インドネシアにおける造船産業の発展可能性

インドネシアにおける造船産業の発展可能性
国土交通省 海事局長
森重 俊也
2015年3月24日
Ministry of Land, Infrastructure, Transport and Tourism
インドネシア海事産業発展のポテンシャル(1)
1.面積・人口共に東南アジア最大の海洋国家




1万3千以上もの島からなる世界最大の島嶼国。
国土面積は約190万km2で、東南アジア最大。
排他的経済水域(EEZ)の広さは541万km2で、米国、豪州に次ぐ世界第3位。(日本6位)
約2.5億人に及ぶ人口は、ASEANの全人口の4割を占め、今後15年間は人口ボーナス期が
続き、更なる経済成長が見込まれる。
2.経済成長に伴う内航海上輸送需要の拡大
 経済成長に伴う内航貨物輸送量の増加により、新造船需要の拡大が見込める。
 インドネシアの内航船は約14,000隻に上り、安定的な修繕需要が存在する。
 更に、今後のASEAN経済共同体発足により、ASEAN域内海上交通の更なる発展が見込まれる。
インドネシアの登録内航船舶の推移
インドネシアにおける内航船貨物輸送の需要予測
697
379
出典:JICAレポート2011
出典:インドネシア海運総局
インドネシア海事産業発展のポテンシャル(2)
3.ジョコ政権の「海洋国家構想」に伴う船舶需要の拡大
 ジョコ大統領は、「海洋国家構想」として大規模な海洋インフラ整備をすすめているが、
その大半を占める「官公庁船」の調達は現地建造に限られている。
 インドネシアでは、環境対策や経済性の向上に寄与するLNG燃料船の導入に向けた
検討を開始。
「国家中期開発計画(RPJMN2015-2019)」における調達計画
離島航路貨客船(Pioneer Ship)
105隻(官公庁船)
設標船(Navigation Vessel)
50隻(官公庁船)
巡視船(Patrol Vessel)
20隻(官公庁船)
Ro-Ro フェリー(Ferry)
113隻(離島航路用 62隻、主要航路用 51隻)
離島航路貨客船
設標船(2008年に日本財団が供与)
巡視船(2008年に無償供与)
インドネシア向けフェリー(同型)
インドネシア海事産業発展のポテンシャル(3)
4.新造船、修繕共に売上げ・工事量は継続的に向上しており、まさに「成長中」の分野
船舶建造売上実績
船舶修繕売上実績
出典:インドネシア工業省
→ 船隊拡充や船舶の修繕について、継続的需要が存在する。
インドネシアの造船産業の現状(1)
1.インドネシア造船業の概要
項目
造船産業
造船所数
約250社
建造能力(年間)
90万DWT
新造船最大設備能力
5万DWT
出典:日本海洋科学
※ 船舶建造量は、ASEAN諸国内で第3位
※ インドネシア内航船の需要予測は、2015年に、290万DWTとなる見込み
出典:日本海洋科学
→ 輸送需要予測に比べて、建造能力が低い。
インドネシアの造船産業の現状(2)
2.インドネシアの造船所が抱える様々な課題
 インドネシアでは、人件費は安いが建造管理ノウハウが不足。また、稼働中の船舶エンジンメー
カーが存在せず、その他の資機材も7割以上を輸入に頼っているため、必然的に工期が長くなる。
 また、新造船については、国内造船所の能力では5万トン以下の船舶しか建造できない。
課題
現状
要因
不十分な造船、修繕施設等
 十分な投資がなされず、老朽化し
た造船所・設備が多い
 5万トンまでの船舶しか建造できな
い
 新規設備投資への銀行融資を得
ることが難しい
工期が長く、高コスト
 新造船、修繕共に工期が長い
 生産管理・ノウハウ不足
 設備が不十分
 資機材の7割以上が輸入のため、
輸送、通関に時間がかかる
技術者不足
関連産業の未発達
 造船技術者、生産管理者等エンジ
ニア不足
 設計図面、材料、機材調達の殆ど
を輸入に依存
 造船所での熟練技術者からの技
術継承がない
 一部経済特区(バタム島)を除き、
海外事業者の進出が遅れている。
 我が国事業者は、造船所・舶用メーカーの現地進出や技術提携出を通じ、優位性を発揮出来ると
共に、インドネシア造船・海運振興に貢献出来る。
造船産業分野におけるインドネシアと日本の協力関係
1.ODAを通じた技術協力等
年代
1950
1970-2004
1980
協力内容
造船留学生受け入れ
JICA専門家(造船)及び民間造船専門家(シニアボランティア含む)を運輸省や工業
省、造船所に派遣
国営造船所(現PT. Dok Kodja Bajari)の大型ドライドック建設(円借)
2.インドネシア海運において活躍する日本建造船
 現在、インドネシア籍船のうち、外国建造の半数以上が日本製
 インドネシアは日本の内航中古船の最大の輸入国
わが国内航貨物船の主な海外売船先隻数(上位5国)の推移
INDONESIA
PHILIPPINES
KOREA
UAE
SINGAPORE
TOTAL
出典:JRTT
我が国が実施可能な支援策
造船技術の向上支援
我が国事業者の進出支援、造船産業振興
 造船産業発展のための政府間対話、官民
ミッションの派遣

日本の造船技術や舶用機器の品質等の
PR造船分野における両国の連携の推進
を働きかけ
 造船振興政策アドバイザー(専門家)派遣
 ㈱海外交通・都市開発事業支援機構
(JOIN) による進出支援

政府が出資するJOINを通じ、造船・舶用
工業、海運事者の現地進出を支援
 国営造船所への造船専門家(エンジニア)
派遣

建造技術、工程管理などの技術指導により、
生産性の向上等を図る
 外国人技能者の受入れ拡大を通じた造
船技術者の交流促進

インドネシアの技能実習生及び同修了生の我
が国造船所への受け入れ拡大を通じ、インド
ネシア造船技術者の人材育成に貢献する。
 造船所・舶用メーカーの現地進出により、高
品質の船舶を供給
 造船能力の向上により、中古船から新造船
への代替が促進される
 インドネシアの造船・海運振興を促進
 我が国舶用関連会社の参入機会が増大
 日本との協力により、インドネシアがASEAN一の造船国になることがで
き、同国の造船・海運振興に大きく貢献