子供から大人まで、誰もが知っている春の花の代表「チューリップ」はるか昔のヨーロッパではその姿に多くの人が魅了され、経済に混乱を巻き起こすほどでした。今回は、そんな魅力あふれるチューリップに注目していきます！！学名 Tulipa gesneriana 科・属名原産地和名ユリ科チューリップ属地中海東部の沿岸域から中央アジア鬱金香（うこんこう）オランダのイメージが強いチューリップですが、原産地は地中海東部の沿岸域から中央アジアにかけてです。 16 世紀にトルコからヨーロッパへ伝わり、オランダを中心に品種改良が行われてきました。名前の由来は、トルコ語でターバンを意味する「tulipan（tulbend）」から。日本へは江戸時代後期に渡来しました。史上初のバブル経済事件！？～チューリップ・バブル～オランダを中心にヨーロッパで 1634～1637 年に起こった、世界初のバブル経済事件。トルコから輸入されたチューリップの球根が人気を集め、異常な高値で取引されるようになりました。 1 個の球根が、ビール工場と交換されたことも・・・！！特に人気だったのは、斑入りの花を咲かせる球根。実は、ウイルスによってモザイク病にかかったものでした。しかし当時は原因が分からず、新しい品種として注目を集めていました。チューリップの栽培チューリップといえば春の花。通常、秋に球根を植え付け、土の中で冬の寒さに耐えた後、４月頃に花を咲かせます。チューリップの開花には冬の寒さを経験することが必要ですが、その特性を利用し人工的に冬の条件を作り出すことで、収穫を早めることができます。作型低温遭遇期の違いによって、主に「超促成栽培」「促成栽培」「半促成栽培」「露地栽培」に分けられます。 ※促成栽培：露地栽培よりも成長・収穫・出荷を早める方法。チューリップでは冷蔵処理がポイントです。 ❀球根の冷蔵には 2 種類あります❀ 予備冷蔵：序盤の発達やノーズの伸張を促す年間入荷量の推移本冷蔵：花茎の伸張や開花を促進する ※ 予備冷蔵は、10 月までに本冷蔵を行う作型において必要冷蔵処理は、開花率や切花品質にも影響を及ぼす重要なポイントです！ ❀11 月頃から入荷が始まり、３月にピークを迎えます❀ 主な産地 ✿新潟 ✿富山 ✿埼玉多彩な品種チューリップは非常に品種が多く、開花期や花型により 15 系統に分類されています。今回は切花に多く見られる 5 つの花型をご紹介します！一一重重咲咲きき八八重重咲咲きき最もスタンダードなタイプ牡丹や芍薬を連想させる、花びらの多いタイプダイナスティホワイトマーベルピサロチャーミングビューティーユユリリ咲咲ききパパーーロロッットト咲咲きき花弁の先が細く尖ったタイプ花弁がねじれ、深く切れ込みの入ったタイププリティウーマンバレリーナフフリリンンジジ咲咲きき花弁のふちがギザギザになっているタイプエキゾチックパーロットウェバースパーロットチューリップの品種は世界で約 5600、日本で約 2600 品種あるとされています。毎年新しい品種も発表されているためまだまだ増え続けています。ハウステンボススミルノフご存知ですか？チューリップの香りチューリップの香りと聞いて、どのような香りが思い浮かびますか？多くの品種はあまり香りを持ちませんが、中には良い香りの品種もあり、主に 4 つのタイプに分類されます。 ------------------------------------------------------------------------------------------------- ✿チューリップの香り一般的なチューリップの香りフローラル調の甘いほのかな香りが特徴モンテカルロ ------------------------------------------------------------------------------------------------- ✿ジューシーの香りスイカやリンゴにナイフを入れたときに感じる、みずみずしいフレッシュな芳香バルバドス ------------------------------------------------------------------------------------------------- ✿フルーティの香りパイナップルやマンゴーなど甘酸っぱいフルーツの香りを思わせる芳香フィノーラ ------------------------------------------------------------------------------------------------- ✿スパイシーの香り胡椒やシナモンなどのスパイスに似た香りバラードホワイト ------------------------------------------------------------------------------------------------良い香りの品種は、八重咲きやユリ咲きの品種に多い傾向があります。最も香り立ちが良いのは 7～8 分咲きほどです。チューリップを長く楽しむためには気づけばチューリップの花茎がどんどん伸びていた・・・お部屋に飾っていたらあっという間に花が散ってしまった・・・なんてことはありませんか？花茎の伸長には、産地での前処理が有効です！チューリップ専用の前処理剤を使用することで、花茎の伸びや曲がり、葉の黄化を抑制することができます。前処理しているものは、前処理をしていないものと比較して、花茎が伸びていないことが分かりますね！！前処理あり前処理なしお部屋に飾る際のポイントは・・・ ① 市販の切り花栄養剤を使用前処理剤ではあまり抑えることのできない花弁の老化を抑制できます。 ② 涼しい場所に飾りましょうチューリップは温度に敏感な花です。高い温度、特に 20℃以上では極端に日持ちが短くなってしまいます。 ③ 浅水＆こまめな水変えを！水揚げは良いですが、茎が腐りやすいため浅水にし、新鮮な水に取り換えてあげましょう。 ※前処理剤、後処理剤の効果は品種によって差があります。冬から春を彩るチューリップ。誰もが幼い頃から親しんでいる童謡「チューリップ」は、 “なにごとにも良いところがある。社会的に弱い人もみな認めあいたい。 “ という願いを込めて作詞されたそうです。豊富な品種の中からぜひお気に入りの花を見つけて下さい！！参考文献宇田明桐生進著宍戸純長塩由実著「花屋さんの花材が全てわかるアレンジ図鑑」今西英雄他編集「花屋さんが知っておきたい花の小事典」「花の園芸辞典」大田花き HP“チューリップの香り” http://www2012.otakaki.co.jp/topics/2010/20100304-1/ （株）大田花き品質カイゼン室