2016年3・4月号 健康コラム

 健康コラム 3,4月号
油、脂質というとからだに悪いイメージがありますが、近頃、えごま油
やアマニ油、ココナッツオイルなどの油が健康によいと話題になって
いますね。これらの油は肉や魚などの食品に含まれる油や、一般的
な植物油と何が違うのでしょうか?
この機会に、脂質について考えてみましょう。
脂質のはたらき
・エネルギー源となる
・細胞膜やホルモンをつくる材料になる
・脂溶性ビタミン(A,D,E,K)の吸収をサポートする
糖質やたんぱく質よりも、1gあたり2倍以上のエネルギーを生み
出すことから、人はエネルギー源として優先的に脂質を蓄積すると
考えられています。
現代人の一般的な食生活では、脂質が不足することはあまりな
く、反対に過剰摂取の弊害のほうが大きいことは広く知られていま
す。脂質のとりすぎは、肥満や生活習慣病の原因となります。摂取
は適量に抑えましょう。
脂質を構成する「脂肪酸」
脂質は「脂肪酸」をベースに構成されています。科学的な構造のち
がいによってさまざまな分類があり、その種類によってはたらきが
異なります。
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脂肪酸の種類と特徴
種類
飽和脂肪酸
代表例
パルミチン酸
ステアリン酸
ミリスチン酸
酪酸
ラウリン酸
一価不飽
和脂肪酸
オレイン酸
リノール酸
不
飽
和
脂
肪
酸
ω-6
系
多
価
不
飽
和
脂
肪
酸
γ-リノレン酸
アラキドン酸
α-リノレン酸
ω-3
系
EPA、DHA
多い食品
特徴
・液体になる温度が高く、常
温で固体のものが多い
・脳出血を予防する
・とりすぎると血液中の中性
バターなど乳製品
脂肪やコレステロールを増や
す
ヤシ油・カカオ油な ・酸化されにくい
ど
肉類の脂肪
・室温で液体。比較的安定し
オリーブ油、こめ
ていて、加熱しても酸化され
油、ナタネ油(キャ にくい
ノーラ油)など
・血中のコレステロール低下
作用がある
サフラワー油、ヒマ
ワリ油、大豆油、
・室温で液体。不安定で加熱
コーン油、綿実油な などにより酸化されやすい
ど
・短期的に血中コレステロー
ルを下げ、動脈硬化を予防す
月見草オイル、母乳 る
など
・とりすぎるとHDL(善玉)
コレステロールを減らし、動
脈硬化や血栓、アレルギーな
肉類の脂肪、レ
バー、卵白、サザエ どを助長する
など
シソ油、エゴマ油、 ・室温で液体。不安定で酸化
アマニ油など
しやすい
・血中の中性脂肪を下げ、
HDL(善玉)コレステロール
を増やす。動脈硬化を抑制
し、血栓を防ぐ。
魚油に多い
・とりすぎると出血しやすく
なる
どれもからだに必要な脂肪酸で、偏ってとるとさまざまな弊害があ
ることがわかっています。
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健康効果の高い油のちがいを比べてみましょう
ココナッツオイル
主な脂肪
酸
えごま油
α-リノレン酸
(ω-3系脂肪
酸)
ラウリン酸
(中鎖脂肪酸※)
オリーブオイル
オレイン酸
(一価不飽和脂肪
酸)
加熱
×不可
○可
○可
保存方法
開封後は
冷蔵保存
常温
冷暗所
(冷蔵庫不可)
性質
固まりにくい
25度以下で
固まりやすい
10度以下で
固まりやすい
一日の摂
取目安量
小さじ1杯
大さじ1杯
大さじ1杯
えごま油とアマニ油とのちがいは?
アマニ油には、えごま油と同様、α-リノレン酸が豊富に含
まれています。価格や風味の好み、手に入りやすさなどで
選ぶと良いでしょう。
※中鎖脂肪酸とは?
一般的な油に比べ、消化吸収や代謝が速く、効率良くエネ
ルギーに分解されます。脂肪酸の中でもっとも脂肪になり
にくく、体内に余分なエネルギーをため込みません。その
ため、肥満の予防や低栄養の改善、ダイエット効果などが
期待されています。
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脂質の摂り方
現代の食生活では、脂質を摂り過ぎている傾向にあります。特にω
-6系脂肪酸を摂り過ぎていて、ω-3系脂肪酸は不足しがちです。
単純に現在の食事にω-3系の油をプラスするだけでは、全体として
脂質の過剰摂取になり体重が増加する可能性があります。
体重増加
いい油を食べたのに・・・
各脂肪酸の摂取バランスは、飽和脂肪酸:一価不飽和脂肪酸:多価
不飽和脂肪酸=3:4:3が理想と言われています。このバランス
に近づけるためには、摂り過ぎている傾向にあるω-6系脂肪酸(加
工食品にも多いので注意)を減らし、ω-3系脂肪酸を増やすことが
大切です。
不飽和脂肪酸は酸化されやすいので、できるだけ新鮮な食品でとり
ましょう。古くなった食用油や魚の干物などは避けたほうが安心で
す。
まずはご自身の食生活を
振り返ってみましょう
<参考文献>
メディカ出版 臨床栄養ディクショナリー
西東社 図解栄養の基本がよくわかる事典
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