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愛知憲法通信
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憲法改悪阻止愛知県各界連絡会議
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2015 年 2 月号
No502
愛知憲法会議結成 50 周年に寄せて
――憲法学徒としての自然なかかわり
愛知憲法会議代表委員・沖縄大学客員教授
小林 武
愛知憲法会議の結成 50 周年おめでとうございます。一員でありながら他人事のよ
うな挨拶から始めましたが、身は遠方にあり、しかし魂魄の一片はこの地にとどまっ
ていることに免じてお許しのほどを。祝賀に値する存在意義を全国の憲法運動の中で
かくれもなく有しているのがわが愛知憲法会議です。その 50 年に所感を寄せる幸せ
な機会をいただきました。以下、私の眼から見て、という文章になりますが、どうか
おつきあいください。
私は、1976 年に南山大学で専任の職を得て名古屋に移るまでは、京都で生れ育ち
ました。 憲法を専攻する学徒はすべからくその護り手であるべきだ、というのが私
の素朴な信念です。それが平和擁護と人権保障の気高い精神に貫かれている日本国憲
法であってみれば。それで、私は、自然に大学院生のときから京都憲法会議の会員で
した。
1960 年代末から 70 年代前半の頃ですが、天野和夫先生
(法哲学)、山下健次先生(憲法。私の恩師です)と続く事務局
長の傍らで財政を担当しました。当時、実は、京都憲法会
議は大変な赤字でした。会費納入を会員の自発性に委ねる
ようなところがあったことも一因です。蜷川虎三(知事)、
大西良慶(清水寺管主)、法学者では末川博(民法)・田畑忍(憲
法)・恒藤恭(法哲学)などの名前が並ぶ京都ならではの組織
で、事務局側は何とはなしに遠慮があったのかも知れませ
ん。両事務局長とも、ポケットマネーで赤字を埋めておら
れた場面がありました。それで、全会員の納入状況を一斉に調べて納入をお願いする
という、最も単純で機械的な作業をしたのですが、奏効しました。名古屋に移ること
になるまでの短いものながら、楽しい日々でした。財政担当は松井幸夫さん(憲法)に
引き継がれました。蜷川さんの知事後継者として杉村敏正先生が立候補されたのも、
この時期です。上にお名前を挙げた方々は、松井さんを除いて皆還らぬ人となってお
られます。回顧とはまた寂しい作業です。
1
名古屋移住の年、愛知憲法会議は結成からすでに 11 年。この地の民衆運動の中で
不抜の地位を築いていました。創立期・建設期の苦労を何ら味わうことのないまま迎
えていただき、その後の経験を自然な形で積むことになりました。こうして、愛知で
楽しく活動をすることができたのは、誰あろう森英樹さんのお陰が第一です。憲法研
究者としてどのような役割を果たすべきかを、彼から学びました。僕にとってかけが
えのない人です。
尾張名古屋を支えるのは城、ということですが、愛知憲法会議は名大です。これは、
私にとって驚きでした。京都にも傑出したひとつの大学がありますが、憲法会議の「支
点」はいくつにも分散しています。京教組が有給の専従の方を京都憲法会議に派遣し
ていたのはその一例です。愛知では、長谷川正安先生の仕事が始まりでしょうか、森
さん、そして本秀紀さんが引き継いで、事務局長という難しい役割を献身的に果たし
てきました。これには頭が下がる思いがします。強調しておきたいのは、この方々が
いずれも、学界において憲法研究の第一線に立ち続けながら運動に尽力してきたこと
です。人々が信頼を寄せるのはそれゆえです。ただ同時に、今後の一層の発展のため
に、とくに、立ち現れたファッショ政権の憲法破壊政治と草の根で強靭に対峙するこ
とが望まれている今、複数の支点を築くことが不可欠の課題だと思います。
憲法運動は、人間の尊厳にかかわるすべての問題に関心をもちますから、僕も選り
好みをせずに取り組みました。というより、正直に言って、運動のテーマはすべてが
勉強と結びつきますから、無理のない楽しい営為でした。
愛知でまず力を入れたのは小選挙区制の導入阻止でした
が、この希代の弊制は、当時人々が指摘をしていたとおり、
いま民主主義破壊の猛威を振るっています。私の場合、そ
れに加えて、戸別訪問で銀行員の皆さんが被告人とされた
「たちばな事件」無罪獲得の課題をわがこととして受けと
めました。まったく同じことを、同じ時期に京都で実践し
ていたからです。彼我の扱いが分かれたのは、ただ、蜷川
民主府政の下で京都の警察は動かなかったことによる、と
私は確信をもって推測しています。憲法で保障された権利を行使することが罪とされ、
人生を変えてしまうなどのことがあってはならない。この、運命的な出会いをとおし
て強くそう思いました。
名古屋で 20 年経った頃、「ようやく名古屋の人になりましたね」と、年配の女性運
動の人から言われたのは、うれしいことでした。それから 15 年、21 世紀最初の 10
年代の後半に、名古屋では直接民主主義をプレビシットとして濫用する市長が現われ、
これに抗して市政の民主主義擁護が一大課題となりました。そのさ中、2011 年に、
私は大学を 70 歳の定年で退職し、そのまま青春のときから温めていた念願どおりに
沖縄に移りました。名古屋市政問題から中途半端で離れてしまったことには、今も忸
怩たる思いが残っています。
沖縄の憲法政治は、思い描いていたとおり、大激動期です。その中で、基地のない
未来に向う展望が、くっきりと姿を現わしています。沖縄に憲法会議はなく、人権協
会・憲法普及協・九条の会が、好くも悪しくも一体になって憲法運動を進めています。
そこに愛知で学んだものを注いで、連帯の絆のひとつとしたいと思います。
憲法の護り手である愛知憲法会議が、これからの 50 年を拓いていくことに期待し
てやみません。
2
人権問題としてのカジノ合法化
吉田哲也(弁護士・全国カジノ賭博場設置反対連絡協議会事務局長)
1 はじめに
「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律」案(以下、
「本法案」という。)
は、昨年 12 月に国会に提出されたが、審議再開をみないまま廃案となった。
与野党約 220 名がカジノ議連に参加し成立必至とされた本法案が成立しなかった
のは、経済対策として博打を合法化することへの国民の不信感の表れであろう。
しかし、廃案になったとはいえ、カジノは国家の成長戦略の一環であり、また、自
民党はカジノ合法化を政権公約としている。したがって、必ず、本法案の再提出が試
みられる。
本稿では、本法案の内容を紹介するとともに、人権侵害としてのカジノ合法化とい
う視点を提供したい。
2 本法案の内容
(1)まず、本法案(2 条)が想定するカジノの特徴は次のとおりである。
カジノの議論に「IR」という表現が頻出している。
「IR」とは、
「Integrated Resort」
の略語であり、本法案では「特定複合観光施設」と表現されている。「特定複合観光
施設」とは、「カジノ施設…レクリエーション施設、展示施設、宿泊施設その他の観
光の振興に寄与すると認められる施設が一体とな」る、カジノを含む観光施設の総合
体である。そして、
「特定複合観光施設」の「設置及び運営」は、
「民間事業者」が行
う。また、
「特定複合観光施設」の設置は、
「主務大臣の認定を受けた区域」において
のみ許される。
(2)
「カジノ施設の設置及び運営に関する秩序の維持及び安全の確保」のために、
「内
閣府」の「外局として」「カジノ管理委員会」が設置される(11 条)。
内閣府の外局には宮内庁、公正取引委員会などがあるが、カジノ管理委員会はこれ
らと同格であって、カジノが国家的事業とされるゆえんである。
(3)一方で、本法案は、カジノによって、「暴力団員その他カジノ施設に対する関
与が不適当な者の関与」、
「犯罪の発生」、
「風俗環境の悪化」、
「青少年の健全育成への
悪影響」、
「入場者がカジノ施設を利用したことに伴い受ける悪影響」といった弊害の
発生を自認しており(10 条)、これらの対策を講じることにしている。
(4)本法案は、
「政府」に対し、
「法律の施行後一年以内を目途」に「特定複合観光
施設区域の整備の推進」に「必要な法制上の措置」を「講じ」る責務を負わせている。
つまり、本法案に次いで、具体的な措置を定める実施法が予定されている。
そして、これらの具体的な措置を講じる部署として、首相を本部長とする「特定複
合観光施設区域整備推進本部」が「内閣に」設置される(14、15、17 条)。つまり、
総理自らがカジノ合法化の先頭に立つわけである。
3
賭博罪の保護法益
ところで、カジノは賭博罪に該当する(刑法 185 条以下)が、そもそも「賭博」が
犯罪とされるのはなぜだろうか。
この点について、最高裁昭和 25 年 11 月 22 日判決は、
「単なる偶然の事情に因り財
物の獲得を僥倖せんと相争うがごときは、国民をして怠惰浪費の幣風を生ぜしめ、健
3
康で文化的な社会の基盤を成す勤労の美風(憲法第 27 条 1 項参照)を害するばかり
でなく、甚だしきは暴行、脅迫、殺傷、強窃盗その他の副次的犯罪を誘発し又は国民
経済の機能に重大な障害を与える恐れすらある」とする。
日本書紀には、持統天皇が賭博を禁じたと記事があり、以来我が国では、賭博は人
と社会を破壊するものとして一貫して禁じられてきたし、それが現行刑法の規定に連
なっている。
上記の賭博罪の保護法益論は、私たちの社会が古くから受け継いできた一般的な認
識に沿うものといえよう。
4
カジノがもたらす人権侵害
カジノ合法化は、こうした私たちの社会の賭博に対する認識への挑戦といわなけれ
ばならない。そして、それよってもたらされるものについては、パチンコで現に起き
ている事態をみてみるとよい。
「パチンコで遊ぶ金欲しさ」の犯罪、また、炎天下の駐車場で幼児が蒸し殺される
といったパチンコ関連事件が、繰返し報道されている。通常のレジャー施設では生じ
えない、このような事態は、パチンコの「射倖性」が招いているものである。射倖心
を煽って、より多くの富を得たいという人間の性につけ込み、あの手この手を使って
顧客を誘引し、ヒーローやアイドルを登場させて視覚、聴覚等の五感を巧みに刺激し、
「大当たり」をその顧客個人の能力によるものと錯覚させ、必然的に負けるようにで
きているシステムを利用しながら、「負け」をさらなる賭けで取り返すという不合理
極まりない心情に顧客を追い込んでいく。このような業態は、賭博業の本質的特徴で
あって、カジノも同様である。
また、民間事業者による賭博は、利益の最大化が至上命
題になるため、より多くの顧客を賭博に依存させることが
自己目的化する。まさに、顧客を依存症にして利益を得る
「依存症ビジネス」にほかならない。
こうした実態は、立派な消費者被害であり、結果として、
顧客の財産が奪われ、果ては、生命、身体に危機が及ぶと
なれば、賭博の放任は、幸福追求権や生存権を脅かすもの
といえよう。
カジノ合法化は、必然的に一定割合の病的賭博の現象を
生み出すことになり、まさに、人為的に生み出された被害、人権侵害といわなければ
ならない。
5
さいごに
このように、カジノの合法化は、種々の弊害をもたらすが、推進派は、弊害を最小
化する対策を講じる、弊害を超える利益があるなどと主張する。
こうした発想は、カジノ事業者の私益追求のために、それによって必然的に生じる
被害者の犠牲を容認するものであって、その反道徳性は明らかである。
本法案は、弊害発生を自認しながら、対策の内容については全く触れていない。弊
害の内容、有効な対策について、徹底した調査、検討が必要であるのに、その作業が
行われないまま、カジノ合法化という終点のみを定めたのが本法案である。本法案は、
その意味で欠陥法案であって、議論に値しないというべきであろう。
4
ヒロシマ・ナガサキ
「被爆 70 周年記念事業」を成功させるために!
愛知県原水爆被災者の会
恩田明彦
事業計画
1 「被爆 70 周年原爆犠牲者を偲ぶつどい」2015 年 8 月 3 日(月)名古屋市公会堂
大ホール
2 被爆者の「広島・長崎墓参めぐり」
3 県内被爆者の体験記の発行
私たちは、
「広島・長崎の悲劇をふたたび繰り返させない」ことを願って、この 69
年間世界に向かって訴え続け、今日まで核戦争を止めてきました。
今、被爆者の平均年齢は 80 才、私たちは日々、健康の不安と激減する被爆者数に
心を痛めて、さらに先行き不安な世の中で、被爆者の明日はあるのか!という危機感
を抱えて生活しています。
しかし、私たちは、「非力ですが決して無力ではない」という強い意志を持ってい
ます。これから、命ある限り、世界平和を訴え続けていきます。
この事業の成功は、私たちの生きる勇気と喜びを取り戻すものと信じています。ど
うかご理解とご協力をお願いいたします。
被爆 70 周年
“反核・日本の音楽家たち”名古屋事務局
若尾真理子
今年 2015 年は日本が広島・長崎の原爆を受けてから 70 周
年にあたるということで、2007 年のグローバル・ピース・コ
ンサートから 7 年間、コンサート活動を休止していた反核・
日本の音楽家たち名古屋は「今年こそ」コンサートを開催し
て広く核廃絶を訴えるべきだと思い、8月2日にしらかわホ
ールでコンサートを開くことにしました。
久しぶりに立ち上げたので、何もかもが勝手が違い、昨年
一年間かかって、ようやく準備がととのったところです。
第一部は個人の演奏家に35人ほどお願いして小さなオーケ
ストラを結成し、オーケストラ伴奏で3人の若いソリストが演奏します。
第二部は合唱団を組織して3月~練習を開始して本番は作曲者である池辺晋一郎さ
んの指揮で「初恋物語」を演奏します。戦火に散った若い命と失ったものの悲しさを
歌い上げます。
折しも、憲法九条が形を変えられようとしている今、私たちには何ができるのか、
コンサートで流れを変えることはできないかもしれないけれど、九条改悪阻止の気持
ちを持つ人たちと思いを共通する場を提供することはできると思います。取り組みが
遅れていて心配ですが、何とか成功に結び付けたいと思っています。ご支援、ご協力
お願いします。
問い合わせ 090-2924-6295 若尾
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兵器の廃絶を目指す
核戦争に反対する医師の会・愛知
事務局長中川武夫
私たちの会は、
「全面核戦争になれば想像を絶する数の死傷者が発生」
「それへの
有効な医療は殆どなく、かりに、なんらかの対応策があっても、医療施設は破壊され、
医療スタッフも死傷し、実際上医療は不可能になる」「人間の生命と健康を守るため
の医師として、人類を滅亡に導く狂気の核戦争の危険を前にして黙っていることはで
きない」として、1982年4月に結成された団体です。今までも、微力ではありま
すが「被爆者訴訟」を支援し、核戦争防止の最大の課題である核兵器の廃絶を目指し
講演会や署名、街頭宣伝など様々な運動を展開してきました。もちろん「2度と戦争
をしない」ことを明記した「日本国憲法」を守ることは大前提です。
今年も、核廃絶と被爆者支援の2本柱で、引き続き被爆
者訴訟の支援、NPT再検討会議NY行動への参加、原水
禁大会への参加などに取り組みます。またこれらに加え、
核兵器開発と密接に関係する「原発」の再稼働を許さない
取り組み、福島原発事故による放射線被ばくの課題、避難
されている方への支援にも積極的に取り組みます。
反核医師の会・愛知はまた、今年10月31日、11月
1日、全国の会の「つどい」を愛知で開催します。皆様の
大きなご協力をお願いいたします。
「名古屋舞台人企画・戦後70年を考える」公募のご案内
名古屋には数えきれない程の劇団、音楽、舞踊などの舞台創造団体が活躍していま
す。その多くは根底で反核、非戦、平和を願って公演を続けていますが、ジャンルを
超えた連携は十分とはいえません。15年前には、在名の創造団体、民主団体が力を
合わせてグローバル・ピース・フェスティバルを開催しましたが、残念ながら現在は
それを再現する状況にありません。しかし戦後・
被爆70年の節目の時に個々の企画がポツンポツンと点在することは何とか避けて、
全体に網目のようにつながり市・県民にアピールしつつ、少しでも創造・普及の輪を
広げられないかと次の企画を考え進めています。それは、賛同する団体(個人も可)
が参加費 1000 円ずつを出し合い統一ロゴを作り、各催しのチラシ・プログラムに掲
載しアピールするという試みです。ロゴはすでにできておりお申込みと同時に送付し
ます。
公演名・主催者・期日・会場・簡単な内容を実行委員会あてに参加費を添えて是非
お申込みください。
連絡申込先:俳優館「戦後70年を考える実行委員会」
〒460-0008 名古屋市中区栄 1-28-17 Tel:052-203-8721 Fax:052-203-7829
Mail:[email protected]
呼びかけ人 天野鎮雄 高須道夫 竹内菊 藤井知昭
6
手に取る一冊
『映画で学ぶ憲法』(志田陽子編
法律文化社 2014 年 4 月刊)
「ゴジラ」から「チャーリー(チャップリン)」まで50ほどの作品を通して憲法
について考えている。「平和、立憲主義、精神的自由、人身の自由、経済的自由そし
て平等」について、映画を思い出しながら考えるのは楽しいものだ。「映画が国家に
よる検閲の対象になる社会では、憲法という法ジャンルを映画で学ぶことはできな
い」と基本的人権の中でも表現の自由の大切を映画が教えてくれている。
なじみがあり見たことがある映画もあるが、映画の題名しか知らないものもあるが、
読み始めるとそのようなことが気にならなくなる。レンタルビデオで見たくもなる。
映画で憲法が学べることは楽しいものだ。「ゴジラ」は小学生のころ、当時は貧しか
ったのでおにぎり持参で見たことを思い出す。入れ替え制度はなかったので、2回見
た。「ゴジラ」はなぜ皇居をふまないのかという視点はよく語られるテーマだ。これ
についてはゴジラは天皇制の呪縛という理由で皇居を踏まないのではなく、「南の海
に散っていった若き兵士たちの、行き場もなく彷徨する数も知れぬ霊魂の群れと、か
つて彼らを南の戦場に送り出し、いま死せる者らの鎮魂めの霊力を失ったただの人間
にかえったこの国の最高祭祀者とが、声もなく対峙しあう光景」をそこに見取ってい
ると言ったのは赤坂憲雄と記している。
映画とテーマとの関係を少し羅列してみる。「私は貝に
なりたい」は戦争責任・戦後補償、「遠い夜明け」は国家
建設・憲法制定、「クロムウエル」は近代憲法獲得の歴史
の追体験・立憲主義、
「白バラの祈りーゾフィー・ショル、
最後の日々」は抵抗運動における良心と表現の自由、「笑
いの大学」は戦時下の表現の自由と検閲、「踊る走査線」
は警察と行政、
「楢山節考」は人間に値する生存権、
「リト
ルダンサー」は労働基本権と個人の尊厳、「ミッション」
は人権価値の普遍性と文化の多元性、「パッチギ」は外国
人の人権と差別、「カッコーの巣の上で」は精神疾患の人
と人権、「もののけ姫」はハンセン病と差別などで、映画
の内容を思い出しながら、憲法を考えることできる。
最後の章は「映画を見た後に語り合うことも、映画の楽しみの一つだろう」と本書
に原稿を寄せた憲法学者からの提起があり、公開座談会が実施され、その一部が掲載
されている。この座談会では、法の適正手続きについて憲法が詳細に規定を定めてい
ることの意義と内容を総合的に語ることも目的とし、個々の作品とは別に対談が行わ
れている。適正手続きについて、刑事手続きの不当な人権侵害を防ぐための詳細な規
定が設けられ、他国の憲法と比較しても珍しく、国民の権利・義務に関する規定の三
分の一が刑事手続きだ。この意義について、団藤重光さんの「新憲法では、人身の自
由の保障のために、多くの規定を設けた、それは第 18 世紀末の憲法であるかのよう
な錯覚を、われわれにあたえる。しかし、そういう憲法を必要とするのが、われわれ
の現在の社会の現状であることを考えなければならない」という 1948 年に語られた
文章が引用されている。この現状は 21 世紀の現在も、冤罪や原発の問題を考えると
存在している。第 12 条にあるように「国民の保障する自由及び権利は、国民の不断
7
の努力によって、これを保持しなければならない」とあるように、主権を持っている
国民の意志が問われている。それにしても、映画を憲法を関連させたこの本を読んで
いる時は至福の時間だった。
事務局 鹿住 幸雄
事務局からのお知らせ
★ 2015 年『建国記念の日』不承認 2.11 愛知県民のつどい
日時 2 月 11 日(水)午後 1 時 30 分~
場所 イーブル名古屋(旧市女性会館) 地下鉄「東別院」下車
講師 内田 樹 氏(神戸女学院大学名誉教授)
テーマ「グローバル資本主義の終焉と、来るべき世界」
資料代 500 円
★
2 月例会は上記「2.11 愛知県民のつどい」に振り替えます。
★
今年度の連続憲法講座
日時 5 月・8 月を除く月 1 回(全 6 回)土曜 13:30〜16:30
場所 労働会館東館ホール
講演予定(詳しいことはパンレットをご覧ください)
① 3/14 柳澤協二さん(集団的自衛権)
② 4/?大内裕和さん(若者)
③ 6/27 中谷雄二さん(秘密保護法廃止)、
④ 7/11 中嶌哲演さん(原発)
⑤ 9/5 浜 矩子さん(アベノミクス)
⑥ 10/31 愛敬浩二さん(憲法運動の課題)
★3月例会は上記連続憲法講座に振り替えます。
編集後記
『テレビが伝えない憲法の話』木村草太著を読んだ。そこには「憲法について考え、
議論するのは、とても楽しい」ということを伝えたい、「憲法学の楽しさ」こそ伝え
たいとある。また、テレビは偏向していて国民の知りたいことを隠しているというこ
とではない、テレビが伝えることには限界があるということを知ることが大切とある。
藤原帰一の文章を引用し、「憲法九条は外国に向けた一方的外交宣言としての側面が
ある」、憲法九条は公式性の強い文書ということ指摘し、外交文書としての日本国憲
法を位置づけている。戦争には加担しないということが、平和を維持する唯一の方法
ということだと思う。マスコミを批判している場合ではなく、行動こそが、今、一番
必要なことなのだ。
風のように
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