第3期高島市経営改革プラン(本文)(PDF文書)

Ⅰ 経営改革の必要性
1 改革の背景
(1)合併後の状況
平成17年1月、旧高島郡6町村が合併し、新たに高島市が誕生してから早や
7年の歳月が経過しました。合併当時から景気の低迷による税収の減少や国の改
革による地方交付税や国からの補助金の減少などにより財源丌足は深刻で、市の
財政は危機的な状況にありましたが、今日までさまざまな行財政改革を積極的に
推進し財政状況は少しずつ適正なものに近づいてきました。しかし、今後収入の
大幅な伸びは見込めず財政状況は依然厳しい状況が続くと考えられ、さらなる経
営改革の取り組みが必要になります。
(2)人口の減少、少子・高齢化の進行
高島市の人口は、平成12年の国勢調査で増加傾向のピークを迎え、平成17
年の調査では2.8%減の53,950人、平成22年の調査では5.3%減の
52,491人となりました。将来推計人口は平成28年までに50,000人
を割り込む(平成17年度時点の推計)ものと見込まれており、人口減少に歯止
めをかける方策が必要になります。
また、年少人口(0~14歳)と生産年齢人口(15歳~64歳)が減少する
一方、老年人口(65歳以上)が増加し、今後も少子・高齢化の傾向がさらに進
んでいくと予測され、子育て支援等の少子化対策とともに、高齢者の急激な増加
に対する福祉・介護・医療等にかかる行政対応のほか、高齢者の社会参加や健康
と生きがいづくりの施策が特に重要になります。
(3)地域主権改革、新しい公共の進展
国においては、平成21年12月に「地方分権改革推進計画」が、平成22年
6月には「地域主権戦略大綱」がそれぞれ閣議決定され、平成23年4月には同
計画を踏まえ第1次地域主権改革一拢法が、また同年8月には同大綱を踏まえ第
2次地域主権改革一拢法が成立しました。これらは国と地方の役割分担を見直し、
地域における行政を地方公共団体が自主的かつ総合的に実施できるよう、地方の
裁量の拡大、自主性・自立性の拡大を目指すものであり、地方公共団体への権限
の委譲と併せて広範囲な事務の移管が現在進められています。
また、平成22年6月には内閣府に設けられた「新しい公共」円卓会議におい
て「新しい公共宣言」が取りまとめられ、市民、地域団体、NPO、企業やその
他の事業体、そして行政が協働することにより活気のある地域社会を構築してい
こうとする動きが進められています。
こうした中にあって、本市においても自らの判断と責任において地域の諸課題
1
に取り組む体制整備が重要な課題となっています。
(4)交付税合併特例措置の終了
平成17年の合併以降10年間の地方交付税の合併特例措置の終了がいよい
よ間近に迫ってきました。本市の地方交付税は、平成26年度までは合併前の水
準を保たれますが、平成27年度から平成31年度にかけて5年間で段階的に縮
減され、平成32年度以降は特例措置の無い、いわゆる「交付税の一本算定」と
いう形態になります。
このため、地方交付税の段階的縮減が開始される平成27年度までに経営改革
による成果をあげ、安定した行財政基盤を確立することが喫緊の課題となってい
ます。
2 これまでの取り組み
本市では、平成17年度から平成21年度までの「高島市集中改革プラン」、平
成18年度から平成20年度までの「高島市経営改革プラン【第1期】」
、さらに平
成21年度から平成23年度までの「高島市経営改革プラン【第2期】
」を策定し、
今日まで経営改革に取り組み、人件費の削減等を中心に大幅な経費削減による経営
改善を図ってきました。
また、平成17年度から平成20年度までの4年間、
「事業仕分け」方式による
事務事業の外部評価に取り組むとともに、平成22、23年度には市の全事務事業
について内部評価を実施することにより各種事務事業内容の検証と評価、改善に全
庁をあげて取り組んできました。
公営企業の分野では、深刻な経営丌振に陥っていた公立高島総合病院について、
平成19年度に「公立高島総合病院改革プラン」を策定し、精力的に経営改善に取
り組み、平成21年度に単年度収支で黒字経営に転換することができました。
一方、市民協働の分野においては、新たに「たかしま市民協働交流センター」を
設立するとともに市民協働事業提案制度を推進する等、市民と行政との「協働」の
進展に成果を得ることができました。
2
Ⅱ 経営改革の基本的な考え方
1 改革の目的
高島市総合計画に定める「お互いさま」と「おかげさま」が対流する「環の郷た
かしま」の実現を基本理念に、今後は「びわ湖源流の郷 たかしま」をキーワード
として、高島市が持つ魅力や可能性、地域の力をさらに活かした活力あるまちづく
りを推進します。
このため、経営改革を進めることにより、各種施策の実行を可能にする安定した
行財政基盤を確立するとともに、「市民協働」によるまちづくりを推進し、地域主
権時代に即応した自立した自治体の実現を目指します。
2 改革の方針
(1)次の世代に大きな負の財産を残さない、持続可能な行財政基盤の確立
地方交付税の合併特例措置の終了が迫るとともに、地方財政の先行きに丌確定
な要素が多い中にあって、現在のかたちで行財政運営を継続することは、財政状
況の悪化をまねき将来を託す子どもたちに多くの負担を押し付けることになり
かねません。
このため、税収など自主財源の確保を基本に、中長期的な視点に立って重点的
かつ計画的な財源配分を行うとともに、現行の事務事業や施策についてさらなる
改革を進め、将来にわたり持続可能な行財政基盤の確立を目指します。
(2)行政サービスの向上と人材育成
これからの行政運営は、自己判断と自己責任で政策を実行していくことを基本
に、より地域の実情に即応した柔軟で効率的な行政サービスの提供が求められて
おり、これらを実行していくためには、サービスの担い手である職員の意識改革
と能力開発が丌可欠であることから、平成20年に策定した「高島市人材育成基
本方針」に基づき、新しい地域主権時代を意欲的に切り拓く人材の育成に努めま
す。
(3)
「市民協働」で取り組む活力あるまちづくり
魅力にあふれ活力に満ちた地域社会を創りあげていくためには、市民と行政が
対等の立場で、共に考え、手を携えて進める「市民協働」による取り組みが、今
後において一層重要になると考えられます。
このため、市政に関する情報を適確に市民に提供するとともに、政策の立案か
ら事業実施にいたるさまざまな段階で市民が主体的に参画できる仕組みを構築
すること等により「市民協働のまちづくり」を推進します。
3
3 計画の期間
計画の期間は、平成24年度から平成26年度までの3年間とします。
4 改革の総括目標
経営改革を着実に推進するため、経費の削減等の目標を次のとおり設定します。
(1) 経費の削減等の目標額(H23 数値を基準とした H26 末の削減等の目標額)
4億円
(2) 財政効果額の目標額(H24、H25、H26各年度の削減等の目標額の合計)
8億円
5 改革の重点項目と方向付け
今後経営改革に取り組む重点項目とその方向付けについては、次のとおりとし
ます。
(1)公共施設の見直し
公共施設については、本市は6町村が合併したため、同規模自治体と比べて非
常に多くの施設を有しており、これらにかかる維持管理費が市財政を大きく圧迫
しています。公共施設の見直しについては、これまでの経営改革プランの中でも
重点項目に位置づけ、平成20年度には「公共施設の見直し方針」を策定し、施
設の統廃合等に取り組んできたところでありますが、未だ十分な成果を得られて
いない状況であることから、最重点課題として取り組みます。
(2)経常経費の削減
本市は合併協定により職員削減目標を設定し、これまで職員数の適正化に取り
組んでまいりましたが、支所を含め公共施設の数が多いこと等から未だに職員数
が全国の類似団体平均を上回っており、給不水準は同全国平均より低いにもかか
わらず、人件費が多額で大きな財政負担となっています。
また、物件費についても同様に類似団体平均を上回っていることから、これら
人件費や物件費等の経常的な経費の削減に重点的に取り組みます。
(3)組織機構の再編整備
機能的で効率的な行財政運営を図るため、本庁と支所機能の見直しを含め組織
機構の再編整備を検討します。これにより組織全体のスリム化と体制の強化に取
り組みます。
4
Ⅲ 経営改革の基本方策と推進項目
「Ⅱ
経営改革の基本的な考え方」に基づき、これまでの経営改革の成果と課題を
踏まえ、「行政運営の改革」、「財政運営の改革」、「組織機構の改革と人材育成」、「市
民協働によるまちづくりの推進」の4点を「改革の基本方策」とし、それぞれの方策
ごとに推進項目を定め、関係部局が連携し実現に向けて取り組むものとします。
また、基本方策と推進項目に基づく、改革の具体的な取り組み内容については、
「経
営改革プラン実施計画」において定めます。
なお、平成22、23年度に、約1000件の全事務事業について「内部評価」に
取り組んだところであり、今回の「実施計画」は、この内部評価で作成した事務事業
の改善計画をもとに作成します。
1 行政運営の改革
厳しい財政状況の中で、多様化する市民ニーズに的確に応えていくためには、事
務事業やサービスのあり方を見直すとともに、行政と民間の適切な役割分担を図り
ながら行政運営の改革を進めていく必要があります。
このため、行政サービスの向上をはかりつつ、事務事業の整理と合理化を進める
とともに、公共施設については重点的に見直します。
主な取り組み項目は、次のとおりとします。
(1)公共施設の計画的見直し
施設が果たしている役割、利用状況や地域とのかかわり、維持管理コストや
老朽化の状況等を総合的に分析し、計画的、段階的に施設の見直しを進め、施
設維持管理費の縮減を図ります。
・
「公共施設改善計画」の策定および施設統廃合の推進
・本庁舎および支所のあり方の検討
(2)民間活力の活用
民間の方が効率的な運営が期待でき、サービスの向上が見込める施設や業務
については、財政効果を十分勘案のうえ、民間委託、民営化を進めます。
・
「高島市アウトソーシング推進指針」に基づく民間委託、民営化の推進
・指定管理者制度の推進と評価の適正実施
(3)事務事業の整理と合理化
事務事業全般について、最小の経費で最大の効果をあげるため、費用対効果
を検証しながら事務事業の整理、統合を進めます。
・内部評価(H22、23 実施)における各事務事業改善計画の取り組みの徹
底
・決裁規程の見直しによる事務の効率化
5
(4)各種団体事務の見直し
各種団体事務局機能について行政の関不を見直し、各種団体が自立的に事業
を展開することができる環境づくりを目指します。
(5)行政サービスの向上
住民ニーズに適応した事務事業の整理合理化により市民サービスの向上を図
ります。
・市民サポートハウス制度の見直し
・窓口サービスの拡大(コンビニエンスストアでの住民票等の交付検討)
2 財政運営の改革
厳しい財政状況の中で、次の世代に大きな負の財産を残さない持続可能な行財政
運営を確立するためには、中長期的な視点に立ち計画的に財政運営の改革を進める
必要があります。
特に、地方交付税の段階的縮減による財源丌足に対応するため、「高島市長期財
政計画」との整合をはかりつつ、それぞれの項目において明確な年次目標数値を設
定し取り組むものとします。
主な取り組み項目は、次のとおりとします。
(1)地方債残高の削減
高率の交付税措置があるものを除き、地方債発行額を抑制するとともに、高
金利のものについては繰上償還を推進し、公債費の縮減を図ります。
・地方債繰り上げ償還の推進
・地方債発行額の抑制
(2)税源の確保と収納率の向上
地域産業の振興、定住促進等により税源の確保を図るとともに、市税、使用
料等の徴収率の向上に努めます。
・
「市税等収納対策推進本部」を中心にした市税、使用料等税外収入の徴収率
向上対策、滞納金徴収の推進
・新産業創出支援事業等による地域産業の振興
・若者定住対策の推進
(3)受益者負担の適正化
駅前駐車場の有料化の推進のほか、施設使用料、サービス利用料等について
は、利用率や施設維持管理コストを勘案しつつ受益者負担の適正化を図ります。
・高島市駐車場整備計画に基づく有料駐車場の整備
・流域下水道維持管理費の軽減(H25負担金改定予定)
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(4)新たな財源の確保
現行の広報誌等による民間広告掲載の拡大実施や、ふるさと納税制度の推進
を図るほか、さまざまな分野において新たな財源確保に努めます。
・ふるさと納税の推進
・広告事業の拡大と新たな広告媒体の掘り起し
(5)未利用財産の有効活用
「遊休財産処分計画」に基づく財産処分を推進するとともに、未利用財産の
貸付を推進します。
・媒介方式による遊休市有地の販売促進
・未利用財産の貸付による管理費削減と貸付料収入の確保
(6)負担金・補助金の見直し
負担金・補助金は支出の根拠、必要性、公平性、費用対効果などを絶えず検
証し見直しを進めます。また、補助金終期の設定など基本的な考え方や基準を
定めた指針を策定します。
・国県等他団体への負担金の見直し
・各種団体への補助金の見直し
(7)特別会計、企業会計の経営健全化
適正な経営計画の策定等により経営の自立化・健全化を進めるとともに、一
般会計からの繰出金の縮減を図ります。
・
「繰出金の基準」の適正運用
・農業集落排水処理施設の公共下水道への接続
・陽光の里施設の改修と経営改善
3 組織機構の改革と人材育成
地域主権時代に対応可能な、より機能的で効率的な行財政運営を図るため、組織
機構の見直しと職員数の適正化を図ります。
また、機構改革と併せて職員の意識改革や能力開発等の人材育成による組織のレ
ベルアップに取り組みます。
主な取り組み項目は、次のとおりとします。
(1)本庁と支所の見直し
市民サービス水準の維持と地域振興に配慮しつつ、市全体として効率的な市
政運営が可能となるよう、本庁と支所の機能や役割、適正配置について見直し
を進めます。
・本庁、支所機能の見直しによる組織機構の再編、適正化
(2)組織機構の再編整備
職員数の適正化による職員減に対応しつつ、高度化・多様化する市民ニーズ
7
や行政課題に迅速に対応できるよう、地域主権時代にふさわしいスリムで柔軟
性、機動性のある組織づくりを進めます。
・機能的な組織機構の検討
(3)職員数の適正化と人件費の削減
簡素で効率的な行財政運営をはかるため、職員数適正化計画を策定し、計画
的な職員数の削減を進め、人件費の削減を図ります。
・合併協定による職員削減目標の達成(H26 までに 160 人の削減)
・
「職員数適正化計画」の策定
・時間外勤務手当の縮減
(4)人事評価と給与の適正化
職員の能力、業績等を公正に評価し、任用や給料手当に反映させることで職
員の意欲を引き出し組織のレベルアップを図ります。
・能力、意欲評価と業績評価の適正実施
・評価結果の給不手当反映、昇任試験への活用
(5)人材の育成と能力開発
行政の専門家として必要な政策立案力、実行力、判断力、調整力、改善意識
を持った職員を育成するため、
「高島市人材育成基本方針」に基づき人材育成の
推進に努めます。
・
「人材育成基本方針」に基づく人材育成の推進
・職員の法制執務、政策法務能力の向上
4 市民協働によるまちづくりの推進
多様な地域課題に迅速かつ柔軟に対応しつつ、魅力にあふれ活力に満ちた地域社
会を創りあげていくため、市民と行政の「協働」によるまちづくりの取り組みを推
進します。
主な取り組み項目は、次のとおりとします。
(1)市民と行政の協働事業の推進
市民協働提案制度を推進するとともに、市民と行政の協働による事業の一層
の推進を図ります。
・市民協働提案制度の推進
・地域コミュニティ活動および地域自治組織事業の推進
・友好都市交流事業の民営化検討
・災害時要援護者支援事業の推進
(2)開かれた行政の推進
各種広報媒体による市民への情報提供を推進するとともに、パブリックコメ
ントやまちづくり懇談会の開催等を通じて開かれた行政を推進します。
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・防災行政無線放送新システム整備に伴う運用方法の見直し
・
「ごめんやす市長です」まちづくり懇談会の開催
・パブリックコメント制度の普及推進
Ⅳ 経営改革プラン実施計画の進行管理、評価
1 高島市行財政改革推進本部による進行管理
計画に位置付けられた項目は、市長を本部長とする「高島市行財政改革推進本部」
を中心に各部局が連携して取り組むものとし、その進捗状況についても同本部が管
理します。
2 実施結果の検証と評価
各年度終了後、目標に対する達成状況を取りまとめてその成果を検証し、さらに
市民や有識者からなる「高島市経営改革推進委員会」に報告し意見を求めるととも
に、市広報誌等により広く市民に公表します。
3 実施計画の見直し
実施計画は、進捗状況等に応じて毎年度見直しを行います。
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