Journal of The Sugiura Memorial Foundation Vol.4 July 2015 効果的な地域包括ケアシステム構築のた めの高齢者のフットケアの介入効果の検 証と人材育成プログラムの開発 山下 和彦 氏 東京医療保健大学 医療保健学部 医療情報学科 1.研究の背景と着目点 2.目的 2013年の高齢化率は25%を超え、2025年には団塊の 本研究では、図1のような足部や足爪に問題がある対 世代が75歳を超え、2055年には高齢化率が約40%とな 象者に対し、メディカルフットケアを実施し、a.身体機 ると予測されている。効果的な地域ケアシステムを構築 能の変化を検証する、b.フットケアを推進するための人 するには、地域在住の高齢者の歩行機能を向上させると 材育成プログラムの開発を行うことを目的とする。 同時に、高齢者の持つ問題に適切にアプローチできる人 材育成が重要である。 3.期待される成果 一方、地域在住の高齢者の約6割に図1のような足部や 地域包括ケアでは虚弱高齢者を含め、自己の身体機能 足爪の問題が発生している。我々の提案する地域包括ケ や疾病管理を適切に理解することが必要である。在宅医 アシステムにおける介護予防・健康支援のキーワード やメディカルソーシャルワーカのみがこれらを担当する は、転倒予防、歩行機能の維持・向上である。図1のよう のではなく、医療・保健・介護の分野が連携して行う必 な対象者は足部や足爪の痛み、膝や腰への関節の負担か 要がある。 ら歩行機能やバランス機能の低下を引き起こし、外出阻 メディカルフットケアの特徴は、メディカルフットケ 害要因となることがわかってきた。 一方で、 ロコモティブ アワーカが定期的に直接足部や足爪のケアを行うことか シンドローム予防で高齢者に対する運動が推奨される ら、対象者との信頼関係を構築しやすい利点がある。 さら が、そもそも図1のような足部では運動による転倒を引 に、足爪や足部の外見も改善することから対象者の満足 き起こすリスクすら考えられる。 しかし、 地域の中に足部 度は高い。我々は疾病管理や医療的ケアを中心とした地 や足爪を適切にケアできる専門家はおらず、医療機関の 域包括ケアに加えて、健康支援の観点から他職種が連携 みで対応できるものでもないことは明らかである。すな することによる地域包括ケアを実現したいと考えてい わち、地域および医療・健康支援機関にメディカルフッ る。対象者の満足度が高く、積極的に行動変容を促せる事 トケアの知識を普及させ、ケアを実践できる人材を育成 業は、1次予防や2次予防対象者には効果的な地域包括 しなければ、 効果的な地域医療の実現、 介護予防などの健 ケアシステムとして有効であり、糖尿病などの3次予防 康支援は達成できないと考えられる。 対象者にも高い効果が期待でき、地域全体を見据えた事 業展開が行えると考える。 図1 地域在住の高齢者の足部や足爪の課題 51
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