失敗から学ぶ経営とは 経営学部 経営学科 2 年 神戸 今回のレポートでは

失敗から学ぶ経営とは
経営学部 経営学科 2 年
神戸
今回のレポートでは企業が不祥事をどのように予防し、どのようにその不祥事に対応し、
またその不祥事(失敗)から成長していくかについて考察していきたいと思います。なぜ
このテーマを設定したかというと、近年日本では企業による不祥事が次々に起こっておこ
っています、例えばタカタ製エアバックの不具合問題、カネボウ化粧品の白斑問題、JR 北
海道のレール異常放置やヤマト運輸クール宅急便の温度問題など様々な業種にわたって
様々な不祥事が起きています。このような不祥事が起こってしまった場合、不祥事を起こ
してしまった企業の企業生命に対する影響力はとても大きいものであり、不祥事を起こし
てしまった後の企業の取り組みが今後の企業生命を決めるといっても過言ではありません。
そのため私はどのように失敗を未然に防ぎ、具体的にどのような取り組みを行えば企業が
その不祥事から立ち直り、さらに失敗を企業の力にできるのか、とても興味を持ったため、
このテーマを設定しました。
まず先述した近年の企業における不祥事について松岡(2013)を基にいくつか振り返っ
ていきます。 まず 1 つ目はタカタ製エアバックの不具合問題です。これはタカタ制エア
バックが作動中に金属片にまきちらしてしまう事故が発生してしまった事例です。タカタ
社はリコール要請を事実上拒否し、自動車メーカーのリコールを全力で支援するにとどま
り、この対応に対し米国では批判の声が上がりました。2 つ目にカネボウ化粧品の白斑問題
です。これは美白化粧品を利用した一部の人に肌がまだらに白くなる白斑症状が相次いだ
事例です。これに対しカネボウは白斑発症事例が相次いでいたにもかかわらず、病気と判
断し、
適切な対応を取っていませんでした。
3 つ目に JR 北海道のレール異常放置問題です。
これは函館線で起きた貨物列車脱線事故の調査によって、レール幅などの異常が多数発見
された事例です。しかしレールの異常の情報は現場部署でさえ共有されておらず、さらに
いまだに不祥事の原因把握もおぼつかない状況です。最後にヤマト運輸クール宅急便の温
度問題です。これは社内で決められた配達の際の温度管理のルールが守られていなかった
事例です。これに対し大手スーパーなどから指摘を受けていましたが、ヤマト運輸は営業
所に温度管理のルールの徹底を通達するにとどまっていました。
このように不祥事を起こしてしまう企業は少なくありませんが、上記の企業の不祥事発
覚後の取り組みはとても良いとは言えません。どのように不祥事に対応し、その失敗を成
長につなげていくかについて今から述べていきたいと思います。まず第一に、不祥事は未
然に防ぐことが出来たらそれ以上に良いことはありません。ここで紹介したいのが、高信
頼性組織です。中西(2014)によれば、高信頼性組織の大きな特徴は5つあります(48-50
ページ)
。その中から今回のレポートでは、高信頼性組織における 5 つポイントのうち、不
測の事態を防ぐためのポイントを 3 つと不測の事態が起こってしまった後の対応のポイン
トを 1 つ、計 4 つ上げていきたいと思います。ポイント 1 つ目は、成功よりも失敗に注目
する点です。一般の企業は、先述の通り失敗を隠ぺいしがちであり、それによって失敗の
単位が大きくなり、その失敗が不祥事として発覚するころには、問題の肥大化が進んでし
まう一方で、高信頼性組織では失敗を隠すことを嫌がり、失敗を報告・通達することが求め
られます。これによって、失敗を積極的に受け入れていく姿勢によって、小さい段階で失
敗を発見し、そこから学習することが可能になっています。この点で先述のカネボウ化粧
品の白斑問題は、白斑症状を起こした利用者がいるにもかかわらず、病気と判断し、適切
な対応を取らなかった点は、問題初期の一つ一つの問題を見逃していったために、問題の
規模が大きくなり、不祥事発覚時には大問題になっていた例と考えられます。2 つ目に失敗
を単純に解釈しない点です。これは事態の解釈の仕方の単純化を避け、多角的な方面から
の検証、検討を行うことによって、これから発生しうる様々な問題を想定していくことで
す。これによって発生する可能性がある問題を未然に防げる可能性を高めています。この
点で先述のヤマト運輸クール宅急便の温度問題の対応策は、失敗を単純に解釈してしまい、
小さい段階での不祥事発覚後も温度管理のルールの徹底にとどまってしまったなど失敗を
生かすことが出来なかった例と考えられます。ポイントの 3 つ目は現場オペレーションに
敏感である点です。ここで重要になる点は常にコミュニケーションをとることです。現場
とコミュニケーションをしっかり取ることで、現場の問題点や発生しうる失敗に気付くこ
とができ、失敗が大きくなる前にその失敗を処理することが出来ます。この点で、先述の
JR 北海道レール異常放置問題では社内でのコミュニケーションが不足していたのも、不祥
事が起きてしまった原因の一つと考えられます。またこのような体制を取っていても不祥
事が起きてしまった場合のポイントとして、4 つ目に再起に全力を注ぐ点があげられます。
不祥事が起きた場合、問題の解決・状況の回復を第一とし、問題に拡大化を阻止し、迅速な
対応を取っていきます。先述の近年の日本における不祥事 4 つに共通している点が、対応
が遅く、また不十分である点であり、結果的に問題の収拾、解決が遅れてしまった、もし
くは未解決のままになってしまっており、問題に面と向かって全力で解決していく姿勢が
とても大切であることがわかります。
このように高信頼性組織のように未然に不祥事を防いでいければ、企業にとってこれほ
ど良いことはありません。しかしもし不祥事が起きてしまった場合、企業はどのようにそ
の不祥事(失敗)を活かし、自社の成長につなげていくべきでしょうか、それについて述
べて行きたいと思います。私が重要だと考える失敗の活かし方は逆演算と仮想演習、失敗
の知識化です。まず 1 つ目に逆演算とは、先述の高信頼性組織におけるポイント 5 つ目に
も紹介したように、原因の追究が大事であるのはもっともですが、その原因追及の際に用
いられる手法です。畑村(2006)によれば失敗学では原因を要因と特性の二つに分けて考
え、要因と特性、結果の 3 要素から構成されていると考え、要因は特性を通して結果に至
るのですが、観察者からは要因と特性は見えないものであり、そこで逆演算によってその
関係を探っていき、どの様な経緯を経てその失敗が起きてしまったのか、またどんな失敗
が起きうるかを推測することが出来ると述べられています(16 ページ)
。ここで大事になる
のは「原因」と「結果」の二つから問題を解決しようとしないことで、必ず「原因」の裏
にある特性を判明し、それによってこれからも起こる可能性のある「結果」
(失敗)を未然
に防ぐことです。これによって根本的な問題解決に努めます。2 つ目に仮想演習です。仮想
演習とはこれから起こりうる可能性のある問題をあらゆるシミュレーションを基に徹底的
に予測、未然に対策していく際に用いる手法です。もちろんこのようなことは、どの企業
でも行っていることであり、当然のことだと考えるかもしれませんが、これが出来ていな
いために不祥事が起きてしまった企業も少なくありません。
(170 ページ)の中ではみずほ
証券での注文入力のご発注の失敗が取り上げられており、同書によれば、これは仮想演習
の不徹底によって起きた問題であると述べられています。3 つ目に失敗の知識化です。私は
3 つの中でこの失敗の知識化が一番重要な取り組みであると考えます。同じ失敗を二度と繰
り返さないように、その失敗を社内でしっかり共有し、再発を防止、またこれからの会社
経営に活かしていくうえで、失敗の知識化はとても重要です。畑村(2006)によれば、失
敗の知識化において重要なポイントが 6 つあるとされています(56, 57 ページ)
。1 つ目に
事象の記述であり、失敗がどのようなものであったかについての記述です。2 つ目に経過の
記述であり、どのように失敗が時間の経過とともに進行したかについて記述します。3 つ目
に原因の記述であり、ここで重要なのが、正確な原因でなくても、失敗を起こしてしまっ
た時の推定原因も記述することです。これにより、新たな発見に結びつく可能性が高まり
ます。4 つ目に対処についての記述であり、失敗に対しどのような対策を取ったかについて
記述します。5 つ目に総括の記述であり、ここでは失敗がどのようなものであったかをまと
めます。一つ一つの原因からでは見えてこない裏に隠れている原因を全体からまとめて考
察することで、浮かび上がらせることが可能になります。6 つ目に知識化の記述です。これ
まで 5 つ紹介した項目で失敗について全体から記述してきました。そしてそれらの失敗を
単なる失敗の記述でとどまらせるのではなく、これからの成長に活かすために、それらを
整理し、知識として他者の人に受け継ぐために失敗の知識化を行い、失敗を分析・検討した
結果、その失敗から何を学ぶのかを明らかにし、同じ失敗を繰り返さないための知識や教
訓として引き継いでいきます。
以上のように企業が不測の事態に直面した際に、どの様な対策を取り、そこから学んで
いくかについて見てきましたが、私が強く感じた点は、企業にとって徹底的な予測と迅速
かつ適切な対応、問題の研究が最重要であるということです。先述したようにみずほ証券
のように大企業でも失敗の予測が不十分であった事例があるなど失敗の予測の徹底が重大
であり、またどのような不祥事も例外なく迅速で適切な対応が求められ、さらにその一つ
の不祥事の裏には様々な原因が隠れている可能性があり、それらを根本から研究し判明す
ることによって、企業は次に起こりうる問題を未然に防ぐことが出来る可能性を高めるこ
とが出来るということが今回のレポートを通じて明らかになりました。
参考文献
中西晶(2014)『マネジメントの心理学【第 2 版】経営心理学入門』
(日科技連)
畑村洋太郎(2006)『図解雑学 失敗学』
(ナツメ社)
松 岡 功 (2013) 「 最 近 の 企 業 不 祥 事 に 見 る マ ネ ジ メ ン ト の 教 訓 」
(http://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/1311/07/news040.html)
http://www.itmedia.co.jp/ (ITmedia エンタープライズ HP (2015.1.20 アクセス))