健康コラム 3,4月号 油、脂質というとからだに悪いイメージがありますが、近頃、えごま油 やアマニ油、ココナッツオイルなどの油が健康によいと話題になって いますね。これらの油は肉や魚などの食品に含まれる油や、一般的 な植物油と何が違うのでしょうか? この機会に、脂質について考えてみましょう。 脂質のはたらき ・エネルギー源となる ・細胞膜やホルモンをつくる材料になる ・脂溶性ビタミン(A,D,E,K)の吸収をサポートする 糖質やたんぱく質よりも、1gあたり2倍以上のエネルギーを生み 出すことから、人はエネルギー源として優先的に脂質を蓄積すると 考えられています。 現代人の一般的な食生活では、脂質が不足することはあまりな く、反対に過剰摂取の弊害のほうが大きいことは広く知られていま す。脂質のとりすぎは、肥満や生活習慣病の原因となります。摂取 は適量に抑えましょう。 脂質を構成する「脂肪酸」 脂質は「脂肪酸」をベースに構成されています。科学的な構造のち がいによってさまざまな分類があり、その種類によってはたらきが 異なります。 1 / 4 ページ 脂肪酸の種類と特徴 種類 飽和脂肪酸 代表例 パルミチン酸 ステアリン酸 ミリスチン酸 酪酸 ラウリン酸 一価不飽 和脂肪酸 オレイン酸 リノール酸 不 飽 和 脂 肪 酸 ω-6 系 多 価 不 飽 和 脂 肪 酸 γ-リノレン酸 アラキドン酸 α-リノレン酸 ω-3 系 EPA、DHA 多い食品 特徴 ・液体になる温度が高く、常 温で固体のものが多い ・脳出血を予防する ・とりすぎると血液中の中性 バターなど乳製品 脂肪やコレステロールを増や す ヤシ油・カカオ油な ・酸化されにくい ど 肉類の脂肪 ・室温で液体。比較的安定し オリーブ油、こめ ていて、加熱しても酸化され 油、ナタネ油(キャ にくい ノーラ油)など ・血中のコレステロール低下 作用がある サフラワー油、ヒマ ワリ油、大豆油、 ・室温で液体。不安定で加熱 コーン油、綿実油な などにより酸化されやすい ど ・短期的に血中コレステロー ルを下げ、動脈硬化を予防す 月見草オイル、母乳 る など ・とりすぎるとHDL(善玉) コレステロールを減らし、動 脈硬化や血栓、アレルギーな 肉類の脂肪、レ バー、卵白、サザエ どを助長する など シソ油、エゴマ油、 ・室温で液体。不安定で酸化 アマニ油など しやすい ・血中の中性脂肪を下げ、 HDL(善玉)コレステロール を増やす。動脈硬化を抑制 し、血栓を防ぐ。 魚油に多い ・とりすぎると出血しやすく なる どれもからだに必要な脂肪酸で、偏ってとるとさまざまな弊害があ ることがわかっています。 2 / 4 ページ 健康効果の高い油のちがいを比べてみましょう ココナッツオイル 主な脂肪 酸 えごま油 α-リノレン酸 (ω-3系脂肪 酸) ラウリン酸 (中鎖脂肪酸※) オリーブオイル オレイン酸 (一価不飽和脂肪 酸) 加熱 ×不可 ○可 ○可 保存方法 開封後は 冷蔵保存 常温 冷暗所 (冷蔵庫不可) 性質 固まりにくい 25度以下で 固まりやすい 10度以下で 固まりやすい 一日の摂 取目安量 小さじ1杯 大さじ1杯 大さじ1杯 えごま油とアマニ油とのちがいは? アマニ油には、えごま油と同様、α-リノレン酸が豊富に含 まれています。価格や風味の好み、手に入りやすさなどで 選ぶと良いでしょう。 ※中鎖脂肪酸とは? 一般的な油に比べ、消化吸収や代謝が速く、効率良くエネ ルギーに分解されます。脂肪酸の中でもっとも脂肪になり にくく、体内に余分なエネルギーをため込みません。その ため、肥満の予防や低栄養の改善、ダイエット効果などが 期待されています。 3 / 4 ページ 脂質の摂り方 現代の食生活では、脂質を摂り過ぎている傾向にあります。特にω -6系脂肪酸を摂り過ぎていて、ω-3系脂肪酸は不足しがちです。 単純に現在の食事にω-3系の油をプラスするだけでは、全体として 脂質の過剰摂取になり体重が増加する可能性があります。 体重増加 いい油を食べたのに・・・ 各脂肪酸の摂取バランスは、飽和脂肪酸:一価不飽和脂肪酸:多価 不飽和脂肪酸=3:4:3が理想と言われています。このバランス に近づけるためには、摂り過ぎている傾向にあるω-6系脂肪酸(加 工食品にも多いので注意)を減らし、ω-3系脂肪酸を増やすことが 大切です。 不飽和脂肪酸は酸化されやすいので、できるだけ新鮮な食品でとり ましょう。古くなった食用油や魚の干物などは避けたほうが安心で す。 まずはご自身の食生活を 振り返ってみましょう <参考文献> メディカ出版 臨床栄養ディクショナリー 西東社 図解栄養の基本がよくわかる事典 4 / 4 ページ
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