消費者安全法の改正に伴う関係内閣府令(案) 及びガイドライン(案

消費者庁消費者教育・地方協力課
法制検討担当 御中
消費者安全法の改正に伴う関係内閣府令(案)
及びガイドライン(案)に関する意見
氏
名
適格消費者団体 特定非営利活動法人
消費者支援機構福岡 理事長 朝見 行弘
住 所 〒812-0011
福岡市博多区博多駅前1丁目5番1号
博多大博通ビルディング8階
電 話 092−432−2330
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電子メールアドレス [email protected]
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第1 消費者安全法施行規則等の一部を改正する内閣府令(案)
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第7条1項1号、同条2項1号関連
(意見)消費生活相談事務の委託先は、原則として、一般社団法人及び一般財団法人
とし、例外的に、5年以上の消費者支援活動実績を有する特定非営利活動法人
とする。
「その他都道府県知事が適当と認める者」
「その他市町村長が適当と認める者」
は別の項で規定し、上記一般社団法人、一般財団法人及び特定非営利活動法人
に準じる者として地方公共団体の首長が認めた場合に限定する。
また、株式会社などの営利団体については、受託者の範囲から除外する旨を
明記する。
(理由)消費生活相談事務は、中立性、公平性が強く求められるところ、これらが担
保できない点で、営利団体は受託者から除外すべきである。同様に、設立が比
較的容易な特定非営利活動法人は、事業者の隠れ蓑に利用されるおそれがある
ため、少なくとも5年間の消費者支援活動実績を要件とすることで、安易な参
入を防止する一方で、既に消費生活相談事務を受託している特定非営利活動法
人の多くは、これらの要件を充足すると考えられることから、現場の混乱を回
避する趣旨である。
消費生活相談事務では、事業者と消費者が対立する構造にある。受託者が営
利団体の場合、自社に関する苦情を中立・公平に扱えるか疑問があり、これは、
当該受託者の取引先等の事業者に関する苦情の場合も同様である。
消費者庁をはじめとする行政機関は、消費生活相談事務で取り扱う情報が、
ビジネスとして魅力的であることへの認識が不十分と思われる。この点、消費
者から不満を1件 10 円で購入し、それを業態別に集約した冊子を数千円で販売
する営利団体も存在する。消費生活相談事務の受託先は、PIO−NETにア
クセスすることができることを考慮すれば、受託した営利団体が、事業として
消費者相談情報を販売することは容易に実現可能であり、そのような事業にP
IO−NETの情報が利用されたとしても、消費者安全法第8条の2第3項に
定める秘密の漏えいに該当しないため、無制限である。国民共有財産のPIO
−NET情報を特定の事業者が対価を支払うこともなく無制限に営利活動に利
用する危険を排除するためにも、受託者から営利団体は、除外すべきである。
仮に、営利団体に委託することを許容する場合には、当該営利団体に委託し
た地方公共団体の首長が、その理由を消費者庁に説明するとともに、消費者庁
はホームページ等で当該地方公共団体名とその承認理由を公表する制度を設け
るべきである。
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苦情対応窓口の設置
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(意見)消費生活相談事務を委託する場合、内閣府令において、地方公共団体内に、
受託者に関する苦情窓口を設置することを義務付けるべきである。
(理由)地方公共団体が安易に消費生活相談事務を外部委託することを防止する必要
があり、また委託した場合には、受託者に対する適正な監視が求められるとこ
ろ、適正な監視を行うには、受託者に関する十分な情報を監視・監督する側が
入手できる仕組みが必要である。そこで、受託者に関する苦情を委託者である
地方公共団体が受け付けることとし、地方公共団体自身が必要な監督を行える
ようにすべきである。また、地方公共団体が、受託者に関する情報を入手・保
管すれば、議会や情報公開、審議会等を通じて、後日の検証が可能になる。
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委託情報の周知
(意見)消費生活相談事務を委託する場合、内閣府令において、都道府県及び市町村
に対し、消費者が相談するに先立ち、受託先が相談を受けること及び受託先に
関する苦情窓口を委託者である地方自治体が受け付けていることを周知する義
務を負わせるべきである。
(理由)消費生活相談は、類型的にプライバシーに関わる内容が含まれる。そのよう
な通常第三者へ知られたくない情報を消費者が申告する背景には、消費生活相
談事務が、中立的・公益的な地方公共団体によって運用されていること、公務
員が守秘義務を負うことに対する強い信頼感が前提として存在する。
ところが、消費生活相談事務が委託された場合、一次的に消費生活相談事務
を取り扱う者は、地方公共団体及び公務員であるという前提を欠くことになる。
そこでこの点を消費者へ予め知らせた上で、どのような個人情報を申告するの
か、決定権を与えるべきである。
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委託先の監督方法
(意見)原状、ガイドラインにおいて、地方公共団体による受託者への適切な監督・
監視を求めているが、不十分である。消費生活相談事務を委託する場合、内閣
府令において、都道府県及び市町村は、消費生活審議会等を設置し、事務の委
託について、審議を経ることを義務付けるべきである。
(理由)消費生活相談事務の受託者の監視は、適正な事務の執行に欠かせないものと
して必要性が認められるところ、委託者による受託者の監視は、慣れ合いの危
険が高い。そこで、客観性を担保するために第三者によるチェックを地方公共
団体に義務付けるべきである。この点、新たに第三者機関を設置することは、
地方公共団体の負担が大きいことから、既に多くの自治体で設置・運用実績が
ある消費生活審議会の審議事項にすることで、負担の軽減を図ると同時に、委
託者と受託者の慣れ合いを一定程度防止することが可能である。
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第2 改正消費者安全法の実施に係る地方消費者行政ガイドライン(案)
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国の体制整備等(2頁)
(意見)2頁末尾の「このためには、地方公共団体の相談体制をさらに強化する必要
がある。
」を次のとおり、変更されたい。
「このためには、地方で対応できない事案に関する国全体としての相談体
制の整備とともに、消費者に最も身近な地方公共団体の相談体制をさらに強
化する必要がある。
」
(理由)国と地方の役割分担を明確にし、双方がともに体制整備を図る必要があるこ
とについて再認識する必要があるから。
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適格消費者団体との連携(3頁)
(意見)3頁6行目の「消費者団体や事業者、弁護士会等の」を次のとおり変更され
たい。
「適格消費者団体をはじめとする消費者団体や事業者、弁護士会等の」
(理由)適格消費者団体との連携に消極的な地方公共団体も見受けられるため、具体
例として取り上げる必要があるから。また消費者団体にも様々なものがあるた
め、地方公共団体にその代表的なものを明示するため。
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民間委託により期待される効果(13 頁)
(意見)利点が認められないので、項目を削除すべきである。
(理由)受託者が原則1年単位で業務の実施状況により替わる可能性があることは、
競争性が確保され、結果として効率的な事務の実施が可能となると記載されて
いるが、相談の現場では効率がよい事が一番の条件ではなく、相談はじっくり
取り組み経験を蓄積しなければならないものであり、継続性が必要である。し
たがって1年単位の交替は、メリットが無いと考える。
また、委託契約は原則1年単位であり、業務の実施状況により受託者が替わ
る可能性があることは、相談員にとっては職場が安定せず、キャリア形成が困
難になる点でも利点では無い。
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民間委託により生ずる可能性がある問題(13 頁)
(意見)現状の記載を維持すべきである。
(理由)いずれの問題も重要であり、指摘内容は妥当であるから。
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消費生活相談事務の民間委託の際の留意点(14 頁)
(意見)14 頁 19∼20 行目の「なお、この場合の民間への委託には、地方自治法第 244
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条の2第3項の規定に基づく指定管理者による公の施設の管理は含まれないも
のとする」との規定は、規則において設けるべきである。
(理由)地方自治法第 244 条の2第3項の特則であることを明確にするためには、ガ
イドラインへの記載では不十分である。実効性・拘束力を確保すべく規則で定
めるべきである。
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適正な経費の計上(14 頁)
(意見)14 頁の「消費生活相談等の事務の民間への委託の際の留意点」に、以下の記
載を加えるべきである。
「委託に際してはあらかじめ求めるサービスの質と量を設計するとともに、
そのサービスに要する適正な経費を計上する」
(理由)消費生活相談事務の民間への委託における重要な課題は、現状における地方
公共団体の民間委託の大部分が、「民間活力の活用」というスローガンのもとに
実際は経費節減のため行われるため、本来業務の実施に必要な経費をきちんと
計上していない事例がほとんどであり、その弊害を看過できないからである。
このような地方公共団体の消費生活相談事務の実態のまま、所管庁がことさ
らに委託が可能だと強調すれば、現状程度の相談業務を経験豊富な団体により
行うことさえ逆に困難にしてしまうおそれが非常に高いと考える。
そこで、意見に記載した文言をガイドラインに記載することにより、
(ア)委
託により、地方公共団体が雇用する消費生活相談員が委託先団体に雇用されて
も待遇の悪化はなくなり、また、(イ)消費生活行政担当部局がそれぞれの地方
公共団体内部で予算計上した際に、財政査定による削減を受けることに対抗す
る法的根拠となることが考えられる。
適正な経費確保を可能にする根拠を設けないまま安易な民間委託が進めば、
却って消費生活行政の大幅な後退を招来することになりかねない。
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消費生活相談員の処遇等に関して(15 頁)
(意見)趣旨に賛同する。なお、適正な経費の計上について、触れるべきである。
(理由)上記第2の6に記載のとおり。
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消費生活相談等により得られた情報の活用に関して(15 頁)
(意見)受託者が、消費生活相談事務により得られた情報を自らの業務のために利用
することは、地方公共団体の了解があったとしても認めるべきではない。
(理由)受託者が、PIO−NETに接続することで、全国で発生するあらゆる消費
者取引に関する情報を瞬時に何らの対価を必要とせずに入手できることを十分
に考慮すべきである。現行の規定では、受託者に営利団体も認められているが、
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営利団体の目的は、自己の利益の最大化である。そうすると受託者が営利団体
の場合、自らの業務とは、営利追求を意味するが、地方公共団体が行う消費生
活相談事務で得られた情報を特定の企業が営利目的で利用することについて、
国民的なコンセンサスが得られているとは考えられない。税金で運用される消
費生活相談事務が特定の受託者の営利に用いられる可能性については、慎重に
検討されるべきである。
なお、本意見は、営利団体が自己の営利事業に消費生活相談事務の受託で得
られた情報を利用することを制限する趣旨であるから、内閣府令7条に定める
受託先の範囲から営利団体が除外された場合には、設ける必要はない。
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消費者行政担当職員の役割(16 頁)
(意見)記載内容を維持すべきである。
(理由)消費者行政担当職員が期待される役割を果たす上では、人員の確保に加えて、
各人の資質向上を図ることが必要となる。そこで、地方公共団体において、担
当職員が国及び独立行政法人国民生活センターの研修に参加する機会を地方公
共団体が十分に確保することを明記することが望ましい。また、消費生活問題
に関する知識を持った担当者と消費生活相談員が一緒に事務に当たることで、
効果的な仕事ができると考えられるので、この点でも現状の記載内容は妥当で
ある。
10 雇い止めの見直し(18 頁)
(意見)地方公共団体が、正規職員として採用するか、それに準じる身分として法定
化すべきである。
(理由)雇い止めの制度は、地方公務員法第 22 条等による臨時的任用制度や定数管理
が根本的な問題であり、これに触れないままただ雇い止めの見直しを言及する
のはリップサービスにすぎないから。
仮に正規職員としての採用となれば、地方公共団体としては、定員管理の対
象として最少限度の人数確保に止めようとする方向に働き、かえって相談員数
減少を招きかねない。そこで、この両者の課題を調整するためにどのような制
度が考えられるかを、消費者庁は長期的な視野に立ち、地方公共団体と協議す
べきと考える。
しかしながら、その対応は早急に行う必要があるため、別途立法化によりそ
の身分を明確化すべきである。
第3 登録試験機関の消費生活相談員資格試験の試験業務に関するガイドライン(案)
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試験の実施(1)試験の在り方(4頁)
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(意見)
「試験の目的は、消費生活相談員に求められる基礎的な素養を有することを確
認することとする。
」という表現のうち「素養」を「技術」に変更すべきである。
(理由)試験が「消費生活相談を行うために必要な知識及び技術を有するかどうかを
判定することを目的とするもの」である以上、相談に応じ、適切なアドバイス
を行うことができる「技術」を有するかどうかを判定する必要があるから。
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試験の実施(8)受験資格(7 頁)
(意見)目安として、基本的には「大学卒業程度」
、最低でも「短期大学卒業程度」と
いう表現を加えるべきである。
(理由)地方公共団体における報酬算定においては重要な要素となるため。
なお、
「程度」とすることにより、必須とはならず、幅広い者に受験資格を与
えることが可能である。
以上
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