倫理~インフォームド・コンセントにおける役割

インフォームド・コンセントにおける役割
平成27年9月7日
倫理委員会
インフォームド・コンセントの歴史
世 界
• 1947年「ニュールンベルグ綱領」
• 1972年「患者の権利章典」
• 1981年「リスボン宣言」
• 1983年「医療における意思決定」においてICの概念を医療の
場における意思決定の中軸と位置づけ
• 1991年インフォームド・コンセントの定義付け
日 本
• 1984年「患者の権利宣言」
• 1995年厚労省より「インフォームド・コンセントのあり方に関す
る検討会」
大西和子編:がん看護学、2011
ニュールンベルグ綱領(1947)
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医学的研究においては、その被験者の自発的同意が本質的に絶対に必要である。
このことは、その人が同意することができる法的能力を持っていなければならず、暴力、ぺてん、欺き、脅迫、騙し、あるいはその他
の表面には現れない形での強制や威圧を受けることなく、理解した上で間違いのない決断を下すのに十分な知識と包括的な理解を
もって、自由に選択できる状況の下で、被験者となる人が自発的同意を与えるべきであること、を意味している。
そのためには、医学的研究の対象とされている人から確定的な同意を受理する前に、研究の性質、期間、目的、実施方法や手段、
被験者となったために起こりうると考えられるすべての不自由さや危険、健康や人格に対する影響について、医学的研究の対象とさ
れている人は、知らされる必要がある。同意の内容が妥当なものであるかどうかを確かめる責任は、実験を開始し、指導し、あるい
は実施する各個人にある。
これは、実施責任者が難を逃れて他の人に押しつけることのできない実施責任者個人の義務であり、責任である。
実験は、他の研究方法や手段では得られず、かつ行き当たりばったりの無益な性質のものではなく、社会的善のための実り多い結
果をもたらすものでなくてはならない。
実験は、動物実験の結果に基づき、かつ病気本来の由来を理解し、また期待される結果がその実験の遂行を正当化するような研
究において、直面した他の問題についての知識を踏まえた上で計画して行うべきである。
実験は、すべて不必要な肉体的・精神的苦痛や障害を起こさないように行われなくてはならない。
死亡や機能不全を生じる障害を引き起こすことが予め予想される理由がある場合には、その実験を行ってはならない。ただし、実験
する医師自身も被験者となる実験の場合は、恐らく例外としてよいであろう。
許容されうる危険の程度は、その実験で解決されるべき問題の人道的重要さの程度を上回ってはならない。
被験者に傷害、機能不全や死をもたらすような僅かな可能性からですら被験者を守るべく、適切な準備をし、十分な設備を整えなけ
ればならない。
実験は、科学的有資格者によってのみ実施されなくてはならない。実験を指導し実施する人にとっては、すべての実験段階を通じて
最高度の技術と細心の注意が必要である。
実験の進行中に、被験者にとって実験の続行が耐えられない程の肉体的、精神的な状態に達した場合には、随意に実験を中止し
て貰えなければならない。
自分に求められる誠実さ、優れた技術、注意深い判断に基づいて、実験の継続によって被験者に傷害、機能不全や死をもたらすだ
ろうと推測するに足る理由がある場合には、実施責任者は実験の途中でいつでも実験を中止する心構えでいなくてはならない。
(星野一正 訳:星野先生の了解を得て公開)
ニュールンベルグ綱領(1947)
• 表面には現れない形での強制や威圧を受け
ることなく、
• 理解した上で
• 間違いのない決断を下すのに十分な知識と包
括的な理解をもって、
• 自由に選択できる状況の下で、
• 被験者となる人が自発的同意を与えるべき
患者の権利章典(1972)
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1.患者は礼儀正しく思いやりのある医療を受ける権利がある。
2.患者は自分の医師から自分が理解できると思われて当然な言葉で自分について診断、治療、予後に関する現時点での情報を全部教えてもら
う権利がある。患者にそのような情報を与えるのが医学的にみて勧められないときは、その情報は適当な人が患者の利益のために利用できるよう
にすべきである。患者は自分の治療を取り仕切っている責任者の医師の名を知る権利がある。
3.患者はなんらかの処置あるいは治療が始められるまえに納得同意を与えるのに必要な情報を担当の医師から知らせてもらう権利がある。緊急
の場合を除いて、納得同意に必要な情報には特殊な処置・治療に関連した医学的に重要な危機および無能力になってしまう可能性がふくまれる
のはもちろんであるが、それだけに限らない。看護ないし治療に医学的に意味のある別法が存在する場合。あるいは患者が別の医学的方法にう
いて知りたいと思うとき、患者はそれを教えてもらう権利がある。患者はまたその処置・治療に責任をもつ人の名前を知る権利がある。
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4.患者は法律の許す範囲で治療を拒否する権利があるし、また自分の行動が医学的にどういう結果を生むについて教えてもらう権利がある。
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5.患者は自分自身の医療に関して自分のプライバシーをすべて配慮する権利がある。症例検討、他医との相談、検査、治療は秘密にすべきであ
り、また慎重に行われるべきである。患者の医療に直接関係ないものは患者の許可が得られていなければならない。
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6.患者には自分の医療に関するあらゆる会話議論が秘密扱いされることを期待する権利がある。
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7.患者がサービスを求めた場合、病院はその能力の範囲で妥当な反応をするはずだということを期待する権利が患者にはある。そうされた病院
はその患者の緊急度に応じて検査なり処置なり照会をすべきである。患者を別の病院へ移すときは、医学的に許されれば転院の必要性および他
の方法について患者に十分に説明してからでなければしてはいけない。なによりもまず患者が移される予定の施設が患者の移転を認めていなけ
ればならない。
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8.患者は医療に関する限り、自分が入院している病院と他の診療施設、教育施設との関係について情報を得る権利がある。患者はそのような研
究計画に加わることを拒否する権利がある。
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9.患者は自分の医療ないし治療に影響を与えるような人体実験をしたいと病院からいわれた場合、助言を受ける権利がある。患者はそのような
研究計画に加わることを拒否する権利がある。
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10.患者は治療が理不尽に中断されないことを期待する権利がある。患者は予約の時間が何時で何という医師にどこで見てもらえるのかをまえ
もって知る権利がある。患者は、退院後に続ける必要のある健康管理について自分の医師あるいはその代理の者から知らせてもらう仕組みが病
院にあると期待する権利がある。
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11.患者はどういう金で支払うかに関係なく自分の請求を調べ、それを説明してもらう権利がある。
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12.患者は病院のどんな規則法規が患者としての自分の行動に適応されるのかを知る権利がある。
どんなに権利が並べあげたとしても、患者が権利として期待してよいような治療を患者に保障することはできない。
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病院には、病気の予防治療、医療専門職の人たちと患者双方の教育、臨床研究の遂行など、しなければならないことがたくさんある。これらすべ
ての活動は患者に第一の関心をもち、とりわけ人間としての患者の尊厳を認めて行うべきである。これを認識するのに成功すれば、患者の権利を
守ることに成功したも同然である。
患者の権利(リスボン宣言)
【序文】
医師、患者およびより広い意味での社会との関係は、近年著し
く変化してきた。 医師は、常に自らの良心に従い、また常に患
者の最善の利益のために行動すべきであると同時に、それと
同等の努力を患者の自律性と正義を保証するために払わねば
ならない。以下に掲げる宣言は、医師が是認し推進する患者の
主要な権利のいくつかを述べたものである。医師および医療従
事者、または医療組織は、この権利を認識し、擁護していくうえ
で共同の責任を担っている。法律、政府の措置、あるいは他の
いかなる行政や慣例であろうとも、患者の権利を否定する場合
には、医師はこの権利を保障ないし回復させる適切な手段を講
じるべきである。
世界医師会:1981年
当院の患者の権利
• 良質の医療を受ける権利
• 選択の自由の権利
• 自己決定の権利
• 意識のない患者への対応
• 法的無能力の患者
• 患者の意思の反する処置
• 情報に対する権利
• 守秘義務に対する権利
• 健康教育を受ける権利
• 尊厳に対する権利
• 宗教的支援に対する権利
インフォームド・コンセントとは?
• 威嚇又は不適当な誘導なしに、患者が理解できる方法及び言
語により、適当で理解できる以下の情報を患者に説明した後
に、自由に行われる同意をいう。
a 診断の評価
b 提案された治療の目的、方法、予測される期間及び
期待される利益
c より押しつけ的でない(less intrusive)ものを含む他の
治療方法、及び
d 提案された治療で予測される苦痛又は不快、危険及び
副作用
国連総会「精神病者の保護及び精神保健ケアの改善のための原則」1991年12月
我が国における状況
• パターナリズムに基づく医療の長期化
• おまかせ医療の風潮
• インフォームド・コンセントの浸透が47%
(20歳以上の男女4554人を対象とした調査研究)
• 医師の説明に関する相談(6.4%にあたる)
「説明不足」「説明に不信・疑問がある」「両者の合意不足」
「説明を受けていない」「聞きにくい雰囲気」
「理解出来なかった」など
• 医療者が実施したつもりでも、患者自身の自己決定による同
意がなされていないこともある
研究結果:ICに関連する問題状況
1.ICに対する医師の認識不足
入院診療計画書の記載など
2.ICの進め方に関連する問題
1)専門用語使用による説明及び一方向的な説明
2)医師の個人差による問題
3)情報提供に対して患者が納得していない状況
3.告知に関する悩み・問題
1)未告知
2)病状進行による症状出現・悪化への説明不足
3)治療による副作用の説明不足
4)看護師個々の説明のズレによる不信感
臨床場面におけるインフォームド・コンセントについて看護師が感じている問題:
渡曾丹和子秋田大学医学部保健学科紀要:2003
インフォームド・コンセントとは?
• 患者の自己決定を支えるプロセス
• 自己決定出来るために必要な情報の提供
• 患者の理解できる言葉、ツールを使用する
• 患者が理解出来て初めて成立する
• 患者の認識確認が重要(誤解の訂正など)
意思決定を支えるコミュニケーション
GOOD(Hallenbeck)
• G:Goals(目標設定):治療目標をどのように考えているか
生活の中で大事にしているもの
ライフヒストリーを聞く
• O:Option(選択肢提示)
医療者が考えるいくつかの方法
(メリット・デメリットも含めて)
• O:Opinion(意見を述べる)
中立な立場で医療者として最善の意見
• D:Document(記録に残す)
参加者・内容・患者の希望・結果(決定事項)
Hallenbeck JL:Palliative Care Perspective.Oxford University Press,Oxford,2003