平成28年度市政方針を掲載しました(総合政策室)

平成 28 年度
根 室 市
平成28年度
市政方針
Ⅰ はじめに
………… 1
Ⅱ 市政執行の基本姿勢
………… 3
Ⅲ 平成28年度重点施策
………… 6
(1)「北洋サケ・マス対策」と「沿岸漁業」の振興
(2)高潮対策による地域防災力の向上
…… 7
………………… 8
(3)「少子化対策」と「地方創生」の加速化
…………… 9
(4)市立根室病院の経営健全化と
「市民に愛される病院」の実現
………… 12
(5)北方領土問題の解決に向けた
関係諸施策の促進
………… 13
Ⅳ 主要施策
……… 14
(1)互いに支え合い健やかに暮らせるまち
………… 14
(2)安全・安心に暮らせる都市基盤の充実したまち … 15
(3)個性を伸ばし豊かな心と感性を育むまち
……… 16
(4)自然と共生し優れた環境を未来へつなぐまち …… 17
(5)地域資源を活かし活力と躍動感に満ちたまち …… 18
(6)北方領土の復帰を目指すまち
…………………… 21
(7)市民協働の推進と開かれた行政運営
Ⅴ む す び
…………… 22
……… 24
Ⅰ はじめに
平成28年市議会3月定例月議会の開会にあたり、市政執行
の所信を申し上げます。
基幹産業である水産業は今、大きな変革期にあります。
漁業就業者は、日ロ関係の影響を目の当たりにする地政学的
環境など、国際情勢の変化等によって、この40年で半減し、そ
の高齢化も著しく進行しています。
全国的な傾向を踏まえた時、漁業者数の現状維持は困難とさ
れており、将来的には、その半減した漁業者が生産を担っていく
ことは必然的とも言えます。
こうした状況の下、漁業の現場において、将来に夢を持ちにく
い雰囲気が充満する事態、また、それを悲観するようなことがあ
ってはなりません。
漁業生産の縮小は、市中経済の根幹を揺るがすものでありま
すが、大きな変化の渦中にあるからこそ、その時代に応じて変わ
るべきものは変わり、守るべきものは守りながら、あるべき水産
業の姿を考え、実践していくことが重要であります。
我が国は今、不透明感が見られるものの、アベノミクスによっ
て大きな果実を生み出したとされ、国民総所得は増加し、本年度
の税収も約15兆円増えるとの推計があります。
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企業収益や有効求人倍率は、統計開始以来、最高の水準となっ
ており、これらの動きは、経済の好循環が生まれ始めていること
を期待させるものであります。
しかしながら、本市においては、国の経済政策の効果が行き渡
らず、経済の好循環が進展していない状況にあります。
景気動向調査等の推移から見ても、多くの業種において業況
判断はマイナス幅を拡大しており、依然として低調傾向が示さ
れています。
こうした動向の背景には、サケ・マス問題やサンマ漁の記録的
な不漁による漁獲量の減少、更には、これらに起因した関連業界
の落込みや消費者の購買意欲の低迷などが、中小企業等の業績
に大きく影響を及ぼしているものと考えます。
私は、先の所信表明において、この3期目を「故郷・根室」、
「水産都市・根室」の再生を実現するために、大きな改革も厭わ
ない最も重要な時期であると申し上げました。
この想いは、決して揺らぐことはありません。
根室市が持つ可能性と潜在する力を最大限に引き出すために、
その先頭に立ち、責任をしっかりと果たして参ります。
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Ⅱ 市政執行の基本姿勢
最初に、市政執行に当たる基本姿勢を申し上げます。
(市民の力を最大化する市政)
その第1は、協働する市政の推進であります。
昨年10月、人口問題に関する5か年計画として、
「根室市創
生総合戦略」を策定いたしました。
市民一人ひとりの活躍なくして、根室市創生の実現はありま
せん。
「子どもたちに誇れる、まち・ひと・しごと」
。
策定作業に当たって、この理念を掲げたことは、まさに私たち
大人の果たすべき決意表明とも言えるものであり、本市が策定
した総合戦略については、策定に至るまでの地元金融機関や民
間企業、労働団体等の建設的な議論を指し、
「官民の連携度は非
常に高い」とする学識者の評価があります。
市民皆様と行政が同じ危機感を共有し、互いに成すべきこと
を着実に成していくことで、根室市の未来を必ずや切り拓いて
いく大きな力となると信じています。
市民皆様や産業経済界、金融機関、更には、労働団体や大学等
との連携を一層強化し、地域課題の解決に向けて、私自身、その
リーダーシップを発揮して参ります。
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(対話と市民合意を重視する市政)
第2に、対話重視の市政の推進であります。
私は、先の市政方針において、市民の皆様に対し、新しい体育
館建設についての検討を提案いたしました。
市民皆様と対話を重ねる中で、総合的に判断した結果であり、
この方針は、昨年度策定した「第9期根室市総合計画」にお示し
のとおりであります。
如何にして実効性を高めるのか、財源確保が最大の課題とい
う指摘がありますが、市民皆様の総意であればこそ、力を合わ
せ、着実に検討を進めていこうではありませんか。
この度、体育館建設に関わる将来負担への備えや、施設整備の
機運を高める狙いから、本議会に、新たな基金の創設などの関連
条例、並びに補正予算を提案いたしました。
本年度は、施設の機能などの多様なニーズの把握や、規模に応
じた基金積立て目標額の設定など、市民対話を重ねていくこと
が何よりも重要となります。
体育館建設の検討を始め、市政運営全般にわたって、より一層、
分かりやすく親しみやすい情報発信のほか、様々な場面を通し
て協議を重ね、市民とともに考え、行動する市政を実践して参り
ます。
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(前例にとらわれず、果敢に挑戦する市政)
第3に、挑戦する市政の推進であります。
人口減少が進む中において、
「安定した雇用環境を創る」
、これ
は大いなる挑戦であります。
時間が掛かっても、市民皆様と力をあわせ、果敢に挑戦してい
くことが、市民生活を向上させ、子どもたちの未来、そして根室
市の未来を創るものと考えています。
本市の人口問題を考える上で、一番に認識しなければならな
いのは、経済と雇用環境であります。
基幹産業である水産業を中心に、経済・雇用対策をしっかりと
強化し、そこに「親となる世代の労働力を呼び込む」ことが重要
であり、これが出来なければ、出生率が向上しても人口減少の抑
制には繋がりません。
また、それを更に、定住化という好循環に繋げるためには、採
用側の企業等における就労環境の充実を始め、子育て支援や教
育環境の充実などの取組みが不可欠であります。
本年度は、国の平成27年度補正予算を活用し、首都圏等にお
いて人材確保対策を展開するなど、
「トライアル・アンド・エラ
ー」
、いわゆる、失敗を恐れずに試行錯誤を重ねながら、挑戦す
る市政を実践して参ります。
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Ⅲ 平成 28 年度重点施策
次に、重点施策について申し上げます。
今後10年のまちづくりに向けて、私たちは、その目指すべき
将来都市像を掲げました。
海と大地に根ざす『生産・交流都市』ねむろ。
その姿は、
「全国屈指の水産都市」であり、
「世界に誇る自然と
食の交流都市」であり、そしてまた、
「北方四島との交流拠点都
市」であります。
全ての市民が主役として、生きいきと暮らすことができる、
『生産交流都市』の実現を目指し、
一つとして、「北洋サケ・マス対策」と「沿岸漁業」の振興
二つとして、「高潮対策による地域防災力の向上」
三つとして、「少子化対策」と「地方創生」の加速化
四つとして、市立根室病院の経営健全化と「市民に愛される
病院」の実現
五つとして、
「北方領土問題の解決に向けた関係諸施策の促進」
この五つを重点施策として位置付け、関連する施策を展開し
て参ります。
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(1) 「北洋サケ・マス対策」と「沿岸漁業」の振興
重点施策の1つ目は、「北洋サケ・マス対策」であります。
本年度の最重要施策であり、最大限のエネルギーと態勢をも
って、その対応に努めて参ります。
ロシア水域における流し網漁業禁止法の成立は、本市にとっ
て、戦後6度目の大打撃となりました。
対策本部の皆様とともに中央要請を重ねた結果、全体で百億
円を超える国の補正予算が措置されたところであり、ここから
が正念場であります。
沿岸漁業の振興に当たっては、本年度、新たなホタテ漁場づく
りに向けて、漁場調査や底質改善などの大規模な漁場造成に着
手して参ります。
また、持続可能な漁業の構築に向けては、新たな取組みとして、
海洋、漁業、加工流通分野などの学識者会議を設置し、沿岸漁業
における生産力の可能性と、その利活用を始めとし、目指すべき
将来像や事業展開についての調査研究を進めて参ります。
更には、これらの取組みを着実に前進させるために、水産経済
部の組織を改編し、人員増や部門再編などの体制強化を図ると
ともに、関係団体等との連携を一層強化し、一致してこの窮地を
乗り越えて参ります。
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(2) 高潮対策による地域防災力の向上
重点施策の2つ目は、「地域防災」であります。
気候変化に伴う集中豪雨や高潮によって、緑町や梅ヶ枝町を
始め、市内各所は度重なる被害に見舞われました。
本市にとっては喫緊の課題であり、市民皆様の理解を得なが
ら、関係機関とも連携し、速やかに対策を実行して参ります。
高潮対策については、将来にわたる抜本対策として弥生町地
区に防潮堤を設置いたしますが、本年度、その調査と完成までの
暫定工を行って参ります。
浸水対策については、昨年度、緑町に排水ポンプ枡を設置した
ところであり、引き続き、雨水処理能力の増強を図るため、浸水
区域の見直し作業を進めて参ります。
「おびただしい被害をニュースで拝見しました」
「ささやかですが故郷・根室の高潮対策にご活用を」
これは、東京都や大阪府在住の青年から、ふるさと納税の際に
添えられたメッセージであります。
高潮対策などの地域防災力の向上に当たっては、全国の皆様
から頂戴した寄附金も活用し、市民の皆様が安全・安心な日々を
過ごすことができるよう、必要な防災対策はもとより、減災対策
を推進して参ります。
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(3) 「少子化対策」と「地方創生」の加速化
重点施策の3つ目は、「地方創生」であります。
少子化や経済、雇用対策の充実を図るなど、
「根室市創生総合
戦略」を加速的に推進して参ります。
(子育ての希望をかなえる)
子育て環境の向上に当たっては、出会いから結婚、妊娠、出産、
育児まで、切れ目のない子育て支援の展開が求められています。
昨年度は、先の所信表明でお約束したとおり、多子世帯におけ
る第3子目以降の保育所や幼稚園の保育料、小中学校の給食費
の無料化を実施いたしました。
本年度は、こども医療費の助成範囲を拡大し、従来の小学生以
下の入院・入院外医療費に加え、新たに、中学・高校生の入院医
療費を対象といたします。
また、保育施設の老朽化対策や、多様な保育ニーズへ対応する
ために、市立落石へき地保育所の新築に向けて実施設計に着手
するほか、厚床・落石へき地季節保育所の常設化の実現に向け、
その体制整備の検討を進めて参ります。
民間の幼稚園や保育園についても、多様化する子育てニーズ
に応えようとする取組みが加速化しています。
根室カトリック幼稚園は、本年度、市内初の「認定こども園」
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に移行した上で、開園時間の延長のほか、新たに給食事業を実施
します。
しらかば保育園は、市立成央小学校の隣接地に移転新築した
上で、来年度には定員の拡大のほか、新たに一時保育事業を展開
する計画であり、市としても、その建替整備を支援し、保育の入
所枠の確保に繋げて参ります。
子育て世代の経済的な負担軽減はもとより、出産支援金の助
成、乳児家庭の訪問相談、延長保育や一時保育、不妊・不育症治
療費の助成、更には、子育てサークル活動に対する支援など、支
援の充実に努めて参りました。
本年度は、新たに1歳児とその保護者の健康相談を実施し、子
育て環境を更に充実して参ります。
最近、乳幼児を抱えたお母さんから、お話を聞かせていただく
機会が増えました。
子育てを心から楽しんでいる、或いは、子どもと共に地域行事
を楽しんでいる、そういった姿勢には共鳴を覚えましたし、まさ
に「子どもは地域の宝」との想いであります。
子育て支援に当たっては、本当の意味で「喜ばれる支援」、
「未
来志向の支援」
、
「市民合意のある支援」となるよう、身近で利用
しやすい支援を展開して参ります。
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(新しい人の流れをつくる)
経済・雇用対策に当たっては、定住促進に加えて、UIターン
の促進から、観光客等の交流人口の拡大、6次産業化等による起
業の創出、移住者の獲得に至るまで、多面的に「ひと」を呼び込
む故郷回帰の促進が求められています。
本年度は、新たな取組みとして、介護福祉士を対象とする返済
免除型の修学資金貸付制度を創設し、不足する介護従事者のU
Iターンを促進いたします。
また、北海道と根室管内1市4町の広域連携事業として、観光
の産業化に必要な課題に対応し、観光事業者に対する通年事業
化のための支援や、グローバル観光の推進のための環境整備な
どを展開して、UIターン者や若年者等の雇用機会の確保に繋
げて参ります。
加えて、首都圏での企業説明会の実施、就業者の住居費助成、
職場体験や資格取得支援など、関連する商工業の振興策を一体
的に推進し、新しい人の流れを促して参ります。
なお、雇用環境や住環境の良さだけでは、UIターンの獲得に
は繋がりません。
まち全体の活気と熱意こそが決め手であり、市民皆様と力を
あわせ、
「選ばれるまち」の実現に努めて参ります。
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(4) 市立根室病院の経営健全化と「市民に愛される病院」
の実現
重点施策の4つ目は、
「病院の経営健全化」であります。
地域センター病院として、持続的かつ安定的に地域医療の中
心的役割を果たしていくためには、経営の健全化は重要な課題
であり、そのためには、良質な医療の提供と市民に愛される病院
の実現が不可欠であります。
医療の提供については、分娩の再開はもとより、公立病院とし
て担わなければならない役割や、患者ニーズを踏まえた診療科
の充実が必要であり、医師を始め、薬剤師や看護師、医療技術者
などの確保と定着に向け、精力的に行動して参ります。
愛される病院の実現に向けては、職員の接遇向上と患者サー
ビスの充実を図るとともに、市民公開講座など、市民と医療従事
者が接する機会を充実するなど、一層の相互理解を促進して参
ります。
昨年度、地方公営企業法の全部適用へ移行したところであり、
病院事業管理者の下、収益の向上や費用の抑制はもとより、医療
と介護の連携など、今後の高齢化の進行を見据えた国の方針も
踏まえ、職員一丸となって改革を進めて参ります。
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(5) 北方領土問題の解決に向けた関係諸施策の促進
重点施策の5つ目は、「北方領土問題」であります。
安倍政権の誕生以来、日ロ首脳間における個人的な信頼関係
は、一層深まっています。
あらゆる機会を見つけて、政治対話を重ねる姿には、領土問題
の解決、平和条約の締結に向けて、関係強化を一歩一歩進める大
変強い意志を感じています。
昨年、ロシア連邦によるクリミアの編入、ウクライナ問題やシ
リア情勢の悪化、更には、原油安によるロシア経済の低迷など、
複雑な事態が重なりました。
国際情勢は、予断を許さない状況が続いていますが、北方領土
問題は当事者である日本とロシアの二国間で解決すべき問題で
あります。
直接的な対話を粘り強く、積極的に展開されるよう強く期待
しているところであり、今まさに、国の外交交渉を下支えするた
めの国民世論の形成が重要であります。
引き続き、「北方領土返還要求運動原点の地」の責務として、
市民はもとより、根室管内住民が一丸となった運動を積極的に
展開し、返還が実現するその日まで、中心的な役割をしっかりと
果たして参ります。
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Ⅳ 主要施策
次に、主要施策について、分野別に順次申し上げます。
(1) 互いに支え合い健やかに暮らせるまち
最初に、「医療福祉」についてであります。
互いに支え合い、健やかに暮らせるまちづくりが求められて
います。
そのため、地域医療の充実に取組み、医療、福祉、介護に関す
る人材育成や連携体制の強化など、市民が安心して暮らせる医
療・福祉環境の向上に努めて参ります。
高齢者福祉については、新たな取組みとして、住民ボランティ
アやモデル町会などの協力を得ながら、高齢者を地域で見守る
仕組みづくりを構築して参ります。
また、高齢者の外出支援や社会活動への積極的な参加を目的
とするバス等無料乗車券の交付については、一部負担をいただ
く制度に改正し、将来にわたり安定かつ持続的な制度運用に努
めて参ります。
高齢者介護については、介護福祉士を志す学生等を対象に、新
たな修学資金制度を創設し、不足する介護従事者の確保対策を
強化して参ります。
障がい者福祉については、難聴児を抱える世帯を対象として、
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新たに、補聴器の購入費助成制度を創設し、地域で安心して生活
できる環境づくりに取組んで参ります。
(2) 安全・安心に暮らせる都市基盤の充実したまち
次に、「都市基盤」についてであります。
地域の防災力の強化など、安全・安心に暮らせる都市基盤の充
実したまちが求められています。
そのため、防災・減災対策については、昨年度の「高波・高潮
災害予防計画」の策定に加えて、地域住民が主体となる、
「地域
津波避難計画」の策定を促して参ります。
また、自主防災組織の活動支援などを継続するほか、新たな取
組みとして、市内で「地域防災推進員」を育成し、防災活動の活
性化を促進するなど、地域防災力の向上に努めて参ります。
消防・救急については、救急救命士1名を養成し、総勢10名
体制とするほか、消防ポンプ車や通信指令設備、救急資機材、厚
床地区等に耐震性防火水槽を整備して参ります。
市営墓地については、西浜町墓地に「合同納骨塚」
、いわゆる
合葬墓を整備するとともに、市外在住者に対する御墓の代行清
掃を制度化し、多様化するニーズに対応して参ります。
住宅環境については、市営住宅光洋団地の後期整備計画を推
進するために、実施設計等に着手して参ります。
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道路整備については、本年度、友知沖根婦線の整備を完了し、
新たに、落石無線線舗装整備のための測量調査に着手するほか、
除雪車両の更新や防雪柵の整備に取組むなど、安全安心な生活
環境の維持に努めて参ります。
広域交通網の整備については、釧根トライアングル整備構想
を核として、北海道横断自動車道釧路・根室間の早期着手、国道
44号根室防雪の早期完成に向け、周辺自治体や関係団体と連
携して、国等に対し強く要請して参ります。
重要港湾根室港については、国の直轄事業として、花咲港区に
おける岸壁や臨港道路の改良整備を促進するとともに、根室港
区においては、近年の高潮災害を踏まえた防災・減災対策につい
て、国に対し強く要請して参ります。
(3) 個性を伸ばし豊かな心と感性を育むまち
次に、「教育文化」についてであります。
昨年度、
「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」の一部
を改正する法律に基づき、
「総合教育会議」を設置いたしました。
総合教育会議では、本市における教育政策の展開に当たり、今
後10年にわたる展開方針を確認し、その基本的な方向性を共
有したところであり、学校・家庭・地域が連携して、子どもを育
てる環境づくりに努めるとともに、確かな学力向上の取組みの
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着実な推進、家庭での学習習慣や規則正しい生活習慣の定着に
努めて参ります。
また、児童生徒が安心して充実した学校生活を送ることがで
きるよう、校舎の改築など、教育環境の充実に努めて参ります。
更には、市民皆様の多様な学習活動を支援し、学びを高める生
涯学習の振興に努めるとともに、計画的な社会教育施設の整備
について、教育委員会を始め、利用者や関係団体等との議論を深
めて参ります。
なお、教育全般に関わる諸施策については、所管する教育委員
会と十分に連携し取り進めて参ります。
(4) 自然と共生し優れた環境を未来へつなぐまち
次に、「自然環境」についてであります。
私たちは、自然と共生し、優れた環境を未来へ繋いでいくこと
が求められています。
そのため、北海道を始め、関係機関等と連携強化を図り、自然
環境の魅力を国内外に発信し、恵まれた自然資源の賢明かつ持
続可能な利用に繋げて参ります。
自然保護に当たっては、春国岱原生野鳥公園における木道の
復旧整備を進めるとともに、風蓮湖周辺の保護、保全に向け、自
然保護に関する思想の醸成に努めて参ります。
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また、狩猟免許取得に要する費用の助成などを通じて、高齢化
する有害鳥獣捕獲者の後継者育成に努め、エゾシカ等による環
境被害などの防止対策を強化して参ります。
(5) 地域資源を活かし活力と躍動感に満ちたまち
次に、「産業経済」についてであります。
地域資源を活かし、活力と躍動感に満ちたまちづくりが求め
られています。
基幹産業である水産業においては、安定かつ持続可能な漁業
の実現に向け、北海道を始め市内四漁協との連携を図りながら、
「浜の活力再生広域プラン」の推進を支援して参ります。
また、漁業の担い手対策として、新規就業者への研修費用の助
成に加え、新規漁業就業者の受入れ機会の拡充に向けた態勢づ
くりなど、精力的に市内四漁協との協議を重ねて参ります。
沿岸漁業については、昨年度策定の「根室市沿岸漁業振興計画」
に基づき、経営安定や資源管理の推進等に取組むとともに、近
年、漁獲量が増加しているブリなどの暖流系回遊魚を、商品価値
の高い新たな魚種として確立するために、関係機関と連携し有
効な手段の検討を進めて参ります。
水産食品製造業の振興に向けては、産学官連携による水産食
品研究開発の拡充や、未利用資源に関する研究開発を継続する
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とともに、衛生管理やHACCP認証に関する各種情報提供に
努めて参ります。
水産物の販路拡大に向けては、北海道一の水揚げ金額を誇る
新鮮で安全・安心な水産物を広く全国にPRすることはもとよ
り、魚食の普及や販路拡大を図る「ねむろ水産物普及推進協議
会」の活動を、一層積極的に展開して参ります。
加えて、ふるさと納税者に対する記念品の贈呈などを通して、
根室産品の更なる普及宣伝に努めて参ります。
農業の振興については、農地の保持と適正な管理を促進し、農
村の持つ多面的機能の発揮に努めるとともに、生乳生産量や牧
草収穫量の向上、生産コストの低減を図るため、草地改良や肥培
かんがい施設の整備を促進して参ります。
また、肥培かんがい施設の電源設備として、太陽光発電施設を
導入し、より一層の生産コストの低減を促進して参ります。
担い手育成に向けては、就農希望者の発掘、受入先や就農後の
支援のあり方について、関係機関と協議を進めるとともに、未婚
対策として、出会いの機会創出に努めて参ります。
なお、TPP協定については、農林水産事業者を始め、関係団
体等の不安は払拭されておらず、地域の実情に即した万全な対
応を確実に実行するよう、引き続き、国に強く求めて参ります。
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商工業の振興については、先ほど重点施策の中で申し上げた
ように、国の地方創生加速化交付金を活用し、労働力の確保と創
業者や後継者の育成に関する取組みを総合的かつ加速的に推進
して参ります。
商店街の振興については、各商店街と根室市商店連合会が、そ
れぞれ創意工夫を凝らした事業を展開しており、こうした取組
みを引き続き支援して参ります。
観光振興については、欧州客等をターゲットに、グローバルな
視点での受入環境の整備を進め、体験型観光メニューの充実を
促進するとともに、バードウオッチングを始めとしたエコツー
リズムの効果的なPR等を展開して参ります。
また、国内客に対しては「食」や「自然」、
「歴史」など本市固
有の魅力を首都圏において幅広く情報発信し、交流人口の拡大
に努めて参ります。
更に、交流人口の拡大に当たっては、バスや鉄道、航空機など、
各交通手段における結節機能を維持し、利便性の高い公共交通
体系の確保に努めて参ります。
なお、JR花咲線については、本市を訪れる観光客にとって欠
かせない路線であり、JR北海道を始め、
「花咲線沿線観光振興
協議会」に加盟する沿線自治体や観光協会等と連携し、その利便
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性向上や利用促進について検討を重ねて参ります。
移住交流については、都市部の団塊世代をターゲットとして、
長期滞在者の受入拡大に努める一方、移住者向け宅地取得の支
援や、UIターンに関する各種支援情報を発信し、本格移住者の
獲得に繋げて参ります。
なお、これらグローバル観光や移住交流の促進、更には、ふる
さと納税の推進に当たっては、訴求力の高い情報発信が不可欠
であり、本年度、
「(仮称)根室市シティプロモーション推進基本
方針」を策定し、本市の認知度向上のための戦略的な取組みを構
築して参ります。
(6) 北方領土の復帰を目指すまち
次に、「北方領土問題」についてであります。
元島民の高齢化が著しい現状を踏まえ、運動を先細りさせな
いためにも、後継者の育成を主眼に置き、関連する施策を展開し
て参ります。
啓発事業については、本年度、新しく「(仮称)北方領土資料
館」を開設し、関連する啓発施設との連携を強化しながら、領土
学習の普及を促進し、後継者の育成に努めていくことはもとよ
り、北方領土の長い歴史の中でも、有形財産として受け継がれな
がら、一般に公開されることの無かった「先人の営みの証」であ
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る、貴重な生活文化品の展示などを通じ、国民世論の喚起高揚に
繋げて参ります。
北方領土隣接地域の振興事業については、領土問題に起因す
る経済的負担を解消するため、新たな法整備も視野に入れた地
域振興策の実現を目指して、国や北海道等に対し、強力に要請し
て参ります。
北方領土の返還を視野に入れた社会基盤については、国策に
よる全額国費での重要港湾根室港や交流拠点の整備、道央圏と
繋ぐ高規格幹線道路の根室延伸など、その促進を国等に対し、引
き続き要請して参ります。
(7) 市民協働の推進と開かれた行政運営
最後に、「行政運営」についてであります。
富山県黒部市との「姉妹都市提携40周年」という節目の年を
迎えます。
これまで築き上げてきた両市の交流の軌跡を振り返り、また、
今後更なる友情の絆が深まることを祈念し、本市において記念
事業を開催いたします。
式典のほか、黒部市からは「第九を歌う会」を迎える計画であ
り、市内の音楽団体等と協議、調整を進め、節目の年に相応しい
盛大な集いとなるよう、取り進めて参ります。
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地域コミュニティについては、これまでも地域の繋がりの根
幹である町会への加入促進や、地域会館の計画的な整備に努め
てきたところであり、本年度、落石会館の新築に向けて実施設計
に着手し、施設面からもその維持、活性化に努めて参ります。
一方、超高齢社会や人口減少社会といった社会構造の変化に
対応しうる市役所の実現に向け、行政改革の取組みを継続して
いかなければなりません。
引き続き第6次行政改革に基づき、
「開かれた市政運営と市民
協働」、
「チャレンジする組織・人材」、
「計画的で持続可能な財政
運営」の確立に取組んで参ります。
特に、財政運営の健全化に向けては、危機的な状況を再認識し
なければなりません。
国は、地方の財政対策に当たり、上向きの景気動向を背景に、
地方税の大幅増収を前提とした対応を示しており、その反動か
ら地方交付税を抑制するとしておりますが、地方においては、税
収の大幅増を見込める情勢にはなく、本市に至っては予算編成
に際し、財政調整基金の取り崩しを余儀なくされており、財政基
盤の確立は急務であります。
本年度の予算編成は、歳出5%削減による枠配分方式をもっ
てしても、多額の財源不足が見込まれるなど、その編成作業は、
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終始、難航いたしました。
一般会計予算案の総額は、168億1千2百万円、前年度と比
較して2億7千万円、1.6%の減としたものの、増大する社会
保障関係費や他会計繰出金など、本市の財政運営は、極めて厳し
い局面を迎えております。
こうした状況を踏まえ、中長期の視点に立った財政運営や、都
市計画等まちづくりの視点も踏まえた公共施設の適正配置の検
討など、将来にわたり持続可能な市民サービスの確立を目指し、
関連する議論を更に深めて参ります。
Ⅴ むすび
以上、本年度の市政執行に臨む所信を申し上げました。
「51,828人」。
ふるさと納税5万人を達成いたしました。
今や根室市にとって、絶好の情報発信の機会となっています。
インターネットを通じた閲覧数は、ピーク時で月間27万件
を超えています。
これを裏付けるように、全国トップ30にランクインし、北海
道内では第2位を記録いたしました。
潜在的な市場規模は、2兆4千億円とされながらも、その実績
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は3%に満たない状況の「ふるさと納税」
。
機運は高まりつつも、その本格到来は、まだ先にあると言われ
ています。
「花咲かに」、
「サンマ」
、「トキシラズ」
。
先達が長きにわたり信頼を培ってきた「根室ブランド」
。
次は10万人の高みを目指し、ふるさと納税はもとより、観光、
UIターン、地場産品などあらゆる面で、全国の皆様に『選ばれ
るまち』、そしてまた、私の政治理念である『根室の再生・再興』
の実現に向けて、力強い歩みを進めて参ります。
市民、並びに市議会議員の皆様のご理解とご協力を、心からお
願い申し上げます。
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