種苗管理センターニュース

種苗管理センターニュース
No.78
平 成 27年
7月
種苗管理センターニュース
第78号(平成27年7月)
独立行政法人
National Center for Seeds and Seedlings
Incorporated Administrative Agency
種苗管理センター
就任のご挨拶
独立行政法人種苗管理センター
管 理 部 長
遠 藤 和 夫
4月1日付けで管理部長を拝命いたしました遠藤です。
どうぞよろしくお願いいたします。前職は農林水産政策研
究所で総務部長をしておりましたが、長年予算編成、予算
執行等の予算業務に携わってきました。
さて、早いもので就任後3ヶ月が経過しましたが、この
間、業務説明や打合せ等を通じ各業務の課題等を聞き、ま
た、日々の温室や検査棟等での職員の姿から、各々が使命
感 を も っ て 業 務 に 取 り 組 ん で い る 様 子 が 伝 わ っ て き ま す 。 4 月 17日 ~ 18日 に 本 所 で 開 催
された一般公開において、業務の紹介、野菜の鉢上げ体験、種子の手触り体験、ばれい
しょのプリッツの試食などイベントで来場された方々に楽しんでいただこうという姿勢
や、来場者の車の誘導等職員自らが来場者の安全確保を図り一般公開を事故もなく終了
さ せ た こ と 、 さ ら に 、 来 場 者 が 昨 年 を 上 回 る 3,500人 余 も あ っ た こ と は 職 員 が 一 丸 と な
って取り組んだ賜であり、すばらしいことだと思いました。
ま た 、 今 年 度 は 第 3 期 中 期 計 画 ( 平 成 23年 度 ~ 27年 度 ) の 最 終 年 度 で あ り ま す 。 現 在 、 農
林 水 産 省 内 に お い て 大 臣 に よ る 26年 度 計 画 の 評 価 及 び 第 3 期 中 期 目 標 期 間 の 見 込 評 価 が 行 わ
れているところですが、このことと併せて、第3期中期計画が全て着実に達成されるよう鋭
意取り組んでまいりたいと考えております。
さ ら に 、 種 苗 管 理 セ ン タ ー で は 28年 4 月 の 農 研 機 構 、 農 業 生 物 資 源 研 究 所 、 農 業 環 境
技術研究所との統合に向けて準備を進めています。統合後も種苗管理センターという名
称は残りますので、これまで行ってきた種苗管理業務が着実に実施できるよう取り組ん
でいきたいと考えています。4法人による統合準備委員会、各業務別のワーキンググル
ープ会合等が精力的に開催されているところですが、そこでの議論等を踏まえ、どのよ
うな体制になるのか、特に管理部門のあり方をどうするかなど、人員の配置、予算、会
計 シ ス テ ム 等 の 問 題 点 を 洗 い 出 し 、関 係 部 署 と 協 議 を 重 ね て い き た い と 考 え て お り ま す 。
他の研究開発法人等との連携を図り、より良い職場環境の整備に向けて努力したいと思い
ますので、よろしくお願いいたします。
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種 苗管理 セン ター ニュー ス
No.78
平成27年
7月
日本国内、関係各国の専門家と連携を取りなが
ら情報収集に務め、より良い審査基準案を作成
していきたいと思います。
国際的な活動への取組
1.UPOV第49回野菜技術作業部会
(TWV)に参加して
雲仙農場
荒関
淳
2015年 6 月 15日 ~ 19日 の 5 日 間 、 フ ラ ン ス の
アンジェでUPOV(植物新品種保護に関する
国際同盟)の第49回野菜技術作業部会(TWV)
が開催されましたのでその概要を紹介します。
今 回 の T W V に は 28の 国 や 国 際 機 関 か ら 約 60名
が参加し、参加者の中にはまだ加盟国ではない
タイ、マレーシアなどからもオブザーバーとし
て参加していました。日本からは農林水産省新
事業創出課種苗審査室の大野審査専門職と私の
2名が参加しました。
会議前日の事前会合(ワークショップ)では、
UPOVの組織や審査基準に採用する形質の説
明があり、その後参加者は4つのグループに分
かれ形質ごとの評価方法について実習を行いま
した。評価方法に対する考え方が個人により多
少異なる部分もあり、グループ内で意見交換し
たことで自分とは違う見解を聞くことができて
よい勉強になりました。
会議では、主に午前は栽培試験の基礎となる
区別性や均一性等に関する文書(TGP文書)
の改訂について検討が行われ、午後は各作物ご
とに分かれて審査基準案の検討が行われまし
た 。 今 年 は レ タ ス 、 バ ジ ル な ど 12種 類 ( 部 分 改
訂を含む)の審査基準案が検討されました。
GEVESのレタスリングテストほ場
また、会議3日目の午後は技術訪問が実施さ
れ、フランスの栽培試験や種子検査を行ってい
る 組 織 、 G E V E S ( Groupe d'Etude et de
contrô le des Varié té s Et des Semences) の
農場を見学しました。この農場では、レタスの
審査基準改訂関連のリングテスト(同一の品種
を各国で栽培し、実際に形質を確認する試験)
が行われており、参加者全員で実物を見ながら
追加予定の新形質等について意見交換を行いま
した。雲仙農場においてもこのテストを行って
いたので、日本での栽培状況を踏まえて議論す
ることができました。また、実際の植物をほ場
で見ながら調査時期や調査方法について他国の
専門家やGEVESの担当者と意見交換ができ
たことは自分にとって非常に有意義な時間とな
りました。この経験を今後の業務に生かしてい
きたいと思います。
次 回 の T W V は 2016年 6 月 27日 ~ 7 月 1 日 に
チェコ共和国のブルノで開催される予定です。
今後とも微力ではありますが品種保護制度の
発展に貢献できるよう努力していきたいと考え
ています。
会議の様子
日 本 か ら 提 案 し て い る か ら し な ( Brown Must
ard、大野審査専門職担当)とペピーノ(Pepino、
荒関担当)の審査基準案については、各サブグ
ループで検討した結果、両作物共に今回の議論
を踏まえて次年度も検討を継続することとなり
ました。私が担当するペピーノについては一回
目の検討ということもあり、出席していた各国
の専門家から多くの貴重な意見が出されまし
た。今後、形質の定義や調査方法の確認、標準
品種(特性調査を行う際の指標となる品種)の
設定等整理すべき課題がたくさんありますが、
会議参加者の集合写真
【参考:UPOV TWVの掲載サイト】
http://www.upov.int/meetings/en/topic.js
p?group_id=260
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種苗 管理 セン ター ニュー ス
No.78
平 成27年
2.国際種子検査協会(ISTA)理事会の
つくば開催
7月
1.査察費用の支払い:3年ごとに実施される
認証ラボの査察費用は、これまで実施前まで
に費用全額を一括納入することとなっていた
が、今後は毎年1/3ずつ支払うことになった。
2.年会費の早期割引制度の導入:会費の支払
病害検査課長
佐藤 仁 敏
(ISTA理事)
い 期 限 で あ る 12月 末 日 ま で に 支 払 っ た 場 合 に
本 年 ( 2015年 ) 2 月 、 I S T A 理 事 会 を つ く
ば市内で開催しましたので、その概況を紹介し
たいと思います。ISTAの理事会は、会長と
副会長、これに8名の理事と次回コングレス開
催 地 国 か ら 1 名 が 加 わ っ た 11名 で 構 成 さ れ て い
ます。コングレスとは、3年ごとに開かれる種
子シンポジウムと総会を併せた大きな大会であ
り、理事会の役員改選の年に当たります。理事
は、フランス、デンマーク、ドイツ、イタリア、
ロシア、カナダ、ウルグアイ、ニュージーラン
ド、ザンビア、日本、コングレス開催地のエス
トニアから選出され、世界全体をカバーしてい
ます。理事会は、年次総会開催時と定例理事会
(2月)の年2回開かれます。
日 本 は 2011年 に I S T A 総 会 の 開 催 を 予 定 し
ていましたが、東日本大震災、それに続く原発
事故の影響により断念せざるを得ませんでした。
理事の中には震災後の日本の状況や種子検査の
実情を見たいとの要望が多かったことから、今
回は種苗管理センターの提案によりつくば市で
理事会を開催することとなりました。
会議は、理事のほかISTA事務局長と2名
の 事 務 局 員 を 加 え 、 2 月 9 日 ~ 14日 ま で の 5 日
間、農林水産省農林水産技術会議事務局筑波事
務所で行われました。会議では主に年次総会で
提案する項目について話し合われ、具体的には、
①ISTAルールの改訂や新しく追加提案され
る検査方法、②会員の年会費、③ISTA憲章
の改定、④決算書及び予算案等に加えて、⑤理
事会に設置した8つのワーキンググループから
の報告・提案等について討議しました。
は5%ディスカウントする制度を導入するこ
とになった。
3.ISTAサンプリング証書の試行:IST
Aのルールに従ってサンプリングした種子に
対し、サンプリング証書を新設することにつ
いて、今後3年間試行を行い、その結果を踏
ま え 遅 く と も 2018年 に は 正 式 に は 提 案 す る こ
とになった。
種子の国際取引に係る情勢の変化や会員、種
苗産業界からの要望に対し、理事会は事務局と
ともにISTAが得ている信頼性を維持しつつ、
より柔軟に対応できるように取り組んでいます。
一方では、マーケッティング担当の事務局員を
新たに配置し、今後一層の会員増加を図ること
にし、さっそく今回の会議にあわせて担当者が
来日し、情報収集と研修を兼ねて国内の複数の
種苗会社を訪問させていただきました。
会 議 期 間 中 の 祝 日 ( 2 月 11日 ) に は 会 議 を 休
止し、昨年4月に稼働した種苗管理センターの
総合種苗保管検査棟を見学してもらいました。
その後訪れた筑波山神社では一年の家内安全、
除災招福等を祈願する祭礼「年越祭」に遭遇し
たり、桜川市真壁町では優雅なひな人形が飾ら
れた多くの家や日本酒の酒蔵を探訪したり、日
本の文化に触れることができたものと思います。
ほとんどの方が初来日で、用意されたお箸に悪
戦苦闘しながら昼食を食している姿や、和風な
お土産を熱心に選んでいる様子が印象的でした。
レセプションにて:つくば市
今回の理事会を開くにあたり、農林水産省新
ISTA理事会
事業創出課、農林水産省農林水産技術会議事務
局筑波事務所、種苗会社の方々をはじめ多くの
この議論を踏まえた事項については、本年6月
に開催された年次総会に提案され、会員の総意
で次のことが決まりました。
方 々 に ご 協力をいただきました。無事に終えること
ができましたこと、心より厚く御礼申し上げます。
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No.78
平成27年
種 の 標 本 ・ D N A 保 存 事 業 」 に 取 り 組 み 、 20年
度 か ら こ れ ま で に 約 5,000点 の 出 願 品 種 の オ リ
ジナル試料(さく葉標本、凍結乾燥標本、抽出
DNA)を保存してきました。
こ の ほ か 新 た な 取 組 と し て 、 44道 府 県 が 参 加
した農産物知的財産権保護ネットワーク(福岡
県主催)との連携の下に、都道府県限定品種の
利用許諾契約に関する考え方を取りまとめまし
た。
6次産業化の推進では、パンフレットを作成
するとともに、地域資源を活かした新たな産業
創出等の支援のために地方農政局の6次産業化
担当窓口等と連携を図り、アグリビジネス創出
フ ェ ア 2014( 農 林 水 産 省 主 催 ) で は 農 林 水 産 ・
食品加工業の関係者に情報提供を行ってきまし
た。
今後は、試験研究機関等で開発されたDNA
品種識別技術(本年度はりんご、パインアップ
ル、ばれいしょを想定)の妥当性を確認し、D
NA分析による品種類似性試験の対象植物を追
加し、より多くの植物でDNA品種識別ができ
るような環境を整え、育成者権の保護・強化に
繋がるよう取り組む所存です。
センターの業務概要を順次ご紹介します
業 務 紹 介(その3)
品 種 保 護 対 策 業 務
品種保護対策課長
7月
木村 鉄也
育成者権の保護・強化等の観点から、種苗法
は平成15年、17年、19年に改正が行われました。
こ の よ う な 中 、 当 セ ン タ ー で は 17年 4 月 1 日 よ
り品種保護Gメンを全国2ヶ所4名体制で設置
し、現在では全国7ヶ所(本所、西日本、北海
道 中 央 、 上 北 、 八 岳 、 雲 仙 、 沖 縄 農 場 ) 20名 体
制に拡大して機動的な対応を行っています。
品種保護Gメンとしての主な活動は、①育成
者権侵害対策に係る相談の受付及び助言、②権
利侵害に関する情報の収集及び提供、③育成者
権者等からの依頼に基づいた品種類似性試験の
実施、④育成者権侵害状況の記録、⑤証拠品(侵
害品の種苗等)の寄託です。なお、警察のよう
な捜査権はなく、立入検査や証拠品の押収など
は行いません。
ま た 、 23年 度 か ら は 「 地 域 資 源 を 活 用 し た 農
林漁業者等による新事業の創出等及び地域の農
林水産物の利用促進に関する法律(6次産業化
法 )」 の 施 行 に 伴 い 、 こ れ ま で の 「 品 種 保 護 対
策相談窓口」を「品種保護活用相談窓口」に改
め、品種の活用に関する相談等にも対応してい
ます。特に、地域資源を活かした新たな産業の
創出等の支援として、①6次産業化に向けた新
品種の活用方法に関する助言、②地域在来品種
等の検索、③種苗の入手先や特性概要等の情報
提供も行っています。
昨年度の実績を紹介しますと、相談対応件数
は 199件 ( う ち 6 次 産 業 化 に 関 し て は 7 件 )、 育
成者権侵害に関わる証拠品を保管する寄託につ
い て は 20件 の 依 頼 が あ り ま し た 。 ま た 、 育 成 者
権に関する情報提供として、ホームページに記
載している「よく寄せられる質問」を拡充した
ほか、依頼に基づき講演を8箇所で実施しまし
た。
その他、侵害の疑われる植物体等が登録品種
であるか否かを確認する品種類似性試験では、
比較栽培2件、DNA品種識別2件の依頼があ
りました。なお、DNA品種識別については、
新たにとうもろこし、カーネーションを分析対
象に加えたほか、韓国で開催されたUPOV/
BMT及び品種保護における分子マーカー利用
に関するシンポジウムに参加し、国際的な見地
からのDNA品種識別技術利用に関する情報提
供・共有を図りました。
さ ら に D N A 品 種 識 別 に 関 連 し て 、「 登 録 品
DNA分析作業
さく葉標本作成作業
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No.78
平 成27年
嬬恋農場は、ばれいしょ原原種生産の増殖段階
のすべてを実施しており、また、ミニチューバー
及び基本種を他の農場に供給するという原原種生
産の基幹的な業務を担っています(図1)。
11の農場の様子を順次ご紹介します
農 場 だ よ り (その3)
嬬恋 農 場 へ よ う こ そ
嬬恋農場長
丹羽
7月
優治
嬬恋農場は浅間山、四阿(あずまや)山、草
津白根山等の山々に囲まれた群馬県吾妻郡嬬恋村
の一角にあり、農場の周囲には村の特産のキャベ
ツ畑が広がっています。このため、ばれいしょの
病害の主な感染源となるナス科植物が農場の周辺
に少なく、ばれいしょ原原種生産にとっては非常
に好適な環境となっています(写真1)。
図1
写真1
ばれいしょミニチューバーの生産
ミニチューバーは保護網室内で養液栽培によっ
て生産されます。培養器内で増殖されたウイルス
フリーの培養苗をバーミキュライトの培地に植
え、養液で栽培しながら生育したミニチューバー
を 順 次 収 穫 し て い き ま す 。 こ の 方 法 に よ り 10g
以 上 の ミ ニ チ ュ ー バ ー を 年 間 10万 個 以 上 生 産 し
ています。
キャベツ畑に囲まれた農場
ばれいしょ原原種生産
種苗管理センターにおけるばれいしょ原原種生
産は、ウイルスフリーの培養苗→ミニチューバー →
基本種→原原種という段階を経て増殖が行われ
ています。このうち、培養苗は培養器内で、養液
栽培によるミニチューバーは保護網室内で(写真
3)、基本種はほ場での網掛け栽培でそれぞれ増
殖されており、これらはウイルス病を媒介するア
ブラムシ等の害虫から隔離された環境の中で生産
されています。しかし、最後の原原種は隔離され
ていませんので、栽培期間中は感染株の抜き取り
作業を徹底的に行っています(写真2)。
写真2
ばれいしょ原原種の生産体系
写真3 上:ミニチューバーの生産
下:ばれいしょ養液栽培による施設内
生産技術の高度化調査
原原種ほ場の病株の抜き取り作業
遠くに見えるのは浅間山
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平成27年
遺伝資源を保存
嬬恋農場は農業生物資源研究所のジーンバンク
のサブバンクとして1,900品種・系統のばれいし
ょ遺伝資源を管理し、保存しています。導入され
たばれいしょ遺伝資源は生長点培養によってウイ
ルスフリー化し、隔離ハウス内で栽培され、遺伝
資源の保存と品種特性の調査を行っています(写
真4)。
写真4
継続的な業務改善
現在、嬬恋農場と北海道中央農場で実施してい
るミニチューバーの生産方法は、嬬恋農場で改良
を重ね確立した技術ですが、より低コストで高品
質なミニチューバーを安定的に生産するため、ミ
ニチューバーの増殖率を効率的に高める方法の調
査や、そうした調査から得られた成果を実際の養
液栽培において比較し実証する調査研究を継続し
て行っています。
また、原原種生産ほ場の土壌改良について、土
壌の物理性の改善に取り組み、土壌病害の発生抑
制、エロージョン防止、雑草防除、ばれいしょの
栽培・収穫作業の効率化を実現しています。
このように嬬恋農場は今後とも継続的な業務改
善に取り組み、低コストで高品質なばれいしょ原
原種の生産に向け努力していきます。
ばれいしょ遺伝資源の栽培
トピックス
JICA研修が始まりました
栽培試験課
下田
7月
聡
JICA研修「農業生産システム強化のため
の 種 苗 の 品 質 管 理 制 度 」( 6 月 14日 か ら 9 月 12
日まで)が始まりました。この研修は①種苗検
査業務、②新品種保護に関わる業務(栽培試験、
品 種 保 護 対 策 )、 ③ 種 苗 生 産 業 務 ( 遺 伝 資 源 保
存を含む)等、種苗管理センターの業務内容を
ほぼ網羅した内容となっており、また、今年は
7月上旬に開催されるUPOVの会議(TWA
:農作物技術作業部会)にも出席することから、
例年より1ヶ月以上早く研修が開始されました。
研修員は、マレーシア、カンボジア、ラオス、
ベ ト ナ ム 、 ス リ ラ ン カ ( 2 名 )、 ミ ャ ン マ ー 、
エチオピア、ブルキナファソ、インドネシアか
ら 計 10名 が 参 加 し て い ま す 。 新 品 種 保 護 に 関 わ
る業務を実際に行っているのは、ベトナムとイ
ンドネシアの2名のみですが、皆UPOV事務
局次長による講義や種苗管理センター本所での
栽培試験業務の講義や実習に熱心に取り組んで
いました。そして本所での栽培試験業務研修最
後の総合討論では、植物新品種保護制度の重要
性やこの研修への感謝の言葉を述べていました。
研修員の皆さんは、北海道帯広市でのTWA
への参加、種苗生産(稲等の採種体系を含む)
研修・視察、本所の種苗検査業務研修の後、7
月末から、西日本農場での研修及び選択専門コ
ース等を受けることとなっています。
集合写真(つくば本所)
実習の様子
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平 成27年
2. 「KTn03-54」
農林認定番号: 農林32号
「 KTn03-54」 は 2013年 に 品 種 登 録 出 願 さ れ 、
2014年 よ り 鹿 児 島 県 熊 毛 地 域 に 原 原 種 の 配 布 を
始めました。
春植えでは「農林8号」に比べて甘蔗糖度、
純 糖 率 が 高 く 、 可 製 糖 量 も 多 く 、 10月 か ら 蔗 汁
ブリックスが高い早期高糖性を有しています。
「 農 林 8 号 」 や 「 農 林 22号 」 に 比 べ て 太 茎 で 一
茎重が大きく、さらに、風折抵抗性は「農林8
号」と同程度です。脱葉性や耐倒伏性に優れて
いることから梢頭部除去などの原料茎調製の作
業効率が高い品種で、手刈り収穫にも適してい
ます。メイチュウ抵抗性は「農林8号」と同程
度です。また、葉焼病、サビ病、梢頭腐敗病に
強 い 抵 抗 性 を 有 し て い ま す 。黒 穂 病 抵 抗 性 は「 農
林8号」よりやや劣ります。モザイク病に弱い
ため、早めの種苗更新を推奨しています。株出
し栽培において茎数が少ない傾向にあることか
ら収穫後の肥培管理を適切に行い、茎数確保に
努めることが大切です。
新品種紹介
さとうきび新品種の紹介
沖縄農場業務部長
上田
7月
実
国立研究開発法人農研機構で育成され、新た
に原原種として配布している2品種を紹介しま
す。
1 . 「 KY99-176」 農 林 認 定 番 号 : 農 林 31号
「 KY99-176」 は 2012年 に 品 種 登 録 出 願 さ れ 、
2014年 よ り 沖 縄 県 宮 古 地 域 に 原 原 種 の 配 布 を 始
めました。
この品種は夏植え栽培に適しており、生育初
期の十分な分げつ発生と茎伸長が期待できる温
暖な気象条件が適しています。宮古地域はこう
した環境条件、栽培体系に合致する地域であり、
全作型で良好な成績を示し、特に夏植えで安定
した高糖多収性を示します。また、甘蔗糖度、
純糖率が高く、可製糖量に優れています。やや
太茎で一茎重が大きく、脱葉性は「宮古1号」
より優れ、耐倒伏性は「農林8号」より優れて
おり手刈り、機械刈りともに収穫しやすい品種
で す 。「 農 林 8 号 」 よ り 出 穂 し に く く 、 梢 頭 部
の側枝発生も比較的少ないです。風折抵抗性に
も優れています。メイチュウ抵抗性は「農林8
号」と同程度です。また、葉焼病やモザイク病、
梢頭腐敗病、黒穂病、葉焼病に抵抗性を有して
おり、総じて耐病性に優れています。なお、初
期生育が緩慢なため、株出し栽培を行う場合は
株出し管理や雑草防除を適切に実施し、多数回
の株出しには向いていません。
左:農林8号
右 : 農 林 32号
鹿 児 島 農 場 の 農 林 32号
( 植 付 け は 3 月 27日 、 撮 影 は 7 月 21日 )
左:農林8号
右:農林31号
※ 写 真 は 、農 研 機 構 が 作 成 し た 資 料 か ら 引 用 し ま し た 。
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平成27年
業
務
推
進
指
7月
針
(センターの使命)
我々は、国から示された中期目標に則し、農業生産の最も基礎的かつ重要な資材である種苗の管理を通
じて、農業の発展ひいては国民生活及び社会経済の安定等に貢献する。
(我々の責務)
我々は、独立行政法人の職員として業務の多くを国民の税金で実施していることを強く自覚し、
常に関係者、国民の理解を得られるよう、公平・公正な立場で効率的かつ効果的に業務を実施する。
(業務の特質)
我々は、センターの業務が、民間にゆだねられず、公共上の見地から確実な実施が求められるも
のであることから独立行政法人で行うこととされていることを認識し、誇りと使命感をもって行動
する。
(高い技術力の保持)
我々は、日々研鑽に励み、種苗に関する我が国最高の技術力を保持しつつ、他の機関ではなし
えない優位性、信頼性をもって業務を実施し、文字通り我が国の種苗に関するセンターとして高い
評価を得るよう努める。
(意識の改革)
我々は、独立行政法人制度の、厳正な評価のもと事前関与・統制を極力廃して自主性を高めた弾
力的な運営を期そうとする趣旨を理解し、自ら考え、変化に柔軟に対応し、種苗に関する業務を総
合的に行うことによる相乗効果(シナジー効果)を活かしつつ、各組織及び個人が相補いながら一
丸となってさらなる発展をめざす。
○
○
○
○
(編集後記)
暑さで寝苦しい夜が続いていますが、いかがお過ごしでしょうか?
国際的 な活動 とし て、U POV の審 査基準 の国際標 準(テストガイドラ イン)
等 を策定 する計 6つ の作業 部会の うちの 1つ 、TW Vに参 加した記事を 掲載し
ました。記事に出てきた「ペピーノ」、皆さんご存じでしたか? ナス科の植物
なのですが、実は甘くジューシーでメロンに似たような味がするそうですよ。
身近な果物になるかもしれませんね。
業務紹介した「品種保護対策課」では、育成者権侵害対策に係る相談を随時受け
付けております。また、地域おこしや地域振興に繋がるよう6次産業化に向けた
新品種の活用方法に関する助言を行っていますので、活用したいと考えておられ
る品種等についてもお問い合わせ下さい。
農場紹介では、嬬恋農場を紹介しました。嬬恋村と言えば、「キャベツ」ですが、
嬬恋村では、「玉菜(たまな)」と言っているとか。「キャベツ畑の中心で愛を叫
ぶ:キャベチュー」で有名な「愛妻の丘」は農場から車で15分のところにあります。
新品種紹介では、さとうきびについて紹介しました。さとうきびは鹿児島県や
沖縄県で栽培されていますが、御存知のとおり台風被害をよく受けます。今年も
沖縄農場では台風9号の被害を受けました。さとうきびだけでなく、防風ネット
の破れや建物のガラスの破損もありました。台風が発生すると、進路が気になり
ます。台風がなるべく来ないことを切に願っています。(M)
独立行政法人種苗管理センター
〒 305-0852 茨 城 県 つ く ば 市 藤 本 2-2
Tel 029-838-6587 Fax 029-838-6583
ホームページ http://www.ncss.go.jp/
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