「博士課程と就職、 企業における技術開発について」 トヨタ自動車株式会社 材料技術開発部 佐藤 祐規 いきなりですが・・・ 人 ・・・現在所属するグループ(課)の博士号取得者数です。 ・・・現在の上司(グループ長)は博士号取得しています。 ・・・前の上司も博士号取得者です。 私の経歴 2003年 東北大学工学研究科 航空宇宙工学専攻修士課程 入学 三浦研究室配属 インターン実習 2005年 東北大学工学研究科 航空宇宙工学専攻修士課程 修了 国際学会 RA(リサーチアシスタント) 2008年 東北大学工学研究科 ナノメカニクス専攻博士課程 修了 2008年 東北大学 研究教育支援者(ポストドクター) 就職活動 2009年 トヨタ自動車㈱入社 現在の所属部署・担当業務 材料技術開発部 磁性材料・表面改質室 表面改質G 表面処理プロセス(めっき)の開発など 企業への就職後 開発フェーズ 博士卒の配属先 はこのあたりが多い 先端 研究 先行 開発 量産 開発 生産技術 開発 製造・ 品質管理 「社内外の先端技術を集約し、次世代のクルマに向けた技術 開発を手掛ける。車両企画や生産技術開発とともにクルマの 全体像を描く。」(弊社ホームページより) 所属する材料技術領域の業務内容 次世代電池、ナノコンポジット磁石や排ガス浄化触媒、バイオプラスチックなどの材 料開発や、それらを支える現象解析・分析技術開発など 博士課程への進学∼就職について 博士課程進学にあたり・・・ 何のために博士課程に進学する? 博士課程で何がやりたい? 即答できないようなら・・・ (惰性で進学はNG) 博士課程進学のメリット ・(修了すれば)博士の肩書 ・専門分野で 自由 に研究に没頭できる。 ・人脈ができる(大学の先生、学会、etc) 企業視点からのメリット ・(修了すれば)博士の肩書 ⇒△ 研究職ならあったほうがいい 今後のグローバル化で必須になる? ・専門分野で 自由 に研究に没頭できる。 ⇒◎ 深い専門知識と幅広い知識を持ち 独力で新しい分野を切り開ける能力 ・人脈ができる(大学、学会、海外、etc) ⇒○ 企業では共同研究、共同開発も多い 人脈は重要な財産 博士課程で学ぶこと① 研究のプロセス 課題設定 仮説立案 検証 計画 (実験、評価) (手法、装置) 研究成果(博士論文) 博士課程で学ぶこと② 研究を進めるための武器(ツール) 実験・分析手法 専門知識 情報収集(文献、専門書) 理解し、身に着ける能力 原理原則の理解 実験装置・シミュレーション 使用方法の習得 仕組みの理解 無ければ作る! 原理の理解 何がわかるのか? 適用範囲は? 資質 興味(モチベーション) 体力・信念・忍耐力 行動力・積極性 趣味・気分転換 コミュニケーション 研究室・学会等でのディスカッション 論文執筆能力、プレゼンテーション能力・語学力 博士修了後の進路 大学教員・ポストドクター 国・企業等の研究職 一般企業の技術職 起業 他分野の企業など 就職について知っておいてほしいこと ・学士卒・修士卒と比べ、選択肢は狭まります。 (ただし、博士卒しか採用しない場合もあります) ・専門分野に拘りすぎない。変なプライドを持たない。 (企業がその分野から撤退したらどうしますか?) ・早期から自発的に情報収集を。準備は非常に重要。 (大学、企業HP、学会、同級生など) ・先生、企業の採用担当者とのコミュニケーションを密に。 ・研究内容や志望動機を簡潔に説明する訓練を。 (相手によるが、冗長で専門的すぎるのはNG!) ・(個人的なおススメ)面接時に鋭い質問を準備しましょう。 企業における技術開発ついて 企業における技術開発 製品コンセプト 例)ハイブリッド車の燃費を良くする! ・・・博士が特に 活躍できる ところ エンジンの効率を上げる クルマを軽くする 電池の容量をUPする 例)新しい燃焼制御 方式 例)軽くて丈夫な カーボン素材 例)新しい電極材料 技術調査・市場ベンチマーク 自社技術(研究) フェーズ アップ 大学・研究所 共同研究 部品・車両開発 他社(材料メーカ等) 共同開発 企業における技術開発 ・とにかくスピード命 (時間>ヒト>カネ) ・多くの関係者と協力しながら開発 社内:企画、設計、生産技術、製造、品質保証、調達、営業…etc 社外:試作メーカ、サプライヤー、商社、大学、研究機関、ディーラー…etc ・他社に勝てる技術、オンリーワンの技術 ・様々な技術の組み合わせが必要 ・コスト、品質が重要(データの積み上げ) ・学術、技術的に優れていても・・・ 企業で求められる博士人材 高い 研 究 者 学術的知識、理論・メカニズムの理解 製品知識、ビジネス感覚 一発狙いの 長距離 バッター 打率も高い 中距離 ヒッター 当たれば大きいけど 三振も多い・・・ 博士に求められる ポジション 高い 技 術 者 バントでコツコツ 短距離バッター 堅実だが、 得点力に欠ける・・・ 深い専門知識・広い知識と原理原則に基づいて考える力で 新たな課題に対する突破力を持った人材 最後に 博士課程の3年間ほど、「自由に」 研究できる期間はありません。 ぜひ、目的意識を持って自主的に 勉強やいろいろな経験をして下さい。 そうして実力をつけた博士は企業でも 十分に活躍できる人材だと思います。
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