<かはくのモノ語りワゴン> 2016 年 2 月 29 日 デジタル?アナログ? ■活動場所:地球館 2 階 ■担当研究者:前島正裕 ■ワゴン担当:須藤 ■所要時間:5 分程度 ■へえポイント *デジタルは新しい、電気という意味ではない *計算尺はとても便利な計算器だった ■プログラムのねらい 現代社会の様々な機器に使われている“デジタル”という言葉を正しく理解することで、 展示の様々な機械品にアナログやデジタルがどのように使われているか、またどんな工夫 がなされているかなどの興味をもち、それぞれの展示品への自己学習へとつなげる。 ■プログラムの流れ ①そろばん、機械式計算機、電卓をワゴン上に置き、どれがデジタル計算機か答えてもらう ②計算尺について ③アナログとデジテルの違い ④体温計の紹介と関連展示紹介 ■アイテム: ①タイガー機械式計算機 ②電卓 ③そろばん ④手作り計算尺 ⑤アルコール式温度計 ⑥デジタル体温計 ■パネル ■アイテム一覧 ■展開例 説明内容/セリフ 1 どれが デジタル? 動作・注意点 こちらは全て計算機です。こちらの2つは玉を アイテム①、 動かして計算を行うソロバンと、歯車で計算を行 ②、③ う機械式の計算機です。どちらも 1980 年ごろまで そろばん、電 日本で広く使われていました。そしてこちらは今 卓、タイガー計 も皆さんが使っている電子計算機、いわゆる電卓 算器 です。電卓は、 『デジタル計算機』とも呼ばれるこ とがありますが、そもそも“デジタル”とはどう いう意味かみなさん知っていますか? 電気を使う機械? 多くの方がデジタルと聞くと、電気を使う機械 または新しい機械と思いがちですが、デジタルか アナログかの区別に電気を使っていることや新し さは関係ありません。実は、こちらに並んだ2つ もデジタル計算機と呼べるものなのです。 2 計算尺 これらが全てデジタル計算機なら、アナログ計 アイテム④ 算機はいったいどんなものか気になりますよね。 計算尺 こちらがアナログ計算機の1つ、『計算尺』です。 ただのものさしのように見えますが、いったい どのように使うのか分かりますか? 手にとって試してみてください。 分からない・・・ これは今の計算機のようにどんな計算もできる パネル① 計算尺の計算方 めの道具です。試しに 2×3 をやってみましょう。 法 まず、上の黄色い棒についた目盛りの 1 を、掛け わけでなく、掛け算や割り算だけを簡単に行うた 合わせたい数字の 2 のところにあわせます。これ で終わりです。あとは目盛りを読むだけ。2×3 な ら、上の棒の 3 のところにあった下の棒の目盛り が答えです。ちゃんと 6 がきていますね。同じく 2×4、2×5 もちゃんと答えが出ています。 計算尺の便利なところは、小数点の計算も簡単 にできるところです。例えば 2.3×3.9 のような計 算はすぐにはできません。答えは 8.97 ですがこれ だと大体 9 ぐらいだとすぐに分かります。計算尺 は持ち運びやすく、誰でもすぐに計算できるため、 電卓が普及する 1980 年ごろまで多くの研究者や 技術者たちが使ってきました。 3 アナログと ではデジタル計算機と呼べるこの3つと、この 計算尺では、何が違うのでしょう? デジタルの 違い 例えばこのソロバンと比べてみます。こちらの パネル② 下の段の玉が上に上がると数が1増えて、下がる ソロバンと と1減ります。じゃぁこの玉が真ん中に来たとき はどうですか? 特になにもない? 計算尺の違い ソロバンでは玉が真ん中にきても特に意味はあ りません。電卓もこちらの機械式計算機でも同じ で、それぞれの数字の間に意味はありません。 しかし計算尺では数字の間にも意味がありま す。例えばこの計算尺では1から 10 の数字が書か れていますが、1.5 はここですし、4.579 など細か い数字でもこのあたりに表示できます。つまり数 字が途切れずにすべてつながっています。このよ うに途切れていない、つながった情報のことをア ナログ、そして、途切れ途切れでそれぞれの点の 情報はデジタルと呼ばれるわけです。 4 別の例として、アナログ温度計とデジタル温度 まとめと関 計も用意しました。この二つでもデジタルとアナ 連展示 ログの違いを感じることができますので、是非つ ながった情報と、点と点で離れている情報を考え てみてください。 こちらの展示室では様々な道具が展示してあり ます。それぞれの道具がアナログな情報を使うも のか、デジタル情報を扱うのかを考えながら見る と今までとは違った発見ができるかもしれませ ん。例えば、そちらには大きな計算機はアナログ 計算機です。端末ではその使い方の動画が展示さ れていますので、是非ご覧下さい。 ■予備知識 *デジタルとアナログの正確な定義 ■アナログ(analog) 連続した一続きのデータのこと。語源は“analogy”類似・相似を意味する。直感的な 情報処理方法で、場合によっては digital よりも早い。また、データを直接扱うため、デ ータそのものには誤差がない(誤差に関しては digital 参照) 。一方で物理的な影響を受 けて、データ変化する場合がある。また、保存・複製・転送の際に劣化し、一度データに 変化が起こると復元が出来ない。 ■デジタル(digital) 離散量(とびとびの値しかないデータ)のことで、まれに計数とも訳される。語源はラ テン語で指を意味する“digitus”で、指で数を数えるところから。アナログデータの一 部を取り出して量子化(標本化)するため、取り上げられなかったデ ータ部分はデータから抜け落ちる(右図参照) 。ただし現在では、人 間では見分けられない程度まで量子化をより細かくすることで、アナ ログデータとの誤差を補正している。アナログとは対象的にノイズに 強く、復元が容易。ただし定義された最大値を超えると処理できず、 データに致命的な誤差が生じる。 ■デジタル・アナログの製品・使用例 デジタル アナログ CD,DVD,BD 等、オルゴールの譜面 レコード デジタルメーター、デジタル時計 自動車のタコメーター、アナログ時計 のろし、手旗信号、モールス信号など 写真のフィルム、水銀体温計など ■デジタルとアナログの俗用と誤用 デジタルには「新しい・電子的・ハイテク・理系」、対してアナログには「古い・経験 則・カン・情緒・文系」といったニュアンスが持たれているが、正確な定義からするとこ れらは全て誤用。 ■計算機・計算器 計算を機械的かつ自動的に行う装置。計算の一部を人間が行う、または動力が手動のも のは計算器(計算尺、機械式計算器など)と呼ぶことがある。コンピュータも計算機だが、 現在では電子計算機として区別される場合もある。最初期の計算器具は、割符のような tally stick、小石をいれた容器、算木、アバカス(そろばん)など。ローマそろばんは 紀元前 2400 年ごろにバビロニアで使われていた。天文学の計算に用いられていたアンテ ィキティラ島の機械やアストロラーベなどは最古のアナログコンピュータといわれてい る。その後、1645 年フランスのパスカルによって機械式計算機が製作されると、ドイツ のライプニッツによって改良が加えられ、発展していく。この機械式計算機が量産された のは 1820 年ごろで、 日本ではタイガー計算器がシェアの大部分を占め 1920 年代から 1970 年代まで盛んに使用されていた。 日本で作られた最も古い計算機は、1903(明治 36)年に特許を取得した「パテント・ ヤズ・アリスモメートル」として発売された自動算盤。その後、いろいろなところで手回 し計算機を発売するようになった。 ■計算尺 1632 年にウィリアム・オーレッドによって発明された。日本に入ってきたのは 1894 年 とされている。それを参考に逸見治朗が独自の計算尺を発明、1909 年に特許を取得した。 その後逸見は逸見製作所(現・ヘンミ計算尺株式会社)を設立し、計算尺は広く日本に普 及した。 計算尺は理系の研究者にとっても当時必須の道具で、科学者のシンボルとしても度々 登場する。映画『アポロ 13』でも、コンピュータの電源を切った後、帰還のための軌道計 算を計算尺で行うシーンがある。原子炉発明やロケット開発、東京タワー設計など電卓が 普及する 1980 年代まで様々な分野で広く使用された。 ■タイガー式計算機について 1923(大正 12)年から発売されたタイガー計算機は、手回し計算機の代名詞になるほど 普及。1970 年代初めに電子卓上計算機が登場するまで、職場の計算機は手回し計算機だ った。当初は虎印計算機として発売したが、国産機械に対して信用の無い時代で売れな かったため、名称をタイガー手回し計算機へと変更した。ノーベル化学賞を受賞された 福浦先生もこのタイガー計算機を使って、実験データの計算を行っていたことが地球館 地下3F展示にも記載されている。 タイガー計算機が普及する前は皆ソロバンを使っていた。ソロバンは安価だったが、 正確で素早い計算ができるようになるためはかなりの習熟を要する。しかし、タイガー 計算機は費やす時間がほとんど必要なく誰でも簡単に正確な計算できる点が優れていた。 計算機の仕組み:5+7の計算方法 置数レバーを5に置くと、内部の歯が5個飛び出し回転させるとギアを介して4が表 示される。リセットをして、レバーを7に置くと歯が7個飛び出す。 回転すると5に7が加わり、カウンターに12が表示される。1の位のレバーを8に置 くと歯が8個飛び出す。ハンドルをプラス方向に1回まわすとギアを介して8が表示さ れる。 かけ算の場合(425×5)は、425をレバーの下位に425を置く。ハンドルをプ ラス方向に5回転する。左ダイヤルの第一位に乗数の5が現れ、同時に右ダイヤルに積 の2125が表示される。 ■九元連立方程式求解機について 9つの分からない数と1つの定数がある連立方程式を解くことが出来るアナログ計算 機。アメリカのジョン・ウィルバー博士によって発明された。鉄のフレームに角度を変え られる真鍮の棒が取り付けてある。棒の角度が未知数に対応して、バーの上の鉄のテープ の長さが各方程式に対応している。棒を動かし、テープの長さを読み取ることで、方程式 の解が分かる。展示標本はその計算機を参考に日本の佐々木達治郎を中心とした航空研 究所のグループが開発した国内初の大型計算機。オリジナルは既にアメリカでも失われ ており、2008 年度「情報処理技術遺産」認定された。
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