ポットピッチャー型浄水器の性能評価 - 兵庫県立健康生活科学研究所

ポットピッチャー型浄水器の性能評価-ろ材からみた特性について-
健康科学研究センター 健康科学部 研究主幹 川元達彦
(矢野美穂 上村育代 山本研三 稲田忠明)
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はじめに
我が国の水道水は厳しい水質基準等が適用されており、世界的にも希有で安全な飲料水
として供給されている。
一方で、県民(消費者)の「臭いのない、おいしい水」志向の高まりに伴い、浄水器は
カルキ臭といった僅かな臭いや鉄による金気などを除去できるため、一般家庭での使用が
広がり、現在、普及率は約 40%と日常生活に深く浸透している。浄水器は、構造あるいは
内部のろ材の材質等により様々な種類の浄水器が市場に出ており、それらの性能に関する
相談が生活科学総合センター等に寄せられるなど消費者の関心は高い。
浄水器の性能評価試験については、平成 9 年に、蛇口直結型やアウトドア用の携帯用浄
水器を対象として国民生活センターで行われている。しかしながら、最近では、簡便で安
価なポットピッチャー型が汎用されていることから、今回は、ポットピッチャー型浄水器
を対象に、特に、ろ材に着目して、残留塩素、有機物(トリハロメタン、カビ臭物質)、金
属などの微量物質について調査を実施した。
本調査は、当健康科学研究センターが有する高度な分析技術や科学的な知見が消費者へ
の適切な浄水器の選択等に関わる情報提供に活かされ、引いては、安全で快適な生活環境
に資することを目的としている。
2
浄水器の種類、除去性能評価項目及び試験方法
2.1
浄水器の種類
簡便、安価かつ汎用性の高いポットピッチャー型浄水器として、表1に示す 5 種類を調
査した。
なお、各浄水器に使用されている主なろ材は、活性炭、イオン交換樹脂、セラミック、中
空糸膜などで、いずれもカートリッジに充填されており、カートリッジの交換の目安は通
水量 200L 程度、流量は概ね 0.1~0.2mL/min であった。
2.2
性能評価項目
消費者の関心が高いと考えられる以下の 4 項目を選定した。また、参考までに水道水質
基準値等を併記した。
1)
残留塩素:夏場のカルキ臭の原因物質(1mg/L)
2) 濁り:貯水タンク等から溶出される鉄分(金属類)(0.3mg/L)
3) トリハロメタン(クロロホルム 0.06mg/L、ブロモジクロロメタン 0.03mg/L、ジブロ
モクロロメタン 0.1mg/L、ブロモホルム 0.09mg/L)
(消毒副生成物)
4)
カビ臭物質:藻類が産生するジェオスミン(0.00001mg/L)
2.3
試験方法
水道水への評価項目の添加濃度(例:残留塩素 2mg/L)、通水方法、除去率の計算方法な
どは JIS S 3201 を参考に実施した。
また、各項目の分析については、水質基準に関する省令に基づき厚生労働大臣が定める
方法(平成 15 年厚生労働省告示第 261 号)等に従い、以下の方法で実施した。
1)残留塩素:DPD 法
(厚労省健水発第 1010001 号による方法)
2)鉄:誘導結合プラズマ発光分光(ICP)分析法
(厚労省告示第 261 号 別表第 5 の方法)
3)トリハロメタン:パージ・トラップ-GC/MS 法
(厚労省告示第 261 号 別表第 14 の方法)
4)カビ臭物質:パージ・トラップ-GC/MS 法
(厚労省告示第 261 号 別表第 25 の方法)
表 1 試験検討を行ったポットピッチャー型浄水器の概要
浄水器
A
B
C
D
全容量
1.9 L
2.1 L
3.0 L
2L
2.3 L
浄水部容量
1.1 L
1.1 L
2.0 L
1L
1.2 L~1.3 L
種類(内容量)
活性炭・イオン交換樹脂の 活性炭・セラミックの混合
混合(38g)
(48g) 、中空糸膜
活性炭(38g) 、セラミック
(11g) 、中空糸膜
E
活性炭・イオン交換樹脂の イオン交換樹脂・活性炭の
混合(54g)
混合(81g)
ろ材
外観
-
-
3
-
-
-
-
-
試験結果と考察
各浄水器の通水量に対する性能評価項目
の除去率の変化を、トリハロメタンの結果
を例として図 1 に示した。いずれの浄水器
においても、通水量 200L までの除去率は概
ね 80%以上を示し、高い除去性能を有する
ことが分かった。また、表 1 に各浄水器の
ろ材の種類を示したが、浄水器A~Eに共
通して活性炭が含まれている。トリハロメ
タンは一般的に活性炭で吸着・除去可能で
あることが知られており、本調査結果はそ
れらの知見を裏付ける結果であった。また、
残留塩素も同様に全浄水器で高い除去性が
認められた。
図1
各浄水器の通水量に対するトリハロメタンの除去率の変化
カビ臭物質については、通水当初、全浄水器で比較的高い除去性が認められたものの、通
水量の増加とともに減少する浄水器(D、E)が認められた。これらの浄水器のろ材の特徴
として、イオン交換樹脂の含有割合が高いことから、これらのろ材の含有量の相違が吸着除
去性に反映されたものと考えられた。
一方、鉄については、セラミックや中空糸膜を含む浄水器B、Cで、特に高い除去率を示
した。このことは、水中の微細な不溶性鉄(微粒子)が、セラミックでは微細な孔にトラッ
プされ、中空糸膜ではろ過膜で除去されているものと考えられ、浄水器に充填されたろ材の
特性が除去性能に影響することが明らかとなった。
4
まとめ
市販ポットピッチャー型浄水器 5 種類を対象として、消費者の立場から関心の高い残留塩
素、トリハロメタン、ジェオスミン(カビ臭物質)、鉄(金属)について除去性を調査した。
その結果、残留塩素とトリハロメタンは全浄水器において高い除去性が認められたが、ジェ
オスミン(カビ臭物質)と鉄(金属)については浄水器のろ材の含有量、種類により差が認
められた。即ち、残留塩素やトリハロメタンは活性炭による吸着除去が効果的であったが、
活性炭の充填量の少ない浄水器ではジェオスミン(カビ臭物質)の吸着除去に相違が現れた。
一方で、鉄(金属)は水中で不溶性の粒子状となっているため、セラミックや中空糸膜によ
る除去が効果的であった。
5
おわりに
当健康科学研究センターには、高度な分析技術を用いて科学的な根拠結果を提供する役割
がある。今回の取り組みは、県民の科学的生活の推進及び消費者の利益の増進に寄与するこ
とを目指す生活科学総合センターとの連携事業である。当研究センターが平素から取り組ん
でいる水道水の試験検査や研究で培った全国でもトップレベルの高度な微量成分分析技術を
駆使してポットピッチャー型浄水器の性能評価を行い、ろ材による微量なカルキ臭成分、有
機物、金属等の除去特性など、一定の科学的な根拠データを得た。今後はこれらの調査結果
を活用し、生活科学総合センターを中心に、消費者、県市町関係機関等に対して情報発信し
ていくこととしている。