震災関連倒産は、5 年間で 1898 件判明

2016/3/1
東京都港区南青山 2-5-20
TEL: 03-5775-3073
URL:http://www.tdb.co.jp/
特別企画:「東日本大震災関連倒産」(発生後 5 年間累計)の動向調査
震災関連倒産は、5 年間で 1898 件判明
~ うち原発関連倒産は 210 件、原発事故の影響長期化 ~
はじめに
東日本大震災の発生からまもなく 5 年。政府は、震災直後の 2011 年度からの 5 年間を「集中復
興期間」として、約 26 兆円の予算を計上した。この間、企業に対しては被災した社屋や施設の復
旧・整備や二重ローン対策、資金繰り支援などのほか、官民連携による販路開拓や商品開発支援
など、復興に向けた取り組みが進められた。
しかし一方で、未曾有の災害が企業にもたらした影響は、物流の混乱や取引先の被災による販
路の喪失、原発事故による風評被害など全国各地に及び、今なお東日本大震災の影響を受けた倒
産が散発している。
こうしたなか、帝国データバンクでは東日本大震災により被害を受けたことが倒産要因である
と判明した企業(負債 1000 万円以上、個人事業主含む)を「東日本大震災関連倒産」と定義し、
震災発生直後の 2011 年 3 月から 2016 年 2 月末まで、5 年間の倒産を集計・分析した。
調査結果(要旨)
1. 東日本大震災発生から 5 年間で、「東日本大震災関連倒産」は累計 1898 件。「5 年目」となる
2015 年 3 月から 2016 年 2 月までの倒産は 167 件判明し、
「1 年目」(650 件)の約 4 分の 1 ま
で減少した
2. 「東日本大震災関連倒産」のうち、福島第一原
震災発生後の倒産件数推移
発事故関連の影響による倒産は、5 年間の累計で
東日本大震災関連
阪神大震災関連
原発関連の構成比
210 件判明した。その割合は 5 年目において
18.0%まで高まり、事故後の影響が長期化して
いる状況がうかがえる
(件)
700
3. 業種別件数を見ると、5 年間累計のトップは「サ
600
ービス業」の 417 件。うち、「ホテル・旅館」
(116
500
件)が約 4 分の 1 を占める
400
4. 社屋の倒壊や津波による浸水被害などの「直接
的被害」を受けた倒産は 5 年間累計で 180 件と、
全体の 1 割未満にとどまった一方、「間接的被
害」を受けた倒産は 1718 件にのぼった
(%)
20
18
18.0
14
15.1
650
11.7
16
11.3
12
10
489
300
200
8
354
7.2
6
238
167
194
142
100
2
58
0
1年目
2年目
4
3年目
0
4年目
5年目
※阪神大震災関連倒産は発生後3年間で集計終了
©TEIKOKU DATABANK, LTD.
1
2016/3/1
特別企画:「東日本大震災関連倒産」
(発生後 5 年間累計)の動向調査
1.件数・負債総額推移
2011 年 3 月から 2016 年 2 月までの 5 年間で、
「東日本大震災関連倒産」は 1898 件判明し、負債
総額は 1 兆 6366 億 4900 万円となった。
震災発生からの経過年数別に見ると、2011 年 3 月から 2012 年 2 月までの「1 年目」に 650 件、
「2 年目」に 489 件、
「3 年目」に 354 件、
「4 年目」に 238 件と、震災の影響が徐々に薄れるなか、
「5 年目」は 167 件と、
「1 年目」の約 4 分の 1 にまで減少した。
また、「東日本大震災関連倒産」のうち、福島第一原発事故の影響による倒産は、5 年間の累計
で 210 件判明した。「東日本大震災関連倒産」に占める割合を見ると、1 年目の 7.2%から、5 年
目には 18.0%にまで高まっており、事故後の風評被害や原発稼働停止などの影響が根深く残って
いる状況がうかがえる。
1995 年の阪神・淡路大震災の影響を受けて倒産した「阪神大震災関連倒産」と比べると、比較
可能な発生後 3 年間で見ても、
「東日本大震災関連倒産」は「阪神大震災関連倒産」の約 3.8 倍判
明。また、「東日本大震災関連倒産」の 5 年目の件数(167 件)が、「阪神大震災関連倒産」の 2
年目の件数(142 件)を上回っていることなどからも、東日本大震災の影響の大きさがわかる。
震災発生から5年間の倒産件数推移
(件)
90
1年目 2年目 3年目 4年目 5年目
80
東日本大震災関連
70
阪神大震災関連
60
50
40
30
20
10
0
当月 2
4
6
8
10 12 14 16 18 20 22 24 26 28 30 32 34 36 38 40 42 44 46 48 50 52 54 56 58 60
(カ月目)
※阪神大震災関連倒産は発生後3年間で集計終了
東日本大震災関連倒産
1年目
2年目
3年目
4年目
5年目
(上段:件数/下段:負債総額[百万円])
3月
4月
5月
6月
14
17,951
63
172,915
35
9,432
24
5,614
23
17,692
57
22,015
51
16,811
33
25,124
19
7,734
14
8,289
80
34,665
57
27,429
41
11,625
20
3,994
16
10,342
61
24,596
39
22,271
31
8,705
21
15,031
12
5,449
7月
8月
50
72
31,957 480,051
38
36
30,977
18,190
30
26
5,001
12,098
22
16
3,643
15,927
17
12
8,343
3,660
9月
10月
11月
12月
41
14,779
44
35,290
36
25,434
23
5,556
22
3,474
48
16,191
51
24,763
28
7,914
16
11,515
15
4,137
55
42,158
34
34,012
24
19,074
26
10,981
12
1,612
46
65
46,549 147,365
17
29
3,710
9,064
21
24
5,367 12,263
15
14
7,026
7,620
9
7
4,342
654
7月
10
3,688
11
3,113
4
430
8月
17
2,264
18
3,396
5
1,094
9月
15
4,318
13
3,162
8
2,020
参考:阪神大震災関連倒産
1月
1年目
2年目
3年目
0
0
10
1,491
6
2,680
2月
22
13,083
7
2,788
10
5,975
3月
29
6,560
9
3,225
7
3,940
©TEIKOKU DATABANK, LTD.
4月
32
8,437
16
2,360
3
265
5月
19
3,673
17
5,934
4
848
6月
21
9,753
9
4,170
8
1,157
1月
2月
計
61
18,834
30
22,899
25
5,652
22
6,426
8
4,457
5年間
累計
650
897,111
489
418,331
354
147,689
238
101,067
167
72,451
1,898
1,636,649
原発関連 構成比(%)
47
7.2
489,191
54.5
57
11.7
63,077
15.1
40
11.3
9,768
6.6
36
15.1
11,519
11.4
30
18.0
16,223
22.4
210
11.1
589,778
36.0
(上段:件数/下段:負債総額[百万円])
10月
11月
12月
計
9
10
10
194
4,620
1,865
1,813
60,074
6
11
15
142
780
1,098
2,430
33,947
1
0
2
58
70
0
130
18,609
3年間
394
112,630
累計
2
2016/3/1
特別企画:「東日本大震災関連倒産」
(発生後 5 年間累計)の動向調査
2.業種別
業種別件数を見ると、5 年間累計のトップは「サービス業」
(417 件)となった。以下、
「卸売業」
の 384 件、「製造業」の 369 件と続く。
経過年数ごとの推移を見ると、
「建設業」は 1 年目に 120 件を数えたが、震災復興需要などから、
5 年目には 22 件と約 6 分の 1 にまで縮小。一方、震災後の消費自粛ムードや風評被害が長期化し、
落ち込んだ業績が戻らないなどの理由から、「小売業」では減少幅が他業種よりも小さい。
業種別件数
1年目
建設業
製造業
卸売業
小売業
運輸・通信業
サービス業
不動産業
その他
計
120
125
135
89
28
137
7
9
650
2年目
3年目
69
119
94
64
25
106
6
6
489
4年目
40
57
73
53
35
83
8
5
354
1年目比
(%)
▲ 81.7
▲ 74.4
▲ 76.3
▲ 69.7
▲ 60.7
▲ 73.7
▲ 57.1
▲ 55.6
▲ 74.3
5年目
30
36
50
40
18
55
5
4
238
5年間
累計
22
32
32
27
11
36
3
4
167
5 年間累計の業種細分類別のトップは
(件)
構成比
(%)
281
369
384
273
117
417
29
28
1,898
14.8
19.4
20.2
14.4
6.2
22.0
1.5
1.5
100.0
業種細分類別上位
「ホテル・旅館」
(116 件)となった。津
波による宿泊施設の倒壊のほか、観光客
の減少にともなう客室稼働率の低下な
土木工事
り支援を受けつつも、抜本的な収益環境
内装工事
多い。
49
48
木造建築工事
どを受け、借入金の返済猶予など資金繰
の改善には至らず倒産に陥るケースが
116
ホテル・旅館
貨物自動車運送
35
31
印刷業
28
生鮮魚介卸
27
受託開発ソフト
27
26
建築工事
以下、荷動きや取引先の減少などに見
舞われた「貨物自動車運送」(49 件)、
資材調達難や住宅建築需要の減退など
の影響を受けた「木造建築工事」
(48 件)
が続いた。
業種細分類別上位には、食品や衣料品、
レジャー関連など、業績が個人消費の動
向に大きく左右される業種が目立った。
23
水産食料品製造
22
広告制作
19
婦人・子供服卸
広告代理
18
管工事
17
労働者派遣
17
婦人・子供服販売
16
中古自動車販売
16
ゴルフ場経営
16
食料・飲料卸
15
電気機械卸
15
旅行業
15
0
©TEIKOKU DATABANK, LTD.
20
40
60
80
100
120
(件)
3
2016/3/1
特別企画:「東日本大震災関連倒産」
(発生後 5 年間累計)の動向調査
3.都道府県別
都道府県別件数を見ると、5 年間累計で「東京都」が 446 件と最も多かった。以下、「宮城県」
の 170 件、「茨城県」の 108 件と続き、島根県を除く 46 都道府県で「東日本大震災関連倒産」が
判明した。経過年数ごとの推移を見ると、4 年目以降は西日本を中心に 1 件も判明しなかった県が
散見されるなど、年数の経過とともに震災の影響は薄まってきている。
都道府県別件数
北海道
青森県
岩手県
宮城県
東北
秋田県
山形県
福島県
計
茨城県
栃木県
群馬県
埼玉県
関東
千葉県
東京都
神奈川県
計
新潟県
富山県
北陸
石川県
福井県
計
山梨県
長野県
岐阜県
中部
静岡県
愛知県
三重県
計
1年目
2年目
3年目
4年目
44
10
16
28
6
11
30
101
11
21
14
37
14
157
25
279
20
2
11
0
33
6
12
2
19
29
1
69
28
6
6
47
9
4
15
87
25
17
6
21
19
139
35
262
5
2
4
7
18
7
4
1
21
7
2
42
14
4
4
46
10
16
4
84
33
9
5
10
19
69
12
157
8
3
1
1
13
1
2
1
26
14
1
45
6
4
8
25
5
7
6
55
25
15
3
11
4
45
9
112
2
2
0
1
5
1
0
0
26
9
2
38
5年目 1年目比
(%)
3
▲ 93.2
1
▲ 90.0
3
▲ 81.3
24
▲ 14.3
1
▲ 83.3
3
▲ 72.7
5
▲ 83.3
37
▲ 63.4
14
27.3
19
▲ 9.5
3
▲ 78.6
6
▲ 83.8
7
▲ 50.0
36
▲ 77.1
6
▲ 76.0
91
▲ 67.4
2
▲ 90.0
2
0.0
1
▲ 90.9
0
5
▲ 84.8
2
▲ 66.7
0
0
9
▲ 52.6
3
▲ 89.7
0
14
▲ 79.7
5年間
累計
(件)
構成比
(%)
95
25
37
170
31
41
60
364
108
81
31
85
63
446
87
901
37
11
17
9
74
17
18
4
101
62
6
208
5.0
1.3
1.9
9.0
1.6
2.2
3.2
19.2
5.7
4.3
1.6
4.5
3.3
23.5
4.6
47.5
1.9
0.6
0.9
0.5
3.9
0.9
0.9
0.2
5.3
3.3
0.3
11.0
近畿
中国
四国
九州
滋賀県
京都府
大阪府
兵庫県
奈良県
和歌山県
計
鳥取県
島根県
岡山県
広島県
山口県
計
徳島県
香川県
愛媛県
高知県
計
福岡県
佐賀県
長崎県
熊本県
大分県
宮崎県
鹿児島県
沖縄県
計
全国
1年目
2年目
3年目
4年目
1
2
26
13
7
2
51
1
0
2
6
0
9
3
1
6
1
11
31
4
1
5
8
1
1
2
53
650
3
2
7
4
1
0
17
0
0
3
1
0
4
2
1
1
0
4
13
2
2
5
3
1
0
1
27
489
0
2
3
4
2
2
13
0
0
1
3
1
5
1
0
1
0
2
10
4
3
2
1
0
0
1
21
354
0
2
2
0
3
0
7
0
0
0
1
0
1
1
1
1
0
3
8
0
2
0
0
1
0
0
11
238
5年目 1年目比
(%)
0
1
▲ 50.0
1
▲ 96.2
1
▲ 92.3
1
▲ 85.7
0
4
▲ 92.2
0
0
1
▲ 50.0
0
1
2
▲ 77.8
1
▲ 66.7
0
1
▲ 83.3
1
0.0
3
▲ 72.7
5
▲ 83.9
1
▲ 75.0
0
1
▲ 80.0
0
1
0.0
0
0
8
▲ 84.9
167
▲ 74.3
5年間
累計
4
9
39
22
14
4
92
1
0
7
11
2
21
8
3
10
2
23
67
11
8
13
12
4
1
4
120
1,898
(件)
構成比
(%)
0.2
0.5
2.1
1.2
0.7
0.2
4.8
0.1
0.0
0.4
0.6
0.1
1.1
0.4
0.2
0.5
0.1
1.2
3.5
0.6
0.4
0.7
0.6
0.2
0.1
0.2
6.3
100.0
4.被害分類別
被害分類別件数を見ると、社屋の倒壊や津波による浸水被害などの「直接的被害」を受けた倒
産は 180 件と、全体の 1 割未満にとどまった。一方、「間接的被害」を受けた倒産は 1718 件判明
した。
「間接的被害」の内訳を見ると、
「消費マインドの低下」が 1080 件と過半数を占め、次いで、
物流網の混乱による調達難などの「流通の混乱」が 123 件、工期や納期の延期などによる「生産
計画の変更・頓挫」が 115 件となった。
経過年数ごとの推移を見ると、
「直接的被害」による倒産は 5 年目でも 25 件判明し、4 年目の件
数(20 件)を上回った。直接的被害を受けた企業に対する爪あとが大きいことがうかがえる。
被害分類別件数
1年目
直接的被害
間接的被害
消費マインドの低下
流通の混乱
生産計画の変更・頓挫
得意先被災
連鎖倒産
市場価格の混乱
仕入先被災
公共工事の減少
その他
計
©TEIKOKU DATABANK, LTD.
55
595
304
68
44
44
51
12
10
12
50
650
2年目
45
444
273
35
37
16
28
7
9
9
30
489
3年目
35
319
238
10
14
12
3
13
6
2
21
354
4年目
20
218
157
4
11
17
2
4
5
0
18
238
1年目比
5年目
(%)
25
▲ 54.5
142
▲ 76.1
108
▲ 64.5
6
▲ 91.2
9
▲ 79.5
7
▲ 84.1
1
▲ 98.0
6
▲ 50.0
0
-
0
-
5
▲ 90.0
167
▲ 74.3
5年間
累計
180
1,718
1,080
123
115
96
85
42
30
23
124
1,898
(件)
構成比
(%)
9.5
90.5
56.9
6.5
6.1
5.1
4.5
2.2
1.6
1.2
6.5
100.0
4
2016/3/1
特別企画:「東日本大震災関連倒産」
(発生後 5 年間累計)の動向調査
5. まとめ
2011 年 3 月からの 5 年間で判明した「東日本大震災関連倒産」の累計は 1898 件。
「5 年目」と
なる 2015 年 3 月から 2016 年 2 月までの 1 年間でも 167 件判明した。1 年目の 650 件と比べ 74.3%
減少し、年々沈静化してきているとはいえ、いまだ 1 件も判明しなかった月はなく、関連倒産は
週 2~3 件のペースで今も判明している。
今回の調査でも、「直接的被害」による倒産は 5 年目でも 25 件判明し、4 年目の件数(20 件)
を上回っている。これまで、直接的被害を受けた被災 3 県の企業を中心にさまざまな支援策が施
されてきたものの、抜本的な収益環境の改善がないまま事業継続の限界を迎える倒産が散見され、
“本業回復”の必要性が一層高まっているといえる。
5 年間の「集中復興期間」は 2016 年 3 月で終わり、政府は 2016 年度から 2020 年度までの 5 年
間を新たに「復興・創生期間」と位置づけた。復興事業は新たなステージに入り、産業再生に重
点をおいた地方創生モデルとなる復興を目指すことが掲げられている。今後は倒産件数の減少と
ともに、経営環境の改善を中心としたより実感のできる復興事業の展開が期待される。
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