整備工場における故障診断整備のススメ 今年はスキャンツ-ルを

故障診断整備のページ
整備工場における
故障診断整備
ススメ
の
今年はスキャンツールを使いこなす!
新年明けましておめでとうございま
のは何でしょうか? 進み過ぎた科学は
た整備事情に対応できないまま淘汰さ
す。本年もよろしくお願いします。さて、
魔法と変わらないなどと昔のSF作家は
れてしまうのです。
今年もスキャンツールや故障診断につ
言いましたが、まさに魔法のような技
新年早々危機感を持っていただき、
いて深掘りしていければと考えている本
術、コンピューター技術の進化こそが
長年培ってきた技術や経験、勘も大切
連載ですが、新年にあたり、今後の自
根底にあり、それらの進化が現在の社
ですが、コンピューター診断の勉強も今
動車整備について考え、今一度スキャ
会を構成しているといっても過言ではあ
年はチャレンジしていただきたいと思い
ンツールの有用性を紐解いてみようと思
りません。スマートフォンしかり、家電
ます。
います。
はもちろんクルマもしかりで、アナログ
最新のクルマ事情
からデジタルに進化しています。そして
それらはコンピューターで制御されてお
より深みを得るために資格の取得や
勉強、そしてスキャンツールの導入を
8月号に掲載した北海道のメカニッ
最近のクルマと聞いて思い浮かべるの
り、いまやコンピューターに支えられて
は、やはりハイブリッド車や電気自動
いる社会と言ってもいいと思います。
ク(スキャンツールを使いこなす)や55
車、クリーンディーゼル車、多岐に渡り
この技術の革新は今後も続くことが
歳で1級整備士資格を取得するなど、
ます。このほど、トヨタから販売するこ
容易に予想されます。クルマ以外であっ
日本のメカニックの中には様々な方がい
ととなったミライは水素自動車です。最
たとしても更なる進化が見込まれます。 らっしゃいます。彼らに共通することは
新の技術から設計思考、そして先端技
FCVが標準のものとなる、レシプロエ
メカニックという仕事に誇りを持ち、生
術を惜しみなく投入された、未来を見
ンジンが無くなる、人間の想像力に限
き残る道を見出しているということです。
据えたクルマです。今後の主流となるで
りが無い以上は進化を続けます。
メカニックとして生き残る道はやはり先
あろう車は、燃費も良く環境にやさし
自動車整備についてもコンピュータ
端技術を使い切る点にあります。コン
い、そして自動ブレーキや安全性にも特
ー制御は避けて通れません。エンジン
ピューター診断、電子制御と聞くだけ
化したハイテク装備が満載です。同じよ
に始まりABS、エアバッグ、ミッション
で尻込みなどせず、難しく考えずにチャ
うにオイルやタイヤ、ブレーキパットな
やエアコンなどは全てコンピューターで
レンジ精神を持って臨んでいただきたい
ど長寿命で高性能な消耗品も多く、技
制御されています。ではそのコンピュー
と思います。1級を取れとは言いません
術革新のスピードは速くなっています。
ターをどうやって管理するか? コンピュ
が、まず、スキャンツールを持っていな
ーターはコンピューターとしか会話が
い工場はスキャンツールを導入してくだ
出来ません。もうお分かりですね、つ
さい。コードリーダーは不可です。きち
まり、スキャンツールがないと高度化し
んとしたスキャンツールにしましょう。
最新技術の根底にあるもの
では、その技術革新の根底にあるも
せいび界
JANUARY 2015 vol.587
01
SEIBIKOHOSYA
せいび広報社
故障診断整備のページ
リフトやスキャンツールなど最新機器を揃えておくことが今後求められる
スキャンツールを持っている工場は故
ずれており、体に異常があるから、信
障コードの呼び出しと消去だけではな
号が左の背中の痛みとして現れました。
く、色々な使い方にチャレンジしてくだ
症状としては肋間神経痛でした。医者
『故障の原因探求には必ず勘が必要
さい。
(数値を見て想像力を働かせる)
に行き鎮痛剤を貰いました。
「ひどくな
である。この勘というのは理論的に裏
様々な車両に接続して実測値、ライブ
る前の前兆があったでしょう!」と医者
づけされた想像力である。想像は誰に
データで状況を確認してみてください。
に怒られました。
でも出来る。これに理論的な裏づけを
取り急ぎはO2センサーなどを見てみる
残念ながら人間にはOBD2は付い
つけるとなるとそのシステムを理解し、
のもいいと思います。今のうちに慣れて
ていませんが、車にはあります。状態
数値で判断する必要がある』
おかなくては、先述の通り今後の整備
が良い時こそ繋いで知ることが必要で
このような言葉を残したメカニックが
需要に耐えられなくなってしまいます。
す。これが故障診断というものです。そ
いました。電子制御であろうが機械制
のためのスキャンツールです。人体より
御であろうが、アナログであろうが、デ
もクルマは複雑ではありません。
OBD
ジタルであろうが上記の言葉は共通で
スキャンツールを使う時はどんな時に
を繋ぎ予防することで事故や故障を未
あるといえます。勘だけでも駄目、勘が
なるのでしょうか? よく、ランプが点灯
然に防げます。
無ければ無駄がある、裏づけが無くて
調子が良いからこそ診断する
した時、調子が悪い時にだけ繋ぐとい
う話を聞きますが、実際は入庫=診断
トルクレンチと一緒
診断なくして整備無し
はどちらも破綻してしまいます。センサ
ーの作動を数値で表す作業が計測作業
であり、この作業なくしてエレクトロニ
というぐらいのスパンで行うべきだと一
整備をする際に必要になるトルクレン
部のメーカーは言います。一番いいの
チですが、これは工具ではありません。 クス装置の判断はありえません。つまり
は調子が良い状態を見ることです。人
正確には計測器です。規定のトルクで
スキャンツールを使わずにエレクトロニ
間でも健康な状態を把握しておくことが
締めているかを確認するための計測器
クス装置の診断はありえないのです。
バロメーターになり、それが平均値に
であり、それをメカニックは工具として
昨今のクルマはどんなクルマですか?
なります。良い状態が分かっていて、そ
使っているだけです。スキャンツールも
機械と電子制御の塊ですよね? どうやっ
こからどのように悪くなっているのかが
同じです。故障の元を直すのはメカニッ
て整備をするのですか? 整備をするの
見えてくる筈です。
クです。故障の原因を診断するのがス
に必要なのはスキャンツールですよね?
丁度、筆者もこの原稿を書いている
キャンツールの役目です。
是非、今年はスキャンツールを導入、
時に、左の背中に痛みを感じました。
活用して、今後の生き残り対策として馴
普通は感じない痛みです。平均値から
れていただきたいと切に願います。
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02
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