2015年11月27日 一般社団法人 日本惣菜協会 軽減税率導入問題に対する協会の意見 消費税率 10%への引き上げ時期については、2015 年 10 月から 2017 年 4 月に延期 された。消費税の軽減税率については、2014 年度与党税制大綱において、 「必要な財 源を確保しつつ、関係事業者を含む国民の理解を得た上で、税率 10%時に導入する。」 とされている。しかしながら、軽減税率は、以下に示すとおり、 ① 社会保障制度の持続可能性を損なうこと ② 対象商品の区分が不明確であること ③ 大きく事務負担が増加すること などの問題を抱えており、軽減税率に代わる低所得者対策として、「簡素な給付措 置」や「給付付き税額控除」で対応すべきであり、複数税率導入には反対。 1. 消費税率の引上げと逆進性 ・我が国の今後の財政運営において、極めて大きな影響を及ぼすことが予想され る社会保障費の財源を将来にわたり安定的に確保するためには、国民が等しく 痛みを分かち合うことが必要となる。 ・消費税は、高齢者も含め、社会の負担可能な構成員全員がその能力に応じて広 く負担し合う性格の税であり、そのために財源確保のための消費税増税は必要 な選択であるといえる。 また、平成27年5月22日に第2回与党税制協議会が開催され、①「酒類を除く 飲食料品」 ②「生鮮食品」 ③「酒類」の、3パターンの軽減税率の具体案 が提出されたが、軽減税率を8%に設定した場合の減収率はそれぞれ1.3兆円、 3400億円、400億円と推計している。 しかしながら、軽減税率には、所得水準の低い人ほど所得に占める負担割合が 高くなるという逆進性の問題がある。 2. 軽減税率の導入の課題 ・食料品のような必需品的なものは税率を下げ、他の物品と区別する観点から、 食料品における軽減税率は諸外国でも適用している例は多い。 しかしながら、食料品の範囲を合理的・具体的に定めることが困難な場合も多 く、食料品に軽減税率を適用する場合は、低所得者だけでなく高所得者も大き な軽減効果が及び、格差是正にはならない。 ・諸外国における軽減税率の適用例を見ても、例えば、同じ商品でもテイクアウ トすれば食料品として軽減税率、店内で食べれば外食として標準税率を課して いる国はあるが混乱を招く恐れがあり、税の不公平が生じることになる。 また、軽減税率による税収を補うために標準税率を更に高くしなければならず、 国民の理解を得られない。 ・経理処理・事務処理上の問題として、請求書等保存方式又は、インボイス方式 どちらを導入しても、現行に比べ事務負担が大きく増加する。特に中小・小規 模事業者が多い惣菜業界には、手計算による経理事務の煩雑化等、過度の事務 負担を強いることになる。 また、軽減税率導入に当たっては、広範囲に亘ってシステム対応が必要になる。 (売上、発注、仕入れ、在庫、買掛品等全般について全て見直しが必要) 3.日本惣菜協会としては、軽減税率に代わる低所得者対策として、「簡素な給付措 置」や、低所得者の基礎的食料等の支出に伴う消費税負担分を税額控除又は現金給 付するカナダ型の「給付付き税額控除」で対応すべきであると考える。 ◎食料品に軽減税率を導入した場合の問題点 軽減税率は、食料品の範囲を合理的・具体的に定めることが困難な場合も多く、「生 鮮食料品」を軽減税率にする場合には、 「たらこ、しめさば、ゆでたこ、冷凍ミカン、 カットフルーツ盛り合わせ、いくら、ヨーグルト、こんにゃく」などの取扱いについ て何を軽減税率の対象にするのかが大きな問題となる。 例えば、 ①松坂牛、マグロなど高級生鮮食料品は軽減対象、加工したハンバーグなどは標準税 率 ②生乳は軽減税率、牛乳(加熱殺菌)は、標準税率 ③精米は軽減税率、パン、おにぎりは標準税率 ④カットレタス(野菜)は軽減税率、ミックスサラダは標準税率 のように、品目毎の仕分けが複雑になり、中食・惣菜事業者は大きな混乱を招く恐れ がある。 ○欧州諸国での例 ・組み合わせ商品の税率適用が複雑かつ不明確で事業者の大きな負担となっている。 ・ファスト・フード店等新たな業態が生まれ、外食(標準税率)かテイクアウト(軽 減税率)かで税率の線引きを巡って訴訟に発展するなど消費者、事業者双方に大き な負担を強いている。 ・税率の異なる商品をセット商品として販売する場合は、事前に税務当局と相談して、 商品の比率に応じた税率を個別に合意することが行われているようで、事業者の事 務負担増となる。 ・軽減税率は欧州の例をみても、対象品目が広がることはあっても、縮小することは ないようだ。
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