21 派遣労働者の賃金

21 派遣労働者の賃金
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2007 年の産業分類改訂で、それまでは「その他の事業サービス業」に含まれていた
「職業紹介・労働者派遣業」が、あらたに「産業中分類」として格上げされることになっ
た。それにより賃金センサスでも、2009 年から「職業紹介・労働者派遣業」の集計帳票
が利用できることになり、実態がなかなか把握できなかった派遣労働者の賃金について、
貴重なデータが得られることになった。
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ただしそこに集計されているデータが、派遣労働者の実情を正確に示したものであ
るかどうかについてはいくつかの吟味が必要である。まず人員であるが、前章でみた
「労働力調査」によれば、2014 年の派遣労働者は、男性 48 万人、女性 71 万人、計
119 万人であるのに対し、賃金センサス「職業紹介・労働者派遣業」では、男性 20 万
人、女性 12 万人、計 32 万人である。総人員が労働力調査よりも相当に少なく、また
男性比率が大きくなっている。 その原因としては、派遣元で管理・事務作業に従事する
労働者が含まれていることや、「登録型」が実労働日数等の関係から報告がなされず、結
果的に労働条件が比較的恵まれた「常用型」中心の集計結果なっていること等の事情が考
えられる。しかしこのような制約はあるものの、賃金センサスの「職業紹介・労働者派遣
業」が貴重なデータであることは間違いない。
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21-1 図は、男女別年齢階層別に産業計正社員と労働者派遣業の所定内賃金と年間賃金を
対比したものである。男女の所定内賃金、年間賃金とも派遣業賃金は正社員賃金よりも相
当に低位な水準となっている。派遣業男性のカーブに着目すると、所定内賃金では女性正
社員より若干下回る水準であるが、年間賃金では女性正社員よりも相当に低い水準である。
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21-2 図は、前章で示した「正社員」
「非正規社員」
「短時間労働者」の時間あたり所定内
賃金の対比グラフに、「派遣業労働者」を付け加えたものである。全体的な傾向として、
男女ともに「正社員-派遣-非正規-短時間」という序列を読み取ることができる。また
派遣労働者のカーブは、正社員と比べるとフラットであるが、非正規社員と比べると、若
干の右上がりとなっていることを指摘することができる。
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21-3 図は、派遣労働者と非正規社員の賃金分散状況を対比したものである。太線は派遣、
細線は非正規社員で、D1(第 1 十分位)
、中位数(ME)
、第 9 十分位(D9)を図示し
ている。男女とも派遣労働者のD9のカーブが相当に高い水準に達していることが注目さ
れる。
21-1図
正社員と派遣労働者の賃金カーブの比較
a 所定内賃金
b 年間賃金
百円
5000
千円
7000
正社員男性
正社員女性
派遣男性
派遣女性
4500
6000
正社員男性
正社員女性
派遣男性
派遣女性
4000
5000
3500
3000
4000
2500
3000
2000
2000
1500
1000
1000
-19 20- 25- 30- 35- 40- 45- 50- 5524 29 34 39 44 49 54 59
21-2図
派遣を含めた雇用形態別年齢階層別時間あたり所定内賃金の比較
産業計規模計・男性計
産業計規模計・女性計
3,000
2,500
-19 20- 25- 30- 35- 40- 45- 50- 5524 29 34 39 44 49 54 59
3,000
正社員
非正規社員
短時間
派遣労働者
2,000
2,500
正社員
非正規社員
短時間
派遣労働者
2,000
1,500
1,500
1,000
1,000
500
-19 20- 25- 30- 35- 40- 45- 50- 5524 29 34 39 44 49 54 59
500
-19 20- 25- 30- 35- 40- 45- 50- 5524 29 34 39 44 49 54 59
21-3図
派遣労働者と非正規社員の年齢別賃金分布の比較
規模計学歴計所定内賃金のD1(第1十分位)
、ME(中位数)
、D9(第9十分位)を対比
a 男性
5000
b 女性
百円
5000
百円
D9
4500
派遣
4500
非正規社員
4000
4000
D9
3500
3500
3000
3000
ME
2500
ME
2000
D9
2500
D9
ME
2000
D1
1500
1500
D1 ME
1000
D1
D1
1000
派遣
500
500
非正規社員
0
0
18
23
28
33
38
43
48
53
58
18
23
28
33
38
43
48
53
58