伊那市水道事業経営健全化計画 概要版(平成24年度~平成31年度)

伊那市水道事業経営健全化計画 概要版(平成24年度~平成31年度)
資料No.8-2
「持続可能な事業運営の実現」
経 営 目 標
~純利益決算の継続と、上水道事業基本計画の着実な実行~
Ⅰ 計画策定の趣旨
・水道事業が抱える課題を踏まえ、目指すべき経営目標と経営健全化を図るための具体的な経営改善行動を定め、
経営の効率化と整備事業の着実な実施を図る。
Ⅱ
伊那市水道事業の現状と課題
1 現状と課題
◆図表1 給水人口と有収水量の推移と予測 有収水量:
万m3
給水人口:人
(1)水需要の減少
70,000
800
・給水人口の減(図表1)
69,741
人口の減少に伴い給水人口が減少。この傾向は継続の見込み。
757
67,357
750
・1人1日あたり平均給水量の減
節水意識の定着と節水機器の普及、経済活動の低迷が影響。
700
65,000
・地下水利用の拡大
64,402
一部大口需要者に対し、地下水利用によるコスト削減を提案
700
657
する事業者あり。
650
*水需要の減少傾向が継続することを前提とした事業経営が必要。
60,000
600
H18
H19
H20
H21
H22
有収水量 (m3)
H23
H24
H25
H26
給水人口 (人)
H27
H28
H29
H30
H31 (年度)
(平成24年度以降は、推計値)
◆図表2 県内18市1企業団1企業局の水道料金比較 (口径13mm 1月20㎥使用の場合)
水道料金(税込:円)
(2)経営状況の悪化
4,500
・給水収益の減(図表3)
4,100
4,000
水需要の減少に伴い、給水収益も減少が予想される。
3,500
・高い水道料金(図表2)
3,517
3,170
県内18市1企業団1企業局の水道料金で、高い方から3番目。
3,000
・多額の企業債残高(図表4)
2,500
年間の給水収益の5倍を超える企業債残高。
2,000
・内部留保資金(補てん財源)の減少
1,500
3,349
3,170
2,600
2,619
2,467
2,236
1,728
伊
那
市
内部留保資金が不足した場合、建設改良事業の見直しが必要。
*更なる経費削減と収益確保策の実施が必要。
◆図表3 給水収益の推移と予測
◆図表4
長
野
県
企
業
局
長
野
市
松
本
市
上
田
市
岡
谷
市
飯
田
市
諏
訪
市
須
坂
市
小
諸
市
駒
ヶ
根
市
中
野
市
大
町
市
飯
山
市
茅
野
市
塩
尻
市
佐
久
水
道
企
業
団
千
曲
市
14.62
地
方 80
債
現
在
60
高
・
給
水 40
収
益
14.66
14.50
14.12
14.00
13.75
14.00
13.66
13.50
10.0
87.3
84.4
81.5
9.0
78.4
74.6
70.8
13.00
6.0
6.0
5.7
5.6
5.6
5.3
5.0
5.1
4.0
3.0
14.6
0
H18
12.50
H18
H19
H20
H21
H22
H23
H24
H25
H26
H27
H28
H29
H30
H31
(平成24年度以降は、推計値)
8.0
7.0
20
12.94
安
曇
野
市
倍率(倍)
100
14.87
東
御
市
企業債残高と対給水収益倍率の推移
残高、給水収益(億円)
給水収益:億円
15.00
18市1企業団1企業局平均
3,122円
3,444
14.7
14.9
H19
14.0
13.8
14.1
2.0
1.0
H20
地方債現在高
H21
事業年度
給水収益
H22
H23
(年度)
倍率
(3)地形的特徴による影響
(4)設備投資の本格化
・広い給水エリア
・水道施設の老朽化の進行
給水区域面積 8,250ha(決算統計数値)
昭和30~40年代に建設した多くの施設が一斉に更新時期へ。
・起伏に富む地形
・耐塩素性病原生物による水源汚染対策
土地の高低差が大きいためポンプ施設などが必要となる。
汚染を防止するための施設整備や水源の切替を実施。
・散在する人口
・適切な水運用のための施設整備
8.2人/1ha(給水人口67,357人/給水区域面積8,250ha)
自己水源と広域水道を組み合わせ配水系統を整理・統合。
・長い水道管延長と点在する水道施設
・水道施設の耐震化
導送配水管総延長 604,510m(決算統計数値)
基幹水道施設の耐震化を推進し、災害時もライフラインを確保。
*人口密度が高い地域と比較して、建設費や維持管理費が嵩む
*アセットマネジメントの考え方に基づく検討が不可欠
※裏面へつづく
企
業
債
残
高
の
対
給
水
収
益
倍
率
2 経営指標から浮かぶ問題点
全国平均
伊那市
H20
H23
H22
76.8%
75.5% 91.9%
(1)有収率
類団平均
H22
87.9%
(3)最大稼働率
全国平均
伊那市
H20
H23
H22
58.3%
55.6% 73.1%
類団平均
H22
72.7%
・年間の総配水量に対する料金対象とした水量の割 ・1日の配水能力に対する年間の1日最大配水量
合。
の比率。
・値が高いほど、収益につながっている。
・100%との差が、余剰能力となる。
*コストをかけて作った水道水の1/4が、水道
問題点 料金収入で回収できていない。
(2)施設利用率
全国平均
伊那市
H20
H23
H22
48.9%
48.1% 62.8%
*全国等の平均と比較して、余剰能力が過
大。
類団平均
H22
60.6%
・配水能力に対して平均で配水した量の比率。
・100%に近いほど効率的だが、リスクへの備え
も必要。
問題点
問題点
*リスク回避分の余裕は必要だが、過剰施
設の傾向がうかがえる。
(4)原価回収率
*原価が水道料金のみで回収できていな
い。
全国平均
伊那市
H20
H23
H22
95.9%
95.6% 91.5%
類団平均
H22
88.8%
・資産に対する固定資産の比率。
・値が低い方が、柔軟な経営が可能。
問題点 *経営の柔軟性が低い。
全国平均 類団平均
伊那市
H20
H23
H22
H22
(6)流動比率
98.30% 97.23% 97.05% 95.18%
・原価が料金で回収されている程度。
・100%以上が望ましい。
問題点
(5)固定資産
構成比率
全国平均 類団平均
伊那市
H20
H23
H22
H22
908.7% 402.1% 441.6% 645.3%
・短期債務に対する支払能力を示す比率。
・200%以上が望ましく、100%以下は自転車操業に
近い。
問題点 *資金繰りの余裕が低下している。
※決算数値の公表状況の関係で、本市分はH23年度指標値、全国平均及び人口規模が近い団体(類団)はH22年度の指標値を用いて比較している。
3 現状と課題のまとめ
・水需要が減少し続けており、今後の事業運営にあたっては、需要減の傾向が続くことを前提にする必要がある。
・本市の給水区域は、面積が広く起伏が激しいうえに人口が散在しているため、施設の建設費や維持管理費が割高になる傾向にある。
・コストの削減だけでは経営改善効果に限界があるため、安定した水需要を確保できる料金体系の構築が不可欠である。
・施設効率面では、有収率の向上が最重要課題。また、過剰設備の傾向がうかがえるため、施設の再編成が必要である。
・アセットマネジメントの考え方に基づき、ライフサイクルコストの最小化が図られるよう施設整備の時期や規模を再検討する必要がある。
・事業を通じて会計内に留保した資金が減少しているので、有利な財源確保に努めるとともに、第7次整備事業の再評価が避けられない。
水道ビジョンで定めた将来像「安心、安全、快適で災害に強い伊那の水道」
を実現し、安全な水を安定的かつ安価に供給し続けるためには、
高まる経営改善の
必要性
Ⅲ
より一層の経営改善に向けた取り組みが必要!
経営改善事業の実施
基 本 項 目
経営改善事業
取 組 内 容
(1)整備事業費の見直し
①第7次整備事業の再評価
(2)資産の有効活用
①アセットマネジメントの導入
(3)経費削減
①有収率の向上
②変動的費用の適正化
・水運用や電力契約の状況の検証と改善策実施
・包括的民間委託、事業の共同化・広域化の研究
・投資金額と企業債発行額の精査による資本費の削減
・安定した水需要を確保できる料金体系の導入
・地下水利用者に対する市営水道への切替推進策の導入
③固定的費用の削減
(4)収入の確保
(5)経営基盤の強化
・最新決算状況を基に、実施事業の規模や内容を再検討
・ライフサイクルコスト最小化に向けて整備内容再検討
・保有施設の全調査実施、長期水道事業運用計画策定
・未利用資産の有効活用(貸付、売却)
・上水道事業基本計画に沿った老朽管更新
・計画的な漏水調査及び迅速な修繕実施
①水需要の確保
主な数値目標(H31年度)
H37までの投資額 H27年度に再設定
施設利用率
65%
有収率
88.0%
変動的費用額
H23決算比△12%
固定的費用額
1億4,860万円
削減
有収水量
658万6千㎥
②水道料金改定
・負担の公平性と事業経営の安定化のための料金改定検討
給水収益
12億9,400万円
③未収金への対応
・不納欠損処分及び法的対応ルールの明確化
・ルールに基づく支払督促等の実施
未収金残高
H23決算比△40%
④料金外収入の増収
・検針票、封筒などへの有料広告の導入
新たな
料金外収入額
7.5万円/年
①費用負担区分の適正化
・一般会計補助金のルール明確化
一般会計補助金
財政部局との
協定額
②人材の育成とノウハウの継承
・人材育成計画の策定
・職場内研修の実施
職場内研修
実施回数
6回/年
具体策、短期目標の
検討・設定
マネジメントサイクル
を確立し、確実に
進捗状況を管理
運用状況を経営
健全化計画に
フィードバック
3年ごとに経営健全化
計画を見直し
伊那市水道事業経営健全化計画を
具現化するための実施計画(計画期間:3ヵ年ごと)
実施計画の策定
・3年間の実施内容と到達目標
進捗管理
3年ごと見直し
実施計画の運用
四半期毎に実施状況
を分析・検証