2015年7月号 2015年版 中小企業白書のポイント PDFを開く

最新の製品情報・税務情報を毎月お届けしています。
JDL
Close Up
Information
2015.
7
Business Column
2 0 1 5 年 版 中 小 企 業 白 書 の ポイント
先般、中小企業庁より2015年版中小企業白書が公表されました。
れています。地域と都市・世界をどのように結んでいくか? そのよ
中小企業白書は中小企業基本法第11条に基づく年次報告書で、
うな視点で経営を考えていくことで地域の活性化も図れるのです。
今回で52回目になります。白書にみる顧問先の経営発展の一助と
なり得る経営のヒントとその概要をご紹介します。
地域活性化のカギは中小企業にかかっている
多くの中小企業・小規模事業者が事業を営む場である
「地域」
は
収益力を向上させるために必要なこと
中小企業・小規模事業者が収益力を向上させる上で課題となっ
ているものとして、白書では
「イノベーション・販路開拓」
「人材の確
保・定着」
をテーマとして取り上げています。
高齢化の進展、人口の減少など様々な構造変化の影響を受けてい
ます。そのような厳しい状況の中でも大企業が応えきれないニー
(1)
中小企業も市場と直接向き合う姿勢を持つ
ズを捉え、地域のブランド化を推し進めることができるのは、中小
2000年代以降の中小企業は、大企業との取引関係の希薄化が
企業・小規模事業者です。
進んだため、市場と直接向き合わなくてはならない状況にあり、そ
の影響により、高い収益率を実現できる企業とそうでない企業の差
(1)
地域において多様な主体による面的な取組を活用
市町村、商工会・商工会議所、同業の中小企業など多様な主体と
が拡大したと白書では分析しています。高い収益率を実現するため
に、直接市場とどう向き合っていくのか、検討することが重要です。
連携しながら、地域資源のブランド化や消費者目線に立った商品
開発に取り組むことが大切だと白書では分析しています。
(2)
イノベーション活動を促進させる
「常に新市場開拓を意識した情報収集・分析を行う」
「市場での差
(2)
継続的に活用できる地域資源を活用
別化をするための研究・開発をしている」企業が多くあることがア
地域資源を活用した商品・サービスの開発において成功を収め
ンケート結果からわかりました。
る
(売上拡大、地域資源のブランド化等)
ためには、ある程度時間が
現状に甘んじることなく販路開拓を意識しながら市場をみて経
かかることが想定されます。消費者(購入者)の声や市場の需要の
営していくことが大切です。
変化にも対応するためには、商品・サービスの見直しも時として必
要であり、地域資源を活用した商品・サービスを開発する際には、
(3)
中小企業も採用力を身に付けることが必要 継続的活用が可能かどうかを検討したうえで選定することが重要
従業員の不足感は全国的に高まっており、4割近くの中小企業・
です。
小規模事業者が人材の確保に腐心しています。
人材が確保できている企業とできていない企業の違いとして、で
(3)
多くの地域住民が資源として認識していないものを活用
きている企業においては、一般的に言われている労働条件や賃金に
「地域住民の一部が知っている、あるいは資源として認識してい
加え、企業としての採用力ともいうべき、人材確保の手段・ノウハウ
る」
地域資源が約3割をしめているというアンケート結果から、地域
において強みを持っていることが考えられると分析されています。
において必ずしも多くの住民に知られていなくても、市場の需要
を的確に把握し、それらを商品・サービスの開発や販路開拓にしっ
(4)
地域の企業同士が意見交換の場を持つ
かり活かしていくことで、大きな成功を収めることが可能であるこ
コミュニケーション手段が発達し、
I
Tを駆使すれば直接会わなく
とがわかったと白書では示されています。
ても情報は多々入手できる環境にありますが、イノベーションを推
進するための意見交換には、顔と顔をつきあわせる手法を重視す
(4)
地域を元気にするのは中小企業
る傾向にあることがわかりました。
地域にどのような課題があり、その地域課題解決に相応の対価
同業他社が参加し、地域全体で共生して成果を出すという価値
が支払われるかどうかについて把握し、
ビジネスに結びつけるケー
を共有して、参加者同士の仕事も発展した成功事例が白書では紹
スがあります。それができるのは地場の中小企業です。
介されています。
地域資源を“磨く”
ことによって、本来持っている地域の資源の価
値を最大限に高めることに成功した企業の事例が白書では紹介さ
※中小企業白書について、詳しくは中小企業庁ホームページをご参照ください
(今年初めて「小規模
企業白書」
も同時に公表されました。こちらも併せてご参照ください)。