台湾最新情報レポート 2015 年 10 月 18 日~21 日 期 間:平成27年10月18日(日)~21日(水) 4日間 主目的:① 工業技術研究院(ITRI)視察、連携強化 ② 台湾企業に向けた技術セミナー ③ 台湾企業との商談会 ④ 台湾企業視察とビジネスマッチング推進 ⑤ 台湾区電機電子工業同業公会(TEEMA)および会員企業との連携強化 ⑥ コンサルティング事務所との情報交換 公益財団法人交流協会の「日台産業協力架け橋プロジェクト」の支援を受け、上記の 目的達成のため土城市、新竹県、桃園市および台北に大田区企業16社と出張した。訪 問先で得た情報を抜粋し、以下に報告します。 ① 工業技術研究院 (=ITRI) (新竹県)訪問 10 月 19 月(月) スカラロボットや介護用歩行器、ロボット安全技術などを研究している機械技術研究 所ロボットセンターを視察した後、産業支援に関する情報交換を行った。ITRI は 600 億 円超の総予算に対し、約6割を国からの補助、4割を技術移転費用など企業からの収入に よって運営している。ITRI 自ら近い将来の主力産業を見定め、その産業にとってのキー デバイスの研究開発に特化しており、成果物を企業に技術移転するスタイルで台湾の半 導体や液晶産業の成長に大きく貢献してきた。TSMC(半導体ファウンドリ世界最大手)や UMC(同ファウンドリ)といった企業は ITRI からのスピンオフの形で誕生した。現在 ITRI が注力している研究開発分野は医療・健康、自動車・自動運転、環境・エネルギー、工 作機械、ロボットなどで、台湾の国産車である LUXGEN のエンジンの一部も ITRI との共 同開発品である。 ② 大田区企業セミナー(@ITRI) 10 月 19 月(月) 台湾の企業や公的機関に向けて、大田区企業2社が射出成型やロボット工学に関する セミナーを行った。台湾側の聴講者は25名。これらの分野では日本の技術力が先行し ており、高付加価値化を目指す台湾の企業や公的機関にとっては是非取り入れたい技術 分野であることから、熱心に耳を傾ける聴講者が多く、セミナー終了後も質問や依頼な どが長時間続いた。 ②-B 台湾企業(A社)訪問 (桃園) 10 月 19 月(月) 大田区企業2社のセミナー登壇時間を利用して、その他の大田区企業が同社の本社 工場を訪問し、製造現場を視察した。工場玄関では台湾の民族音楽が流れており、訪 問客をリラックスさせてくれた。 同社は 2004 年に設立された日台合弁企業 だが、台湾側の出資比率は少なく、10%ほど。 半導体や液晶の製造装置の筐体用の樹脂加 工を行っている(主に台湾国内需要向け)。 材料の多くは現地日系企業から仕入れてお り、韓国製も少量使用。従業員 70 名で年商 5億円弱を上げており、内フィリピン人の 従業員が 14 名。台湾人従業員の平均給与 11 ~12 万円(月額)に対し、フィリピン人は 7 ~8 万円程度とのこと。 ③ 台湾企業との商談会(@ITRI) 10 月 19 月(月) 大田区企業9社と台湾企業・機関9 社との間で2時間に亘り計30商談 が行われた。樹脂成型に関する技術指 導契約(日⇒台)や二次電池の自動組 み立て機械など、継続可能案件も14 件あった。 ④ 台湾企業B社(土城市)訪問 10 月 20 月(火) 台湾の大手電子部品メーカー(年商約 5000 億円)を訪問。当協会が懇意にしている電 機電子工業同業協会(TEEMA)の理事長を同社会長が兼任していることから、連携が始ま った。同社は中国など新興国の電子部品メーカーとの差別化を図るべく、更なる「自動 化」、 「歩留向上」、 「高付加価値化」を目指しており、高度な技術・技能を有する大田区 企業に関心が高い。会議室にお越しいただいた約 30 名の台湾人技術者の他、中国の2 工場ともテレビ会議でつなぎ、両工場のそれぞれ約 20 名の技術者に向けても大田区産 業に関する情報発信することができた。また、大田区産業経済部からは羽田空港跡地の プロジェクトの紹介を行った。同社とはこれまでに大田区企業3社が受注に至っている が、今後も技術ニーズを調査し、大田区企業の技術シーズとマッチングしていきたい。 ⑤ 台湾電機電子工業同業公会 TEEMA(台北市)訪問 10 月 20 日(火) TEEMA は日本の電子情報技術産業協会(JEITA)のような業界団体で、PC、通信、光学、 半導体および電子部品などの業界に 3,039 の会員を有し、台湾の輸出総額の約 5 割を会員 企業が占めている。当日は TEEMA 事務方の上席のほか、会員企業が 10 社ほど出席してく れた。双方代表者の挨拶の後、大田区産業全体に関するプレゼンテーション、および訪問 した大田区企業による自社技術の紹介を行った。加えて、大田区産業経済部からは羽田空 港跡地のプロジェクトについても紹介した。会議の後半には大田区企業と TEEMA 会員企業 が1対1で情報交換を行った。 ⑥ 日経コンサルティング事務所(台北市)訪問 10 月 20 日(火) 同事務所の代表者は 2005 年より台湾に駐在しており、赴任当時は日本本社からの 出向者として日台のジョイントベンチャー企業を立ち上げた。その後、2012 年に個 人コンサル事務所として独立。現在の主な業務は、日台企業間のビジネスマッチン グや日本企業からの営業アウトソーシング受託(口銭ベース)、及び産業視察の手配 等である。台湾企業から工業製品や技術の紹介依頼を受けることもあるとのことで、 今後そのような際には当協会にも声を掛けてもらうこととした。 所見 今回の「日台産業協力架け橋プロジェクト」を活用した出張を通じ、大田区企業 と台湾企業間との連携の重要性を益々認識した。 台湾企業の競争力の源泉はオーナー社長による「思い切った設備投資」や、 「基礎 技術のアウトソーシング戦略(※後述)に依るところが大きいが、そのほかにも「ス ピード」、「フレキシビリティー」、「コスト」、「国際折衝能力」などが挙げられる。 近年ではこれらの要素をキープするために、中国大陸における人海戦術的なモノづ くりが展開されている。 ただし、中国における人件費高騰や新興国企業の追い上げもあり、製造ラインの自 動化(省人化)や製品の高付加価値化(OEM⇒ODM)が喫緊の課題となっている。 これらの点に与する大田区企業の加工技術・技能や自動化関連技術を台湾企業が 新たな成長エンジンとして取り込めば、双方の発展にとって大きなプラスになると 考えられる。具体的な連携方法としては、大田区からの部品供給や技術指導、ある いは台湾企業との代理店契約や OEM 品輸入などが挙げられる。今回の出張はこれら を成し遂げるためのステップとして大変有意義なものとなった。今後も、見本市出 展や商談会開催、個別マッチングを通じて、公的機関連携(G to G)を深め、延い ては今回訪問したB社と大田区企業間で始まったような企業間連携(B to B)の成約 例を増やしていきたい。 「※ 台湾企業の基礎技術のアウトソーシング戦略」 他社(他国)のIP利用のほかに、台湾では国内の公的研究機関からの技術移転が よく機能している。今回訪問した工業技術研究院(ITRI)や、商談会に参加していた だいた金属工業研究発展センターなどは、ビジネスへの応用を大前提に研究開発の テーマを選択しており、その結果、ノートブックPC、半導体、液晶、LEDなど の分野での台湾の成功をもたらしてきた: <ITRIの戦略> ① まず近い将来の需要拡大が見込まれる産業分野が何かを見定める。 ② その産業にとって重要となるデバイスは何かを考える。 ③ そのデバイスを重点的に研究開発する。 ④ 研究開発の成果を台湾企業にフィードバック(技術移転)する。あるいは ITRI 発 のベンチャーを立ち上げてプロフィットセンター化する(例:TSMC、UMC)。 ⑤ 国の経済が潤う ⑥ 成功体験に胡坐をかかずに①に戻る すでに①の段階で出口を見据えている点が特徴で、研究のための研究には埋没して いない。今後も ITRI や金属センターの技術ニーズやシーズを大田区企業に橋渡しし ていきたい。また、日本の研究機関(産総研や各大学など)も技術移転に力を入れて いるところが増えているので、大田区の企業が恩恵を受けられるような連携関係の 構築をサポートしていきたい。 以上
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