【高分子圧電材料の基礎知識】 強誘電性高分子の圧電物性と 超音波トランスデューサへの応用 株式会社イデアルスター 代表取締役副社長 表 研次 掲載内容 強誘電性高分子材料の紹介 圧電マトリクスの紹介 圧電マトリクス定数計測法の紹介 弾性・誘電・圧電マトリクス定数の紹介 圧電性応用の紹介 ◇伸縮圧電性応用 ◇ずり圧電性応用 強誘電性高分子材料の紹介 強誘電性高分子フィルムの写真 P(VDF/TrFE) ラメラ結晶膜 PVDF 1軸延伸膜 強誘電性高分子 ◆ポリフッ化ビニリデン[PVDF] ◆フッ化ビニリデン/3フッ化エチレン共重合体[P(VDF/TrFE)] VDF TrFE dipole H H F H C C C C F F F F P(VDF/TrFE) VDFとTrFEがランダムに 連なったひも状分子 T.Furukawa, Phase Transitions, 1989,vol.18,pp.143-211 P(VDF/TrFE)単結晶状膜 X線回折 ⇒ 非結晶部は存在しない 電子線顕微鏡 ⇒ ラメラ結晶が存在しない 光学的にもラメラ結晶が存在しない H.Ohigashi, K.Omote and T.Gomyo, Appl.Phys.Lett., 66 (1995) 3281 圧電マトリクスの紹介 ・・・5つの圧電性・・・ 結晶格子と結晶点群 一軸延伸 mm2(C2v) 未延伸 ∞mm(C∞v) 結晶格子と結晶軸 1:chain-axis 3 3:dipole-axis 2 1 H(水素) F(フッ素) 圧電・弾性・誘電マトリクス 厚み伸縮圧電性(e33)の発現 c33, ε33 厚み方向に伸縮する変形 長さ伸縮圧電性(e31)の発現 c11, ε33 分子鎖方向に伸びる変形 長さ伸縮圧電性(e32)の発現 c22, ε33 分子鎖に垂直方向に伸びる変形 ずり圧電性(e15)の発現 c55, ε11 分子鎖が滑る方向の変形 ずり圧電性(e24 )の発現 c44, ε22 分子鎖に垂直方向のずり変形 圧電マトリクス定数計測法の紹介 強誘電性高分子圧電マトリクス定数決定 歴史的背景 1969 1976 1979 1980 1981 1982 1989 1995 PVDFで圧電性発見(k31)(河合) PVDFの縦波圧電定数の決定(k31、k32、k33)(大東) PVDFで横波圧電効果確認(Auld et al.) PVDF, P(VDF/TrFE)の強誘電性確認(古川ら) PVDFの圧電マトリクス定数の理論値計算(田代ら) P(VDF/TrFE)で大きな圧電性確認 kt=0.3 (大東、古賀) Review :Phase Transitions (古川) P(VDF/TrFE)の横波圧電定数の決定(k15、k24)(表、大東) ⇒P(VDF/TrFE)ラメラ結晶膜の圧電マトリクス定数決定 1995 P(VDF/TrFE)単結晶状膜の発見(大東、表、五明) 1996 PVDFの横波圧電定数の決定(k15、k24)(表、大東) ⇒PVDF延伸膜の圧電マトリクス定数決定 1997 P(VDF/TrFE)単結晶状膜の圧電マトリクス定数の決定(表、大東、古賀) ⇒P(VDF/TrFE)結晶の圧電マトリクス定数決定 圧電物性定数の計測方法 自由共振法 高分子圧電フィルム(両面電極) リード線 L=nλ/2 (n=1,2…) H.Ohigashi, J. Appl. Phys., 47 (1976) 949 強誘電性高分子の5つの圧電振動モード 超音波便覧(丸善)3章125ページ〔大東著〕 LCRメータで計測した P(VDF/TrFE)自由振動子の共振カーブ (a)厚み伸縮振動 【33モード】 (b)厚みずり振動 【24モード】 弾性・誘電・圧電マトリクス定数 の紹介 結晶性高分子の特徴 圧電結晶体が 膜内に分散し ている 結晶部分が圧電性を発現 結晶部の圧電性を理解する必要がある 弾性率 弾性率(c) c = ρ・v2 音速(v) v = (c/ρ)1/2 v 11 v 22 v 33 v 44 v 55 v 66 : 分子鎖方向の音速 : 分子鎖に垂直方向の音速 : 膜厚方向の音速 : 分子鎖に垂直方向の横波音速 : 分子鎖方向の横波音速(膜面すべり) : 分子鎖方向(膜側面すべり) P(VDF/TrFE)伸縮振動の音速 P(VDF/TrFE)厚み伸縮振動の音速 P(VDF/TrFE)のずり振動の音速 P(VDF/TrFE)の誘電率の温度依存性 P(VDF/TrFE)の電気機械結合係数 P(VDF/TrFE)単結晶状膜の結合係数 圧電性応用の紹介 高分子強誘電体 圧電モード別の応用例 圧電定数 変形方向 eij 変形モード 電界方向 用途 31 伸縮振動 分子鎖方向 1 3 スピーカー アクチュエータ 32 伸縮振動 分子鎖に垂直方向 2 3 スピーカー アクチュエータ 33 伸縮振動 厚み方向 3 3 超音波トランスデューサ、 圧力センサー、アクチュエータ 焦電センサー 15 ずり振動 分子鎖方向 31 1 超音波トランスデューサ 圧電センサー 24 ずり振動 分子鎖に垂直方向 32 2 超音波トランスデューサ 圧電センサー 伸び圧電性(e31モード)の応用例 アクチュエータ フィルムスピーカーの波の立ち方 v = f・λ v = 2Lf L=nλ/ 2 (n=1,2…) f = v/2L L V = 1600 m/s L = 10cm = 0.1 m 高分子圧電フィルム(両面電極) F = 1600/0.2 = 8000 sec-1 = 8 kHz 周波数の高い電気信号を入力 低周波数 高周波数 フィルムの厚み方向に波が立つ 超音波の発信が可能になる v = f・λ v = 2t・f t=nλ/2 (n=1,2…) f = v/2t 高分子圧電フィルム(両面電極) t V = 2400 m/s t = 10 µm = 10^-6 m f = 2400/20×1000000 = 120 MHz t = 1µm ⇒ 1.2 GHz t = 100µm ⇒ 12 MHz 超音波発振の駆動周波数 λ/4 mode λ/2 mode バッキング材 軟らかい 硬い 強誘電性高分子膜 高分子超音波トランスデューサの特徴 周波数帯域が広い パルス幅が短い 生体との音響インピーダンス マッチングが良い 有機材料と無機材料の性能比較 高分子圧電材料 無機圧電材料 代表的材料:PVDF(ポリフッ化ビニリデン) P(VDF/TrFE)(共重合体) 代表的材料: PZT(ジルコン酸チタン酸鉛) BaTiO3(チタン酸バリウム) 長所 フレキシブルであり、加工性が良い 音響インピーダンスが小さい ([密度]×[音速]) 圧電g定数[電圧出力係数]が大きい ⇒電圧出力性能が優れている 長所 電気機械結合係数が大きい 圧電e定数[圧電応力定数]が大きい ⇒応力発生性能が優れている 短所 圧電e定数が小さい 電気機械結合係数が小さい 短所 破壊しやすい/加工性が悪い PZTは鉛を含有している 医療診断用超音波トランスデューサ 高分子圧電材料 生体 音響イン ピーダンス が小さい 無機圧電材料 生体は音響インピーダンスが小さいの で音響インピーダンスの大きな材料か らの音波は反射されてしまう 音響マッチング層 (高分子材料) 超音波トランスデューサ高性能化 高分子材料とセラミック材料はそれぞれ異なる長所を持つ 高分子材料とセラミックの複合化 高感度化:受信電圧の向上 セラミックで送信、高分子で受信する ことで高感度化が可能 横波超音波トランスデューサ 特徴:横波は液体中を流れない 【縦波では検出不可能な欠陥・物性を検出可能】 応用例:極低温物性の計測
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