北太平洋亜寒帯域における pH の変動に関する研究: 全アルカリ度・全

北太平洋亜寒帯域における pH の変動に関する研究:
全アルカリ度・全炭酸同時測定の応用及び pH の時空間的なマッピングの展開
李 勃豊 (D2)
海洋は産業革命から人為起源で放出された CO2 のほぼ 1/3 を吸収し、劇的な環境変動に対して
重要な緩衝作用を持っていることがわかっている[Sabine et al., 2004]。IPCC(2013)では、Aloha の
pH 時系列によると、ここ数十年では一年あたり 0.002 pH の低下し、酸性化が進んでいることを
報告している。「海洋酸性化は全球的に起こっているかどうか」という謎はまだ未知である。現
在多くの努力を関わらず、pH・全アルカリ度(TA)・全炭酸(DIC)データの年間や季節や月間的な時
間的な頻度は足りないため、細かな時空間規模の pH 観測値は不足している。これを補完するた
めには、溶存酸素(DO)・温度(T)・塩分(S)・栄養塩によって pH を復元する必要がある[e.g., Miilero
et al., 1998; Lee et al., 2000; Nakano and Watanabe, 2005; Juranek et al., 2011 and Takakani et al., 2014]。
しかし、これまでの復元は深さや適用できる流域の広さ等空間的に制限されている。
本研究では、温暖化に最も敏感な北太平洋亜寒帯全海域(55°N-40°N, 145°E-130°W)における深さ
400 m までの DO・T・S 用いて pH25 (25℃に校正した pH)のパラメタリゼーションを行った(式1)
[Li et al., submitted to JGR]。
pH25 = 6.354 + 0.00162 DO + 0.0335 T + 0.0219 S (1) (R2 = 0.99, RMSE = 0.018)
この pH のパラメタリゼーションにより、10 年スケールの北太平洋亜寒帯全海域似おける pH25 の
復元ができる。北太平洋高緯度域に無人海洋観測ロボット(e.g. Argo 中層プロファイリングフロー
ト)で自動的に測定した T、S、DO データを pH のパラメタリゼーションに適用することで、二週
間間隔のほぼ準リアルタイムの pH 分布を明らかにした。時空間に pH の時系列が増えたことと相
当する。
しかし、オホーツク海における、過去の pH・TA・DIC データがすくないため、この pH25 のパ
ラメタリゼションがオホーツク海での pH25 をどのぐらい復元できるのはまだ未知である。北太平
洋に対して、オホーツク海は中層水の生成に重要な役割があり、オホーツク海から北太平洋へ流
入する海水の水理特性を決めっている[Yasuda., 1997]。オホーツク海にも Argo などが稼働してい
る。それを pH のパラメタリゼーションに応用すると、オホーツク海を駆動源とする北太平洋海
洋炭酸系物資の変動は明らかにすることができると考えられる。そのため、オホーツク海におけ
る、pH25 のパラメタリゼーションがどのぐらい適用できるかどうかを確かめる必要もある。
したがって、本研究の目的は以下となる:上記の pH25 のパラメタリゼーションがオホーツク海
で復元できる精度を評価し; pH25 のパラメタリゼーションをオホーツク海・西部北太平洋亜寒帯海
域リアル DO・T・S データ群への適用によって、細かい時間規模の pH の変動を明らかにするこ
ととなる。このような解析により、オホーツク海の炭酸系物質変動が北太平洋の pH 変動への影
響を解明する。
2014 年 6 月千島列島海域をターゲットとしたロシア観測船 Professer Multanovskiy(Mu2014)にお
いて、採得した TA・DIC サンプルを同時測定で分析し、T・S・栄養塩等水理データとともに pH25
を計算する[Dickson et al., 2007]。同時点で採得した DO・T・S データを pH25 のパラメタリゼーシ
ョン(式1)に適用し、得られた pH25 値を TA・DIC 実測値から計算した pH25 と比較すし、オホー
ツク海における pH25 のパラメタリゼーションの適用性の評価を行う。オホーツク海、北太平洋
(KNOT)と千島列島海域の三つの海域における、自動的の観測から得られる高頻度の DO・T・S デ
ータに pH25 のパラメタリゼションの適用すると、三つの海域における細かな時間規模での pH 変
動を捉えることが期待している。