3. デジタル財の特性 3-I. デジタル財の特性 3-II. 電子決済 デジタル財の特性 竹田 陽子 ©Yoko TAKEDA 2001 3-I デジタル財の性質 1. 限界コストがゼロに近く、平均コストが 逓減するものの生産・販売からどうやっ て儲けるのか 1. 高固定費、低変動費 A. すばやくたくさん売る 膨大なR&D投資、複製・再生産のコスト はゼロに近い 平均コストが逓増に転じない 2. 経験財 3. 低探索コスト 顧客とのコミュニケーション、許諾 クリック履歴などの情報の収集 顧客に合わせて製品を編集する 個別に供給する 情報財はユーザーにとっての価値のばらつき も大きい ©Yoko TAKEDA 2001 『価格競争になるから入ってくるな』とい うシグナル 需要側のネットワーク外部性によっ て補強される(ロックイン効果) 参考文献:シャピロ・バリアン『ネットワーク経済の法則』 ©Yoko TAKEDA 2001 B. 製品の差別化 カスタマイズ デジタル化とオープン・ネットワーク化が容易 にしている側面 顧客の個人情報を得る チャネルをとにかく広げる 初期に値下げをして、先行逃げ切り ©Yoko TAKEDA 2001 売れば売るほど平均コストが下がる C.価格差別 1)完全差別化 顧客のWilling to payに従って価格付けをする 顧客の個人情報データベース、Cookie 2)セグメント別 学生向け、アカデミック向け、企業向け、個人向 け・・・ 自己選択 発売時期、品質・・・ デジタル財はVersioning(Shapiro& Varian)しやすい ©Yoko TAKEDA 2001 1 D.知的財産権による保護 技術的なコントロール 法律・契約によるコントロール E.ビジネスモデル 電子すかし、コピーの制限・管理 中間業者に素材を売る 編集をおこなって付加価値をつける業者 非営利機関(図書館など) デジタル財を物財として売る 補完サービス・補完財を売る 広告やユーザー属性販売によって儲ける (儲けない) 参考:國領二郎「情報価値の収益モデル」 (『情報化と経済システムの転換』) ©Yoko TAKEDA 2001 ©Yoko TAKEDA 2001 3.低探索コスト:市場の均質化と 局地化のせめぎあい 2. 経験財としてのデジタル財 試用 初期ヴァージョン無料化 一部を見せる 毎日の記事閲覧は無料、記事データベース使 用は有料 カスタマイズしや すい/カスタマイズ が求められる、顧 客とコミュニケー ションしやすい →製品差別化、価格 差別 低探索コスト →一物一価 デジタル化が試用やバージョンアップ、部分的なア クセス制限などを容易にしている面も 平均的な品質に対する信頼の構築 v.s. ポイントは人間の 情報処理の限界 年間購読 ©Yoko TAKEDA 2001 ©Yoko TAKEDA 2001 参考:太田・黒澤・渡辺『情報セキュリティの科学』 II.電子決済 従来の決済手段 消費者-企業:現金、クレジットカード、デビットカード等 企業-企業:手形、小切手、現金 銀行-銀行:銀行間ネットワーク オープンネットワーク上の決済の技術 的な要件:セキュリティ 例:デフィーとヘルマン原案(1976)の公開鍵 暗号方式 決済のデジタル化・ネットワーク化の例 企業間のネット決済 クレジットカードの認証(消費者-店舗-カード会社) 小切手の認証 電子マネー(プリペイドカード型、仮想銀行型) ©Yoko TAKEDA 2001 誰でも公開された鍵を使って暗号化はでき るが、秘密鍵がなければ解くことが非常に困 難な関数をもちいる 秘密鍵は暗号を受信する人だけが持ってい 公開鍵があれば簡単に計算 れば良い できる 暗号文=f(原文) 原文 秘密鍵がないと計算が難しい -1(暗号文) 原文=f ©Yoko TAKEDA 2001 暗号文 2 参考:太田・黒澤・渡辺『情報セキュリティの科学』 RSAの場合 技術的要件よりも重要なのは・・ 公開鍵を選ぶ 1. ランダムに選んだ2つの素数(p,q)の積N p-1とq-1の最小公倍数Lと素な数e 秘密鍵を算出する 2. Lc+ed=1が成り立つd 暗号文=(原文)emodN ・・・逆関数は計算困難 原文=(暗号文)dmodN 3. 4. 決済システムとしての機能と諸制度・ビジ ネスモデルとの関わり 決済システムの要件 価値の安定性 流動性供給 d(秘密鍵)を計算するには、Nを素因数分解してp, qにもどさなくてはならない。桁数が多いと計算が困 難になる。 ©Yoko TAKEDA 2001 ©Yoko TAKEDA 2001 参考:本西泰三「電子マネーの導入と効率的な決済システムの導入について」 岩村充『電子マネー入門』 電子決済の現行制度への影響 現金(預貯金)の裏付けがある場合、現行の信用創 造機能を利用する場合はあまり影響を与えない クレジットカードの認証 小切手の認証 プリペイドカード型電子マネー 電子決済が新たに信用を創造する場合、従来より匿 名性を高める場合は影響を与え得る 仮想銀行型の電子マネー 裏付資産の価値変動のリスク 貨幣供給量の変化 マネーロンダリング・・・ ©Yoko TAKEDA 2001 3
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