米国およびカナダにおける、中小企業等を対象とした

藤本昇特許事務所 山本 裕◇弁理士
米国およびカナダにおける、中小企業等を対象とした特許手数料等の減額支援について教え
てください。
(福岡県 A.K)
1.はじめに
れた個人)であって、発明について
は米国と同じですが、以下の3点に関
米国においてはUSPTOの主
なんらかの権利に関し譲渡、許可、
して、米国の制度と異なります。
導で、カナダにおいてはCIPOの主導
移転およびライセンス等をしておら
◆ 対象は特許のみ
で、中小企業等向けに、出願料の減免
ず、また、法律上または契約上その
◆ス
モールエンティティであるか否か
およびPCT出願の国内段階における
ような義務を負っていない者
特許手数料の料金減免など、幾つかの
減額支援が実施されています。
② 小規模団体の場合
の判断は、
以下の
(a)
(
、b)
に基づく
(a)従業員50人以下の団体
スモールエンティティに該当しな
(ただし、下記のいずれかを除く)
い者に対して、①の下線部と同様に
ア) 大学以外の50人以上の従業員
2.スモールエンティティ制度とは?
ライセンス等をしておらず、かつ系
を雇用する団体により、直接的ま
所定の要件を満たす中小企業や大学
列会社を含む従業員が500人を超え
たは間接的に管理されている。
など(以下、スモールエンティティ)
に対し、出願料~権利維持料等の特許
手数料を減額する制度の一つです。
ない団体
③ 非営利組織の場合
イ) 大学以外の50人以上の従業員
を雇用する団体に対し、発明につ
スモールエンティティに該当しな
いてなんらかの権利の移転を
い者に対して、①の下線部と同様に
行ったか、またはなんらかの権利
ありますが、
それぞれの制度を適用する
ライセンス等をしておらず、かつ、
を移転するための法律上、または
対象等が異なるので注意が必要です。
いずれかの国に存在する大学または
契約上の義務を負っている。
米国とカナダの両国に同名の制度が
それ以上の教育機関
(b)大学
3.米国のスモールエンティティ制度
なお、
USPTOに対し、スモールエン
国内出願(特許および意匠。米国に
ティティであることを証明するための書
出
願時に、署名のある宣誓書を提出
移行されたPCT出願を含む)につい
類を提出する必要はありません。
スモー
する必要があります。
て、スモールエンティティに対し、特
ルエンティティである旨を主張するか、
許手数料等を50%減額します。
減額された金額を支払えば十分です。
◆ 証明書を提出
5.おわりに
スモールエンティティに該当するか
ただし、上記条件を満たさない者が
前述のとおり、米国とカナダでは同
否かは、以下の①~③に基づいて判断
本制度を悪用した場合、詐欺行為とみ
制度を適用する対象等が異なります。
されます。
なされ、権利行使できなくなります。
その他、紙幅の関係上ここでは紹介
① 個人の場合
し切れなかった留意点が複数あるの
個人発明者または他の個人(例え
4.カナダのスモールエンティティ制度
ば、発明者から発明の権利を譲渡さ
特許手数料等が50%減額される点
で、本制度を利用する前に、専門家に
相談することを推奨します。
2015 No.8 The lnvention 67