い の ち やさしく生命をまもる 第14回 錦秀会 医療・福祉フォーラム -抄録集- アスクレピオスの杖 ●ギリシャ神話の名医アスクレピオスが持っていた杖で医療・医術の象徴とされています。 平成27年11月14日(土)13:00~ 阪和記念会館講堂 目 次 一般演題A 1. 目指せ ナースコールゼロ ~患者のニーズを先読みしたナースコールに頼らない看護を目指す~・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 阪和記念病院 看護部7病棟 2.Do not open the door so much (そんなに扉を開けないで下さい) ~その扉の開閉必要ですか?~・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2 阪和住吉総合病院 手術中央材料滅菌室 3.元気にいきいき楽しく暮らしたい"アクティビティケアの効果"・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4 16 詰 阪和病院 看護部 4.40 年の入院生活から地域へ ~人生の大半を病院で過ごしてきた人への退院支援からみえてきたこと~ ・・・・・・・・・・・・・・・・・7 阪和いずみ病院 看護部5病棟 一般演題B 5.住み慣れた家で安心できる生活を支えたい ~意識改革から生まれたプロ意識~・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9 阪和第一泉北病院 デイケア室 6.「緩和ケア病棟におけるリハビリテーション」 ~全身状態が低下した時、療法士は何ができるか?~・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10 阪和第二泉北病院 リハビリテーション部 7.「おいしいごはん A-5 北病棟 楽な姿勢で楽しく食べたい! ~食事姿勢について~ 」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・11 阪和病院 リハビリテーション部 8.実現できる私たちの夢 ~ゆかいな仲間と希望を語ろう~・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12 阪本病院 デイ・ナイト・ケア なかまの家 一般演題C 9.「家に連れて帰りたい」 ~家族の願いを叶える為に私達ができること~・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13 錦秀苑 3Fフロア 10.アルコール依存症患者への退院支援 ~B4閉鎖病棟でのはじめての取り組み~・・・・・・・・・・・・・・15 神出病院 B4病棟 11.医療と介護の連携 ~多職種協働を念頭に… 今後の展開を考える~・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・16 阪和第一泉北病院 居宅介護支援センター 12.「PRMセンターをご存知ですか?」・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・17 医療法人錦秀会 特別報告 楠 4S 推進局 PRM センター 「阪和インテリジェント医療センター(HIMC) 洋子 10 年の歩み」・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18 先生(阪和第二泉北病院 阪和健診センター長) 小川 洋二 先生(阪和第二泉北病院 阪和 PET センター長) 格谷 義徳 先生(阪和第二泉北病院 阪和人工関節センター長) 一般演題A 座長 辻涼子(阪和第一泉北病院 看護部長) 1.目指せ!ナースコールゼロ ~患者のニーズを先読みしたナースコールに頼らない看護を目指す~ 医療法人錦秀会 阪和記念病院 7 病棟 ○近江 梨恵 古別府 香奈 木岡 広美 はじめに 7 病棟は施設基準「障害者施設等入院基本料」を算定している病棟であり、約 64.9%の患者がベ ッド上の生活を送っている。また点滴や気管切開チューブ、NG チューブ挿入中の患者も約 62.5%入 院している。自分の意志でナースコールを鳴らせる患者は約 25%であるが、患者のニーズの発信源 であるナースコールが鳴りやまない、看護師は迅速に対応できていない現状があり、患者が必要な 時に対応できるよう取り組んだので報告する。 研究方法 期間 平成 26 年 10 月 1 日~12 月 31 日 対象 7 病棟に勤務する看護師・准看護師・看護補助者 29 名 方法 ①ナースコール認識調査 1 回目 ②各部屋担当看護師はノートパソコン・カルテを持って担当病室で記録 「目指せ!ナースコールゼロ」と毎朝唱和 ③②取り組み後 ナースコール認識調査 2 回目 結果 自分の意志でナースコールを鳴らせる患者は入院患者の 25%にもかかわらず、看護師 1 人当たり 1日平均 26.2 回対応していた。コールセンサーが反応するものを含めれば約 41.2 回となる。その 内容は、「お茶やリモコンを取って欲しい」といった環境調整に関わるもの、「疼痛や掻痒」といっ た療養上の訴え、 「排泄」といった基本的欲求に関するものが多く、その他「寂しい」「ただ押して みた」というものもあった。また看護師がナースコールにすぐ対応できない理由として「排泄や吸 引等他患者の対応」が最も多く、 「ナースコールに振り回されている」という感覚を感じている看護 師がほとんどであった。また「ナースコールが鳴る前にニーズに気付いて対応したい」という思い を抱えていることもわかった。しかし取り組み後も看護師 1 人当たり 1 日平均 20.3 回と有意に減少 したとは言えない結果であった。ナースコールの内容も前後で変化はなかった。 考察 ナースコールの内容から患者がナースコールを鳴らさなくても済むものが意外に多く含まれてい ることがわかった。それは、 「環境調整」 「点滴や吸引等の処置」 「排泄誘導」などがあげられる。し かし看護師が病室に滞在する時間が増えてもナースコールの質に変化は見られなかった。これは看 護師が患者の状況を把握できていない現状、業務の多忙を示唆していると考える。インシデントか らも対象の期間中に気管切開チューブ抜去の重大事故が 2 件、転倒による重大事故が 1 件発生した ことから、患者のニーズを先読みして看護を提供するという目標とは大きく異なる結果となったと 考える。看護師は患者の視点に立って日々の業務を遂行しなければならないが、ナースコールの対 応という視点で考えれば、患者からのナースコールでやっとニーズを把握し対応することに精一杯 という現状が見えてきた。またナースコールが鳴る前に対応したい思いはあるが、対応できない要 因としては「患者のニーズに気づいていないのか」あるいは「気づいているが対応できないのか」 に分けられると考える。もちろんコールセンサーのように鳴らないといけないナースコールもある ため、看護師が患者の安全を確保するため鳴らさなくて済むニーズについてはベッドサイドに行き、 患者の観察や環境への気配りをすることでニーズを想像することが必要と考え、今後もっとベッド サイドへ行き、一人一人の患者をしっかり捉えていきたいと思う。 まとめ 今回の取り組みは、患者が必要とする時に迅速に対応することはできなかったが、私たちのナー スコールへの認識を深め、何故ナースコールが鳴ったかを考える機会となった。 患者のニーズを先読みするためには患者の状態や環境に目を配り想像することが求められる。 不要なナースコールはできるだけ減らせるよう、業務改善や情報共有に努める。 参考文献 高橋法恵:患者のニーズに気づき、不要なナースコールを生み出さない ナースマネージャー Voi.15 No10 下村陽子:病棟の安全・安心ケア実践のための着眼点 ナースマネージャー Vol.14 NO8 2.Do not open the door so much(そんなに扉を開けないで下さい) ~その扉の開閉必要ですか?~ 阪和住吉総合病院 手術中央材料滅菌室 ○山中 里菜 西郡 神奈 山下 多恵 1はじめに CDC ガイドラインには、手術室のドアは機材・スタッフ・患者の通過時を除いて閉めておくこと、必 要最低限の人員に入室を限定することとある。また「1 時間に 6 回以上の扉の開閉」が手術部位感染 (以後 SSI と記載)のリスク要因に挙げられている。当手術室では消化器外科手術が年間手術の4 割を占め緊急手術も多いことから、手術中の出入りによる扉の開閉が多い現状である。そこで実際 にどれくらいの頻度で扉開閉を行っているか、どのような背景があるのかを検証し現状が明らかに なった為報告する。 2.研究方法 (1)研究期間:平成 26 年 10 月 31 日~平成 26 年 12 月 9 日、平成 27 年 7 月 7 日(再調査) (2) 対象 :消化器外科手術 31 件(内1件は再調査) (3)研究方法:量的研究(カウント計とビデオを用いた扉開閉回数と背景調査) (4)研究場所:手術室Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ 3.結果 1 時間あたりの平均開閉回数は 11.2 回であり基準より 5 回以上多かった。さらに状況別に分類し、 手技別、予定・緊急別では、有意差はなく、部屋別では手術室Ⅲ、時間帯では午前の方が開閉回数 が多い結果となった。手術件数別では、1年間で手術件数が1番多い腸切除術と、手術件数の少な い膵頭十二指腸切除術(以後PDと記載)を比較した結果、PDの開閉回数が多い結果となった。 さらに、背景を知る為ビデオ撮影した結果、麻酔科医の部屋移動、手術必要物品の収集が多く、ま た背景を経験年数別に絞った結果、手術必要物品の収集と間接介助者を補助する為のスタッフの扉 の開閉に有意差を認めた。 4.考察 開閉回数が基準より多い理由として、部屋別では、手術室Ⅲは器械や物品が少なく、物品収集に よる開閉回数が増えたと考える。術式別ではPDなど件数が少ない手術では物品予測が難しく、長 時間の手術でもあり他スタッフや医師が入室することが増加要因と考える。また時間別では、午前 中は次の手術の時間調整や準備、手術を同時間帯に 2 件以上行うことが多い為、麻酔科医が部屋移 動することも要因の1つと考えられるが、進行状況や手術時間調整などの確認は、PHS 等の扉開閉を 行わないツールを考慮することで扉開閉が減少すると考える。背景を経験年数に由来するものに絞 り分析すると、卒後 1 年目は他スタッフが補助に入ることが多く、また準備の際、経験値で物品を 集めることもある為、経験値の少ない卒後1年目は手術中不足物品の収集による開閉が多くなった と考える。 以上の考察をもとに全物品リストの見直しと、PHS を導入し再調査を行った結果、背景別では手術 必要物品の収集による扉の開閉に減少を認めた。物品リストの見直しにより、経験値の少ない卒後 2年目も他のスタッフと統一した準備が出来、不足物品を取りに行く回数が減少し、扉の開閉の減 少に繋がったと考える。PHS 導入後の、手術進行状況の確認による扉開閉回数に減少は認めず、実際 に目で確認する方が確実かつ有効的である為、PHS の使用が浸透しなかったのではないかと考える。 しかし、他部署への連絡時に、PHS を代用したことは扉の開閉減少に有効であると考える。今回の研 究を行ったことで課題が明確となり、リストの見直しや PHS の導入などの対策により扉開閉減少に 繋げることができた。 5.結論 1)開腹・腹腔鏡手術の手技別、予定・緊急手術別による扉開閉回数の有意差は認めない。 2)物品リストの見直しは、スタッフ間で統一した物品準備ができ、扉開閉の減少に有効であっ た。 3)手術の進行状況確認や時間調整は実際に目で確認することが有効的であるが、他部署への連 絡等は扉の開閉を行わずにできる PHS を代用していく。 4)扉開閉への意識の風化を防ぎ、継続的に扉開閉の減少に取り組む必要がある。 3.元気に活き活き楽しく暮らしたい “アクティビティケアの効果” 阪和病院 看護部 16詰 ○黒木真奈 平田裕美 紙透君代 田中栄子 西尾優維 金沢佳子 武政隆子 清水隆子 松原正明 安部愛海 西柳朱梨 三浦明美 川本真由美 清竹小夜子 Ⅰ はじめに 療養病棟には病状は比較的安定しているが在宅復帰に向けて様々な準備が必要な後期高齢者の入 院が多数を占めている。 加齢に伴う認知機能の低下や身体機能の低下は「基本的な」衣食住の生活を維持することも困難 となり食事・排泄・清潔の維持にも介助が必要となってくる。私たちは老年期入院患者様の現存機 能を維持し、その人らしく健やかに日々が送れるようケアをする必要がある。 私たち16詰所では ①患者様に笑顔で人格を尊重した声かけができる。 ②褥瘡をつくらないよう栄養状態を改善し、効果的な体位変換を行う。 ③経口摂取が維持できるよう嚥下機能の維持改善につとめる。 ④口腔ケアを徹底し、嚥下性・逆流性肺炎を予防する。 を目標にケアに取り組んでいるが今回 ① 離床する時間を多くする ② 現存機能を維持する ③ 日々の生活の中に楽しみをつくる の 3 点を加えたアクティビティケアに取り組んだのでその内容と効果について考察を加えて報告する。 Ⅱ 研究期間 平成 26 年 3 月 26 日~平成 27 年 8 月 20 日 Ⅲ 研究対象 16詰入院患者数 42名 男女比8:34 平均年齢 男性 78.1 歳 女性 85.8 歳 後期高齢者の割合 男性 8 名中 4 名(50%) 女性 34 名中 31 名(91.1%) 経口摂取 42 名中 20 名 男性 3 名(76.3 歳) 女性 17名(89.3 歳) 経管栄養 42 名中 22 名 男性 5 名(79.2 歳) 女性 17 名(82.0 歳) Ⅳ ケアの実際(写真) 1. 座位保持が可能な経口摂取の患者様は毎食談話室に誘導した。 2. 車椅子の自操が可能な患者様はできるだけ見守り自操とした。 3. 立位の可能な患者様は車椅子から椅子への移乗を行った。 4. 経管栄養の患者様もできる限り車椅子やリクライニングチェアーに移乗し、談話室で経管栄養の 注入を行った。 5. 昼食前に、唾液の分泌がスムーズになり、また咀嚼をよくするためにポップ キャンディを舐めてもらった。 6. ラジオ体操で全身を動かし、嚥下体操をすることで嚥下機能の改善を行った。 7. 食事介助の必要な患者様も直ぐに介助するのではなく自力で摂取できるよう介入した。 8. 患者様の嚥下状態を常に観察し、主治医と相談して食事の形態を随時変更した。 9. 食事中のムセやスムーズに嚥下のできない患者様は主治医に報告し、嚥下造影を依頼してもらい、 結果をスタッフ間で共有し注意深く食事介助を行った。 10. かみ合わせの良くない患者様は家族、主治医と相談のうえ歯科に依頼し、入歯等の調整や治療を 行った。 11. 家族の協力を得ておやつの時間を設定し、楽しみに談話室に出てもらうことで離床回数を増や した。 12. おやつは患者様の嗜好と食事形態に合わせた。(写真) Ⅴ 結果および考察 1. 座位保持が安定し、食事中の姿勢がよくなり、スムーズに摂取できるようになった 座位保持が安定することで自助具使用歩行が可能な患者様は 5 名、車椅子自操が可能な患者 様は 20 名中 15 名が自力での移動が維持できている。食事も 20 名中 17 名が自力で摂取でき ており、また 5 名の患者様が経管栄養から経口摂取に移行できた。 これは車椅子に乗って移動すること、椅子に座って食事をすることなど、毎日離床すること で、背筋や腹筋の筋力維持向上に繋がり、食事中の姿勢などADLの維持になっていると考 えられる。 片麻痺のある患者様も、昼食の時間前に談話室の手すりを用いて立位訓練を行っている。ま た、大腿骨骨折OPE後の患者様も車椅子から椅子への移乗がスムーズにできるようになっ た。見守りで歩行可能な患者様は杖やシルバーカーにて補助具の使用で談話室へ出てきてい る。 運動器の障害の原因は「運動器そのものの疾患」と「加齢による運動器の機能不全」に大別 される。加齢による運動器の機能不全による廃用症候群に対しては離床を促すことでADLの 維持・向上につながったと考えられ、運動の促進・強化、姿勢と動作の改善、ADL訓練、運 動療法などが有効であると考える。 2.ポップキャンデを舐めてもらうことは唾液の分泌を促す効果や口腔内の環境をよくする効果 が十分にあった。加齢に伴う認知症や難聴の患者様には嚥下体操のみでは効果が期待できなか ったが、キャンディを舐めることでしっかり咀嚼・嚥下などができ口腔機能の回復効果があっ たと。しかし、ポップキャンディを舐めてもらうことはすべての患者に適応できない。残存歯 があり、認知症の患者は舐め続けることが困難で噛み砕いてしまうことが多く、キャンディが 危険物となることも考えられる。嚥下機能も筋力や持久力などの身体機能と同様に加齢や疾患 の影響で低下する。嚥下機能の低下は誤嚥性肺炎の発症リスクを高める。誤嚥性肺炎の発症を ゼロにすることは難しいが、その確率を下げるためにも、効果的な嚥下訓練の方法を今後も検 討していくことが必要と考える。 3.嚥下状態を常に観察し、その患者様に合わせた食事の形態に変更することでムセや嗄声なく 安全に食事を提供することできている。 指示された食事を提供するだけではなく、患者様の嚥下機能を常に観察し、個々に適した食 事を提供すること、嚥下機能の維持改善のため口腔ケアを徹底していくことが必要であると再 認識できた。 経口摂取する患者様の口腔ケアにおいても、一人一人きちんと磨けているか観察し、看護職 と介護職により介助することで口腔内の清潔を維持できるようにしている。ただ「食べる」と いうことをサポートするだけでなく、摂食・嚥下というものが一つの運動であることを意識す ること、嚥下機能の効果を高めること、誤嚥を予防し改善することが重要であると考える。 4.おやつの時間を設定したことで談話室に出てくる患者様が多くなった。患者様の表情も明る くなり、他患者との交流の場となり会話も増えている。 また、それぞれの患者様の嚥下状態に合わせたおやつを提供している。口の中で溶けやすい ビスケット、家族様の持ち込みでプリンやゼリー、バナナ、カステラ、コーヒー・紅茶・ジュ ースなどを提供している。 おやつの時間は日々の生活に刺激ができ楽しみの1つとなっている。食べるということが生 きる活力にも繋がっていると考える。 経口摂取患者の平均年齢は 87.2 歳と高齢であるが、現在も経口摂取が維持できている。 食に対する意欲が出て経管栄養から経口摂取へ移行することができた患者様も現在入院中 5 名おられる。 Ⅵ まとめ 1.離床することで座位保持がよくなった。 1.嚥下機能の改善には食事中の姿勢が重要であることが分かった。 2.ポップキャンディは嚥下機能の回復に効果があった。 3.口腔機能を維持・改善することは食への意欲に繋がる。 4.おやつの時間は、日々の生活に潤いを与え刺激となった。 おわりに 今回、看護研究をまとめることで日々行っているケアの見直しができ、効果があったことも分か った。今後も入院患者様の快適な生活環境が維持できるよう業務の見直しを行っていきたい。 文献 参考文献 ・山田律子、井出 訓:生活機能からみた老年看護過程、医学書院、2008 ・北川公子:老年看護学、医学書院、2010 引用文献 ・道又元裕:看護技術 リハビリテーション実践、メヂカルフレンド社、2013 ・六角遥子:より個別性に注目したアクティビティケアの提供に向けて、臨床老年看護、2000 4.40 年の入院生活から地域へ ~人生の大半を病院で過ごしてきた人への退院支援からみえてきたこと~ 聖和錦秀会阪和いずみ病院 看護部 5病棟 〇吉本絹子 北平千穂 田邉友也 Ⅰ.はじめに わが国の精神疾患患者の処遇は、私宅監置制度(1950)の廃止まで、座敷牢に収容されるという 時代が続いていた。戦後、精神病床の圧倒的な不足が明らかとなり、これを解消する為に日本各地 で建設された多くの精神科病院が社会的長期入院患者をうみだすきっかけになった。後の法整備に より、長期入院患者の退院が望まれたが、2011 年現在、入院患者数の緩やかな減少は認められるも のの実質的な問題解消には至っていない(精神科看護白書,2014) 。このような歴史の中で、患者は、 病院規則の中で生活する事に慣れ、本来もっていた能力を失い、生活力の獲得する機会を逃してき た。 今回、事例として挙げる A 氏もこのような時代を生きた“社会的長期入院患者”の一人である。A 氏は、親への暴力がきっかけで入院となり、今回の退院支援により地域に戻るまで約 40 年間もの入 院生活を続けていた。 なぜ、退院までにこれほどの年月を要したのか。約半世紀もの看護記録をひも解くことで見えて きた A 氏の生活史を概観しながら、退院支援の取り組みを振り返ってみた。 Ⅱ.研究目的 長期入院患者の退院支援活動から、長期入院に及んだ要因を明らかにし、今後の看護支援への手 がかりとする。 Ⅲ.方法 1.データ収集方法: 過去の入院カルテを参照し、インタビューは対象者とそのご家族、当院スタッフに対して実施 した。 2.期間:[平成 25 年 4 月~平成 27 年 9 月] 3.倫理的配慮:対象者と家族に対して、研究の趣旨、目的、研究同意と撤回の自由、個人情報の 保護、協力を断っても不利益は生じないこと、公表の仕方について口頭と書面で 説明し同意を得た。 Ⅳ.[事例紹介と経過] 年齢:60 歳代 性別:男性 診断名:統合失調症 入院歴:40 年 <当院入院までの経過> 中学校卒業後、造船所に就職するが、ものに怯えるようになり、父を殴るような行為も見られる ようになったため、A 病院に 1 年半入院。退院後も農機具の会社に就職するが、すぐに解雇され、B 病院で 1 年半の入院生活をおくる。その頃から絶えずゲラゲラ笑うようになり、昭和 49 年、当院に 入院となる。 <当院入院後の経過> 入院当初は、やや攻撃的な発言がみられる程度で、他患者とも大きな問題になることはなかっ た。日常生活においては、病院の作業や、看護師の手伝いをすることで年月が過ぎていった。こ のような経過から、本人の退院を望む言葉も徐々に少なくなっていく。40 年後の平成 25 年より、 本格的な退院支援を開始。院外での活動を積極的に増やし、主治医の薬剤調整も合わせて平成 26 年 8 月に退院する。 <退院後の経過> 日中は作業所に通所し、日曜日はガイドヘルパーの付き添いで、ショッピングセンターやレジ ャー施設などへ外出している。外来受診時には、当院のフロアで過ごしたり、院内レクリエーシ ョンに参加したりして過ごす。施設では、個室で TV を見ながらお菓子を食べるなどして、自分の 時間を過ごしている。 Ⅴ.退院支援から見えてきた長期入院の要因と A 氏の退院を支えたもの 退院に 40 年もの期間を要した背景には、A 氏の諦めや疾患による問題以外にもいくつかの要因が あると考えられた。一つは、精神科医療の風土の中で、政策誘導が無ければ積極的に取り組むこ とが出来なかった我々医療者の支援の姿勢。もう一つは、その風土の中で、退院することは叶わ ないと思い諦めていた医療者や、その影響を受けた患者家族の存在である。 地域での生活とは比べものにならない期間を病院で過ごしてきた A 氏にとって、地域に戻るこ とは希望でありながらも、不安であったはずである。その思いを汲み、退院後も“A 氏と病院を 完全に切り離すことのないように”支援したことも、退院後のこころの支えになったと考えられ る。 一般演題 B 座長 髙木卓司(阪和第二泉北病院 リハビリテーション部 課長) 5.「住み慣れた家で安心できる生活を支えたい」 ~意識改革から生まれたプロ意識~ 阪和第一泉北病院 デイケア室 ○辻林 律子 金崎 泰成 通所リハビリテーション(以降通所リハ)とは、自宅で生活されている高齢者が主にリハビリを 目的に利用し、ケアプランを基にしたサービス計画で、在宅生活の一部をサポートする役割がある。 家族や関係事業所との連携が必須であり、全体で継続したサポートを続ける必要があるが、提供す るサービスが通所リハだけで終わってしまっている現状であった。 「通所サービスの基本は在宅」と いう認識が薄れていく傾向が強く、毎日のプログラムを終えるだけで在宅生活の延長を意識したサ ービス提供が行えていなかった。そこで、利用者の情報収集のために連携の強化と情報収集のため の手段の明確化、そしてそれらを共通理解することで通所リハでの様子と照らし合わせて生活全般 を把握することができた。そうすることで状態変化の早期対応や利用者の目標設定にも有効である ことがわかった。利用者の目標や希望を直接確認すると明確な目標を持っている高齢者は極少数で ある。利用者が今の状態を維持することだけでなく、本人や家族の気持ちを汲み取り一つずつ段階 を踏んで、生活行為の向上や問題解決ができれば意欲の向上にも直結する。私たちは利用者の気持 ちに寄り添い、意欲や理解に働きかけることでプロとしての仕事を全うすると考える。平成27年 度の介護保険改正に伴い、活動と参加に焦点を当てたリハビリの充実が大きな課題となった。リハ ビリ会議を開始し、自立支援と通所リハからの卒業を目指しての動きに変化した。自立支援のため には、今までの「サービスがあるからできる」ではなく、 「自分でできるようになるためにサービス を使う」という考えにシフトする必要があった。利用者のできていることや、もう少しで出来るよ うになることを大切にしたサービス提供、そして提供するサービスに対しての目的と目標を明確に した上でその人に合ったサービス内容を利用者と決める。リハビリ会議で目標達成するための具体 的方策を利用者や家族そして多方面の連携によって生み出す。通所リハは生活の一部であり、目標 や課題に対しての利用者の認識とそれを支えるすべての人達との情報共有が必要であると考える。 そして新たな試みをすることで小さな積み重ねが、自立支援やADL・意欲の向上に直結し、これ からの進化した通所リハの方向性が確立していくと考える。 近年、報道でも高齢者虐待などのニュースが取り上げられることが増えた。今後益々増加していく 高齢者に対してサービスを提供する側の質が大きな社会問題となっている。介護職員が仕事に取り 組む姿勢としてやりがいを持つことが一番の課題だと考え、自信を持って仕事をすることに焦点を 合わせた。今までの自信不足からくると考えられるチームワークや連携不足を解消するため得意分 野を活かしたスペシャリストの育成を提案した。職員全員が自信を持って活き活きと仕事ができる ことで、自ずとチームワークの強化に繋がった。そういった中でそれぞれの分野で疑問を持つこと が習慣化し、日々の業務でも本当にこれでいいのか?と疑問を持てるプロ意識の高い職員が増えた。 私たち通所リハの職員はその日一日が終わればいいわけではない、利用者の生活は家に帰っても続 いている。在宅生活を続ける高齢者やそれを支える人達にとっての救世主でいたい。 6.緩和ケア病棟におけるリハビリテーション ~全身状態が低下した時、療法士は何ができるか?~ 阪和第二泉北病院 リハビリテーション部 A5北病棟 ○福田 輝路(OT) 出路 育美(PT) 宮崎 巳美(Ns) 徳留 由貴(Ns) 山口 真人(PT) 岩朝 勤(MD) 【はじめに】 がんは進行すると、患者の身体機能を低下させ、それまで行ってきた生活を困難なものにし、仕 事、趣味活動、家族における役割などを奪うこともある。 これまで筆者は、がんによって全身状態が低下した患者に対する療法士による介入は非常に困難 なものと考えていたが、今回担当した症例により、患者の希望に沿える関わり方には様々なものが あることを学んだ。 本症例は、がんによって全身状態が低下し、母親の役割を奪われたが、その役割を取り戻すリハ ビリアプローチや様々な関わりによって、最終的に満足度の高い結果が得られた。以下、報告する。 【症例】 〈一般情報〉乳がん、皮膚筋炎を罹患している40歳代の女性。夫と小中学生の子供三人の五人家 族。夫によれば、 「これまで困難なことがあっても、明るく前向きに行動してきた人」とのことであ る。 〈初期評価〉 四肢・体幹筋力:MMT3レベル。起居動作:中等度介助レベル。 本人希望:「家に帰って、子どもにおかえりと言ってあげたい」 リハビリ目標:自宅退院するため、起居や移乗の各動作が安全に軽介助で行えるようになること。 〈病態とリハビリの経過〉 起居動作練習の開始から9日後、 「喉にロールキャベツを詰めた」との訴えがあり、喉頭からの出 血と、急激な食思の低下や全身の脱力感、倦怠感が出現した。 四肢及び体幹の筋力は MMT2レベル、起居動作は全介助レベルとなった。本人の訴えも「体がしん どくて、座る気力もない」となったため、リハビリの介入方法に工夫を要すると判断した。 〈母親の役割を取り戻すアプローチ〉 症例は「家に帰れると思っていたけど、あかんな。奇跡が起きたらなぁ」と発言し涙を流されて いたことから、私は希望を持ち続けていると感じた。そこで、開始当初からの本人希望である「子 どもにおかえりと言ってあげたい」は、母親の役割をしたいということだろうと考え、長女(中学 三年生)の誕生日にプレゼントとして手作りの『シュシュ』 (毛糸とゴムを用いて作る、腕や髪につ けるドーナツ状の装身具)を渡すという内容のリハビリメニューに加え、アプローチ方法全体を組 み直した。 症例には、毛糸の色選びや、毛糸を指で押さえるなどの補助的な作業活動を行ってもらい、編む 作業はセラピストが代りに行うことにした。完成したシュシュは、長女の誕生日に症例本人から手 渡してもらった。この時の症例の顔には、それまで筆者が見たことのない笑顔が浮かんでいた。 〈その他の関わり〉 本症例においては、リハビリの知識・技術を用いた関わり以外に、 「担当者としての関わり」、 「医 療従事者としての関わり」、 「人としての関わり」が重要であった。それらの具体的な内容は、以下 の通りである。 ① 担当者として:毎朝9時30分の声掛けと、好んで視聴していたテレビ番組のチャンネルに合わせる。 ② 医療従事者として:臥位ポジショニングの検討と施行。 ③ 人として:携帯電話の着信とメールのチェック。 これらの関わりは、症例にとって日課となり、生活の安心感に繋がった。声掛けをする際には、 「気 分はどうですか?」とオープンクエスチョンにすることによって、身体的・精神的な変化に気づい てもらうよう努めた。 【考察】 症例が述べる希望の背景を考えることにより、 「母親の役割を取り戻したい」という心底の思いに 気付くことができ、意義あるリハビリ介入が行えた。たとえ症例の全身状態が低下しても、療法士 には様々な介入方法があること、また症例の満足度を上げることも可能であることを知った。係わ りが進む中で、症例から「不安や孤独感が軽減されて嬉しい」といった発言を聞くこともできた。 精神的な支えにもなれていたのなら幸いである。 緩和ケア病棟の患者は、疲れやすく、残された時間も短い。症例は、長女の誕生日から8日後に 死亡退院しており、素早くアプローチしていなければ、希望を叶えることはできなかった。今後も、 いかなる全身状態であっても、 「療法士である自分に何ができるか?」を常に考え、患者の状態に合 ったアプローチを素早く実行し、満足度の高いリハビリ介入をしていきたい。 7. 「おいしいごはん 楽な姿勢で楽しく食べたい! ~食事姿勢について~」 阪和病院 リハビリテーション部 ○矢部奈津美(OT)、山本桐子(OT)、隅野友紀(OT)、西川知佐(OT)、柴坂大樹(OT) 野村奈保(PT)、佐々木裕美(PT)、坂元敦(PT)、藤倉英雄(PT)、御野仁孝(PT) 吉井美紀(ST)、黒木麻耶(ST)、中園真理子(ST)、脇田より子(Ns) <はじめに> 当院の在宅復帰機能強化型病棟では、自宅や施設への退院を目指しており、食事をきちんと摂るこ とが重要課題の一つとなる。しかし、高齢者は身体機能の低下などが原因となり食事の際、食べこ ぼしが増えてしまう傾向にある。食べこぼしの他にも疲労、摂取量低下、食事意欲の低下がみられ やすくなるが、それらを引き起こす原因の一つとして、食事姿勢の崩れが挙げられる。しかし、高 齢者が自分で姿勢の崩れに気付き、直すのは難しいことが多い。そのため私たち医療従事者が患者 様の姿勢の崩れに気付き、正していく必要がある。今回、食べこぼしや疲労の軽減、食事意欲の向 上を図ることを目的に、病棟でもできる環境設定やポジショニング、適切な食事姿勢についての伝 達を行ったので、以下に報告する。 <取り組み> 食堂に出て食事をされている患者様の中で、車椅子に座り、崩れた姿勢で食事をとられている患者 様を対象に、病棟の協力のもと、環境設定やポジショニングを実施した。 <結果> 食事姿勢に対し、リハビリテーション部が介入することで、以下の結果が得られた。 ・姿勢の崩れ軽減 ・食べこぼし、取りこぼしの軽減 ・食事意欲向上(摂取量の向上) ・介助量軽減(中等度介助→見守り) ・情報共有機会が増加 ・姿勢に対する意識の高まり <まとめ> 病棟では食事時間に制限があり、姿勢の崩れに気が付きにくいという現状がある。また、崩れに気 が付いても、上手く姿勢を正すことが出来ないなどの悩みを抱える病棟スタッフも多い。この現状 よりリハビリテーションスタッフが病棟へ出向き、病棟スタッフと共に対象患者様を中心に専門的 な目線から姿勢を正す方法や環境設定を行った。実際に患者様を通じて、姿勢を正すことや環境設 定を行なうことで、病棟スタッフの知識、技術の向上に加え、食事姿勢に対する意識は高まった。 しかし、一人ひとりの身体能力や体型は異なるため、すべての患者様に適応出来ないという問題が 生じた。このため、姿勢正しく食事をされている患者様の数としては、まだ少ないという課題が残 った。当院では、定期的にリハビリテーション部から勉強会を行う機会がある。多くの患者様にみ られる特有の姿勢の崩れの共通点を把握した上で、実技を含めた勉強会を行い、より多くの病棟ス タッフが食事姿勢に対する知識や技術を高めていく必要があると考える。今後、勉強会に加え、他 の病棟に対しても、この取り組みを拡大し、一人でも多くの患者様が食事時間をより幸福なひとと きとなるよう努めていきたい。 8.実現できる私たちの夢 ~ゆかいな仲間と希望を語ろう~ 医療法人聖和錦秀会 阪本病院デイ・ナイト・ケア「なかまの家」 ○吉本里帆 黒田有加里 【はじめに】 デイ・ナイト・ケアなかまの家(以下 なかまの家)は、2011 年 12 月~2012 年 1 月に当院外来患 者 361 人を対象に「患者のニーズに合ったデイケアサービスなどの提供」の調査の結果、働きたい人 を支援する場として 2013 年 4 月から開所した。なかまの家では、それぞれのもつ夢や希望を語りあ い、その人らしい人生をいきいきと過ごす事を大切にしてきた。開所から 2 年半を契機に、利用者 の変化を調べたので報告する。 【対象と方法】 なかまの家利用者を対象に、開所から現在までの就労実績、プログラムの変化、なかまの家以外 の当事者との交流を調べた。なお、対象者のプライバシー及び匿名性の保持に充分配慮した。 【結果と考察】 1) 就労実績 一般就労 20 人、福祉的就労 18 人であった。A 氏は「なかまの家を利用して、病気とのつきあい方 や人間関係を学んだ」と話し、現在は一般就労し、時々なかまの家に来ている。 2) プログラムの変化 なかまの家利用者が希望を語る中で生まれたプログラムは、なおちゃんとひまつぶし(入院中の 患者・家族・利用者・スタッフを対象に傾聴と分かち合い)、ぴあアロマハンドマッサージ、FM か っつん(音楽番組)であった。B 氏は「(なおちゃんとひまつぶしで)感謝の気持ちを聞き、語り合う 楽しさと生きがいを感じている」と話し、C 氏は「アロマハンドマッサージをしてお客様を癒やせた のが自信になった」と話していた。 また、健康管理や社会性の習得といった就労の基盤作りを目的とした就労支援プログラムに加え、 新たに得た知識を元に実践形式の就労支援プログラムを多職種で開始した。 3) なかまの家以外の当事者との交流 WRAP(元気回復行動プラン)をデイケア・病棟で月 1 回実施している。また、Peer Café(喫茶)・当 事者研究(当事者研究は 2001 年 8 月に北海道浦河の「べてるの家」に生まれた。当事者が自ら主体 的に自分の苦労を「研究しよう!」と取り組むこと)は入院中の方も参加している。 D 氏は「WRAP が好き。一人一人と深く対話でき、自分を振り返ることが出来る。精神障がいとか 健常者の枠を越えて、心身ともに健康を保つのに必要な事として伝えていきたい」と話していた。 以上のように、一般就労だけではなく、自分の働きたい希望・目標に合わせて前進していく姿が 見られた。利用者のおかれた状態や生活を決めつける事をせず、社会に生きる一人の「人」として その人の持つ希望を引き出し、大切にしていきたい。 一般演題C 座長 松尾緩子(阪和第一泉北病院 医療社会福祉部 課長) 9.「家に連れて帰りたい」 ~家族の願いをかなえるために私達ができること~ 介護老人保健施設 錦秀苑 3 階フロアー 岩倉 佑介・宮崎 太地 ○井口 真弓・要 琴乃 1、はじめに 介護老人保健施設の役割の中に在宅復帰がある。平成 27 年度介護報酬改定で在宅復帰支援機能が 更なる強化となった。錦秀苑も在宅復帰を支援していくため各職種が協力し 1 人でも多くの利用者 様が在宅復帰できるよう努力をしている。 今回、 「家に連れて帰りたい」という願い持ったご家族様に対して家に帰るためにはどうすればよい かを検討し取り込んだ事例を報告する。 2、事例紹介 T氏 男性 87 歳 要介護度4 既往歴 小脳出血後遺症、廃用症候群、糖尿病 平成 27 年 5 月 9 日に病院より入所 1)入所までの経過 平成 26 年 5 月に脳出血で入院。右下肢に麻痺が残るが自宅へ帰り介護サービスを受けながら妻と 2 人で生活される。平成 27 年 4 月に言葉が出にくくなり受診する。MRI撮影するも脳に異常なく 脱水と診断される。入院によりADL低下があり今の状態では在宅生活は難しいと居宅のケアマネ ージャーからの助言がありリハビリ目的にて入所される。 2)入院時のご意向 ご本人からは聞き取ることができず。 ご家族様(妻)は、家に連れて帰りたいが周囲から反対されている。でも連れて帰ってあげたい という強い希望を持っておられ毎日面会に来られている。 3、在宅復帰の課題と対策 入所当初のADLは、食事摂取は全介助であり摂取量も1~5割程度。排泄は、24時間オムツ 使用し定時にてパット交換を行う。入浴は機械浴で全介助であり、ほぼADL全般全介助状態であ った。認知面も長谷川式簡易スケール5/30点であり意思疎通や会話もほとんどなく短い返事が 返ってくる程度だった。 在宅復帰をするための課題として食事・排泄・認知面の検討が考えられる。 課題1) 食事 入院中より摂取量はバラツキがあった。入所後、定期的な多職種によるミールラウンドを行い食 事量、食事形態、補助飲料等を検討し現在はほぼ全量摂取となる。また、摂取動作も全介助状態に 近かったが現在は介助なく自己摂取できている。 課題2) 排泄 入院中は尿便意なく定期的なオムツ交換をされていた。入所当初もオムツ交換で対応していた がご家族様(妻)の希望がありトイレでの排泄介助を試みるが立位困難なため、日中は2人で排泄 介助をするが介助量は大きい。その為、リハビリテーションで立ち上がり、下肢筋力向上の訓練を おこなう。本人から「トイレへ行きたい」と訴えることもあり軽介助にて立位が可能となったため 排泄介助は1人で可能となった。その反面夜間帯でオムツ・パットをはずす服を脱ぐ行為が増えて きた。 課題3) 認知面 ほとんど会話もなく短い返事をされるだけであったが徐々に笑顔が増え会話量も多くなってきた。 しかし危険認識が乏しくADLが向上したこともあり、車椅子から立ち上がりフットレストをまた いで歩こうとするなど危険な行動が頻回にみられるようになった。 4、新たな課題と対策 食事や排泄動作の介助量は少なくなり在宅復帰可能となったが、ADL向上にともない動作が活 発になり立ち上がりや歩こうとするなど転倒をおこすような危険動作が増えてきた。現在、見守り やすい場所で過ごす、テーブルやトイレ内に“立ち上がる前に呼んでください”と張り紙をする、 車椅子座位中はフットレストを上げておくなどの対応を実施している。 排泄も夜間の頻回なオムツ外しに対してオムツの素材の検討やパット交換、トイレ誘導時間の検 討のため排泄チェックをおこなっている。 5、おわりに 食事や排泄動作の介助量は少なくなったがADL向上により転倒リスクにつながる危険な動作が 増えたため常時の見守りが必要となった。また夜間のオムツ外しの対応など新たな課題がご家族様 (妻)の在宅復帰への意欲を低下させている。 今後は、新たな課題の対策をひきつづき実施し評価・検討をおこないご家族様(妻)の「家へ帰り たい」という願いを再度もっていただけるように関わる職種全員で協力し在宅復帰できるように支 援していきたい。 10.アルコール依存症患者への退院支援 ~B4 閉鎖病棟でのはじめての取り組み~ 兵庫錦秀会神出病院 B4 病棟 ○工藤里美 桃井悠希 【目的】 再飲酒によって入退院を繰り返し ADL 低下・意欲低下している患者に対し個別的に関わり断酒への 意欲を高め退院支援を行う。 【倫理的配慮】 研究を行うにあたって本人が特定されず、いつでも中断でき不利益を受けない事を口頭で説明し同 意を得た。又、本研究は院長、主治医、病棟長に研究申請を行い承認を得てから研究を開始した。 【方法】 ① アルコール問題の振り返り 当院で医師が行っているアルコール勉強会に参加し振り返りをレポートする。 ② 内服に対する管理 2 段階に分けチェックリストを利用し、本人と全看護師が統一し開始する。 ③ 退院前訪問指導 退院後は飲酒をしていた時と同じ環境に戻るため、自宅内や自宅周辺の調査を行う。 【結果及び考察】 はじめは断酒の重要性に関する認識が不十分であり否認があった。そのため時間を密にとり、今 までの飲酒パターンを振り返り回避する為の具体的な予防法をスタッフと共に考えた結果「酒は飲 まん」と断酒に対する発言がみられた。 薬に対しては無関心で内服に対し自発性が無かった為、必要性を話し慎重に進めていった結果「自 分で飲む」という意識の変化がみられ、管理できたという自信にもつながり習慣化され内服に対す る理解ができた。 自宅周辺はいつでも飲酒できる環境であるため自宅訪問後、再飲酒について振り返りを行う時間 を増やした結果、断酒を続けていく為に自分ができそうなことを考えていくことができた。 母親は退院に対して非協力的であった為、スタッフは母親との面談を行い患者と母親の理解を深 め環境調整し外出外泊を行った。その結果、母親の不安が軽減され自宅退院への受け入れ体制がで きたため退院する運びとなった。 11.医療と介護の連携 ~多職種協働を念頭に… 今後の展開を考える~ 阪和第一泉北病院 居宅介護支援センター ○上野 秀香(居宅介護支援センター) 高林 三代嗣(事務部) 辻 涼子(看護部) 松尾 緩子(医療社会福祉部) 瀧 るり子(GH清泉) 福井 真敬(ネットワーク室) 伊達 慶子(デイケア) 吉川 良二(福祉部 2 課) 【はじめに】 平成 24 年 1 月 10 日、阪和第一泉北病院に介護事業部会が発足した目的等を先に説明しておきた い。平成 24 年 4 月の医療と介護保険の同時改定にむけて、堺市内の「医療と介護の連携」流れを見 据えつつ、地域で根ざし利用して頂く病院として何をすべきか等を検討し対策を講じることを目的 として発足。構成メンバーは、事務部・看護部・医療社会福祉部・ネットワーク室・デイケア・G H清泉・福祉部2課・居宅介護支援センターであり、定期的に毎月 1 回開催している。現在 9 月末 で、その開催総数は 49 回となっている。 【開催当初からの経過】 ○第 1 回~第 7 回 平成 24 年の医療と介護保険の同時改定にあたり、報酬改定について事業部会全体で理解した上で、 堺市内(特に南区中心)在宅サービス利用の流れがどのように変化し、当院での入院やデイケア等 の居宅サービスに影響があるか等を、現状の顧客満足度調査等を行い、その結果を事業部会で報告 し評価・情報共有し検討し、利用者獲得に向けた対策を実施することが出来た。その結果、近隣に 大規模施設(療養型病院と特養ホームやデイケア等の併設)が開設されるも、当院デイケア利用者 は減ることなく増加となっている。 ○第 8 回以降~第 35 回 堺市における医療と介護の連携強化のための関係者会議「いいともネットさかい」 、堺地域・医療 と介護の連携強化病院連絡協議会「CCコネット」に、当院として世話人が出ており、そこで得た 情報等を基に、入院数やデイケア利用数増加に繋げる動きを行っている。 ○第 36 回(平成 26 年 10 月)~現在 平成 27 年度介護報酬改定にむけて情報収集し、事業部会で情報共有した上で、錦秀会全体の入院 増加やデイケア利用者獲得等を見据えた動きを検討。当院として、地域に根ざす病院としてあるた めに、地域のケアマネ対象の平成 27 年 3 月 19 日に第一回意見交流会を開催し、ケアマネの当院へ の要望等の声に耳を傾け、可能な限りの対応をする病院として信頼を勝ち得ていくための対策をと っている。11 月 1 日には、第二回意見交流会を開催し、各ケアマネより前回 3 月をふまえた当院の 入院対応の動きを評価していただく声を頂いている。来年 3 月予定の第三回意見交流会では、ケア マネに加えて地域の医師にも参加して頂き、当院への理解を深め入院紹介に繋がる対策を講じてい きたいと考えている。 【おわりに】 当院では、事業部会が発足することにより、各部署の多職種が風通しよく何でも話し合い協力し 合える関係が構築された。今後は当院周辺の足場を整えつつ、錦秀会全体の入院数増加に繋がるよ うな各地域のニーズに合わせた企画等を多職種協働で進めていきたい。 12.『 PRM センターをご存じですか? 』 医療法人錦秀会 4S 推進局 PRM センター ○川上 純子・植田 真美・奥田 ゆうこ ●はじめに(PRM センターの設立と応対理念) ・患者様・利用者様一人一人に、満足度の高い医療サービスの提供を目指し、 2004 年 6 月 1 日、医療機関で日本初のコールセンターとして PRM センターを設立 ・Customer Relationship Management 顧客情報を集め、システムなどを活用し、効率のよい営業活動を行うためのマーケティングの手法 ・医療法人として、Patient(患者様・ご家族様)&Partner(地域の医療機関・大学病院・取引先)を 顧客とする必要があるとの考えから、Patient&Partner Relationship Management という言葉に変 え、 PRM センターと名付けられる。 応対理念 ・一人ひとりにマッチした良質で適正な医療サービスを提供するため、迅速・丁寧・確実に応対するよう 心がけます。 ・患者様・ご利用者様に錦秀会グループの医療・介護・福祉サービスを安心してご利用頂けるよう心が けます。 ・錦秀会グループの「声の窓口」として、明るく患者様・ご利用者様に接するよう心がけます。 1. 職員数 電話交換チームと PET チームの計 14 名が勤務 2. PRM センターの主な業務内容 ①業務内容 ・電話交換業務→医療法人錦秀会の 7 病院 1 施設と阪和インテリジェント医療センター、 フリーダイヤル(菜の花ダイヤル)2 回線、内線 2 種の合計 13 回線の電話対応 ・PET 検査予約受付業務→医療機関・個人の方からの PET 検査に関する問合せ、予約業務 ・3月→阪和記念会館にて、新入職員を対象に接遇研修を実施 ・4月→事務の新入職員を対象に、PRM センターにて 2 週間の電話応対研修を実施 ②月次報告 繁忙日はセンター全体で1日 900 件、月 15,000 件を超える入電数 一人平均 120 件/日(病院種類問わず)通話内容・種類を記録し報告 ③セールスの電話をシャットアウト ・着信番号から専用システムにて企業名・注意事項を確認 ・非通知であっても、エクセルデータ(約 2200 件)で社名を検索、業務中の職員への転送を防ぐ ・業務に専念出来るようオペレーターが声で判断し、失礼の無いよう話しかけ、職員への接続をシャッ トアウト! ④月に一度の『緊急携帯』と『電話トラブル発生時の対応マニュアル』の確認 ・平成 24 年 6 月、万一に備え【NTT のボイスワープサービス】を利用し、 手動にて『緊急携帯』へ転送、通話を確保する事を提案 ・『緊急携帯』と『電話トラブル発生時の対応マニュアル』を配布 ・毎月一度、緊急携帯から各病院へ連絡し、所在を確認 ⑤個人情報に関わるご案内 「○○さんは入院されていますか?」 基本対応→「個人情報保護のため、お電話ではお答えしておりません。」 入院していると聞いた!本人から電話を貰った!あの人は寂しがっている!足が悪く、病院も遠い・・ 元気にしていますか?生活援護課ですが・・ ★応対テクニック いるとも、いないとも言わず、お調べしてご連絡差し上げると告げる ・さりげなく必要事項を確認 ・病棟責任看護師、MSWへ報告し、連携を図る ・大切な電話をお断りする事が無いよう、折り返しご連絡する事を提案、ご本人様・ご家族様へ確認 個人情報保護法を理解し、案内を統一する事が重要 【PRM センター患者照会対応マニュアル】を作成 きめ細やかな、全国レベルの対応と高く評価される「阪和第二泉北病院 平成 26 年病院機能評価Sラン ク取得」 3. 職員の皆さんへお願い・・職員の内線・ダイヤルイン回線の利用推奨 ・インフュージョンクリニック・阪本病院・阪和いずみ病院 以外は内線通話が可能です。 通話コストを考え、内線を利用しましょう。 毎月一度、各病院・施設へ内線表を提供しています。 代表番号に電話→通話料 発生 内線番号に電話→通話料 無料 ・代表回線は患者様の回線!患者様をお待たせしない!自分の部署へはダイヤルインで架けましょう! 患者様・ご利用者様の事を考えたCS活動を行いましょう! ■ダイヤルインの架け方 ①ダイヤルインの番号に架ける。 ②ププププ・・と信号音が聞こえたら、内線番号をプッシュ。 ③ コール後、直接部署へつながる。 ●おわりに PRM センターは、病院から離れた場所で業務を行っておりますが、皆様のご協力により、密なる情報共 有が行えています。これからも、4S 推進局 PRM センターは 4 つの Satisfaction を推進し、Patient &Partner を第一と考え、あらゆる事を提案し、積極的に業務に取り組んで参ります。 特別報告 座長 守口篤(阪和第二泉北病院 「阪和インテリジェント医療センター(HIMC) 楠 洋子 小川 洋二 格谷 義徳 10 年の歩み」 先生(阪和第二泉北病院 阪和健診センター長) 先生(阪和第二泉北病院 阪和 PET センター長) 先生(阪和第二泉北病院 阪和人工関節センター長) 院長)
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