一橋大学(前期)【倫理,政治・経済】解答例

一橋大学(前期)【倫理,政治・経済】解答例
Ⅰ
問1
問2
Ⅱ
問1
問2
1人間本性を含む「自然」が,「企画家たち」による「
攪乱」から可能な限り免れて放任され,自身の本性に従
って働く状態が「フェアプレイ」と呼ばれる。よって人
間の活動における「フェアプレイ」とは,各人が「利己
心」「同胞感情」「共感」という自身の本性をともに発
揮させることを意味し,これは他の本性による「利己心
」の調整も含む。こうして人間本性から,道徳秩序を含
む「一つの社会秩序が自生的に成立」する「論理」が説
明され,市場経済における「自由で自然な活動」の肯定
も導かれる。スミス理論の独自性は,このように放任に
よる人間本性の自発的発揮を原理として,人間社会の未
開から文明への「必然的」な進歩を説明した点にある。
2「共感」の本性を持つ各人が,行為者と観察者双方に
なることで内面化する偏りのない想像上の立場が「公平
な観察者」であり,それは「共感」をもとにした道徳判
断の基準となるもので,『道徳感情論』で論じられる。
(※『道徳感情論』は『道徳情操論』でも可)
1選挙の原則には,一定の年齢以上の全国民が有権者と
なる普通選挙,選挙人の投票の価値が平等な平等選挙,
選挙人の投票先を秘密にする秘密選挙,選挙人が投票を
強制されない自由選挙,一般の国民が長・議員を直接選
出する直接選挙がある。以上のうち,平等選挙を巡って
は国政選挙における選挙区間の「一票の格差」解消が,
自由選挙を巡っては国政選挙・地方選挙ともに低下傾向
が続く投票率の向上が課題となっている。
2衆議院議員の約6割を選ぶ小選挙区制は,各選挙区で
議員1人を選出することから,一般に,民意を集約した
二大政党制による政治の安定や政権交代が実現しやすい
という長所と,死票が多く少数派の意思が議席に反映さ
れにくいという短所が指摘される。もう一つの比例代表
制は政党の得票率に応じて議席を配分する制度であり,
有権者の意思が公平に議席に反映されるという長所と,
小党分立となり政局不安定という短所が指摘される。
Ⅲ
問1
問2
問3
1実質賃金は,名目賃金の実際の購買力を示すもので,
名目賃金の指数を消費者物価指数で割って算出される。
2労働者は名目賃金の変化を物価の変化よりも早く認識
するので,名目賃金の上昇に伴う貨幣錯覚により購買力
が増したと思った多数の労働者・家計が消費を増やし,
総需要の増大で労働需要も増えて,失業率が低下する。
3貨幣錯覚がとけたときに,労働者は物価上昇により実
際の購買力が増していなかったと気づくので,労働者の
賃上げ要求が強まると考えられる。その一方で,多数の
労働者・家計は増やしていた消費を抑制し,総需要,ひ
いては労働需要が停滞または減少して,不況や失業率上
昇が起きると考えられる。また,インフレ率の上昇が結
果的に失業率の上昇をもたらすので,景気刺激のため金
融緩和によってインフレ率を上昇させるような政策を採
っても,結局,失業率は低下せず,インフレだけが継続
するような状況に至ると考えられる。