI5. アルブミン値を測定し
た。介入として、リハたいむゼリーを毎日運動後に 1 回 1 袋 120g 摂取し
た。尚、本研究における目的と方法を十分に説明し書面にて同意を得たの
ち実施した。【結果】初期評価→最終評価とする。重度低栄養:1. 測定困難,
2.28 点 → 18 点 3.52.8kg → 46.83kg4.22.3 → 19.7,5.2.3g/dl → 2.3g/
dl。 軽 度 低 栄 養:1. 右 4.9kgf → 8.3kgf 左 3.0kgf → 6.6kgf,2.106 点
→ 117 点,3.27.5kg → 28.1kg,4.13.0 → 13.4,5.3.0g/dl → 3.6g/dl。栄
養良好:1. 右 32.7kgf → 45.9kgf 左 30.7kgf → 44.3kgf,2.58 点→ 124 点,
3.61.4kg → 62.1kg,4.22.0 → 22.2,5.3.7g/dl → 4.4g/dl。期間中食事量
平均は、重度低栄養:主食副食 1 割程度、軽度低栄養:主食副食 8 割程度、
栄養良好:主食副食 10 割程度であった。【考察】今回試験的運用であり、
ゼリー摂取群と非摂取群の比較も実施していなく、有用性の検討はされて
いない。リハたいむゼリーの目的は水分補給と筋力改善を促せるアミノ酸
補給である。一定の栄養状態が確保できていれば筋力向上から身体活動量
の増加、食事摂取量の増加と正の相乗効果が期待できる。しかし今回重度
低栄養の症例ではゼリー摂取有無に関わらず、リハ効果は得られていない、
基礎エネルギー量の不足状態で運動をすると、低栄養が悪化すると報告が
あり、今後症例数を増やし、有効性を検証していきたい。
093
094
西広島リハビリテーション病院
1)
回復期リハビリテーション病棟入院の脳血管障害患者における栄
養障害の有無と年齢別の FIM 改善の相違
藤高 祐太、中臺 久恵、佐藤 梨央、渡邉 光子、田中 直次郎、
岡本 隆嗣
第6会場
当院回復期リハビリテーション病棟における疾患別 BMI の推移
からみた今後の課題
かみいち総合病院 南4階回復期リハビリテーション病棟 栄養ワーキンググ
ループ、2) かみいち総合病院 南4階回復期リハビリテーション病棟
【目的】高齢者が低栄養である割合は回復期リハビリテーション病棟で最
も多いと報告されており、リハビリテーションを実施する上で栄養管理は
重要である。当院栄養ワーキンググループでは、栄養状態を把握するため
入院患者を対象に週 1 回体重測定を実施している。今回、体重測定を基に
BMI を算出し、各疾患の入院中の栄養状態の経過と今後の課題について検
討した。【方法】平成 26 年 6 月 1 日~平成 27 年 5 月 31 日の間に入院し
ていた 65 歳以上の高齢患者 170 名を対象に入棟時と退院時の BMI、在院
日数、FIM 利得、FIM 効率を調査した。各疾患別入棟時 BMI を 18.5 未満
と以上に分け、比較検討した。【結果】対象 170 名、女性 115 名、男性 55
名。平均年齢 81.4 ± 7.0 歳。整形外科疾患 118 名、脳血管疾患 32 名、廃
用症候群 20 名。入院時 BMI は整形外科疾患 22.5 ± 4.1、脳血管疾患 21.1
± 3.2、廃用症候群 19.3 ± 3.2 であった。入院時 BMI が 18.5 未満であっ
た割合は整形外科疾患 17%、脳血管疾患 25%、廃用症候群 30%であった。
BMI18.5 未満、以上では、在院日数、FIM 利得、FIM 効率を比較し各疾患
とも有意差を認めなかった。退院時 BMI が低下した割合は、BMI18.5 以上
の場合では整形外科疾患 69%、脳血管疾患 71%、廃用症候群 64%であっ
た。BMI18.5 未満でも整形外科疾患 55%、脳血管疾患 25%、廃用症候群
50%であった。
【考察】退院時の BMI が減少していた割合が多いことから、
リハビリと栄養とのバランスに対する認識が不十分であったと考えられる。
多職種で栄養状態を常に把握し、適切な量・質のリハビリを提供できるシ
ステムが必要である。
- -
149
一般演題(口演)
抄録
【目的】脳血管障害患者の栄養状態は Functional Independence Measure(以
下 FIM)の改善に影響すると言われている。しかし,栄養障害の有無と年
齢を層別化して FIM の改善の相違を検討した報告は少ない。本研究は回復
期リハビリテーション病棟に入院した脳血管障害患者における栄養障害の
有無と年齢を層別化して FIM 改善の相違を調査した。【方法】対象は 2013
年 5 月から 2015 年 2 月に当院回復期リハビリテーション病棟入院中の
60 歳以上の脳血管障害患者とした。入院時の MNA-SF が 8 点未満のもの
を栄養障害群,8 点以上のものを栄養良好群とした。また,各群を年齢で
60 歳台,70 歳台,80 歳以上と層別化した。ADL の評価として FIM を測
定し,入院時 FIM と退院時 FIM,および FIM effectiveness[ 退院時 FIM- 入
院時 FIM/(126- 入院時 FIM)] を算出した。各群の FIM effectiveness にお
いて kruskal-Wallis 検定を行い,事後検定は Steel-Dwass 法を用いた。統
計解析には Statcel 3 を用い,統計学的有意水準は 5%とした。本研究は当
院の倫理委員会の承認を受けて実施した。【結果】MNA-SF により,栄養障
害群 252 名と栄養良好群 81 名に分類された。FIM effectiveness は栄養良
好群では年齢別による差が認められなかったが,栄養不良群では 80 歳以
上は 60 歳台,70 歳台と比較して有意に低かった。また,栄養不良群は栄
養良好群と比べ 70 歳台,80 歳以上で FIM effectiveness が有意に低かった。
【考察】FIM effectiveness は栄養良好群では有意差を認めなかったが,栄
養不良群では高齢になると有意に低くなった。栄養障害は FIM の改善に影
響すると言われているが,その影響は高齢になるにつれてより大きくなる
と考えられる。このことより,回復期リハビリテーション病棟入院中の脳
血管障害患者において効率的なリハビリテーションを行うには,高齢にな
るほど栄養状態を考慮しながらプログラムを立案する必要があると考えら
れる。
森 進之介 1)、土井 淳詩 1)、森 真由美 1)、森田 慎也 1)、沖山 正子 2)、
新林 正子 2)、野上 予人 2)
095
096
小脳の広範囲梗塞にも関わらず 3 食経口摂取に至った症例
1)
とろみ均一化に「とろみ調整表」が果たす役割と限界
札幌西円山病院 リハビリテーション部、2) 札幌西円山病院 診療部、3) 札幌
西円山病院 リハビリテーション部、4) 札幌西円山病院 リハビリテーション部
瀬戸 友里恵 1)、橋本 茂樹 1)、伊藤 隆 1)、櫻井 貴之 1)
【目的】小脳の広範囲梗塞により嚥下障害を呈した症例を担当する機会を得
たので報告する。
【対象】50 歳代、男性 疾患名:脳梗塞【現病歴】平成
26 年 5 月に左後頭葉、両小脳梗塞によりステント留置、開頭減圧術を施行。
同年 7 月リハビリ目的で当院へ転院。FIM:27/126 点、N-ADL:1/50、
NM スケール:7/51、FBS:3/56【経過】失調性構音障害 (+)、明瞭度 :4。
口腔器官の粗大運動や筋力は保たれているが協調運動が困難であった。入
院時は経鼻経管栄養、急性期のパスでは経口摂取は困難と言われていた。
初回嚥下評価は RSST:1 回、MWST:Pro 3b。覚醒状態に変動あり。声掛
けで自己喀痰が可能だったが唾液や痰の咽頭残留がありサクション頻回な
ため、間接訓練中心に介入した。1 ヵ月後、VE を実施し直接訓練を開始し
た。2 ヶ月後、胃瘻増設で転院しマーゲンチューブ抜去となった。3 ヵ月後、
VF を実施し有効であった頸部右回旋の代償法で介助にて 1 食開始した。そ
の後 2 週間で 2 食となり、4 ヵ月後に 3 食となった。5 カ月目に車椅子で
の食事が可能となったが上肢の失調が強く自力摂取は困難であった。食形
態はトロミ水とゼリーから開始し、最終的には重湯ゼリーと五分菜まで段
階的に向上できた。水分は胃瘻との併用で摂取となった。【考察】本症例は
広範囲な脳梗塞を認めたが小脳梗塞の主症状と成り得るめまいや悪心はな
く、早期の直接訓練が可能と考えられた。しかし覚醒の低さに加え、咽頭
感覚の低下や嚥下関連器官の失調症状により、一連の嚥下動態の協調運動
が困難なために誤嚥のリスクが高い状態であった。そのため間接訓練から
開始し適宜 VE、VF で指標を得た。訓練では口腔器官の粗大運動や筋力の
向上だけではなく、直接訓練を重視し協調運動を積極的に促すよう心掛け
た。加えて機能回復が望めた理由としては若年であること、強い咳嗽力な
ど呼吸機能が保たれていたこと、胃瘻増設に伴いマーゲンチューブの刺激
が減ったことが考えられる。
社会医療法人高橋病院 リハビリテーション科
植田 剛、石井 江利加、浅井 諒子、高橋 肇
【はじめに】
当院ではとろみ均一化を目的として、水分とろみ対応の患者に対し、使用す
る容器・水分量・とろみ調整剤の分量・飲水時の注意点といった情報を共有
するツール「とろみ調整表(以下とろみ表)
」を作成してきた。しかし、現
状ではとろみの性状にばらつきが生じている様子が散見されていた。そこ
で、とろみ均一化におけるとろみ表の有用性の検証と改善に取り組んだので
報告する。
【方法】
当院回復期病棟職員(以下 Ns・CW)34 名・リハビリテーション科職員(以
下 Th)51 名に対し、とろみをつける機会・不安・とろみ表利用の有無につ
いて二項式単一回答形式、とろみ表のわかりやすさについて 4 段階回答形
式、その他とろみ調整方法全般に関する意見について自由回答形式にてアン
ケートを実施した。アンケート結果からとろみ表の有用性・改善点を検討し、
その内容を基に改訂版を作成した。
【結果】
有効回答率は 80%であった。Ns・CW の 90%がとろみをつける機会がある
のに対し、Th は 57%と差をみとめた。とろみをつける機会がある Ns・CW
の 5%、Th の 59%がとろみ調整に不安があると回答した。とろみ表はとろ
みをつける機会がある職員の 100%が使用していた。使用する容器・水分量・
とろみの目安について全体の 40%以上が「わかりにくい」と回答しており、
写真を多用したとろみ表改訂版を作成して改善を図った。その他、
「ダマに
なることがある」
「とろみの目安がいまいちわからない」
「正しく行えている
か不安」といった意見を得た。
【考察】
とろみ表は使用率 100%とツールとして浸透していることが示唆された。
わかりにくいとされた点の改善によってとろみ調整方法の統一が図られ、均
一化に有用であると考えられた。反面、知識・技術・経験の不足には対応し
きれておらず、とろみ表の限界が示された。とろみ均一化の達成に向けて、
ツール作成だけではなく学習会等の取り組みも併せて行っていきたい。
6 -5 摂食・嚥 下・栄養・口腔ケア◆ 3 月 4 日( 金) 16: 0 0 ~ 16: 5 4
097
099
嘔吐・下痢に対する経管栄養投与法の検討
1)
第6会場
回復期リハビリ病棟におけるサルコペニア対策研究チームの活動
と意識付け
聖仁会西部総合病院 脳神経外科、 内科、3) 病棟看護部
2)
高野 尚治 1)、細渕 朋志 2)、田口 治 2)、村山 晃 2)、西村 直久 2)、
白井 奈美 3)、日野 めぐみ 3)、宗形 美智子 3)
医療法人榮昌会 吉田病院 回復期リハビリ病棟
一般演題(口演)
抄録
<はじめに> 脳血管障害では、意識障害の遷延から嚥下不能と評価され
長期経管栄養となる症例も多い。経管栄養は経静脈栄養に比べて栄養吸収
過程が生理的ではあるが、嘔吐・下痢などの消化器合併症の発症を常に伴っ
ており、経管栄養を中断することも多い。嘔吐・下痢に対して従来の白湯
の混合投与法や後投与法から、栄養剤の先に白湯を投与する水先投与法に
変更して改善がみられたので報告する。
<対象・方法> まず、代表症例で白湯と経管栄養剤の胃内滞留時間の違
いをガストログラフィンマーカーの透視下法と腹部エコー検査で比較した。
次に、療養病棟と回復期リハビリ病棟で従来の混合法および後投与法を行っ
ている 16 症例が対象症例で、1 ヶ月間での嘔吐の有無と便性状をブリスト
ル便形状スケールを用いて評価し、その後の 1 ヶ月間を水先投与法に変え
て比較検討した。これらの検討は患者家族の承諾下に行っている。
<結果> 代表症例で白湯と経管栄養剤の胃内滞留時間を透視下で計測し
たが、白湯の胃内滞留時間は短く、2 倍以上の滞留時間の差がみられた。
腹部エコー検査でも同様の結果となった。混合法および後投与法の 16 症
例で嘔吐を 4 例に認め、水先投与法にして 1 ヶ月間で嘔吐の症例は無かっ
た。また便性状にも改善がみられ、排便回数も減少した。
<考察> 水先投与法は胃内滞留時間を短縮することができ、胃内容量を
減らし、胃内圧の低下から逆流防止と嘔吐を減らすことが出来る。水先投
与法にして便性状の改善、排便回数の減少がみられたのは、従来の栄養剤
投与法では希釈され粘度低下により胃の通過が速まり下痢を誘発すると考
えた。また遷延性意識障害の症例では自律神経機能低下を伴っており、消
化管蠕動異常が下痢の誘因である可能性がある。水先投与の白湯が刺激と
なり蠕動運動の改善、消化機能改善の刺激になったと考える。今後対象症
例を増やし有意性を検討したい。
中川 恵理子、菅原 弘子、清水 淳也、藤本 若菜、堀川 早苗、
口之町 やよい、尾中 亮太、清水 麻美、夏目 重厚、富永 正吾
【目的】回復期リハビリテーションにおいては、高齢者のサルコペニアは、
適切な運動負荷を加えたつもりでも、進行性に骨格筋量と骨格筋力を低下
させるので、効率的なリハビリテーションを遂行するにあたって大きな課
題である。サルコペニアの原因は、1. 加齢性 2. 活動性(不使用)3. 疾患
関連 4. 栄養関連の4つがあげられる。我々は、ともすると見過ごされが
ちなサルコペニアの4原因について、全患者対象に、サルコペニアの存在
に意識的に取り組むため、病棟内で “ サルコペニア対策研究チーム ” を立
ち上げ医学的管理・看護ケア計画・リハビリ訓練計画のなかで検討してき
たので報告する。【方法】サルコペニア対策研究チームの構成メンバーは、
看護師・作業療法士・言語聴覚士・理学療法士・医師で構成されている。
サルコペニアの評価方法、毎週のリハビリテーション回診カンファレンス
には全職種参加で実施、データのチェックを実施。評価項目は、血液検査
データ(CRP, アルブミン)、握力(健側)、四肢周径などである。院内の医
師・看護師・管理栄養士・言語聴覚士からなる NST( 栄養サポートチーム )
と連携し必要時に対応している。
【結果】2015 年の患者のデータをまとめた。
関与した職員へのアンケートで、サルコペニアの意識付けの状況を評価し
た。【考察】サルコペニアの病態が職員に周知されることにより、適切なリ
ハビリテーションの遂行に向けて、医学的管理や栄養状態、不使用状態へ
の意識付けが推進された。サルコペニアの知識を多職種で共有することに
より、減量療法、羸痩状態、リハビリ訓練の運動負荷などでのリスク管理
がさらに充実してきた。特に、栄養状態の管理は、サルコペニア、褥瘡予防、
脳の活動性の向上、患者の QOL につながる重要な因子であることが改めて
確認された。
- -
150
100
101
回復期における障害部位別の経管栄養離脱率の比較から見えた
課題
一般社団法人 巨樹の会 八千代リハビリテーション病院 リハビリテーション部
山田 乃理子、伊藤 進一
【はじめに】脳血管障害では、さまざまな障害部位により摂食嚥下障害を
きたす。当院の入院患者の中でも経管栄養を必要とする非経口摂取患者も
多くいる。そこで、障害部位別による経管栄養離脱率の差、経管栄養離脱
を延長させる原因の追究を目的に、経管栄養離脱率、離脱までの日数を比
較し、検討した。その結果を、ここに報告する。【対象と方法】平成 24 年
11 月~平成 27 年 3 月までの入院患者のうち、入院時に非経口摂取であっ
た 45 名 ( 急性増悪等で転院した患者を除く ) を対象とした。
1) 障害部位を両側テント上障害群、一側テント上障害群、脳幹障害群に分
類。経管栄養離脱率を算出し、障害部位間を Fisher の正確確率検定を用い
比較した。
2) 一側大脳皮質障害患者のうち、損傷部位が前頭葉を含む群、含まない群
に分類し、離脱までの日数を算出し、Mann-Whitney の U 検定を用い比較
した。1)2) ともに有意水準は 5% 未満とした。
本調査は後方視的となる為、個人情報の取り扱いに十分配慮した。【結果】
1) 離脱率は両側テント上障害では 64% (7/11 名 )、一側テント上障害で
は 68% (19/28 名 )、脳幹障害では 67% (4/6 名 ) であり、障害部位間で
の有意差を認めなかった (P > 0.05)。
2) 一側大脳皮質障害患者のうち、前頭葉を含む障害群では 100.5(SD46.9)
日、含まない群では 28.2(SD18.2) 日であり、有意差を認めた (P < 0.01)。
【考察】 当院の経管栄養離脱率は、障害部位間で差を認めなかった。一般
的に、脳幹障害は改善度が様々であり、一側テント上障害は両側テント上
障害より改善率が高いと言われている。その為、テント上一側障害患者は
更なる改善を見込めたはずであると考える。よって、今後、離脱できなかっ
た詳細な分析が必要である。また、一側大脳皮質障害患者のうち前頭葉を
含む群と含まない群で、離脱までの日数に差があることから、前頭葉機能
低下は経管栄養離脱の延長の原因の一つであると考える。
呉記念病院回復期リハビリテーション病棟入院患者の口腔内状態
の実態調査その 1 ~ OHAT(ORAL HEALTH ASSESSMENT TOOL)
を用いたアセスメント~
1)
医療法人社団有信会 呉記念病院 歯科、2) 福岡歯科大学 高齢者歯科学分野
栗原 茂 1)、水野 恵 1)、道木 有香 1)、脇 のり子 1)、牧野 路子 2)、
内藤 徹 2)
<目的> 近年、回復期病棟への歯科介入が注目されている。しかしな
がら、回復期の口腔管理・ケアの取り組みの報告は少ないのが現状である。
我々は回復期病棟において実態調査を行ったので報告する。<対象と方
法> 医療法人有信会呉記念病院回復期リハビリテーション病棟(回復
期リハ)は 50 床で院内に歯科が併設されている。調査対象は平成 27 年
9 月 14 日現在に当院回復期リハの入院患者 32 名。年齢、性別、歯科受
診の有無、歯科治療内容、入院に至った主たる疾患、病棟でのケア方法、
FIM、口腔内状況について調査を行った。口腔内状況のアセスメントには
OHAT を用いた。<結果> 対象の平均年齢は 78.6 ± 8.91 歳、男性 14 名、
女性 18 名であった。入院患者 32 名のうち 13 名(40.6%)が歯科を受
診した。そのうち 4 名が新義歯作製、5 名が義歯調整、1 名が齲蝕処置、
3 名が歯周病処置であった。FIM の合計平均点は 71.6 ± 31.19 であった。
口腔アセスメントは昼食後から夕食までの間に行った。OHAT の合計平
均点は 4.5 ± 1.98 であった。25%の患者は無歯顎で、義歯を使用して
いる患者は 62.5%であった。義歯は 3%がやや不良、28%が不良であり、
残存歯は 47%がやや不良、16%が不良、口腔清掃は 66%がやや不良で
あった。<考察> 回復期リハ入院患者の口腔内に種々の問題が存在す
ることが分かった。一方で歯科受診率は 40.6%と半分に満たなかった。
治療では義歯関係が最も多く、義歯に問題がある患者は 1 名を除いて受
診があった。齲蝕治療や歯周治療が必要な患者の多くは受診に至ってい
なかった。回復期リハは急性期から在宅や施設につなぐ場所である。口
腔内をより良い状態で維持管理することは、摂食機能や栄養状態、コミュ
ニケーション能力を維持するうえでも非常に重要であると考える。今後
は入院から退院までの推移も追っていく予定である。
102
当院で提供している食事エネルギー量上限 2000kcal が当院回復
期リハビリテーション病棟入院若年男性患者において妥当である
かの検討
1)
医療法人光臨会 荒木脳神経外科病院 リハビリテーション部、2) 医療法人光臨会 荒木脳神経外科病院 食養部、3) 医療法人光臨会 荒木脳神経外科病院 診療部
近江 絵梨 1)、佐藤 優子 1)、今田 直樹 1)、井口 由香梨 2)、藤井 辰義 3)、
沖 修一 3)、荒木 攻 3)
- -
151
一般演題(口演)
抄録
【目的】当院は脳卒中専門病院であり、提供する食事総エネルギー量の上限
を 2000kcal と設定している。若年者の入院は多数あるが、若年男性に対
し 2000kcal で 1 日の全エネルギー消費量 ( 以下、TEE) を満たしているか、
回復期病棟入院患者で検討した。
【方法】年齢別の平均身長・体重から Harris-Benedict の式を用いて、ス
ト レ ス 係 数 1.0、 活 動 係 数 1.5 と す る と、64 歳 以 下 の 男 性 で は TEE が
2000kcal 以上となる。H26.4 ~ H27.3 までの入院患者 130 名のうち、64
歳以下の男性は 25 名。その中で 2000kcal 全量摂取していた 8 症例を、移
動手段や活動量、体重や身体組成 ( 生体インピーダンス法 , InBody S10,
Biospace 社 ) を基にその妥当性を検討した。
【結果】退院時移動手段は、独歩 7 名、車椅子駆動1名。リハビリテーショ
ンは全員 1 日平均 8 単位以上個別リハビリテーション実施。体重は増加 5
名、減少 3 名、筋肉量は増加 6 名、減少 2 名、体脂肪量は増加 2 名、維持
~減少 6 名。体重増加 5 例中 3 症例は筋肉量増加、体脂肪量は維持。残り
2 症例は筋肉量・体脂肪量ともに増加し、うち 1 症例は入院時 Body mass
index (BMI) が 14.9 と極度の痩せ型、もう 1 症例は高次脳機能障害の影響
から活動量の変動や間食過剰摂取あり。筋肉量減少の 2 症例は、特に麻痺
側上下肢で筋肉量が減少したが、退院時 skeletal muscle mass index (SMI)
は、基準値範囲内であった。
【まとめ】8 症例中 7 症例は TEE が摂取出来たと考える。筋肉量減少例に
ついては麻痺側の機能回復程度が影響したと考える。
脳卒中発症患者には、何らかの生活習慣病に罹患していることが多く、体
脂肪量減少や糖尿病・高血圧症等のため、食事内容の制限が必要な場合が
多い。今後も入院患者の体重や体組成変化、併存疾患を考慮しながら、食
事内容や栄養補助食品の追加などの検討が必要である。
7-1 歩行・装 具・車 椅 子 ◆ 3 月 4 日( 金) 11: 0 0 ~ 11: 5 4
103
回復期リハビリテーション病棟における車いすレンタルシステム
導入後の現状報告 ~第 2 報:当院オリジナルシーティング評価
表導入前後での運用効率の比較~
1)
第7会場
104
回復期脳血管障害患者における注意機能と Dynamic gait index
との関連
1)
医療法人社団苑田会 竹の塚脳神経リハビリテーション病院 リハビリテー
2)
ション科、
医療法人社団苑田会 苑田会リハビリテーション病院 リハビリテー
苑田会リハビリテーション病院 リハビリテーション科、2) 苑田第三病院
伊藤 貴史 1,2)、佐瀬 隼人 1)
ション科
【はじめに】 当院では福祉用具レンタル会社と契約し,車いすなどをレン
タルするシステムを導入している.昨年の本研究大会にてシステム開始半
年経過時点での車いす処方に関する状況報告を行った.システム導入直後
はレンタルする基準が曖昧であったためレンタル開始時期や期間にばらつ
きが大きい結果であった.そこで現在は,当院オリジナルのシーティング
評価表(以下,評価表)を作成し,適した患者に適した期間,車いすをレ
ンタルできるように取り組んでいる.今回は,本システムの運用効率をさ
らに向上させるために,評価表導入前後のレンタル状況を調査したので報
告する.【方法】 2013 年 1 月~ 2015 年 3 月に当院に入院し,車いすを
レンタルした患者 87 名を対象とした.対象者を評価表が導入された 2014
年 8 月以前に入院した者の群(導入前群)と以後に入院した者の群(以下,
導入後群)に分類した.調査項目は,入院時 FIM,車いす回収時の FIM(以
下,回収時 FIM),FIM 利得,レンタル期間とした.入院からレンタル開始
までの日数(以下,開始日数),レンタル期間,FIM について群間に差がな
いか比較検討した.なお,全患者または家族に対して,評価記録を学会な
どで使用する旨を説明し同意を得ている.【結果】 各日数(平均±標準偏
差)は,開始日数は,導入前群 21.0 ± 21.9 日,導入後群 23.4 ± 12.1 日,
レンタル期間は,導入前群 97.8 ± 52.6 日,導入後群 75.4 ± 39.6 日で,
ともに対応のない t 検定の結果,両群間に有意な差を認めた.入院時 FIM,
回収時 FIM,FIM 利得に関しては,両群間に有意差は認めなかった.【考察】 評価表を導入した成果として,開始日数,レンタル期間に関してばらつき
が減少した.レンタルした車いすをどのような患者がどのような時期に必
要であるか見極めることが当院で統一化できてきているためと思われる.
平澤津 隼人 1)、中村 学 1)、鈴木 達矢 1)、福岡 宏之 1)、末永 達也 1)、
伊藤 貴史 2)
【目的】脳血管障害(以下 CVA)患者の転倒要因に歩行中の二重課題処理能力
が挙げられ、その評価として Dynamic gait index(以下 DGI)が有用とされる。
また、
歩行時の二重課題処理能力には注意機能が関与するとされている。今回、
二重課題処理能力を DGI にて評価し、注意機能との関連を検証し、注意障害
を有する患者の歩行能力評価の一助とすることを目的とする。
【対象・方法】入院中の初発 CVA 患者 17 名(男性 12 名、女性 5 名、平均年
齢 58.7 歳)を対象とした。対象は指示理解が可能で、歩行補助具の使用を問
わず、10m 歩行可能な方とした。基本属性として年齢、性別、疾患名、高次
脳機能障害の有無、麻痺側ブルンストロームステージを抽出した。歩行能力
評価として DGI、10m 歩行速度(以下 TWT)
、歩行自立度、FBS、注意機能
として TMT-A・B、Δ TMT(TMT-B - TMT-A)
、認知機能として MMSE を用
い評価した。DGI と TWT、FBS、TMT-A・B、Δ TMT、歩行自立度に関連が
あるかスペアマン順位相関係数にて分析した。統計解析は R 2.8.1 を用い、有
意水準は 5% とした。ヘルシンキ宣言に基づき、
対象者には説明と同意を得た。
【 結 果 】DGI 得 点 と 各 指 標 の 分 析 の 結 果、FBS:0.71、TMT-B:-0.44、 Δ
TMT:-0.54、歩行自立度:0.68 において有意な相関を示した(p < 0.05)。
TWT、TMT-A では相関を認めなかった。
【考察】結果より、Δ TMT が DGI と有意な相関を示した。Δ TMT は TMT-B
から選択的要素を取り除いたもので分配性注意を抽出した評価である。歩行
機能と二重課題処理能力の関連では、注意機能の中でも分配性注意が関与す
るとの報告があり、DGI では分配性注意機能が求められたため、Δ TMT と有
意な相関を示したと考える。また、FBS との相関も高く、立位での動的バラ
ンス能力も二重課題処理の対応には必要であると考える。注意障害を有する
CVA 患者の歩行自立度の検討において、バランス機能に加え、DGI による二
重課題処理能力評価が重要であると考える。
105
106
特定医療法人 柏葉脳神経外科病院 リハビリテーション科
医療法人財団 健貢会 総合東京病院 リハビリテーション科
当院回復期リハビリテーション病棟におけるグループトレーニン
グの効果
土門 遼次、石川 啓太、武田 真理子、齋藤 篤生、釘本 充、
杉山 俊一
回復期病棟脳卒中患者の入院時基本動作能力が退院時歩行能力に
及ぼす影響について
鈴木 淳志、原島 宏明、宮野 佐年
一般演題(口演)
抄録
【目的】当院回復期リハビリテーション病棟 ( 以下 , 当院回復期リハ病棟 )
では , 歩行練習量増加や歩行自立度の向上を目的に , グループトレーニング
( 以下 ,GT) と称した集団歩行練習を考案し週 2 回実施している . 我々は , 昨
年の本学会にて , 歩行 FIM4 以上の患者に 1 回につき約 235m の歩行機会
を GT によって提供している事を報告した . しかし ,GT を行う事が患者の帰
結に与える効果は不明である . 本研究は ,GT 参加群と対照群の 2 群を設定
し ,GT の効果を明らかにする事を目的とした .【方法】対象は , 平成 24 年
4 月から平成 27 年 3 月までに当院回復期リハ病棟に入棟し , 入棟時に歩行
見守り以下且つ退院時に歩行自立した患者 218 名とした . このうち ,GT 適
応基準に該当し GT を実施した患者を GT 参加群とした .GT 適応基準に該当
したが GT を実施しなかった群を GT 非参加群とし , その中から ,GT 参加群
と入院期間及び年齢を用いてマッチングした患者を対照群とした . 入院から
GT 開始時までを GT 開始病日とし , マッチングされた対照群でも同様とし
た .GT 適応基準は、高度な高次脳機能障害や認知症を有しない患者で歩行
に重度介助を要さない患者とした。両群の GT 開始時と退院時における両
群の下肢 BRS、10m 自由歩行速度、BBS、FIM 及び GT 開始から歩行自立
までの期間を比較した . 統計分析は ,t 検定 ,Mann-Whitney の U 検定 , χ ²
検定を用い , 有意水準は 5% とした .【結果】対象は各群 19 名ずつの 38 名
だった .GT 開始時での両群の特性 ( 病型 ,BRS,10mCWS,BBS,FIM,HDS-R) に
有意差はなかった . 両群の比較では、GT 開始時から歩行自立までの期間が
GT 参加群で 23.4 ± 17 日 , 対照群で 37.2 ± 21 日と GT 参加群で有意に短
く (P < 0.03), その他の項目に有意差は無かった .【考察】当院回復期リハ
病棟で行なっている GT は , 歩行自立までの期間を短縮させる一助を担って
いる可能性が示唆された . 歩行見守り以下の患者に対し , 通常リハに加えて
GT を実施する事は , 歩行自立度を早期に向上させる為に有効と考えられた .
【目的】現在までに回復期リハビリテーション病棟(以下回復期病棟)の
データを用いた研究にて、基本動作が ADL と強い相関があることは報告さ
れている。しかし、基本動作評価 Ability for basic movement scale(ABMS)
を用いた歩行能力との研究は少ない。本研究は当院回復期病棟のデータを
用いて入棟時 ABMS が退院時歩行能力にどのような影響を及ぼすかを検討
することとした。【方法】対象は平成 26 年 4 月 1 日入棟~平成 27 年 6 月
30 日までに退院した、当院回復期病棟入院の脳卒中患者 212 名とし、診
断名、性別、年齢、在棟期間、入退院時の BRS、MMSE、ABMS、BI、歩行
自立度(介助・監視・自立にて評価)、転帰先をカルテよりデータを収集し
た。入棟時 ABMS と退院時評価項目の相関の検討、さらに ROC 曲線を作図し、
感度・特異度より退院時歩行自立度判断の入棟時 ABMS カットオフ値を算
出した。尚、歩行自立度に関しては自立を自立群、介助・監視を非自立群
とした。【説明と同意】後方視的研究であり、全て匿名化された既存のデー
タを使用し検討を行った。【結果】入棟時 ABMS と相関がみられた退院時評
価項目は、在棟日数(.322)、MMSE(.388)、ABMS(.606)、歩行自立度(.461)、
BI(.627)であった。退院時歩行自立度判断の入棟時 ABMS カットオフ値は、
曲線下面積 .777、感度 .639、特異度 .186 より 20.5 点と算出された。
【考察】
相関結果より、入棟時 ABMS が高い患者様は退院時認知面、動作能力共に
高値を示し、低い相関ではあるが、在棟日数も少ないことが示唆されている。
入棟時より活動性が高く、早期に歩行を獲得し、在棟日数短縮にも影響を
及ぼしているのではないかと考える。ABMS は 20 点を越えると基本動作修
正自立レベルである。カットオフ値より、入棟時から補助具などを用いて
も基本動作を獲得することは、退院時歩行自立獲得に影響が強いと考える。
回復期病棟入棟時に基本動作を獲得させることが重要となると考えられる。
- -
152
107
108
医療法人社団 苑田会 苑田会リハビリテーション病院 リハビリテーション科
真網代くじらリハビリテーション病院 看護部
座圧計を用いた車椅子シーティングにより手洗い動作が向上した
一症例~座圧に対する新たな客観的評価の試み~
石井 健史、汲田 有里、伊藤 貴史
【背景】回復期リハビリテーション病院において、患者各々に合わせた車椅
子シーティングをすることは、ADL 向上及び身体機能促進に向けて重要で
ある。シーティングを評価する際は、座圧計がよく用いられているが、根
拠に基づいた客観的な評価方法が確立されていない。そこで今回は、座圧
計の客観的評価方法を考案し、手洗い動作向上の為のシーティングに活用
した症例を報告する。【方法】 対象は右脳梗塞を発症し、14 病日経過し
た 70 歳代女性である。座圧の評価は、座圧計(圧力分布測定装置 FSA、
タカノ社)を用い、座面を 4 つのエリア(右後方・右前方・左後方・左前
方)に分け、各エリアの座圧の平均値を算出し体重で除した値をエリア座
圧とした。エリアの分け方は、殿裂と恥骨結合を結ぶ縦線と両大転子を結
ぶ横線を引き 4 つのエリアに分けた。測定のタイミングは、手洗い動作開
始時と手洗い動作中の最大リーチ時の座圧とした。測定時期は、シーティ
ング前とシーティング後一週間とした。ADL 評価は、FIM を使用した。対
象者には、本研究の説明をし、同意を得た。【結果】 シーティング前の手
洗い動作開始時の座圧 [mmhg/kg] は右後方 151.3、左後方 91.6、右前方
133.7、左前方 102.1 であった。手洗い動作中の最大リーチ時は、右後方
151.7、左後方 102.7、右前方 117.9、左前方 92.3 であった。FIM51 点、
整容項目 2 点であった。シーティング一週間後の手洗い動作開始時は、右
後方 107.6、左後方 128.5、右前方 127.8、左前方 132.3 であった。手洗
い動作中の最大リーチ時は、右後方 60.5、左後方 83.8、右前方 103.6、左
前方 129.7 であった。FIM60 点、整容項目 3 点であった。【考察】 今回、
新たな座圧の客観的評価方法を考案しシーティングを行った。その結果、
手洗い動作の向上に伴う、座圧の変化を客観的に捉える事ができた。今後は、
この評価方法を活用して、様々な ADL 動作向上に向けたシーティングを実
施していくことが重要である。
病棟内歩行自立判定テストの有用性の検討
~当院独自のテストを用いて~
都能 槙二、山本 尚弘
【はじめに】いかなる疾患であれ、一般に早期より病棟内歩行自立を実施す
る事は患者の機能回復上好ましい影響を与えると言われている。しかし病
棟内歩行自立の可否を判定する上で広く使用されている評価スケールは存
在していない為その判断基準は PT 各人の知識や経験に強くゆだねられて
いる。新人 PT において病棟内歩行開始時期が遅れるケースが散見された
ため、歩行開始時期の判断基準の一助とすべく、昨年当院独自の病棟内歩
行自立判定テストを作成した。自立判定テストとして歩行距離、椅子から
の立ち上がり・着座動作等の身体機能面、他患者や椅子などの障害物への
接触の有無等の認知機能面、180°方向転換、立ち直り反応等のバランス面
を評価する。本研究の目的は当院で試行している病棟内歩行自立判定テス
トの有用性を検討することである。【方法】 当院回復期リハビリテーショ
ン病棟の患者を対象に担当 PT に病棟内歩行自立判定テストを試行しても
らい、試行前後の歩行開始時期の変化、歩行自立後1ヶ月の転倒率を用い
て検討を行う。【結果】 試行前後にて歩行開始時期に変化はみられなかっ
た。しかし経験年数 7 年目以上の PT が運動器疾患に対して 35 日、脳血
管疾患に対して 50 日で歩行開始としていたが、1~3年目の PT は運動器
疾患に対して 49 日、脳血管疾患に対して 88 日で歩行開始としており歩行
開始時期が遅れることがみられる。自立判定テストを実施して病棟内歩行
自立とした患者の転倒はみられなかった。【考察】 新人 PT にも簡単・安
全に行えるテストであり、病棟内歩行自立と判断する一助となっている。
しかし歩行時の転倒率 0%となったが、開始基準の設定をしていないため
テスト開始時期が遅れること、テスト課題が厳しすぎるため本来自立でき
る患者が自立できていない可能性が挙げられる。対象人数が少ないが有用
性には課題の残るものとなったためテストの見直しも検討していく必要が
ある。
7-2 歩行・装 具・車 椅 子 ◆ 3 月 4 日( 金) 13: 0 0 ~ 13: 5 4
115
110
当院における脳卒中患者の下肢装具療法を考える
1)
第7会場
アルペンリハビリテーション病院 新規事業部、 アルペンリハビリテーショ
2)
ン病院 リハケア部 理学療法科
竹中 誠 1)、津田 浩史 2)、直江 緑 2)、本谷 竜太郎 2)
時計台記念病院 リハビリテーション科
小川 太郎、南原 亮輝、松川 勇毅、奥山 真澄、田中 良明、小島 伸枝、
高村 雅二、木村 憲仁
【目的】当院では平成 26 年 10 月から脳卒中片麻痺患者に対して歩行神経
筋電気刺激装置ウォークエイド ( 以下 WA) を可能な限り全例に訓練として
使用している.WA 訓練によって装具作成を回避できる可能性のある病態
を検討した.【対象】当院回復期リハビリテーション病棟に入院した脳卒中
患者のうち,装具作成の可能性のある症例として,入院時の Brunnstrom
Recovery Stage( 以下 BRS)II から IV または Stroke Impairment Assessment
Set の Foot Pad Test( 以下 FP)0 から 2 を対象とした.WA 導入前の平成 24
年 1 月から 12 月に入院した 22 例を A 群,WA 訓練導入後の平成 26 年
10 月から平成 27 年 5 月に入院した 17 例を B 群 (WA 使用者 12 例 ) とした.
除外基準は退院時 FIM の移動の歩行 1 点,両側病変,再発,失調.【方法】
装具作成の有無を BRS・FP のスコア別に比較し,装具作成率が減少した患
者層を判定した.【結果】年齢 (A 群 58.5 ± 15.5 歳,B 群 62.9 ± 16.2 歳 ),
性別 (A 群男性 15 女性 7,B 群男性 12 女性 5),麻痺側 (A 群右 10 左 12,
B 群右 12 左 5) に有意差なし.装具処方なしの症例の割合は,BRS では A
群は BRSII1/2,III2/8,IV5/12,V0/0.B 群は BRSII0/0,III2/9,IV5/8,
V2/2.FP で は A 群 は FP0 は 2/9,1 は 0/5,2 は 4/6,3 は 2/2,4 は
0/0.B 群は FP0 は 0/5,1 は 3/7,2 は 1/2,3 は 2/2,4 は 3/3.BRSIV
または FP1 の症例の合計は A 群 13 例,B 群 12 例.年齢は A 群 58.3 ±
12.1 歳,B 群 60.5 ± 16.1 歳,性別は A 群は男性 8 女性 5,B 群は男性 9
女性 3,麻痺側は A 群右 6 左 7,B 群右 9 左 3 でいずれも有意差なし.装
具処方なしの症例は A 群 5/13(38.5% ),B 群 7/12(58.3% )(WA 使用者で
は 6/10) と B 群の方が多かったが,単変量解析 (P=0.434),ロジスティッ
ク回帰分析 (P=0.683) とも有意ではなかった.【結論】BRSIV または FP1 で
は WA 訓練導入後に装具作成が約 20%減少したが,症例数や患者特性の偏
りから統計学的には有意ではなく,この知見を確かめるためには症例の集
積が必要と思われた.
- -
153
一般演題(口演)
抄録
【はじめに】脳卒中患者の下肢装具療法については、脳卒中治療ガイドライ
ン 2015 においても早期歩行訓練や内反尖足に対して有用であることが示
されているが、その内容については確立されておらずエビデンスが不足し
ていると言っても過言ではない。今回、当院回復期リハ病棟(以下、当院)
における脳卒中下肢装具療法について分析したので、若干の考察を加え報
告する。
【方法】2008 年 6 月 1 日開院以降 2015 年 3 月 31 日までに当院
に入院し、下肢装具が処方された脳卒中患者 226 名を年度毎に分類し、発
症から当院入院までの期間、発症から装具処方までの期間、当院入院から
装具処方までの期間、在院日数、入院時 FIM 運動項目・認知項目・合計、
退院時 FIM 運動項目・認知項目・合計、FIM 利得、FIM 効率、装具の種類
について比較検討した。【結果】発症から当院入院までの期間は平均 37.2
日で年度毎に大きな差はなかったが、発症から装具処方、当院入院から装
具処方までの期間は年々短縮する傾向が見られ、2014 年度は 15.0 日であっ
た。平均在院日数には、大きな差はなかった。また、入院時 FIM は年度毎
に低下する傾向が伺え、患者層が重度化していることが考えられ、FIM 利得・
効率においては年度毎の変動が大きかった。【考察】発症から装具処方、当
院入院から装具処方までの期間が短縮していたことは、装具の発展が著し
くより変化に対応できる装具が開発・導入された経緯の影響が考えられる。
しかし、年度毎に FIM 利得・効率に変動があったことは、装具の変化に対
して療法士の知識・技術面が対応できていなかった教育の問題が考えられ
た。また、装具療法の内容が確立されておらず、適切な手段を模索してき
た経緯が影響していると考えられた。また、在院日数が短縮されていない
ことは、回復期リハにおいてはチーム医療における積極的な退院支援が重
要であることも示唆していると考える。
回復期における歩行神経筋電気刺激装置ウォークエイドを使用し
た訓練が脳卒中片麻痺の装具作成に与える影響
111
回復期リハビリテ―ション病棟におけるベッド・車椅子間移乗時
見守り解除の判断基準作成に向けて
~アセスメント指標を用いて~
歩行自立判定の検証
~当院の歩行自立判定基準表と F & S を用いて~
熊本リハビリテーション病院 リハビリテーション部
上田 美穂、古川 繁、長野 文彦、大室 美穂子、松岡 達司、河崎 靖範、
槌田 義美、山鹿 眞紀夫
医療法人喬成会 花川病院 看護部
遠藤 宏美、松田 洋子、加藤 陽子、濱野 幸枝、三浦 友貴
【目的】回復期リハビリテ―ション病棟(以下、回復期リハ病棟)の患者
はADL拡大を目標とし、自立に向けた判断基準が重要である。先行研究
で、脳卒中患者の移乗時見守り解除におけるアセスメント指標 19 項目が
報告されている。そこで整形疾患を含む回復期リハ病棟でアセスメント指
標 17 項目(2 項目除外)を用いて見守り解除に有効な項目を明らかにす
る【方法】対象者:A 回復期リハ病棟の患者で移乗時見守りから見守り解
除になった患者 40 名(脳卒中・整形:20 名)。期間:平成 26 年 4 月~
平成 27 年 8 月。調査項目及び方法:疾患名、性別、年齢、麻痺の有無、
転倒歴、高次脳機能障害の有無、見守り解除前後のアセスメント指標と
FIM はカルテを後方視的に調査。分析方法:移乗時見守り解除前後のアセ
スメント指標はマクネマー検定、FIM は対応のあるt検定。【結果・考察】
アセスメント指標 17 項目中 8 項目に有意差を認めた。そのうち、1、毎
回移乗時に車椅子のブレーキをかけられる、2、毎回移乗、時に車椅子の
フットレストをあげられる、11、起立~着座までの一連の動作を毎回ふら
つかずに遂行できる、13、動作バランスを崩した際自分で体勢を立て直せ
る、17、端座位でズボンの着脱を自立して行える、の 5 項目は「できない」
から「できる」になった患者が 40%以上を占めた。1、2 は、注意障害があっ
ても学習し行動が習慣化することで、車椅子の安全管理が可能になったと
考える。11、13 は、麻痺やふらつきがあってもリハビリを行うことでバ
ランス能力が向上し、転倒リスクが軽減したと考える。17 は、移乗動作
に類似した能力が必要であるが、40 名中 13 名が見守り解除後も「できな
い」ままであった。このうち 11 名が麻痺のある脳卒中患者でも見守り解
除になっていることから、必ずしも重要な項目ではないと考える。今回の
研究では、1、2、11、13 の 4 項目が見守り解除時のアセスメント指標と
して有効であると示唆された。
113
【目的】本研究では、行動評価という側面から作成された当院独自の歩行
自立判定基準表 ( 以下:自立判定表 ) と運動機能及び認知機能評価である
Subset of Functional Balance Scale & Stops Walking When Talking test( 以
下:F & S) を用いて、当院における歩行自立判定の検証を行った。
【対象】H26 年 9 月~ H27 年 9 月までの間に当院に入院していた脳血管疾
患患者 ( 以下:CVA 患者 )25 名 (70 ± 37 歳、男性 11 名、女性 14 名、下
肢 Brunnstrom stageI1 名、II1 名、III2 名、IV6 名、V7 名、VI8 名 )。
【方法】(1)担当セラピストが、歩行自立の可否を自立判定表及び F&S の
測定にて判定。自立判定表と F&S の結果より、Spearman の順位相関係数
を用いて検証した。(2)自立判定表と F&S の結果が異なった患者に関して
は、後方視的にカルテより情報収集と担当セラピストへ聞き取り調査を行っ
た。
【結果】(1)自立判定表と F&S の結果が一致した患者は 21 名であり、有意
な相関を認めた (P < 0.01、r=0.71)。(2)結果が異なった 4 名は、自立判
定表では自立、F&S では介助であった。F & S の結果より運動機能は低下
しているが、認知機能は保持出来ていた。
【考察】当院における自立判定表と F&S においては有意な相関を認めた。
この結果より、当院では運動機能を考慮した上で歩行自立判定が行われて
いることが示唆された。結果の異なった 4 名の運動機能は低かったが、行
動に影響する記憶や高次脳機能障害には大きな問題はなく、運動機能の代
償として歩行器や杖等の歩行補助具を使用し歩行自立に至っていることが
分かった。自立判定表は行動評価、F&S は運動及び認知機能評価と視点が
異なるものであるが、これらを併用することで従来よりも多くの視点から
判定することが出来る為、転倒予防の一助となりうると考えられる。
114
下肢不全麻痺を呈する症例に対する歩行訓練の導入
~ HONDA 歩行アシストと免荷式リフト POPO の併用~
医療法人社団幸隆会多摩丘陵病院 診療技術部
112
回復期病棟における機能的電気刺激の使用と効果の検証
医療法人 五星会 新横浜リハビリテーション病院
青木 忍、北條 徳則、對馬 淳史、山口 聡、中澤 幹夫、三沢 幸史
田辺 紘大、江田 博明、弓川 大地、田村 優樹
一般演題(口演)
抄録
【目的】当院では、脳卒中片麻痺患者の歩行障害に対し、機能的電気刺激(以
下 FES)を用いてのリハビリテーション(以下:リハ)を取り入れている。
【はじめに】HONDA 歩行アシスト(本田技研株式会社製、以下歩行アシスト)
脳卒中治療ガイドライン 2015 においても、推奨グレード B とされており、
は、「倒立振子モデル」に基づく効率的な歩行を サポートする歩行訓練機
FES の効果が示されている。ただし、慢性期の患者に対する報告が多く、
器である。当院では H23 年 7 月より導入し使用してきたが、その適応に関
回復期の患者に対するエビデンスは確立されていない現状である。今回、
しては重度の麻痺の方に関しては使用が困難であった。そこで今回、免荷
当院回復期リハ病棟における、FES の使用と有効性について検証する。
式リフト POPO(株式会社モリト―社製、以下免荷式リフト POPO)を併
【方法】対象は、監視下以上で歩行可能な脳卒中片麻痺患者 10 名(男性 5
用し 2 回 / 週、約 5 週間の訓練を行ったところ立位・歩行において改善が
名、女性 5 名)とした。平均年齢は 64.1 ± 13.3 歳(平均±標準偏差)、
みられたため報告をする。
罹病期間 54.3 ± 24.3 日であった。FES 装置は、歩行神経筋電気刺激装置
【症例紹介】7 0歳代男性、身長 165cm・体重 66.8kg 診断名:黄色靱
ウォークエイド(帝人ファーマ社製:以下 WA)を使用し、電気刺激は麻
帯骨化症術後(第 9 胸椎椎弓切除術 ) 下肢 MMT:右 1 ~ 2 レベル・左膝
関節伸展 3 その他 2 レベル。感覚:下肢に灼熱感を伴う痺れの訴えあり 痺側遊脚期の足関節背屈補助に対し加えた。WA を使用しての歩行練習を
1 日 20 ~ 30 分間、週 5 回実施し、使用前後(平均使用期間 47.6 ± 9.4 日)
移乗は重度介助レベル、歩行は不可であった。
での検証を行った。
【方法】PT 又は OT を 2-3 回 / 日,2-3 単位 / 1回 実施のうち週2回の
評 価 項 目 は、Brunnstrom stage( 下 肢: 以 下 BRS)、Fugl-Meyer motor
頻度で歩行アシスト・免荷式リフト POPO の併用での立位・歩行訓練を約
assessment(下肢項目:以下 FMA)、Modified Ashworth scale(下腿三頭
20 分間実施 ※設定:歩行アシストのアシスト量左右 2.0・免荷式リフト
筋:以下 MAS)、10m 歩行所要時間、歩行率、Timed Up and Go Test(以
POPO の免荷量 40K gを歩容の変化・訴えに合わせ適宜変更
下 TUG)を用いた。
【結果】移乗は手すりを用いて監視~軽介助レベル。歩行は pick up 歩行器
統計処理は、BRS・FMA・MAS は、Willcoxon の符号付順位和検定を用い、
を使用し軽介助歩行が可能となった。また、立位・移乗動作の安定により
10m 歩行所要時間と歩行率・TUG は、対応のある t 検定を用い、ともに
トイレを使用することが可能となった。
有意水準を 5%とした。
【考察】今回、歩行アシストと免荷式リフト POPO を併用することで立位・
【結果】BRS(4.2 ± 0.4 → 5.1 ± 0.5)、FMA(21.7 ± 1.9 → 29.2 ± 2.5)、
歩行訓練を効率的に行うことが可能となり、多くの立位・歩行の機会を提
MAS(2.2 ± 0.6 → 1.3 ± 0.4)、10m 歩行所要時間(28.5 ± 18.4 → 12.0
供することができた。また、股関節屈伸のアシスト量・免荷量・歩行速度
± 8.6 秒 )、 歩 行 率(80.8 ± 29.1 → 119.8 ± 32.8 歩 / 分 )、TUG(27.6
を症例の能力に合わせ調整することで、歩行に必要な姿勢制御能力・体重
± 15.4 → 13.4 ± 8.7 秒)と、各項目において有意差を認める結果となった。
支持・協調的ステッピング能力に対して段階的に影響をおぼすことができ
【考察】FES が、回復期リハ病棟の脳卒中片麻痺患者に対し、身体機能及
たと考える。今後も症例に対するより効率的な機器の使用方法・設定に関
び歩行能力の改善に有効であることが示唆された。今後、介入群・対照群
する内容の検討を行っていきたい。
での比較したデザインでの検証など、実施していきたい。
- -
154
7-3 歩行・装 具・車 椅 子 ◆ 3 月 4 日( 金) 14: 0 0 ~ 14: 5 4
第7会場
109
116
医療法人社団 三喜会 鶴巻温泉病院 リハビリテーション部
医療法人 社団 脳健会 仙台リハビリテーション病院 リハビリテーション部
Hybrid Assistive Limb(HAL)を用いた介入後に歩行能力の向上
を認めた脳卒中患者に関する報告
曽根 佑太、大木 雄一
回復期リハビリテーション病棟における脳卒中片麻痺患者に
対する短下肢装具作成時期の検討
伊藤 光、菊池 隼、佐々木 翔
【目的】HAL は歩行能力再建機器であり,脳卒中患者の歩行自立度を改善
できるとされている.本研究の目的は,HAL を用いた介入後に歩行能力
の向上を認めた脳卒中患者に対する実践を通し,HAL の効果を検証する
ことである.
【対象】右橋梗塞により左片麻痺を呈した 70 歳代の男性.
第 46 病日に当院リハビリテーション病棟に入院となった.Functional
Independence Measure の歩行項目(歩行 FIM)は 3 であった.歩行自立
度の改善を目的に長下肢装具を用い立位,歩行練習を第 62 病日まで実施
したが,歩行自立度の改善を認めなかった.第 62 病日において,運動麻
痺は Brunnstrom Recovery Stage(下肢 BRS)にて III,等尺性膝伸展筋力
体重比は右側 36%,左側 13%であった.尚,対象者に本研究の意義,目
的について説明し,承諾を得た.また,当院の臨床研究倫理審査委員会の
承認を得た.【方法】第 63 病日から HAL を用いた介入を実施した.介入期
間は 7 日間とし,HAL を用いた介入は立位での重心移動,歩行練習を 5 日
間実施した.HAL を用いない介入では,長下肢装具または短下肢装具を用
い立位,歩行練習を 2 日間実施した.介入時間は 1 日 40 分間から 60 分
間とした.HAL は両脚タイプを使用し,随意制御モードにて実施した.主
要な評価指標は歩行 FIM,副次的な評価指標は下肢 BRS,左右等尺性膝伸
展筋力体重比とし,介入前(第 62 病日)と介入後(第 70 病日)に測定し
た.【結果】介入後の歩行 FIM は左短下肢装具,4 点杖を用い 5 であった.
下肢 BRS は III,等尺性膝伸展筋力体重比は右側 39%,左側 23%であった.
【考察】HAL を併用した介入を行うことで歩行 FIM が 5 に改善を認めた.
左 BRS に改善を認めなかったが,左等尺性膝伸展筋力に改善を認めたこと
から左下肢の支持性が向上し,歩行自立度に改善を認めたと考える.この
結果から,HAL は歩行自立度の改善,麻痺側下肢筋力の向上に寄与する可
能性があると考える.
117
難治性潰瘍に対して大腿コルセット付 PTB 義足を処方した一例
大阪府済生会泉尾病院 リハビリテーションセンター
三堂 陽一、住谷 和子、村田 臣徳、徳富 真洋
【はじめに】脳卒中片麻痺患者に対する装具療法は , 歩行獲得に有効な治療
手段とされ , 回復期入院後早期の装具作製は , 歩行自立までの日数に影響を
及ぼすと推察される . そこで , 今回 , 装具完成までの日数と歩行自立までの
日数の関係について調査を行った .【対象と方法】当院に平成 22 年 3 月か
ら平成 27 年 5 月に入院し , 初発かつ当院で短下肢装具の処方を受け , 歩行
が自立した 63 名を対象とした (55.6 歳± 11.7). 対象の発症から当院入院
まで , 当院入院から装具完成まで , 当院入院から歩行自立までの日数 , 入院
時及び歩行自立時の下肢 Brunnstrom Recovery Stage( 以下 BRS), 性別 , 年齢 ,
麻痺側 , 在院日数 , 入院時及び退院時の機能的自立度評価法(以下 FIM), 入
院時及び歩行自立時 , 退院時認知 FIM を後方視的に調査した . 歩行自立度の
判定は FIM に準じた . 多重共線性を考慮する為 , 各項目間を Pearson の積
率相関係数を用いて算出し , 相関係数 0.7 以上の項目を除外した . 当院入院
から歩行自立までの日数を従属変数 , 他項目を独立変数として重回帰分析
(stepwise 法 BIC) にて影響する因子を抽出し , それぞれの度合を調査した . ま
た , 解析には , 統計フリーソフト R version1.6 - 3 を使用し , 有意水準は
5%未満とした .【結果】Pearson の積率相関係数の結果 , 全ての FIM 調査
項目間に高い相関を認めた . 入院時認知 FIM と歩行自立時認知 FIM の差を
歩行自立までの日数で除したものを認知 FIM 改善率とし , 他 FIM 関連項目
は除外した . 重回帰分析の結果 , 自由度調整済 R2 は 0.687(p < 0.01) であっ
た . stepwise 法にて取り込まれた独立変数の標準偏回帰係数は , 装具完成ま
での日数 0.489, 在院日数 0.437, 年齢 0.169, 歩行自立時の下肢 Brs - 0.267
であった .【考察】当院では , 装具完成までの日数が短縮することで , 歩行
自立までの日数も短縮する傾向を認めた . 付随して , 在院日数の短縮にも寄
与することが示唆された . 以上のことから , 回復期入院後早期に装具を作成
することが重要であると考えられる .
118
独居生活への復帰を目指し早期に長下肢装具を使用した左被殻出血
の症例
医療法人一仁会 脳神経リハビリ北大路病院 リハビリテーション部
趙 万梨子、山口 祐太郎
【はじめに】左被殻出血により重度の運動麻痺を呈した症例に対し,早期に
治療用長下肢装具(以下 KAFO)での装具療法を行った.結果,独歩とな
り独居生活に戻った症例を経験した.画像所見から歩行能力の獲得を予測
し,理学療法を実施した経過と結果を報告する.
【症例紹介】60 歳台男性.診断名:左被核出血.病前は独居生活.発症 26
病日に当院回復期リハビリテーション病棟に転院.症例は早期歩行獲得と
自宅退院を希望していた.
【 理 学 療 法 評 価 】 転 院 時 FIM:77/126 点( セ ル フ ケ ア 30/42 点, 移 動
2/14 点 ),Fugl ‐ Meyer 評 価 法: 下 肢 6/33 点,FBS:15/56 点. 麻
痺側股関節と膝関節周囲は筋緊張が低下していた.足部は筋緊張が亢進
(Modified Ashworth Scale:3)していた.基本的動作やセルフケアは介助
が必要であった.
画像所見から,内包前脚・膝部が損傷しており,大脳 - 小脳ループや内側
運動制御系の破綻により,関節中枢部の筋緊張が低下していると考えた.
また,放線冠レベルで皮質脊髄路の損傷を認めたが,下肢領域は軽度であ
ると予測した.理学療法を行うことで下肢の支持性や随意性の回復が期待
できると考えた.
【理学療法プログラム】転院直後より装具療法を,転院 10 日後には KAFO
での訓練を開始した.荷重位での筋力トレーニング,歩行練習を中心とし,
足関節や膝関節周囲に経皮的電気刺激や麻痺側随意運動を実施した.
【経過と結果】転院 20 日後でトイレ動作自立,60 日で AFO 歩行自立レベル,
90 日で独居での退院が可能なレベルとなった.
退院時 FIM:108 /126 点 ( セルフケア 38/42 点,移動 12/14 点 ),FuglMeyer:下肢 25/33 点,FBS:53/56 点へ変化した.
【考察】画像所見から歩行獲得を予測し積極的に荷重位での訓練を実施した.
その結果,股関節の固定性が早期に獲得でき,支持性・随意性向上を図れ,
独歩可能となり独居生活に戻れたと考える.早期 KAFO の使用は,下肢機
能と日常生活自立度の向上に期待できると考える.
- -
155
一般演題(口演)
抄録
【はじめに】 血管原性切断患者は術後、断端末潰瘍の治癒の遷延化がしば
しば問題となる。義足を作成し荷重開始には浮腫が軽減し、潰瘍が治癒し
ている事が望まれる。本症例は、断端末に難治性潰瘍を伴った状態で大腿
コルセット付 PTB 義足にて荷重練習を試み、歩行獲得に至ったので報告す
る。【倫理的配慮】 ヘルシンキ宣言に基づき発表の趣旨と内容を事前に説
明し同意を得た。【症例紹介】 70 代女性。診断名は左第 4 足趾壊疽、左下
腿切断。既往歴は左全人工膝関節置換術、腰部脊柱管狭窄症など。合併症
に糖尿病、閉塞性動脈硬化症など。入院前 ADL は全て自立。認知機能面は
特に問題なし。【荷重開始時の評価】 断端長は関節裂隙より 12cm、切断
肢の ROM は左膝関節屈曲 115°、伸展 0°、MMT は左右下肢、体幹 4 レベ
ル、断端末に表在感覚中等度鈍麻を呈した。断端浮腫と、断端末に 2 ヶ所
の潰瘍を認めた。平行棒を把持すれば右片脚立位が可能であった。FIM103
点 ( 運動 68 点、認知 35 点 )。【経過】 術後 4 日目から PT 開始。43 病日
に回復期病棟へ転棟。122 病日に義足採型、129 病日に大腿コルセット付
PTB 仮義足が完成し、同日より荷重練習開始。断端末潰瘍をオプサイトで
保護し練習を行った。開始直後、潰瘍部より出血を認めた為、断端袋・ソ
フトインサートの遠位部をカット、チェックソケットの一部を開口した。
また膝蓋骨の形状を考慮し、膝蓋腱で荷重を受けるために窪みを大きくつ
けて荷重面を拡大した。243 病日に歩行獲得に至り自宅退院となった。【考
察】
荷重に伴いソケット内ではピストン運動が生じる為、断端の沈み込み
による潰瘍への直接的な接触や皮膚の長軸方向の張力を緩和させる必要が
あった。今回、大腿コルセットで荷重を分散させた事や、膝蓋腱部の荷重
面を拡げたこと、断端末の張りを触診で確認し荷重量や荷重感覚をフィー
ドバックする事で、潰瘍を有しても積極的な荷重が可能となり、実用歩行
獲得に至ったと考える。
119
120
医療法人社団輝生会 初台リハビリテーション病院
一般社団法人 巨樹の会 原宿リハビリテーション病院 リハビリテーション科
当院における装具作製の課題への取り組み
~平成25年度と平成26年度の比較~
当院における下肢装具の作成時期の違いによる効果
~自家用装具を作成した患者の FIM の変化に着目して~
高山 健一郎
【目的】 以前の調査において、当院回復期病棟での入院からの下肢装具平
均処方日数は年々延長傾向にあることが課題として挙がった。今回、装具
作製の課題への取り組みから、現状の結果を明確にする。また、それら
から今後の課題を明確にし、当院における装具作製ガイドラインを作成す
る一助とすることを目的とした。【方法】 装具作製の課題への取り組みと
し、平成 26 年 3 月末に主治医の指示の下、入院直後 1 週間以内に担当 PT
が PT 部門の責任者である教育研修部に相談し PT 部門としての装具作製の
方針を定め、ブレースクリニックに臨める体制を整えた。 今回の取り組
みから、平成 25 年度データを対象前群、平成 26 年度データを対象後群
とし比較。対象は当院回復期病棟入院中に 1 本目の装具を作製した脳血管
障害片麻痺者。 以下の手順においてブレースクリニックの現状を確認し
た。1. 装具処方日、作製装具の種類、入院期間、入院時 FIM、退院時 FIM、
FIM 利得、FIM 効率を抽出。2. 装具の種類を分類。3. 平成 25 年 4 月~平
成 26 年 3 月(対策前群:110 名)と平成 26 年 4 月~平成 27 年 3 月(対
策後群:99 名)の 2 群に分類し装具処方平均日数、種類別の装具処方平均
日数、FIM 利得、FIM 効率を比較。【結果】 全体においては装具処方平均
日数は 27.4 日から 20.0 日、平均入院期間は 132.9 日から 131.5 日、FIM
利得は 22.8 から 27.7、FIM 効率 0.17 から 0.21 へ推移した。長下肢装具
のみでは装具処方平均日数は 24.3 日から 16.9 日、平均入院期間は 145.1
日から 139.0 日、FIM 利得は 21.8 から 26.5、FIM 効率 0.15 から 0.19 へ
推移した。短下肢装具のみでは装具処方平均日数は 59.3 日から 24.7 日、
平均入院期間は 118.3 日から 120.0 日、FIM 利得は 24.0 から 29.5、FIM
効率 0.20 から 0.25 へ推移した。【考察】 入院直後 1 週間以内に主治医、
教育研修部への相談を必須業務とし、ブレースクリニックに臨めるよう準
備する取り組みが、装具早期検討に一定の効果を得たことが示唆された。
白椛 郁美、石福 一彦、木村 知弘、天野 毅、叶 勇起、川野 将広、
末永 健一、木村 浩、日野 太郎、林 泰史
【はじめに】当院は都心部に立地しており 2015 年 4 月 1 日に開院した
303 床の回復期リハビリテーション病院である。脳卒中などに対する下肢
装具の早期作成は、FIM 利得に有用であると脳卒中ガイドラインで推奨さ
れている。そこで今回、開院後の下肢装具作成について作成時期の違いに
より、総 FIM 利得や総 FIM 効率、及び装具完成月前後での FIM 運動項目
の効率にも影響しているか後方視的に分析した。【対象と方法】2015 年 3
月 28 日から 2015 年 8 月 31 日までの間に入院した患者 699 名のうち、
当院で下肢装具を作成した患者は 26 名であった。内訳は男性 17 名、女性
9 名、平均年齢 63.4 ± 16.1 歳で脳卒中 24 名、頸髄損傷 1 名、ギランバ
レー症候群 1 名であった。分析方法は最初の下肢装具を発症から 90 日以
内に作成した群(A 群)と発症から 91 日以降に作成した群(B 群)に分け、
総 FIM 利得・効率について 2 群間に有意差があるかを Mann-whitney 検定
を用いた。さらに、各群での入院から装具完成までの運動 FIM 効率(以下
A 群 1、B 群 2 とする)と装具完成から退院時までの運動 FIM 効率(以下
A 群 3、B 群 4 とする)をt検定を用いて比較検討する。
(p < 0.05) 本研
究はヘルシンキ宣言に則り、十分な倫理的配慮のもと実施した。【結果】各
群の装具を作成した患者は A 群で 9 名。発症から作成までの平均日数 68.3
± 14.0 であり、B 群は 17 名で 139.8 ± 30.1 であった。A 群の 9 名のう
ち既に退院した 3 名と B 群の 16 名のうち既に退院した 14 名の総 FIM 利
得は A 群 18.3 点、B 群 21.6 点であり、総 FIM 効率は A 群 0.114 点 / 日、
B 群 0.151 点 / 日であった。1 は 0.04 点 / 日であり、2 は 0.13 点 / 日であっ
た。3 は 0.11 点 / 日であり、4 は 0.11 点 / 日であった。【考察】対象者の
中には在院中の患者もいるため現時点では、A 群は装具作成後の FIM 運動
項目効率は高くなり、B 群では装具作成後の FIM 運動項目効率は低くなっ
た。このことから当院では早期からの装具作成が望ましいと考えられる。
第7会場
7- 4 Q OL ◆ 3 月 4 日( 金) 15: 0 0 ~ 15: 5 4
121
122
医療法人榮昌会吉田病院 附属脳血管研究所 リハビリテーション部
医療法人社団永生会 永生病院 リハビリテーション部
閉じ込め症候群患者へのコミュニケーション手段獲得に向けた取
り組み
口之町 やよい、中井 美希、寺口 真以子、波多野 文恵、堀川 早苗、
清水 淳也、夏目 重厚、富永 正吾
一般演題(口演)
抄録
【はじめに】閉じ込め症候群とは、脳底動脈血栓症により両側上部橋低部病
変により随意運動の遠心路が障害されて無動無言で閉じ込められた状態を
呈するが、意識清明で精神活動は正常であり、眼球の随意運動(開閉眼、
垂直性眼球運動、輻輳)以外に意志を伝える方法がない状態である(Plum
ら 1980)。閉じ込め症候群を呈した患者に対し、AAC の導入、家族との情
報共有ノートを作成しコミュニケーション支援を行ったので、報告する。
【症例紹介】40 代男性、歯科医。脳幹部梗塞。入院時、意識レベル GCS11、
重度運動障害性構音障害、重度四肢麻痺。重度嚥下障害。随意運動は瞬き
のみ、眼球運動なし。発声発語困難。
【経過】1 病日、言語療法開始。26 病日、垂直性眼球運動が可能となり、
文字盤を導入。28 病日、家族との情報共有ノートを導入。93 病日、レッ
ツチャットを導入。154 病日、身体機能の改善と本人・家族のニーズによ
り伝の心を導入し、レッツチャットと併用。レッツチャットは本人の訴え
を聞き取るツールとして使用し、情報共有ノートを活用。内容をリハビリ
や家族、病棟内で共有した。162 病日、レッツチャットの操作が実用的となっ
た。217 病日、他院回復期へ転院。
【まとめ】AAC の導入や情報共有ノートの活用によりコミュニケーション支
援を行った。レッツチャットにて簡単な文章作成や意志伝達が可能となっ
た。また、メールの使用やベッドの操作等が可能なデバイスの使用を希望
されたため、伝の心を導入した。AAC の活用と情報の共有により、症例の
心理支持にもつながった。
退院後の活動・参加レベルの向上を目指して
~作業選択意思決定支援ソフト(ADOC)を使用した症例~
上野 繕広、野口 僚子
【目的】社会保障審議会介護保険部会の介護保険制度の見直しに関する意
見などで言われているが、患者様の心身機能だけでなく活動と参加が重要
だと言われている。しかし、入院中の患者様に活動と参加についての目標
を聞くが具体的な回答は得られにくい。作業選択意思決定支援ソフト(以
下 ADOC)にて患者様の目標を聞き取り、退院後の生活で活動と参加が向
上した症例を経験したので報告する。なお発表に際し同意を得た。【症例】
80 歳代女性。診断名は右大腿骨転子部剥離骨折。右大腿部に痛みが強く、
ADL 訓練では『痛いから動けない』と発言。日中は約 4 時間臥床しており、
活動や参加についての目標は『痛くなければいい』と発言。【方法】ADOC
で活動や参加についての目標を聴取。聴取した課題を実施し、困難な場面
ではその都度、作業療法士(以下 OT)が介助・代償方法を提示。【経過・
結果】ADOC を使用し 2 つの目標を挙げた。1:調理『家ではコーヒーを毎
日飲んでいたから飲めるようになりたい』2:手芸『手芸が昔から好きで、色々
な人にあげていたの』立位訓練では 1 ~ 2 分で座っていたが、調理場面で
はコーヒーの湯が沸くまで立位で待ち、計 30 分立位保持が可能。『立って
いるのは痛くなかった』。ネット手芸は OT と訓練し、その後自主訓練とし
た。結果、日中臥床しなくなった。退院時には症例が家族や介護支援専門
員に『家でまたコーヒーが作りたい』『今まで行っていたデイサービスじゃ
なくて、料理と手芸が出来るところがいい』と、毎日コーヒーを自宅で作り、
料理と手芸が出来るデイサービスに行くことになった。退院 1 か月後、す
いとんをデイサービスで調理し、退院 3 か月後には手芸を他利用者にプレ
ゼントした。【考察】ADOC を用いたことで、それまで OT に話さなかった
事柄を話し、目標を設定できた。その目標を家族・介護支援専門員と共有
でき、退院後も適切な支援が可能になり、活動性の高い状態が維持された。
- -
156
123
スケジュールボードを使用することでバルーン抜去に至った症例
医療法人きたじま倚山会 きたじま田岡病院
山本 愛加、吉本 大志、澤口 陽平
124
当院回復期リハ病棟を退院した脳血管障害患者の復職に関連する
因子調査-就職レディネスチェックリストを使用して-
旭川リハビリテーション病院 リハビリテーション部
【目的】当院回復期リハビリ病棟では、重症患者様の受け入れを積極的に行っ
ているが、病棟生活において臥床傾向となりやすい現状がある。これによ
り生活リズムが破綻し、低栄養、水分不足となることで覚醒レベルの低下
を招くことから、離床の促進や栄養状態の管理、水分摂取が重要とされて
いる。今回生活リズムの乱れにより水分量、尿量が不足し、バルーン抜去
が困難な症例に対し、多職種でチームアプローチを行ったことでバルーン
抜去に至った 1 症例を報告する。
【対象】60 歳代男性。現病歴:2 月初旬左被殻出血を発症し、3 月中旬当
院回復期病棟転院。
【方法】看護師・リハビリ間で行っているカンファレンスにおいて、日中の
覚醒度を向上し、水分量・尿量を増加させることを最優先課題とした。実
施内容はスケジュールボードを作成し、時間の固定化を図り、水分摂取を
促した。目標はリハビリ時 600ml +離床時間で 1 日 1000ml とした。
【経過・結果】*リハビリ以外の離床時間、1 日平均水分量、1 日平均尿量
を記載
スケジュールボード開始前:離床時間 0 分、水分量 580ml、尿量 522ml、
終始傾眠傾向で外乱刺激により開眼。訓練中のあくび多く訓練意欲低い。
スケジュールボード開始 (5/3) ~ 3 週目 :1 日 2 回ベッドギャッジアップ
30 分、水分量 722ml、尿量 794ml。
3 週目 (5/25) ~ 5 週目 : ベッドギャッジアップ 30 分 + 車椅子離床 30 分、
水分量 933ml、尿量 1084ml、声掛けにより開眼。訓練中のあくびなく訓
練意欲高い。
5 週目 (6/8): バルーン抜去、日中トイレ誘導開始。
【考察】バルーン抜去に至ったことで、希望であるトイレでの排泄が可能と
なり、日中の離床時間が増加し QOL の向上に繋がった。今回、スケジュー
ルボードを使用することで患者様の生活リズムの改善のみならず、病棟ス
タッフ全体での情報共有が可能となり、離床や水分摂取に対する意識向上
に繋がった。今後さらに栄養管理にも目を向け、個々に合わせた病棟生活
やリハビリを提供したい。
125
軽度の失語症や注意障害がある方の職場復帰への取り組み-回復
期病院退院後,外来リハビリテーションで求められた対応-
社会福祉法人こうほうえん 錦海リハビリテーション病院 リハビリテーション
技術部
伊藤 美晴、竹内 茂伸、井後 雅之
【はじめに】回復期リハ病棟に入院している脳血管障害患者(CVA 患者)対し,
復職を目標にリハを行うことは少なくない.しかしながら,CVA 患者では,
身体機能の低下から高次脳機能障害まで症状が多岐に渡るため,復職に難
渋するケースを多く経験する.これまで障害者の就労に向けた準備状態を
総合的に評価する就職レディネスチェックリスト(ERCD)が開発されてい
る.しかし,回復期リハ病棟を退院した CVA 患者を対象とした報告はこれ
までにない.そこで,我々は当院回復期リハ病棟を退院した CVA 患者の復
職に関連する因子を ERCD から調査した.【方法】対象は,平成 26 年 3 月
から平成 27 年 3 月までに当院回復期リハ病棟から自宅退院した CVA 患者
のうち,発症時に就業していた 46 名とした.そして,退院後に復職した
者を復職群(33 名),退職した者を退職群(13 名)に割り付けた.評価は,
退院時に ERCD を実施した.ERCD は就労準備状態の評価であり,9 領域(1:
一般的属性 2:就業への意欲 3:職業生活の維持 4:移動 5:社会生
活や課題の遂行 6:手の機能 7:姿勢や持久力 8:情報の受容と伝達 9:
理解と学習能力)44 項目から構成されている.統計学的解析は,ERCD ス
コアの合計得点と各領域の得点に対し,Mann-Whitney の U 検定を実施し
た(p < 0.05).【結果】ERCD の合計得点は,復職群が退職群に比べ,有
意に高値を示した.また,各領域別の得点では,6,8,9 を除く 6 領域の
得点において復職群の方が有意に高値を示した.【考察】先行研究(福井 ,
2007)と同様,本調査対象の ERCD 合計得点は,復職群が退職群よりも高
値を示した.一方で,「手の機能」「情報の受容と伝達」「理解と学習能力」
の領域で復職群と退職群で有意差がなかった.本調査対象の CVA 患者にお
いて障害として残存しやすい,これらの要素が復職に関与しなかったこと
が明らかになったのは意義深い.今後は,元の職種等の他の要素も検討し
たい.
126
意味のある作業に介入を行い自宅復帰した一例
医療法人財団 慈強会 松山リハビリテーション病院
武内 俊憲、土野 彰久、田中 雄一郎
【はじめに】心身機能が低下していた症例に対して、機能訓練や単純作業の
提供だけでなく、症例にとって意味のある作業の焦点化を目的に介入内容
を検討した。その結果、自宅退院後の役割の獲得に繋がった為、考察を踏
まえ報告する。
【症例紹介】50 代男性。右被殻出血、第一腰椎破裂骨折により当院回復期
病棟へ入院となる。Br.stage 右上肢- VI、右手指- VI。FIM53 点。重機を
扱う重労働の職場に勤務し、休日は日曜大工を行うなど活動的な生活を送っ
ていた。ニードは復職で、病前の役割である生産的な活動の再獲得であった。
【経過・結果】作業療法開始時より、四肢の筋力や耐久性低下により自信を
喪失し、毎日の生活をベッド上で過ごす習慣であった。加えて、廃用症状
の出現により遂行技能の低下を認めた。その結果、やる気や自発性の低下
に繋がる悪循環が生じる状況であった。そこで、作業に関する自己評価改
訂版 ( 以下 OSA2) を通して、症例の個人的な興味や価値も聴取し、木工作
業を提供した。毎日木工作業をするようになり、自身の得意とする方法を
自ら提案し実践するなど作業過程においても積極的な姿勢がみられ、次第
に表情も穏やかになり、妻からは病棟生活でも笑うことが増えたと環境面
での変化も生まれた。退院時の FIM は 123 点。
「自分でできることが増えた、
前よりも自信がついた」等の前向きな発言が聞かれた。自宅退院後は自宅
療養となり職場復帰は未定であったが、今回の関わりのなかで、新たな役
割である「身の回りの片付け」を獲得することができた。
【考察】OSA2 を通して協業を行うことで、入院時の悪循環を好循環に変化
させるきっかけとなったと考える。木工作業を通して自己効力感を強化し、
作業有能性を高め、症例の作業適応に繋がったと考える。症例にとって意
味のある作業を経験することで、新たな役割の獲得と退院後の自信に繋が
る作業療法支援ができたのではないかと考える。
- -
157
一般演題(口演)
抄録
【はじめに】脳血管障害の後遺症として,運動機能障害は軽度であるが失語
症などの高次脳機能障害を呈した場合,最大の QOL 獲得とも言える職業復
帰(以下,復職)の阻害要因となりうるものである.しかしながら現在の
医療福祉体制では,急性期から一貫したサポートが受けられる環境や,復
職コーディネーター,復職後の支援などが十分とは言えない.加えて,復
職の阻害要因は多面的なため,個別的対応が求められることが多い.
【目的】今回,入院中は自宅生活自立をゴールとしつつ,復職を視野に入れ
た情報収集,コミュニケーション障害の評価・訓練,外泊を通した環境面
の確認・指導,本人や家族の心理面の援助などを多職種協働で実施し,自
宅退院後は ST が外来リハビリテーション(以下,リハビリ)の形で,復職
に向けて支援を継続している一例を報告する.
【症例】症例は 40 歳代,女性.左被殻出血後.知的に良好で,軽度の右片麻痺,
失語症や注意障害を呈していた.
【結果】病前の仕事は,役職や内容から配置転換が難しく,現職での復帰が
求められた.退院時,ADL は自立,IADL も自動車運転以外の評価・リハ
ビリを入院中に実施し,大きな問題は見られなくなっていた.しかし,復
職に向けた外来リハビリを開始して約一ヵ月は,家事など自宅生活に慣れ
ることが最優先であり,その間は家での様子や本人の思いの聴取が中心で
あった.その後,復職に向けた取り組みを進めていく中で,車のペダルを
踏み込む感覚がわかりにくいなど,ST では対応出来ない相談もみられ,都
度 Dr や PT,MSW など他の職種へ報告や助言を求める必要があった.
【考察】この症例から,退院後も出てきた問題に多職種協働で対応する必要
があったことや,軽度の失語症であっても仕事内容が高度であると復職の
阻害要素となりうることがわかった.現在までの問題点や今後の課題につ
いて考察を交え,報告する.
新保 理紗、稲田 亨、本澤 征二
第7会場
7-5 Q OL ◆ 3 月 4 日( 金) 16: 0 0 ~ 16: 5 4
127
128
気持ちいいと言ってもらえる入浴を試みて
~患者の気持ちになって考える入浴援助~
身体抑制体験を通して
医療法人智仁会 佐賀リハビリテーション病院 看護部
井上 りさ、山口 優明、藤井 泰子、古賀 直哉、大園 直子、
小副川 義也、坂本 宏子
医療法人琉心会 勝山病院 看護部
比嘉 勝政
【目的】医療の現場においては、治療が優先され、やむを得ず身体抑制が行
1.はじめに A病棟では 1 日40名の患者を、週 2 回入浴を実施してい
われている事がある。しかし、患者にとって身体抑制は非常に苦痛なもの
る。40名の患者を1日で入浴させることは、患者のペースで入浴するこ
であると想像される。今回患者の痛みや精神的苦痛、不安を知り、研究者
とができず入浴援助が流れ作業になっているのではと考える。荘村は「入
が身体抑制体験を行い、今後の介護介入の方法を検討した。【方法】期間:
浴は清潔に保つということだけでなく、本人の生活の質を向上させる意味
平成 27 年 8、9 月の 4 日間。体験患者設定:車椅子座位にて自力行動あり
からも重要な行為である」といっている。「気持ちいい」と感じてもらえる
安全ベルト着用の体験者 2 名。経管栄養チューブ自己抜去あり不動手袋着
ことを目標に、入浴援助方法の修正を行った。2.研究の方法調査対象:A
用にてベッド臥床の体験者 2 名。計 4 名、1 人 2 時間の体験でいずれも頷
病棟患者 36 名調査方法●質問紙によるインタビュー調査 ●イン
き返答のみが可能な患者とした。当日出勤スタッフに病棟患者として対応
タビューの結果を元に入浴方法を実践 ●2回目のインタビュー調
してもらった。倫理的配慮:研究にあたり病院倫理委員会の了承を経て体
査調査期間:平成 2 7年1月 28 日~4月 25 日倫理的配慮:口頭と書面で
験者及び当日勤務スタッフの同意を得た。【結果・考察】安全ベルト着用:
本研究の目的と方法を説明し回答をもって同意とした。3.経過、実施 1
声掛けなく車椅子を動かされ怖い。長時間の座位で腰、殿部が痛い。誰も
回目のインタビューの結果、患者 36 名中、20 名の患者が浴槽に浸かりた
いとの声が聴かれた。
また、
女性患者から顔ぞりの希望の声も多く聞かれた。 来なくて不安。お尻が汗ばむ。トイレに行こうとして動くと元の位置に戻
された。気にかけて声掛けしてくれた。ベルトを外しソファーに移乗介助
インタビューの結果を元に入浴援助方法を変更した。浴槽への入浴介助と、
と除圧をしてもらえた。不動手袋着用:チューブ固定テープが痒い。不動
入浴時間、浴槽の有無、などの項目をホワイトボードに明示し、約3ヶ月
手袋内、発汗があり不快。コールが押せず不安。不動手袋着用では何もで
の入浴援助を実践した。実践後、2回目のインタビューを実施した。4、結
きない。訪室時不動手袋を外して揉んでくれた。声掛けあるだけで安心と
果2度のインタビューを受けた患者の声から、「自分のペースで入浴できて
感じた。抑制される事で、自由に動けず、不安や孤独感を感じ、訪室、声
いますか」「病棟での入浴は好きですか」の問いに対して、すべての患者か
掛けが無いと自力にて動きたいという気持ちになる事が分かった。寄添い
ら「はい」との返答であった。5.考察 沖縄県民は浴槽に浸かる習慣がな
声掛けをしてもらえた時は助けてもらえるという救われた想いでスタッフ
く、浴槽を希望する患者はいないのではという先入観があった。しかし半
に対して信頼が生まれた。【まとめ】今回の体験は一人 2 時間という少ない
数の方が浴槽に浸かることを希望した。固定観念にとらわれず、患者が何
時間ではあったが、自分の思いを伝えられない、動けない事がいかに苦痛
を希望するのかを確認し入浴援助を実施することが気持ちの良い入浴に繋
で不安かと言う事がわかった。介護者による声掛けや苦痛を和らげる為の
がっていくのだと実感した。これからも看護職、介護職を中心に他職種間
配慮がとても必要だと感じた。全スタッフで見守り出来る環境作りを今後
で情報を共有し入浴援助を実践していきたい。
も検討して行かなければならない。
129
130
社会医療法人高橋病院 看護部
桜十字福岡病院
ICFのおける社会参加に着目した当院回復期リハビリテーショ
ン病棟での取り組み
稲野辺 美恵、村上 真美、乗松 一弘、佐々木 淑美、宮崎 幸、
猪野越 健一、大内 舞
回復期リハビリテーション病棟入院中に癌末期を迎えた症例に
対する退院支援
南 信嗣、道下 裕之、猪野 嘉一
一般演題(口演)
抄録
[ 目的 ] よりその人らしい在宅復帰支援の一環として、平成 23 年当院最上
階に在宅復帰支援フロア「ふれあいルームすずらん」を開設し、医療介護
生活支援一体型ソフト “ ぱるな ” を活用し、多職種と情報共有を行っている。
今回、病棟看護師が主体となり、ICF の社会参加に着目することで、リハ
ビリ意欲の向上、さらに生きがいを持った退院後の在宅生活への継続を行っ
たのでここに報告する。[ 方法 ] 入院前の 1 日の過ごし方、趣味、楽しみ、
退院後に行いたいことなどを、病棟転入 1 週間以内に情報収集し、必要時 “ ぱ
るな ”ICF アセスメント項目「余暇」「交流」欄などへ入力し、セラピスト
や MSW、すずらん、在宅スタッフとも共有した。また、患者の要望が多数
を占めた、本、テレビ番組などの DVD、将棋などをロビーフロアに設ける
ことにより、ロビーの利用やコミュニケーションを促した。これらの取組
みによる変化について、患者、病棟スタッフへヒヤリングを行った。 [ 結果・
考察 ] これまでのロビーフロアは、娯楽スペースは狭く、面会、テレビ鑑
賞のために食事以外は1日数人程度の患者が利用するだけに留まっていた
が、ロビーの再活用により徐々に楽しみや積極的な離床、スタッフや患者
同士の交流による笑顔が増えていった。また、ICF の「余暇」「交流」項目
を見直す視点からもチームアプローチが出来るようになり、看護の視野が
広がったと思われる。今後の高齢者リハビリテーションにおいて、機能回
復や ADL・IADL の向上のみならず、在宅復帰後の役割の創出・社会参加実
現のためには、「参加へのアプローチ」が欠かせない要素となるため、回復
期リハ病棟看護師の役割として、よりその人らしい在宅復帰と社会生活継
続の架け橋となるよう取り組んでいきたい。
【はじめに】 回復期リハビリテーション病棟入院中に肝臓癌が悪化し、余
命宣告された症例の退院支援を経験したため報告する。【症例紹介】70 歳
代男性、独居生活で IADL 自立、肝臓癌のため外来通院していたが、脳梗
塞を発症し、当院入院となった。
【経過】当院入院時は ADL 中等度介助であっ
た。入院 3 ヶ月後、歩行器歩行が可能となったが肝臓癌が悪化し転院とな
り、余命 3 ヶ月と宣告された。当院にリハ目的で再度入院となり、少しの
期間でも自宅で過ごしたいという希望であった。しかし、病状によって歩
行できないこともあったため、家族に迷惑をかけないようにホスピスに転
院をした方がいいのではないかという気持ちも混在していた。そこで、家
族を含めて今後について話し合いを行い、家族は症例の意向を尊重すると
いうことになり、試験外泊を経験した上で退院先を検討することとなった。
試験外泊の結果、環境調整することで何とか自宅生活が可能と確認でき、
「退
院後はお酒を飲みたい」との希望があり自宅退院の方針となった。しかし、
急変のリスクが徐々に高まっており時間的に余裕がなかったため、急いで
訪問診療、訪問看護、定期巡回随時対応型訪問介護、訪問リハビリを調整し、
自宅退院となった。退院直後、サービス担当者より「お酒を飲めて喜んで
いた」との報告があり、数日後に永眠された。【考察】余命宣告された症例
は、自分の希望と家族の苦労との狭間で揺れ動いていたが、できるだけ早
く退院先を決める必要があった。家族を集めて話し合いを行ったことによ
り、症例だけでなく家族の気持ちの整理にも繋がり、また、外泊を実施で
きたことで、もう一度自宅で好きなことをしたいという前向きな気持ちに
なったのではないかと考える。 在宅サービス担当者と迅速に連携を行
い退院の時期を逸しないことは、わずか数日の自宅生活とはいえ、症例が
望む場所で望んだ最後を迎えるための支援だったのではないかと考える。
- -
158
131
132
リハビリテーション時間以外の入院生活の充実への取り組み
―菜園づくりを取り入れて―
アロマセラピーによる睡眠剤減少トライアル
医療法人社団 和風会 千里リハビリテーション病院
神田 直子、橋本 康子、池田 吉成
医療法人ハートフル アマノリハビリテーション病院
加藤 智和、矢野 隆文、西村 裕子
1.目的当病棟は個別リハビリテーション(以下リハとする)時間以外は、
積極的かつ計画的な関わりが充分でない現状であった。そこでリハ以外の
時間の有意義な活用、医療チームの一員としての患者とのコミュニケーショ
ン・連携の場作り、入院生活の充実を目的として菜園づくりに取り組むこ
ととした。2.研究方法・対象:当病棟に入院中の患者と病棟スタッフ・研
究期間:平成 26 年 7 月 1 日~平成 27 年 8 月 31 日・研究方法:最初に自
記式質問紙を作成し、調査結果から菜園づくりに取り組み、その過程の中
で患者やスタッフの意見・感想を聞き取り調査した。3.菜園づくりの実際
患者を医療チームの一員として位置づけ、病棟のベランダを利用して菜園
づくりに取り組んだ。野菜の苗を何にするか、肥料のやり方、収穫した野
菜の料理等、対象患者と段階的に話し合いを繰り返し実施した。4.結果・
考察 過去に家庭菜園づくりを多くの入院患者が体験していた。療養環境
の中で可能な菜園づくりを選択してレクリエーション活動の一環として計
画的・意図的に活動を行った結果、菜園づくりは社会復帰への動機付けに
なったと考える。また、知識や知恵を豊富に持つ入院患者は、菜園づくり
の中でスタッフに野菜作りの知識を伝える喜びを感じ、スタッフはこつを
学ぶ機会となり、このことが目的であるコミュニケーションの場作りになっ
たと考える。5.結論・菜園づくりは入院生活の充実につながった。・今回
の取り組みでチーム間の連携につながった。・今後も対象の特性を考慮し、
入院生活の充実に向けた取り組み、社会復帰への動機付けを模索して行く
事が必要である。
【目的】当院では、平成 19 年の開院時からアロマセラピーを導入してい
る。目的としては、気分転換やリラクゼーションだけでなく、凝り、筋肉
痛、浮腫の軽減や疼痛の緩和、睡眠の質向上による睡眠剤減少などがある。
とりわけ睡眠剤については、筋弛緩作用による転倒などが懸念され、リハ
ビリテーション病院におけるリスク要因となる。実際、平成 26 年度下半
期の当院転倒患者 75 人中、睡眠剤服用者は 27 人(36%)であり、うち 2
名は睡眠剤が直接的な転倒要因とされていた。そこで、今回アロマセラピー
により睡眠剤の減少をどの程度期待できるかについて調査を行った。なお、
当院のある日の睡眠剤服用患者は全体の 22%(25 名 /113 名)であった。
【方法】平成 27 年 5 月~ 8 月における当院入院中の睡眠剤服用患者のうち、
本人との意思疎通が可能で、アロマセラピーを希望した 13 名を選定した。
この 13 名を 2 週間単位の 2 期間 7 名ずつ(1 名は継続のため重複)に分け、
3 ~ 4 日に一回 30 分程度、計 5 回のアロマセラピーを施術、睡眠剤の服
用状況を調査した。【結果】13 名中 6 名(46%)に睡眠剤の中止効果があっ
た。うち 4 名は施術初日に服用を中止したが、これらは自ら睡眠剤をやめ
たいと考えていた患者であった。あとの 2 名については、施術により寝つ
きが良くなり中止となっていた。なお、睡眠剤中止に至らなかったものの
鎮痛剤減少や疼痛緩和、便秘改善などの効果もそれぞれ 1 名ずつ見られた。
【考察】睡眠剤の服用理由には、前医からの継続や日中傾眠による昼夜逆転、
うつや疼痛などの精神的、身体的不調などがあるが、自ら服用を止めたい
と考える患者もいる。アロマセラピーの施術は、そのような患者へのきっ
かけ作りとしても有用であったと考える。本調査の結果を受けて、より積
極的な睡眠剤減少へ向けて医師からのオーダーがでるように働きかけてい
きたい。
第7会場
3 - 6 失語症 ◆ 3 月 5 日( 土) 9: 0 0 ~ 9: 5 4
133
134
喜馬病院 リハビリテーション部
京都協立病院 リハビリテーション課
漢字・仮名の両方に失書を認めた一症例について
発話意欲が向上したことで言語機能改善した一例
田原 嘉奈子、井尻 朋人
石原 有貴
【はじめに】他者交流を設定し発話意欲が向上した一例を報告する。
【症例】
70代女性、脳梗塞により右半身不全麻痺と運動性失語を認めA病院へ入
院後、当院回リハ病棟へ転院。病前は社交的だった。
【評価】初期評価時、非流暢な発話で発話量は少なく復唱・呼称ともに困難。
挨拶や代名詞での表出が多い。ジェスチャー・描画等代償手段の使用なし。
WAB話し言葉の理解(抜粋)39/60点。SLTA聴理解は単語7割、
短文3割正答。
【経過】訓練当初、発話意欲・訓練意欲は乏しい。訓練時STと個室で話す
ことは可能となったが、他者のいる場所での発話訓練は拒否。日常場面で
は他者交流少なく、聴理解困難と表出困難のため同室者とトラブルがあり
気分の落ち込みあり。そのため食堂で他者交流を設定し仲介を実施した。
仲介方法は段階1食堂でSTと話をする。段階2同席者と話す際症例に分
かりやすく伝える。段階3症例の伝えたい内容を同席者に伝える。仲介実
施後、発話量が増加し短文での表出や自発的に話す機会が増加した。ST
訓練にも意欲的になり、他者のいる場所での発話訓練が実施可能になった。
日常場面では他者交流や笑顔が増加した。最終評価時、非流暢な発話で錯
語はあるが短文の表出やジェスチャーの使用が可能となった。WAB話し
言葉の理解(抜粋)50/60点。SLTA聴理解は単語10割、短文6
割正答。
【退院後】症例はデイサービスを利用し自宅退院となり病前に近い生活を
送っている。デイサービスでは職員・同年代の利用者や近所の方と会話を
楽しんでいる。
【考察】本症例は社交的であったが失語症のため、「話せない」という自覚
が強く、発話意欲低下が見られた。会話場面にSTが介入することで話せ
ないという気持ちが軽減し、発話や訓練の意欲が向上したと考える。また
言語機能も改善し、他者交流が可能となり、笑顔が増えたと推測する。
- -
159
一般演題(口演)
抄録
【はじめに】平仮名・漢字の両方に書字障害を認めた症例を経験した。平仮
名書字では運動覚性書字再生 ( 自力で書くこと ) が有効であったことを報告
する。【症例情報と現病歴】症例は 88 歳の男性で、利き手は右手である。
左頭頂葉後頭部に急性期脳梗塞、右頭頂葉も亜急性期の脳梗塞が認められ
た。上下肢の不全麻痺と失語症が出現した。【評価及び統合と解釈】SLTA
の結果、理解面は聴理解・文字理解ともに単語レベルで良好であった。漢
字は音読、読解ともに全て正答であった。仮名単語の音読は、正答もしく
はヒント正答であった。助詞や助動詞で淀みや錯読が多くみられた。表出
面は、書字で仮名と漢字の両方に困難を伴っていた。画数が多くなるほど、
形態の崩れ、脱落、付加、保続がみられた。コース立方体検査、模写課題
は実施困難であった。書字について、ロゴジェン・モデルに当てはめると
文字出力辞書から書字に至るまでのルートが損傷されたと考えた。【訓練と
最終評価】訓練として、書字練習では文字の構成の理解を深めるために写
字やなぞり書き、セラピストが本症例の手を持って他動的に動かして書字
した後に、運動覚性書字再生を行った。約1ヶ月後の SLTA では、平仮名
は音読・読解・書字の項目が全て改善した。特に、書字で大幅に改善した。
漢字は、書字に大幅な改善はみられなかった。【考察】最終評価では、書字
は漢字と平仮名の成績に大幅な差がみられた。岩田は、仮名は運筆の方が
重要になると述べている。漢字は、図形として複雑で視覚的な構成が重要
となる。本症例は視空間認知や構成障害を合併しており、漢字の失書につ
いて改善が困難であったと考えた。平仮名については、運動覚性書字再生
が有用であったと考えた。