性差、年齢差および分野融合(リエゾン)に基づく医学

性差、年齢差および分野融合(リエゾン)に基づく医学研究会
趣意
医学研究の多くでは、人(ヒト)の性差についての現象考究があまり行われず、盲点と
して放置されています。「性差」は厳密には生物学的性差(sex)と文化的および行動的要
素が交絡した性差(gender)に分かれます。寿命や性ホルモンなど特定の研究を除けば、
性差研究の重要性を主張する論文の出現は 2000 年以降で、とくに最近の 5 年において目に
するようになってきました。例えば、ワクチン、内分泌、感染症、細胞、分子生物などの
分野です。また、年齢差の観点を医学研究に取り入れることも重要で、感染症では子ども
では男児が女児より罹りやすく、成人ではその関係が逆転することが示めされています。
この現象は全ての身体的な現象に関連すると考えるのが自然で、性差との組み合わせで、
医療にも応用できる重要な知見が得られると考えられます。
斬新な研究成果を目標にするためには、研究分野の融合による共同研究が威力を発揮し、
ハイブリッドな研究成果が可能になります。例えば、ゲノムの塩基配列は、スペクトル拡
散通信の信号系列と類似し、DNA の翻訳とデジタル信号の復号が何処かで合流できること
を夢見ています。また、ゲノム情報をはじめ医療情報は日々膨大になり、研究分野を超え
てデータを活用する方法の議論も本研究会では推進して行きたいと思います。
本研究会は問題発見のための議論、解決すべき問題の提案、研究分野を超えるグループ
研究を促進するための場としての機能も目指しています。大型の科学研究費の獲得には研
究課題が大きくかつ斬新である必要があり、この意味で、性差、年齢差および分野融合を
取り入れた研究体制を構築することは重要と考えています。学内の研究活性化に向け、こ
の研究の方向性を導入し、世界レベルの研究を目指すことは意義があります。
古典は言葉の使い方の手本であり、現代まで受け継がれています。古今和歌集は古典で
あり、その中の一首に「みわたせば柳桜をこきまぜて都ぞ春の錦なりける」があります。
この歌の「錦」に注目すると、古今集の他の歌は秋の紅葉を山で鑑賞し、その美しさに錦
を用いています。多分、その使い方が本来(固定観念)と推察されます。この一首には紅
葉を柳桜に、山を都に、そして秋を春に置き換えた(translational)
「固定観念の打破」が
あります。恐らく、選者と詠み人が柔軟な機知に富み、互いの才覚と人格を認め合う和歌
の会が存在したのだと思います。本研究会もそのような会にしたいと考えています。
本研究会での「医学」とは広い意味であり、人(ヒト)を対象とする、または人(ヒト)
への応用を目指す研究分野を指すこととし、幅広い皆様の研究会への参加を期待します。
学外の大学や研究機関等との連携も視野に入れています。
平成 27 年 3 月吉日
発起人代表 大分大学医学部数学・統計学講座 教授 江島伸興