竹原 (まう。 では、 満を持してのスター

いい仕事に専念し、いい``炉''を築く
「"炉"は、とても繊細なものなんです」と林社長は言う。なぜなら、少し
でもヒビが入り、そこから水が漏れ出してしまえば、爆発が起きる可能性が
あるからだ。故に、炉の設計・施工には一切のミスが許されず、築炉職人た
ちは、細心の注意を払って現場に臨んでいる。
では、絶対に事故を起こさない、耐久性の高い"炉"を築くために必要な
ものとは一体何か。良質な素材を使うこと-? 確かにそれも重要だ。し
かし、それ以上に大切なのは、高度な専門知識と技術を持った職人が、 「い
い仕事」をすることだけに専念すること。そうすれば、その炉が壊れること
はほとんどないという。
日本の産業の根幹を支える"炉"の安全を守るために-。社長は今日も、
築炉職人としての衿特を胸に、 "いい仕事"に徹している。
■
代表取締役 林真一郎
竹原 ほう。では、満を持してのスター
トだったわけだ。
呆として私の大きな糧となりましたね。
うして自社の守備範囲を広げていくこと
竹原 創業当時の苦境を乗り越え、一回
で、同業者とのネットワーク構築にも一
林 そうですね。しかし、現実はそう甘
りも二回りも大きくなったというわけで
役買えればと思っています。
くありませんでした。認知度も信用もな
すね。先ほど、炉にも様々な種類がある
竹原 業界の未来のために力を尽くして
いので、仕事が全く入ってこなかったの
とおっしゃっていましたが、御社は主に
いらっしゃるのですね。それでは最後に
です。 「どれだけ技術力があっても、お
どのような炉を手がけているのですか。
将来の展望をお願いします。
客様がいなければ何の意味もない」 -
林 当社では、種類を問わずあらゆる分
林 昨今、様々な分野で職人の高齢化が
そう痛感しましたね(苦笑)。そして、そ
野の炉の工事に携わっています。実を言
叫ばれていますが、それは築炉業界も例
こからは営業活動に奔走する毎日。煙突
いますと、築炉職人の大半は得意分野を
外ではありません。このままでは、築炉
を見かけてはその工場に飛び込み、営業
持っており、自分が得意とする炉の施工
職人はもとより、伝統的に受け継がれて
をかけました。さらに鉄鋼の溶接や配管
に特化している職人がほとんどなんです
きた築炉技術そのものが日本から消滅し
工事など築炉工事以外の仕事も積極的に
ね。しかし、特定の分野の仕事に絞って
てしまう。そのような事態を防ぐために
請け、その現場で「築炉工事もできます
しまうと、必然的に世界が狭まり、横の
も、今後は若手職人の育成に力を注いで
よ」と本業を売り込んだのです。
つながりが全くできません。そういう状
いくつもりです。私がこれまで培ってき
竹原 溶接や配管に必要な知識・技術は
況が当たり前になると、築炉業界そのも
たノウハウを惜しみなく伝え、腕のいい
お持ちだったのですか。
のが廃れてしまう。だからこそ私は敢え
職人を増やしていきたいですね。そして
林 いいえ。ですから、仕事が決まった
て得意分野だけに絞らず、幅広い分野の
5年、 10年と時が経ち、若手が成長すれ
後に「どうやってやればいいのか?」と
築炉に挑戦するようにしているのです。
ば、彼らに会社を任せて、私は海外に出
死に物狂いで勉強しました(笑)。当時
実際に以前には、それまで全く手がけた
るつもりです。日本が誇る築炉技術を守
はただただ必死でしたが、そうやって自
ことのないアルミ炉の工事を依頼された
り、世界に広めるために、これからも力
分の専門外の仕事、実力以上の仕事をた
ことがあったのですが、その際にも、炉
の限り突き進んでいきますよ!
くさん請けたことで、様々な技術を身に
を解体して仕組みを学ぶなど独学で知識
竹原 陰ながら応援しています!
付けられましたし、あのころの経験は結
と技術を習得して完遂したのですよ。そ
グ才′フノン′
(取材/2013年5月)
鰍誓海原慎二
ゲスト
「林社長日く、創業から3年間は苦しい時期が続いたそう。
しかし、その厳しい状況の中でも社長は決して諦めること
なく、仕事に取り組んでこられました。そして、その地道
な努力が実を結び、今、大きく花開きつつあります。築炉
業界では世代交代が進んでいるとのことですし、社長には
是非、次代のリーダーとして頑張っていただきたいです」
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