フィールド実験のすすめ 依田 高典 - 京都大学 大学院経済学研究科

2015年3月22日
フィールド実験のすすめ
京都大学 大学院経済学研究科 教授
依田 高典
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フィールド実験の歴史
•  元々、経済学で分かることは、相関関係であり、因果関係にまで踏み
込むのは難しかった。
•  1980年代に、自己選抜バイアスという内生性の問題が提起された。
•  フィールド実験は、randomized controlled trial(RCT)という無作為
比較対照法を使うので、上記の欠点を克服できる。
第1
ステージ
第2
ステージ
第3
•  1920年代に、近代統計学の祖、イギリスのロナルド・
フィッシャーがランダム化の重要性を説いた。
•  1960年代に、イギリスで電力料金、アメリカで税制・
雇用などで、社会実験が行われた。
•  1990年代に、内生性批判の後、自然実験などの提唱が
あり、RCTフィールド実験が盛んに使われるようになった。
ステージ
2
フィールド実験の位置づけ
•  伝統的経済学の政策評価を、2つの基準で分類できる。
•  第一の基準は、ランダム化。ランダム化が出来ると、自己選抜バイア
スは発生しない。ラボ実験でランダム化が使われる。
•  第二の基準は、リアリズム。自然なフィールドで観察されたデータは、
現実妥当性が高い。自然実験などの手法が使われてきた。
•  フィールド実験は、ランダム化とリアリズム双方を部分的または完全
に満たす、両者の橋渡しをする位置付け
ランダム化
(統制データ)
リアリズム
(自然発生データ)
自然実験
ラボ実験
フィールド実験
マッチング法
操作変数法
構造推定
Harrison, G.W. & J.A. List (2004) Field Experiments, Journal of Economic Literature XLII: 1009-1055.を参考
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に作成。
フィールド実験の類型化
•  フィールド実験では、ラボ実験と異なり、すべて現実のフィールドで
データの収集が行われる。
•  課題・報酬などタスクの現実性と実験協力者の実験参加の自覚で、人
工型・フレーム型・自然型の3つに分類できる。
•  人工型はラボ実験をフィールドで行うもの、フレーム型はフィールド
で現実のタスクを用いるが、実験協力者は自分が実験参加しているこ
とを知っている。
•  自然型は現実のタスクを行うし、実験協力者は実験に参加している自
覚を持たない。
一般参加者
タスクの現実性
実験参加の自覚
人工型
フレーム型
自然型
(artefactual)
(framed)
(natural)
○
○
○
○
○
○
Harrison, G.W. & J.A. List (2004) Field Experiments, Journal of Economic Literature XLII: 1009-1055.を参
考に作成。
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Better LATE than Nothing ?
ランダム学派へのDeatonの批判とImbensの擁護
1980s
•  Selectionによる内生性バイアス批判(Lalonde)
•  Instrumant Variable(IV)法による解決
•  Regression Discontinuity(RD)法による解決
1990s •  自然実験によるrandomizationによる解決
•  RCTフィールド実験による解決
2000s •  RCTはできれば最強だが倫理と費用の壁も
•  RCTデータと構造推定の融合
2010s •  RCTデータのメタ分析
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フィールド実験 14のコツ
•  ジョン・リスト シカゴ大教授がフィールド実験のコツとして、14
箇条を挙げている。
1.  理論に基づいて実験を設計すること
2.  研究対象となる市場を熟知すること
3.  コントロール・グループを適切に設けること
4.  十分なサンプル・サイズを確保すること
5.  協力機関の中で強力な味方を得ること
6.  協力機関の力学を利用すること
7.  出資した協力機関が一番の支援者である
8.  引き延ばさずやれるときに実験を行うこと
9.  実験をしない費用を気づかせる
10. 全ての疑問に答えを持っていなくて良い
11. 長い目で次につながる実験を設計する
12. 協力機関の利益だけにとらわれない
13. 実験参加者の公平性に注意する
14. 倫理委員会の承認は必ずとる
List, John A. Why Economists Should Conduct Field Experiments and 14 Tips for Pulling
One Off, Journal of Economic Perspectives, (2011), 25(3): pp. 3-15.
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