「赤間硯(あかますずり)」 - 中国経済産業局

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〔山口県〕
「赤間硯(あかますずり)」
中野伸二(総務課 係長)
[email protected]
TEL 082-224-5615
今回は、山口の伝統的工芸品「赤間硯」を御紹介します。
「赤間硯」の歴史は古く遡り、建久2年(1191年)、神奈川県鎌倉市にある源頼朝
ゆかりの鶴岡八幡宮に奉納されたと言われています。また、「赤間硯」の名は現在の下関
市の旧名、
「赤間関(あかまがせき)
」で作られ始めたことに由来しているそうです。
江戸時代には、「厚狭(あさ)」(旧山陽町)や「万倉(まぐら)」(宇部市北部)の「赤間
石」が用いられるようになり、毛利氏が藩主
の頃、原料が採れる山は一般には入山を禁じ
られ、参勤交代の贈り物として硯が必要にな
ると、藩主の命令で採掘がされたそうです。
このように、
「赤間硯」は藩主の贈答品等に使
われた貴重な硯でした。筆墨硯紙という文房
四宝の中でも最も永く時を共に過ごすといわ
れる硯は、多くの武将や文人が手元に置きた
いと、その心を魅了していたそうです。
「赤間硯」
そうした「赤間硯」の特徴ですが、まず、
「赤間石」と呼ばれるチョコレート色の美し
い石を用いていることがあげられます。次に、石質が緻密なため硯に適しており、石質に
粘りがあるため彫刻しやすいことも特徴だそうです。また、
「赤間硯」に使われる石は、
墨を下ろすザラザラとした石英や鉄分を多く含み、大きさが一定していて小さいため、墨
が細かくすれ、墨色が良く、さらっと伸びの良い墨汁が得られる
そうです。このため、仮名文字など、細かい表現に向いているそ
うです。
「赤間石」の原石は約一億年前より堆積した地層で、宇部の採
石地では、約1.5メートルの層に限られ、
「赤間硯」の作り手
自ら採石しておられます。石を見極めるとともに火薬の扱いを覚
えるなど、採石の習得には10数年かかるそうです。現在、
「赤
間硯」の職人の方は、4事業所7名おられ、伝統技術の継承や産
「坑道」
地の振興に向けて頑張っておられます。
「坑道」
旬レポ中国地域
2015 年 8 月号
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こうした中、産地では、
「赤間硯」に加えて、
「赤間石」を用いた「薬味皿」や「箸置き」
「お猪口」等の「食器」に取り組むなど、地域資源を活かした新たな展開も進めておられ
ます。
「箸置き」
「食器」
「赤間硯」は、昭和51年、経済産業省の「伝統的工芸品」に指定されており、中国地
域には、このほか15の産地が指定されています。当局では、これらの16産地の振興に
向けたお手伝いをしているところですが、伝統的工芸品産業は、ライフスタイルの変化に
よる需要低迷、後継者不足、原材料や技法の制約から量産化できないなど多くの課題を抱
えています。
一方、伝統的な技法や素材を活かした商品そのものの価値が国内外で見直されてきてお
り、デザイン性を加えることで新たな顧客をつかむ産地も多く出てきています。
書道家をはじめとした地域の皆様、産地の元気な取組を支援するため、身近な伝統的工
芸品として御活用いただいてみてはどうでしょうか。
○経済産業省指定「伝統的工芸品」に関するサイト
http://kougeihin.jp/home.shtml
http://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/nichiyo-densan/
※内容協力:山口県、宇部市、山口県赤間硯生産協同組合
経済産業省 中国経済産業局 広報誌
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2015 年 8 月号
Copyright 2015 Chugoku Bureau of Economy , Trade and Industry.
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