EU統一特許裁判所 - Mewburn Ellis LLP

ヨーロッパ特許制度
EU統一特許裁判所
単一の欧州特許制度は、欧州連合(EU)にとって40年以上にわたる念願でした。2012年12月、欧州議会(European
Parliament)及び欧州理事会(European Council)は以下を設立する
「EU統一特許パッケージ」
を認可しました。
i. EU統一特許(詳細は別紙「統一特許」
をご参照下さい。)
ii. 欧州特許訴訟を審理する統一欧州特許裁判所.
統一特許は、27のEU加盟国中25カ国(参加国)に単一の特許権を付与します。現在のところイタリアとスペインは
統一特許パッケージに参加していません。
また統一特許裁判所は、欧州特許裁判の統一された裁判管轄を実現しま
す。
この結果、費用のかかる複数国での裁判を回避することができます。
このパッケージは、2013年2月19日に署名されると、批准手続が開始され、2014年1月1日又は13の参加国が協定を
批准した後約4ヶ月後のいずれか遅い方に発効します。
統一特許裁判所(UPC)の裁判管轄 裁判所の構成
統一特許が統一特許裁判の裁判管轄内となることは驚くこと
統一特許裁判所は、第一審裁判所(中央部と地方/地域部で構
ではありませんが、
「従来の」欧州特許(例えばEPOから派生し
成)及びルクセンブルグの控訴裁判所で構成されます。控訴裁判
た国内特許)や補完的保護証明書(Supplementary
Protection
Certificates (SPCs))
も、UPCの管轄となります。
欧州特許やSPCの権利者がUPCの管轄から逃れるための移行期
間が設けられています。特許権者は、UPC協定が発効した後最初
の7年が経過するまでに、欧州特許出願が出願され、又は欧州特
許又はSPCが認められた場合は、UPC管轄の適用外とすることを
選択できます。
よって、現在出願中の欧州特許出願及び登録済み
所からの上告は、欧州連合司法裁判所で審理されます。ただ、欧
州の実体特許法を十分に確立するためには上告受理は希である
ことが期待されています。
中央部はロンドン、パリ、
ミュンヘンにそれぞれ法廷を有し、異な
る技術分野に対応します。生体工学及び化学分野はロンドン、物
理及び材料はパリ、機械工学はミュンヘンという割り当てになって
います。
の欧州特許はすべて、UPC管轄の適用外とすることが可能です。
こ
中央部に加えて、多くの地方部(local court)が参加国に設置され
の移行期間は、見直しによって7年から14年まで延長されるかもし
る予定です。
これら地方部の数は、各国で提訴された特許訴訟の
れません。
数によって決定されます。
また数カ国で少数の特許訴訟が提訴さ
しかしながら、最終的にはすべての欧州特許、SPC及び統一特
court)が開設されます。
許がUPCの裁判管轄の対象となります。
よって、移行期間経過後
に、UPCでなく各国の法廷で特許訴訟を争うには、
(EPOでなく)各
国の特許庁に個別に特許出願して特許を得るしかありません。
欧州特許がUPCで争われた場合、UPCの判決は参加国の欧州特許
に対してのみ適用されます。例えば、EPOで認められた英国特許が
れている場合は、
これらの国が一緒に纏められて地域部(regional
地方部及び地域部は、法律適格を有する3名の裁判官(1人は当
該国から、2人は他の参加国から)
で構成されます。一方中央部で
は、2名の法律適格を有する裁判官と、1名の技術に長けた裁判
官で構成されます。
UPCで無効にされた場合、他のUPC加盟国での対応する特許も無
訴訟の種類及びバイファーケーション 効となりますが、UPC非参加のEPC加盟国における特許権は、有効
統一特許、欧州特許及びSPCに関する無効訴訟と非侵害の確認訴
なまま存続します。ただし、UPC非参加のEPC加盟国の国内裁判所
訟については、UPC中央部に提訴します。侵害訴訟は、UPC地方部
が、対応するUPC判決によって影響を受けるかどうかは不明です。
又は地域部に提訴します。
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UPC地方部又は地域部に侵害訴訟が提訴された場合は、無効訴
興味深いところです。規則案では、
「特許の該当クレームが無効と
訟の反訴を行うことができます。同様に、中央部で無効訴訟が係
判断される可能性が高い」場合に審理手続が停止されると推奨さ
属中の場合は、UPC地方部又は地域部に対して侵害の反訴を行う
れています。
こともできます。
また、中央部で係属中の非侵害確認の審理も、非侵害確認訴訟の
これらの場合、地方部又は地域部は以下のいずれかを選択しま
開始から3ヶ月以内に、同一当事者間で侵害訴訟が提訴された場
す。
合に、停止できることにもご注目下さい。非侵害確認訴訟の提起
hh 地方部又は地域部にて侵害訴訟と無効訴訟を同時に審理す
る。
この場合、地方部又は地域部に対して技術判事が指名され
る。
hh 無効訴訟を中央部に付託し、地方部又は地域部での侵害訴訟
を継続又は停止する。
hh 中央部で侵害訴訟と無効訴訟を共に審理する。
し た が っ て 、第 二 の シ ナリ オ とし て は 、訴 訟 手 続 の 分 岐
(bifurcation:侵害訴訟と無効訴訟を別々の裁判所で審理)が生
から3ヶ月以上経過後に侵害訴訟が提起された場合に何らかの
影響(例えば禁反言)が生じるかどうかについては、はっきりしま
せん。
施行日
統一特許裁判所協定は2013年2月19日に多くのEU加盟国で署名
されました。同協定は、参加国13カ国(英国、
フランス、
ドイツは
必須)の批准から4ヶ月で発効します。
じます。無効の反訴によって侵害訴訟の審理を停止できることは
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(The Unified Patent Court)
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