「ビジネス・クリエイティブ・ヨコハマ」 プロジェクト 第3回勉強会 議事録 2015/2/24 17:00〜19:00 開催場所:IDEC 公益財団法人 横浜企業経営支援財団 大会議室 1 <タイムスケジュール> 17:00- 開始 挨拶企画趣旨説明 17:05- 主催、共催者より本プロジェクト説明 17:30- 株式会社信光社、旭鋳金工業株式会社プレゼン クロストーク、質疑応答、名刺交換など 約 1 時間 30 分程 19:00 全体終了 <テーマ> 協働でつくる新しいものづくりのカタチ <イベント内容、形式> 企業とクリエイターを結びつけ新しい産業をつくることを目的とした事業「ビ ジネス クリエイティブ ヨコハマ」は、横浜市文化観光局の創造都市施策とし て H25 年度からスタートした。 昨年の秋には、新商品開発を協働で進めてきた複数企業の試作品を 「YOKOHAMA GROWN」として、日本最大のライフスタイルの展示会 IFFT(インテリア・ライフスタイル・リビング)に出展した。 今回の勉強会では、実際にこれまで商品開発を協働で進めてきた企業と、事業 の推進役であるコーディネーターとの対談形式のプレゼンテーションで、本プ ロジェクトの可能性と課題を振り返ると同時に、今後の展開を探る。 <登壇者> ビジネス クリエイティブ ヨコハマ 参画メンバー <参加企業> 株式会社信光社 マーケティング戦略室 室長 川南修一氏 旭鋳金工業株式会社 代表取締役 大林淳一氏 <コーディネーター> デザイニト 伊東祥次 トーン&マター 広瀬郁 2 <主催> 横浜市文化観光局 <共催> 公益財団法人横浜企業経営支援財団(IDEC) . <参加者> 勉強会:参加24名 (申し込み:21名) 属性:横浜市職員さま/横浜市企業さま/グラフィックデザイナー/ アーティスト/デザイン会社勤務/映像クリエイター/co-lab メンバー その他 <登壇企業概要> ◎株式会社 信光社 本社所在地:神奈川県横浜市栄区小菅ヶ谷 2 丁目 4-1 工場所在地:栃木県佐野市水木町 1043 設立:1947 年(昭和 22 年)5 月 26 日 ホームページ:http://www.shinkosha.com/index.html 事業内容: 各種酸化物単結晶製品(サファイア、ルチル等)の製造並びに販売 光通信用デバイス(光アイソレータ、ルチルプリズム等)の製造並びに販売 産業用(ファイバレーザ用)の光アイソレータおよび光ファイバセンサ製品の 製造並びに販売 ◎旭鋳金工業 株式会社 本社所在地:神奈川県横浜市旭区西川島町 67-1 工場所在地: 設立:1970 年(昭和 45 年)9 月 ホームページ:http://www.imono.jp/index.html 事業内容: 大型薄肉アルミ鋳物、精密一体化アルミ鋳物、各種アルミ合金鋳物、 銅合金鋳物などの製造および販売 3 <司会者挨拶 企画趣旨説明> ●司会:広瀬より 今日は、 「ビジネス・クリエイティブ・ヨコハマ」というプロジェクトに参加し、 一緒にプロダクト開発に取り組んできた、株式会社信光社 マーケティング戦 略室 室長 川南修一氏、旭鋳金工業株式会社 代表取締役 大林淳一氏から の生の声を聞くことで、実際のケーススタディから学びとる場にしたい。 「レクチャー」ではなく、参加者にも意見を出してもらいながらの対談形式の 「勉強会」とすることを目指して進めていきたい。 ●本日の進行について 【前半】 このプロジェクトの概要説明を 横浜市文化観光局 創造都市推進課長 三村氏 財団法人 横浜企業経営支援財団 経営支援部 部長 長谷部氏 のお二人より頂く。また、マッチングコーディネートチームの自己紹介。 【後半】 ケーススタディとして 株式会社信光社 マーケティング戦略室 室長 川南修一氏 旭鋳金工業株式会社 代表取締役 大林淳一氏 のお二人よりお話し頂く。 その後、コーディネーターを含めてのクロストーク、参加者からの質疑応答と 4 名刺交換の時間をとり終了とする。 <主催、共催者より本プロジェクト説明> ● 横浜市文化観光局 創造都市推進課長 三村氏 なぜ、文化観光局(横浜市の文化振興、観光 PR を行う部署)が「創造的産業振 興モデル事業」の一環としてこのプロジェクトを運営しているのかを説明する。 経緯。横浜市=創造都市(クリエイティブシティ)という考え方を街づくりに 生かして行こうと始めたのは今から約10年前の2004年からである。 文化芸術のもつ創造性を、街の振興や経済の活性化につなげていこうという壮 大な戦略を掲げてクリエイティブシティという取り組みを行ってきた。 この取り組みの重要な柱として、横浜市が行っている助成制度を利用し創造性 の「もと」となるアーティスト、クリエイターを横浜に集積し、仕事をしても らうようになって約10年が経過した。 しかし、横浜に集まったそのアーティスト、クリエイターが、そこからビジネ スや産業につなげていく、究極的には市内経済を活性化していくところまでは 展望が見いだせていないのが現状である。そのことが、10年間の創造都市の 取り組み続けてきたなかでの、残された課題だと考えている。 横浜市内に集まってきたアーティスト、クリエイターと市内の高い技術をもっ 5 た中小企業のマッチングをはかり、ビジネスに発展させるということが、創造 的産業振興モデル事業の狙いである。 モデル事業を始めたのは、平成25年からであるので、現在まだ2年目の取り 組みである。企業側からの観点で見ると、外部のクリエイターに仕事を発注す ることは、企業にとってはコストになり、負担になる。それに見合う効果があ るか?ということが、理解してもらえない面がある。 一方、アーティスト、クリエイター側から見ると(特にアーティスト)は自身 の創作活動を主眼としており、それをビジネスとして成り立つようにしていこ うという考えが弱い面がある。双方の想いのズレを少なくし、新しい製品やサ ービスに付加価値をつけていきたいと考えている。しかし、その面で市職員で は不足の部分があるので、その部分を補ってもらうために、その道のプロと言 える、マッチングコーディネートチームに委託している。 リーダーは co-lab 田中で、メンバーとして広瀬、伊東でチームを組んでいる。 IDEC に技術力、やる気のある横浜市の企業を紹介してもらい、コーディネート チームが30社程にヒアリングを実施してきた。その中で、今回プレゼンをし てもらう、2社に試作品の開発をしてもらうに至った。 このように、商品開発やサービス作りに取り組みながら横浜市としての成功事 例を作り、横浜にビジネスのチャンスがあることを PR していきたい。 ●財団法人 横浜企業経営支援財団 経営支援部 部長 長谷部氏 IDEC とは、横浜市の中小企業支援センターとしてさまざまな支援活動をしてい る団体である。その支援のひとつとして、 「横浜ものづくりコーディネート事業」 という事業を展開している。 横浜市内には製造業を営む中小零細企業が約8000社ある。こういった企業 が新たな製品を作りたいとか、新たな事業に取り組みたいと考えた際に、さま ざまなマッチングをはかって製品を作ろうという主旨の事業である。 例えば、中小企業同士、中小企業と大企業、中小企業と大学研究機関を等をマ ッチングさせている。今年で3年目になり、ようやく具体的なビジネスが今年 6 になってでてきている状況である。 マッチングをする際に、間をとりもつのが「横浜ものづくりコーディネーター」 という役割で、今日の勉強会にも数名参加している。 中小企業に対してヒアリングして、シーズ、ニーズを拾ってきてスータブルな 相手とつなげる活動している。そのように活動するなかで、ある課題がでてき た。コーディネーターは、大手企業もしくは商社出身の人材であるので、製造 業同士のマッチングであればそれほど問題ないが、それ以外のサービスであっ たり、消費者向けの製品づくりであったりしてくるとなかなか良い製品ができ ないということが課題となった為、その点をどのように解決するかを模索して きた。 そのような状況のなか、横浜市文化観光局から創造的産業振興モデル事業を紹 介してもらったのが2年前のこと。 そして、横浜ものづくりコーディネーターから紹介したのが、今回プレゼンに 参加することになった2社であって、その他の企業も多数紹介してきた経緯が ある。 引き続きこの事業ともに、ヨコハマ・ビジネス・クリエイティブのマッチング コーディネートチームに協力してもらって、良い製品を作っていく支援をして きたい。 ● マッチングコーディネートチームの自己紹介 このチームは新しい働き方として、クリエイティブワーカーが集まって働いて いる co-lab 渋谷というシェアオフィスを拠点として活動しているチームである。 ・コーディネートチーム代表 田中より自己紹介 広瀬はビジネスコンサルティング出身、建築設計、開発系をやってきたので今 回のプロジェクトの全体の推進役を担っている。 伊東は無印良品のデザイン部長として売れる商品を作ってきた景観があるので、 色々な技術を持っている会社を判断して、デザイナーにつなげ通訳する役割と して活躍している。 7 ・伊東より自己紹介 プロダクトデザイナー。化粧品から指輪まで低価格から高価格帯まで幅広くデ ザインをしている。デザイナーだからといって、思いつきで仕事をしているわ けではなく、マーケティングや調査を9割しながらデザインの仕事をしている。 ・広瀬より自己紹介 出身は建築であるが、どのような事業でも事業収支をつくり、それによって関 わる人皆がやって良かったと思うようにすることを重要視している。収支計算 をする為には会社や工場の方々からよくお話しを聞く。そうすることで見えて きたもので収支計画を立て、それを実現する為の仕組みが見えてくるのでそれ をまとめ、このようなやり方で、こういうものを作るといいのではないか?と いう提案をしている。そのような収支計算とクリエイターのひらめきのブリッ ジングをすることを意識している。 <クロストークを始めるにあたってのステイトメント> 創造的産業振興モデル事業として実施するのは3年間である為、それほど長い 期間とはいえない。まず、商品を作ってみないとわからないので、まず感度の 高い商品を作ることを第一フェーズの目標としている。 町工場、技術者のみなさんのもっている可能性を聞いて、そこを起点に技術を 生かして商品開発をしたいと考えている。 一般的に、地域振興のデザインを入れて作る商品は、「伝統工芸品」「作家の名 前」を使って売って行くというモデルが多いが、この伝統の手作業がすごいで しょ?といったような理屈ではなく、普通の感覚でこれは欲しい商品だなと思 ってもらえるものを作りたいと思って進めてきた。 今回2社が登壇するが、他にも珍しいことにチャレンジしている企業もある。 11月に IIFT に横浜グローンとして出展した商品を制作した会社に登壇しても らっている。IIFT ではいろいろな反響があったのでそのようなことを含めて2 社から様々な事を共有してもらいたい。 8 <ケーススタディプレゼンテーション> ●株式会社信光社 マーケティング戦略室 室長 川南修一氏 ・自己紹介/会社紹介/当事業参加の経緯 34年間セラミックの研究開発している技術者である。長年研究開発に従事し、 その後、マーケティングの役割を担っている。 会社は1947年設立。サファイアルビーの結晶を作って加工して販売してい る。合成宝石を手掛けており、高級時計の部品として使われている。 例えば、高級時計(5万円以上)のカバーとして使われているサファイアなど。 40年以上続くロングセラーで、スイスの会社にも輸出している。 また、酸化物結晶を大学研究機関に販売。 現在、サファイアが売上げの半約分を占めている。青色 LED にもサファイアが 使われており、その生産量は日本で3番目くらいである。 売上げのうち約3割が時計用サファイア、約5割が理化学機器などに使われる LED サファイア、その他が大学研究機関で使われるサファイア以外の酸化物単 結晶で、1部光ファイバー部品がある。 しかし、LED は半導体業界の商品であって、非常に浮き沈み激しい業界である 為、売上げとして次の柱となる製品を育てたいと考えていた。特に、B to B 商 品ではなく、一般消費者向けの製品を手掛けたいと考え、数年前からギフトシ ョーにサファイアのお箸などを作って出展したが、ビジネスになかなかつなが らなかったという背景があり、今回のモデル事業に参加することになった。 9 -クロストーク・広瀬 川南氏と何度も会ったが、会社が持っている技術がとても専門的で深い為、そ れを理解しどのような商品開発に生かしてつなげるかを提案するまでに時間を 要した。川南氏にとって、マッチングコーディネートチームはどのような印象 だったか? ・川南氏 チームの人達は、はじめて見る雰囲気の方たちで、非常に興味をそそられた。 ただ、業界の文化が違いすぎる風貌だったので、あやしい売り込みではないか と思ったが、IDEC からの紹介だったので話をした。 今回の指輪という提案は、どのような経緯ででたアイデアだったか? ・ 伊東から製品の紹介 ジュエリーというのは、最終商品としては参入しやすいかな?ということがま ずあった。特に、以前の仕事でデザインジュエリーを扱った経験があり、原価 率からいってもデザインジュエリーでなら利益の出る商品が作れると考えた。 大手ジュエリーメーカーであるココ山岡が君臨していた時代は、ジュエリーの 原価率は10%切っていた。そこに参入することは厳しいが、デザインジュエ リーは、伊勢丹やホテルクラスカでのイベントなどで販売でき、原価率40% ほどでよかった。アパレル39%である為、デザインジュエリーであれば、参 入できると考えた。サファイアをそのまま削り無垢でジュエリーを作ることを 提案してみたら、会社としてできそうだということだった。 10 伊東自身、小売りでプロダクトデザインしてきた為、昨日の売上げをシビアに 追求されてきた。製品開発をする際に一番重要なことは、デザイナーと製造者 がマーケット情報や、目標を共有してその中でどのようなアイデアをだしてい くかを考えていくことである。信光社がどのような技術を持っているかをよく 把握して進め、アイデアを出し3D プリンターでサンプルを色々と作っていっ た。 指輪をデザインする際、磨く工数の工程がコストに乗ってくるので、何面磨く かということを注意深く検討した。磨く面が多いとコストがかかるし、半面、 磨く面が少ないとせっかくのサファイアの美しさが出ない。サンプルとして磨 いたのは15個くらい。1個を磨くのに平均5日くらいを要した。 ・広瀬 コーディネートチームメンバー通って、何度もやりとりをした。そのようにコ ミュニケーションをとることが可能な条件を横浜市が用意してくれたことは重 要であった。そのようにして、製品開発の条件や可能性についての整理をする 人材が必要であると改めて感じた。 2015年4月以降、海外でも売り出せるよう考えている。百貨店と組んで販 売することや、ドバイ、香港、中国など高所得層の多い市場に出してブラッシ ュアップしたい。そのように海外で売れることことで、逆輸入して日本にも戻 ってくることが出来る可能性があると考えている。 ・川南氏 売値をどうするかが一番の問題だと感じている。制作するのに1週間かかると それだけで、人件費が20万円にくらいなってしまう。現段階だと売値は30 万円になってしまうので、それでは難しいと感じている。値決めとデザインの バランスを考えてどのように販売するかが課題。 以前、百貨店で販売したことあるが、日本は天然思考が強く、人工であること の評価が低いために日本では売れなかった。もっと、クラフトマンシップの強 調や、非常に良い品質のジュエリーを作っているということをアピールしたい。 横浜市がバックにあるので、横浜市のブランドとしての品質保証など、後ろ盾 として生かし育てていきたい。 11 ・ 広瀬 海外では、日本製品はクラフトマンシップに対する評価が非常に高い。そうい う意味でも海外でこれ以上安くならない?と言われない市場を開拓する。 ・伊東 春節で日本に観光に来る中国人の日本での買い物予算は160万だから、売値 は高くても大丈夫ではないだろうか。 ● 旭鋳金工業株式会社 代表取締役 大林淳一氏 ・自己紹介/会社紹介/当事業参加の経緯 創業以来、「砂型」にこだわった鋳物製作をしている会社である。3 代目として 特に現在はアルミ鋳物に力を入れている。主力の製品である移動台カバーは、 以前は板金で作っていたけど、もう少しおしゃれな形にしたいということがあ ったが、3D の作成は板金では難しいということでアルミの鋳物でできないか と考えて始まった。アルミ鋳物を作ったのが10年前のことで、当時そのよう な技術が他にはなかった為に、量産化につながった。 製品としては多くが産業用機械部品で、ロボットの腕などがほとんどであった。 現在では、アルミ鋳物の移動台カバーが15%くらいの割合を占めているが、 やはり採取消費者向けのものづくりをしてみたいと、長い間考えていたが実現 していなかった為に、今回のモデル事業に参加した。 -クロストーク・広瀬 マッチングコーディネートチームと大林氏が初めて会ったのは2014年7月 12 19日だった。第一印象としては、 「とてもチャレンジングな会社」というもの だった。新しいことに意欲的な会社であることこのモデル事業を進めていく企 業を選ぶ際に重要なことであった。 ・大林氏 信光社の川南氏と同様「IDEC さんからの紹介じゃなかったら、会わなかった」 とのこと。IDEC とは長い付き合いがあり、その人からの依頼であったので会っ たという状況だった。 ・広瀬 デザイナーと過去におつきあいがあるか? ・大林氏 社内の若い人がある新しいものづくりをやってみたいということだったので、 横浜市商業施設支援センターの無料相談会に参加したが、ものづくりは実現し なかった。 「中小企業のオヤジ」としては、目標は自社製品で「何か」を作りたい、と思 っている。しかし、その「何か」を社内で引き出せるかという、それは難しい ことであった。市場に必要なものという視点ではなく、自分が求めている物を 作りたいといった感覚なので、それを具現化するのは難しいと考えていた。 ・伊東 ハンガーを作成するというアイデアに至るまで。 会社を見学中にものすごく大きな鋳物を作るということで、若い方が社長を呼 びにきた。6 人くらいで鋳物に流し込む作業をみたところ、若い方が非常にやる 気であったし、社長も次世代に次がせようという意気込みを感じ、一発で良い 13 アイデアを出さなくてはならないと感じた。 魅力的な最終商品で、少し価格が高くても欲しくなるものをどうやって作るか と考えてハンガーを作った。 現在「ゲストの為のもの」という視点での物が受け入れられる傾向があるので そういったものを作ろうと考え、それを実際のホテルでの使用にもつなげる意 図だった。 3D プリンターで作ったモデルを見せたら、社長がすぐに実物のサンプルを土 日で作ると言って3つ作ってくれた。 IIFT では非常に好評であった。見た感じよりも触ってみるとものすごく軽いこ とが評価された。社長の希望として、他社が真似できないように難しくすると いうことと、女性用のサイズをつくるということがあるのでさらにブラッシュ アップしていく予定。 ・大林氏 現状、様々な他社の設計者が鋳物を使ってくれない。理由としては、鋳物の良 さが伝わっていないからである。だから、新幹線を作って展示会に出せば反響 があるはずだと考え、新幹線の設計図をもってないか IDEC の酒井氏に聞いた りした。 ・広瀬 技術の告知としては、新幹線を作ることは良いことだと思う。特に、技術がわ かる人、ツウな人には効果があると考えられる。そうではなく、一般の人がパ ッと見た瞬間にいいなと思ってもらう商品を作ることが必要ではないかと考え てこのハンガーを提案した。 この事業を進めて行くなかで、 「B to B」 「B to C」という言葉の整理が必要だと 考えた。 今回作成したハンガーも、いきなり一般消費者に届かなくても、ホテル、百貨 店、セレクトショップのバイヤーや、クリエイター、デザイナーが C になるこ とも考えて良いのではないかと考えた。 例えば、空間を作る人(建築家やクリエイター)が、アパレルショップを作る 際のひとつの選択肢となったら良いという考え方である。そのことで、新たに 14 バリエーションを増やすという展開も可能性としてある。 いきなりユーザー向けの売り場に売って、買ってもらうことだけが、答えでは ない、と考えている。 <質疑応答> Q 横浜企業経営支援財団総合コーディネーター 飯田氏 ものづくりとしては、入り口の戦略、出口の戦略が必要だと考えている。 コーディネーターの仕事をしていると、デザイナーと企業がディスカッション してものづくりをすすめて行くが、色々な中小企業の経営者と話しをしている と、共通しての課題に気がつく。 せっかくものを作っても、販路がない場合が多い。ものを作ってしまってから、 どこで売ろうか、という事体が非常に多い。 その経験上、最初から出口戦略を設定してものづくりをしたらどうかと考えた が、その点はどのように考えるか。 A.伊東 作った商品は、インターコンチネンタルホテルにある、セゾンアートショップ で試験販売する予定。春節の時に日本に来る中国人観光客向けに間に合わせた かったが無理だった また、4月以降の YCC。パリ展示会に出そうということを検討中。 無印良品などとは違い、これらの商品は「一番良いマーケット」を絞る必要が ある。国際都市横浜であることもあるので、それは海外のマーケットであると 考えている。信光社のジュエリーは45万円で売らなくては利益が出ないので 特に、海外で販売した後に日本に逆輸入というルートを考えておく必要がある。 Q(質問者不明) 今回の2社の事例を聞いていると、クリエイターとして動いているのが伊東氏 だからうまくいっているのではないか、と感じた。他の数多くのデザイナーと 企業をマッチングさせることは困難かと思うが、今後どうやって多くのデザイ 15 ナーと企業をマッチングさせていくか。 ・広瀬 まず、前提として個人でデザインをしているクリエイターは日本では圧倒的に 少ない。ほとんどが、インハウスで企業に属しているデザイナーである為であ る。ものづくりの為のマッチングを成功さる為には、デザインだけでなく、ネ ーミング、パッケージ、宣伝から様々な要素が必要となってくる。 そのため、その状況を整理し、ものづくりを成功させるためにはどのような仕 組みが必要かを整理するコーディネーターの役割を入れる必要があると考えて いる。今回の場合は、伊東自身でそれができるがそうでない場合は、デザイナ ーだけでなく、コーディネーターを入れればうまくできるのではないかと考え ている。 ・ 伊東、広瀬 まずは、成功モデルをつくらないといけないと考えている。その為に、商品を 売る、ということが重要。まず、それを実現してから次につながるように派生 させていく考えである。 ・ 公認会計士の方 製造業にも精通している公認会計士の方からの見方 企業がクリエイターに依頼してものをつくる際によく相談を受けるのは、もの が作りっぱなしになってしまうというものである。クリエイターとしては、こ こまで作ったんだからいいでしょ、ということでいなくなってしまう。販売す るところまでコミットしてくれるデザイナー、クリエイターが必要なのだと強 く感じている。責任をもって出口戦略まで遂行してくれる人、それがコーディ ネートチームの役割なのかもしれないが、販売のことまで考える人が必要だと 思う。 Q.(ある企業からの質問、質問者不明) 1.モデル事業ではあるが、費用の受け渡しがあるのであれば、どのくらい費用 感なのか。 2.ソフトウエア開発している企業であるが、基盤にソフトウエアを入れて製品 16 を作りたいと考えているがその場合の費用感はどのくらいか。 A.広瀬 1.今回の2社のケースでは、マッチングコーディネートチームは、横浜市からフ ィーをもらうことになっているが、事業プランをしっかり作るところまでは、 費用は発生しない。試作品としてどのようなものをつくるかの踏み込み方はケ ースによって様々だが、今のところは2社ともまだ費用発生していない。 2.どのくらいの物量や質を求めるか、どのようなクリエイターに依頼するか、な どで全く費用感は異なってしまうので、明確には言えない。ただ、相談には乗 ることはできる。 A 伊東 3D プリンターが発達したので、デザインするうえでかなりハードルは下がっ ている。以前はモックアップする為には、数十万かかったが、3D プリンターを 使う事で今は数千円になった。そういう意味では安くなってると考えられる。 本来デザインフィーは、販売した商品のロイヤリティがデザイン料であるべき だと考えているが、実際のプロダクトデザイナーの多くはインハウスでの仕事 なので、現実とは異なっている。 この事業では、販売した分のロイヤリティをデザイナーがもらえる、という形 になると思うが、そのような形でビジネスとして成立させることは難しさがあ るものの、このような事業をやりながらデザイナーも様々なケースを学び、仕 事が増えて行けば良いし、そういう部分もモデルとして模索していく必要があ ると考えている。 Q.マルヤマ氏 実際は、バイヤーとの商談までを行わなくては、 「出口」にならないと考えられ るが、どのように考えているか。 A.伊東 17 試験販売を行うセゾンショプの場合は、ショップに在庫もってもらうことにな っている。会社によっては製造会社に在庫もってもらうこと考えもいる。もの によっては、商社を入れるかどうかなどは今後の課題である。 A.広瀬 今回は、マッチングコーディネートチームが、バイヤー交渉までやるつもりで ある。モデル事業として、このプロジェクトブランをどこまで押し出せるかと いう点で、価格戦略などそのあたりまで考える必要があると考えている。 <最後に2社から一言> ・株式会社信光社 マーケティング戦略室 室長 川南修一氏 販売の部分でどのような形態で売るか、ネットや、横浜市がアンテナショップ を作るとか、色々な試みにチャレンジしてプロジェクトブランドとしてうまく 売り出すことを一緒に考えたい。 ・旭鋳金工業株式会社 代表取締役 大林淳一氏 あまり先のこと考えていない。ただ難しいものを作ることができれば、それほ ど売れなくていいやと思っている。誰も他に作らないようなものを作りたいだ けで、本来は戦略を立てなくてはいけないと思うが、その点は、マッチングコ ーディネートチームに任せっきりになってしまうがよろしくお願いしたい。 ・ 伊東 今後に生かす為にも、このモデル事業の生々しい話を共有することが必要だと 思い、このような機会をもった。今後も参加者からもらったコメントを課題と して、やっていきたいと考えている。是非、興味をもった場合はアクセスして ほしい。 18 <名刺交換タイム> 名刺交換中も活発な意見交換が生まれ盛況のうちに勉強会を終えた。 19
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